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川口外務大臣と語るタウンミーティング (ディスカッション) (高島外務報道官) それでは、会場の皆様からご質問、ご意見、コメントをいただきたいと思いますが、一つお願いがございます。随分たくさんの方々にお見えいただいていて、皆様それぞれご意見、ご質問をお持ちだと思います。お一人の方が長くご質問されますと質問者の数が少なくなってしまいますので、ご質問、ご意見は1点に絞っていただきたいということと、大変失礼なのですが、時間を2分に制限させていただきます。 それでは、これから本当の意味でのタウンミーティングを始めたいと思います。 (参加者) 10月2日に日本と韓国の政府間、産官学の共同研究会におきまして、日韓FTAの報告書がまとめられています。その中で、いちばん最後の別添文書として、韓国において労働運動が活発に行われているということが日本の産業界の投資の妨げになり、そういう意味からこれは非関税障壁に当たるということで、NTM協議会の中でこの問題が取り上げられています。これが今後、22日から始まる日韓FTAの政府間交渉においてどういう形で反映されていくのか、私たちは非常に危惧しています。 非関税障壁だからといって相手国の労働運動を妨げるような、そういう世界に類例のない要請が産官学の協議会の中で行われているわけですが、それぞれの国の文化なり、歴史なり、あるいは基本的人権というものがあります。そういうものをないがしろにして、一方的にこういうことを進めていくというのは非常に問題であるということで、私たちは「異議あり! 日韓FTA」キャンペーンという運動を行っています。こういう労働運動に対して弾圧をするような条項を絶対に盛り込んではならないというのが、外務省あるいは日本政府に対する私たちの要請です。 (川口外務大臣) おっしゃった産学官共同研究会というものを韓国との間では8回ほどやりました。これは学識経験者、産業界の方々が両国から出て、どういうFTAが良いか、EPAですが、それぞれについてどういう利益があるかということを議論いただきました。 政府間の交渉という意味ではこれからです。交渉をやったときに、何が対象になって何が対象にならないかというのは、交渉していって、最後にどういう形でまとまるかということだと思います。EPAですから、そこで何を獲得したいと思うかというのは多分いろいろと差があるでしょう。交渉は相手があるわけですから、議論をしていって、その中で双方ともに「これならいい」と思う形になりませんとまとまらないということだと思います。 今後、交渉が始まっていきますので、その過程で展開があると思っています。 (高島外務報道官) 一言付け加えますと、日本と韓国の間の予備的な協議を産官学が行ったわけですが、この報告書の概要は外務省のホームページに載せてあります。外務省のホームページには皆様からのご意見を受け付ける窓口も開いてありますので、さまざまなご意見がおありでしょうから、それをぜひご活用いただきたいと思います。ご意見をどんどん寄せていただければ、それをまた担当の部局に伝えて、ちゃんとした答えが必要であれば答えをするというふうにしてありますので、どうぞご利用ください。 (参加者)FTAに関しまして川口大臣に質問がございます。 日本にとっていちばん大切なのは石油や天然ガスだと思います。そういうものが日本にとって、今すぐにおいても将来においても必要だと思います。同じアジアの中でのそのような場所としては中央アジアだと思っています。トルクメニスタンや中央アジアにはいろいろな天然資源があります。もちろんパイプラインを引くなどいろいろと問題があり、費用対効果なども今後検討していく必要があると思いますが、日本は将来中央アジアとFTAを結ぶことは検討されていらっしゃいますか。 特に中国は、上海協力機構などを通して中央アジアの天然ガスや石油などの確保に努めています。中国がそれほど始めているということは、日本が後からそこに進入しようと思っても難しい状況があると思います。そういうことで、今後、日本が中央アジアに対してのFTAまたは経済協力を拡大していくか、または大掛かりに行っていくかどうかということを教えていただきたいと思います。 (川口外務大臣) 幾つかのことを申し上げたいと思うのですが、まず、日本は中央アジアの国々との間でいい友好関係、いい経済関係、いい協力関係を持っていきたいと思っています。中央アジアの国々というのはユーラシア大陸の真ん中にあって、我が国にとっては非常に重要な戦略的な場所にある国々だと思いますので、この国々と仲良く友好関係を持っていくことが重要であるというのが基本的な考え方です。 それでは、これらの国とEPAを結ぶことを考えているのかというと、今の時点では直接には考えていません。将来的にはいろいろな可能性があると思いますが、先ほど申しましたように、当面考えているのは東アジアの国々であり、あるいはメキシコであり、あと若干あるかもしれませんが、中央アジアの国々ということは考えていません。 その理由は幾つかありますが、それを結ぶことによって重要な経済上のメリットが我が国にあるかというと、経済関係、貿易関係は非常にまだ小さいわけです。当面はWTOのルールに則って貿易関係をつなげて広げていくということは大事なことだと思いますが、それがいっぺんにEPAにはいかないと思います。 それから、エネルギーという意味では、おっしゃったようにカザフスタンとかトルクメニスタンとか中央アジアの幾つかの国は、経済的には非常に重要な国、エネルギーの供給国です。そういう観点からも我が国は大事だと思っており、今までも政府の使節団、ミッションが行ったことがあります。そういう関係は持っています。それから、経済協力は我が国としても今までやってきていますし、今後も引き続きやっていきたいと思っています。そういった経済協力をやりながらいい関係を維持していき、その過程で、経済関係、貿易にせよ何にせよ、そういうものが深まっていくというのが当面描いている姿ということだと思います。 (槙原経団連副会長) 今ご発言があったように、中央アジアは非常に資源に恵まれているところでもあり、また、日本としてはエネルギーはどうしても輸入に頼らざるをえないということもありますから、そういう意味では非常に重要視しています。 しかしながら、大臣がおっしゃいましたが、現状では恐らくまだFTAというよりも、FTA以前の問題として、例えば援助の問題とか、ファイナンスの問題、それから、やはり先方もエネルギーを輸出したい、我々も買いたいという非常に単純なベースですから、FTAの前に、先方の政府とそういう話し合いを行うことにより、信頼関係を深めていく段階ではないかと思います。 これから天然ガスの需要はアメリカを中心にして大幅に増えると思いますし、5年、10年先を考えると、確かにこれからますますカザフスタン、トルクメニスタンなどとの関係を重要視するということは間違いないと思いますが、FTAということは多少先寄りと私も考えます。 (川口外務大臣) 私は先ほどWTOのルールに則ってと言ったような気がしましたが、入っている国とはWTOのルールでということです。入っていない国もあります。誤解をしていただくといけないので、訂正を一部しておきます。 (参加者) 川口大臣のお話を伺っていると、FTAの取り組みが現在の日本にとって有益だというのは分かったのですが、どうしても日本政府の取り組みが場当たり的に聞こえてしまうのです。素人目から見ると、カンクンでのWTOの取り組みの失敗からFTAの取り組みが盛んになったように感じますし、ASEANとの取り組みも、中国が盛んに行い始めてから、後れてはまずいということで日本が取り組みを始めたように見えます。 長期的に考えて、日本は世界でどのような貿易ルールを構築していこうと考えているのかということを伺いたいのですが、今考えるとWTOはどこへ行ってしまったのか。日本は今まで多国間でやってきたのに、なぜFTAの取り組みに急に力を注ぐようになったのか。将来的にWTOを推進するにもFTAを寄り道としてやっていくということを考えているのか、FTAをがちがち固めていって将来的な貿易ルールを作っていくのかということが疑問なので、そこら辺をどうやっていくのかを伺いたいのです。 (川口外務大臣) 場当たり的に見えているとおっしゃられて、そうであれば今まで政府の説明が十分でなかったということかもしれませんが、交渉を始めるという意味では、この間ASEANの3か国を決めました。ただ、交渉の前史というのは相当に長くあります。例えばメキシコですと、事前検討というのは平成11年、今から4年前に始まっています。そして、産官学の共同研究会は、メキシコですと平成13年、2年前からやっています。平成13年9月から平成14年7月までやりました。それで、昨年11月から政府間交渉をやっています。タイにしても、マレーシアにしても、フィリピンにしても、この辺は比較的新しいところですが、それぞれ昨年の春とか夏あたりから事前の検討は始まっています。 先ほど申しましたように、日本はかなりずっとマルチのルール、WTOのルールでやろうと、ほかの国よりも長く思って頑張ってきたところがありますので、EUやアメリカのNAFTAに比べれば遅いということは言えますが、カンクンの前から手を打っています。それから、FTAの事前の検討を始める前には、政府ベースでこれをどう考えるかという研究もかなり長いことしています。ですから、何も10月のカンクンの失敗で急にばたばたとやっているわけではないということが一つです。 それから、FTAとWTOの関係です。二国間でFTAないしEPAをやることと、マルチの場でWTOをやっていくことと、考え方としてどういうふうにつじつまを合わせるのかというのは本当にもっともなご質問で、非常に理解をしていただくのが難しいことでもあるのですが、FTAあるいはEPAというのは、WTOプラスアルファだと我々は考えています。したがって、ベースとしてWTOのルールがあって、これはくまなく全世界、全部の国に適用されているルールで、それを特定の国との間で深く掘っていくことをねらいにしているのがFTAだということなのです。 例えばメキシコとの間で、日本は自動車の輸出ということを考えます。メキシコでは日本からの自動車の輸入に対して高い関税があって、ほかの国に対しても同じ関税率を持っているのですが、アメリカやEUに対してはほとんどゼロなわけです。ですから、WTOのルールがあって、ある特定の国にはそれよりも低い関税率を課しているのですが、日本はそれを得ようということなのです。WTOプラスアルファというのがFTAの考え方だということです。 日本は貿易あるいは国際的な経済関係を律するときの考え方として、物、サービス、そういった貿易を、これはそこまで今ルールが広がってきています。大ざっぱに言えばそういうことですが、さらに投資とか、より完全な形での政府調達とか、いろいろと幅広く広げていって国際的なルールを作るのがいいと考えています。 そこで一つの大きな課題になっているのが、先進国と発展途上国の間でどこまでルールに差を作るかです。これも世界的な課題で、この間カンクンで交渉がうまくいかなかったことについて言えば、途上国に対してどれぐらい先進国との間でルールの差を作るかということについて、先進国が望んでいることと途上国が考えていることと基本的にずれがありました。大ざっぱに言えばそういうことだと思っています。 (槙原経団連副会長) 私なりに意見を申し上げさせていただきますと、一つはWTOとFTAとの関係ですが、日本経団連等が考えていますのは、最終的なゴールはWTO的なものと考えています。ただし、それに行く一つの道筋としてFTAがある。すなわち、FTAを積み重ねながら、最終的にはWTOを目指すということです。FTAとWTOはお互いに矛盾しないというのが私どもの考えであります。 それから、川口大臣がおっしゃった、カンクンに至るまで相当長い間事前のスタディをなさったというのは間違いないと思うのですが、私が申し上げたように、やはりもう少し発言力をつけていただきたい。司令塔といいますか、私たちが一つの理想像として描くのは、カンクン等に臨んだ場合には外務省が中心になって、国益を代表しながら一本になって物事を進めていく、そういう体制が本当は望ましいのではないかと考えます。WTOであれ、メキシコの交渉であれ、日本が一本にまとまって即断即決して、もちろん事前のスタディは十分やる必要があると思いますが、いざというときには国益を一本にまとめながら対応できるような体制、これが今、欠けているのではないかと私は考えます。 (川口外務大臣) 非常に厳しいご指摘をいただいて、それはおっしゃるとおりだろうと思います。国際経済だけではなくて、国際交渉はいっぱいありますが、そういった国際交渉に日本としての主張をどのように一本化した形で出すかということは、日本にとって大きな課題であると思います。特に貿易問題はさまざまに違った経済主体が国内にあって、全中の副会長の花元さんがいらっしゃいますが、例えば農業の考えている利益と損失、それから看護師や介護士の業界のかたが考えていらっしゃるプラスとマイナスなど、いろいろな日本国内のプラス・マイナスが違った形で存在しており、それを日本国全体としてまとめることができる力が、まさに国力の一端であろうと私は思っています。 今回のカンクンあるいはFTAの交渉で、そこが大きな課題であるという認識を持っていまして、それを解決していくためにどういうふうにやっていったらいいかということを政府全体で考えていく必要があると思います。これは先ほど槙原さんがちょっとお触れになられて、全くおっしゃるとおりだと思うのですが、だれが会合で交渉者になるかということよりも、もっと深い根を持った問題だと私は感じています。 (花元JA全中副会長) 私はジュネーブ、カンクンのWTOに何回か行ってまいりましたが、今、槙原会長が言われていますように、私も現場でいろいろと外国の人と話をする中で、一つはやはり日本の国際交渉、政治にはもっと専門的な人が出て行かれる。それから、外交交渉ですから力量のある人にしっかり行っていただく。これは川口大臣に申し訳ないのですが、農林大臣でも大体毎年替わるわけですから。 WTOというのは、私は世界の貿易紛争の番人だと思います。その中でFTAが始まっているわけですから、それなりに国内の意見統一をきちんとやるような外交能力、外交戦略というものの力量を日本はもっともっとつけないと、苦労するのではないかと考えます。 (参加者) 川口大臣にお聞きしたいことがあります。省庁別のFTA戦略などというものをインターネット上で拝見したのですが、外務省のみならず経済産業省、農林水産省、財務省、さまざまな省庁が省庁独自のFTA戦略を省の利益を考えて打ち出しているわけですが、見て感じることは、政府、日本国全体としてどのような統一的で有機的なFTA戦略を打ち出していくのか。そういった視点が欠如していると思うのですが、いかがでしょうか。 さらに、たしか「通商白書」の98年度版ぐらいのときは、日本はFTAに対してちょっと否定的な見方をして、各国がFTAを推進する監視役であるべきだというような表現がありましたが、その翌年度版では一転して政策を転換していました。このような政策転換が一体どのようになされたのか。やはり日本全体として統一的にがつんと打ち出す必要があると思われます。 私の意見ですが、こういったことを背景に、アメリカでいう通商代表部(USTR)みたいな存在を打ち出していければいいのかなと思うのですが、いかがでしょうか。組織法上の問題はあまり分からないので、ひょっとしたら間違った考えかと思われますが、意見をお願いします。 (川口外務大臣) 今のご質問は、先ほどご質問があって、こちらで3人で話をしたことと非常に密接に関係があることだと思います。 各省別のFTAの研究会があり、全体のものがないではないかということですが、各省が所管をしているものは、例えば農水省ならば農業物資ですし、経産省であればほとんどの工業製品です。外務省であれば物の所管の官庁としてではなくて、むしろ国際社会、国際経済におけるFTAというのはどういうものか、また、日本が国際政治、国際経済上の日本の国益を見いだしていくためにはどういうFTA戦略があってしかるべきかを考えています。それぞれ省庁は違うことを考えて、違うもの、違う事柄を所管しているわけですから、そこにのっとったFTAの考え方が異なってあるというのは当然なわけです。 それぞれの省が最初から同じことを考えているのであれば、別々な省はそもそもいらないわけでして、それぞれ自分の所管をしている業界をどうやって育てていくか、どうやって発展させていくか、あるいはどのように構造改革をしていくかを考えながらFTAを進めています。したがって、各省庁別の考え方があるのは当然であり、自然であり、お互いに考え方の違いをベースに議論をしていく新たなる発展のベースだと私は思っています。 では、日本政府全体としてのFTAの戦略というのはどうやってできていくのかという過程というのは、難しいいろいろな紆余曲折があります。どこか上から日本としてこう考えるべきだということが打ち出されて、それに従って全部が動くというのに比べると非常に分かりにくい形だと思います。下から上がっていくというタイプが日本のやり方だと思います。 では、どうやって下から上がっていって決まっていくのかというと、具体的には、例えば昨日官邸で会合がありましたが、そういう際にみんなで議論をするというのも一つありますし、それから、例えばカンクンでの会議、あるいはその前哨戦もあります。また、今ジュネーブの場ではほとんど毎日のベースで、WTOを今後どうやってやるか、それぞれのものについてどう考えるかということで会議があるわけですが、その会議に向かって日本政府の方針はどうあるべきか、これを対処方針と呼んでいますが、そういうことの会議を目指して考え方をそれぞれすり合わせていく過程で、日本全体の考え方が決まってくるということだと思います。 それと並行して、日本は与党と政府というのは考え方は一致してやっていくということですから、与党(自民党、公明党)に相談を密接にしながら政府全体の与党プロセスを上がっていき、片方では政府の中で議論が行われて意見がまとまっていくという過程です。ですから、先ほど言いましたように、はじめに何かがあって、強力な大統領あるいは国によっては独裁者というのがあって、何かこれでやるべしというものがあって、みんなが「はい」と言ってやるというのではなくて、全く逆に下から上がっていくというのが日本の制度であると思います。 それから、「通商白書」でFTAについてある年は反対と言い、次の年にくるりと変わっていったのはなぜかについてです。「通商白書」というのは、98年ですと通商産業省と呼ばれていましたが、そこが省として出している白書です。ですから、どういう過程でFTAというものが良いとされ、その前にはFTAというのはどちらかといえば監視すべきものであるとされていた、その変化がどうやって起こったかということについては私は存じません。 ただ、昔、私はその通商産業省というところで仕事をしていまして、同時にその「通商白書」を書くポストの課長をしていたことがありますので、そこから想像すれば、基本的にいろいろと議論をしていって、白書として取り上げるのにふさわしいテーマであろうということに省全体としてなって、分析をしていって出るというのが過程です。ですから、次の年に変わったとしたら、そのときに何があったかよく分かりませんが、恐らく政策を変えるにふさわしい環境変化が外にあったと考えます。政策というのははじめから終わりまで同じでなくてはいけないということではなくて、やはり外側が変われば柔軟に変わっていかなければいけないということだと思います。 そういった通産省の政策がほかの省の政策と一緒になり、ぶつかり、議論をし、発展をしていって、日本政府全体の政策となります。その過程で外務省も外務省の政策を主張していくということです。ですから、そういう日本政府の中での議論というのは非常に自由に行われていると思っていただいていいと思います。 それから、通商代表部ですが、私は個人的には中長期的な課題としてはあると思います。ただ、それをやるためにはかなり抜本的に日本の国の制度を変えなければいけないということだと思います。それができるかどうかというのは、行政改革の一つとしてみんながそれが良いかどうかということを議論し合って、それが良いとなればそういうふうになっていくということで、かなり時間がかかる過程だと思います。 なぜ中長期的な課題かと言いますと、今、例えば貿易と言ったときに、貿易も農業があったり鉄鋼があったり自動車があったりさまざまですが、すべての物の貿易を所管している一つの省庁というのはないのです。だから、例えば農水省であれば農林物資の米とか小麦とかの貿易を所管しているということですし、鉄鋼、自動車であれば経産省であり、外務省は具体的なそれぞれの産業の所管はしていませんが、波打ち際の外のことを担当しているということです。ですから、一つ通商代表部のように交渉する権限を持ち、交渉と同時に国内のいろいろな問題の調整をする権限を持つ役所は、今、日本にはないのです。 ないからそれを作ったほうがいいということになれば、各省庁の持っている設置法、どの省は何をやるということを決めているところを全部根っこからもう少し変えていって、交渉権限もあり、かつ中の調整権限もあるという役所を作らなければいけないということになります。それはそう簡単に、今度の韓国との交渉に間に合うわけでもなければ、メキシコとの交渉に間に合うわけでもなく、数年たたないとできません。それが日本の今の政府の中の組織の在り方だということです。 ですから、メキシコのFTAは3人の交渉者がおり3大臣が出ていきました。今度、アジアとの間で人の移動も含むようになれば、例えば看護師とか介護士ということですと厚生労働省も関係していきます。そうすると4人の大臣が出て交渉するのかという話になってきて、外側から見ても格好悪いというのもありますが、効率が悪いということでもあります。 では、それをたまたま1人の人にまとめてしまおうかということを仮に誰かが考えたとして、ある方にお願いしても、その人ができるのは交渉だけです。どういう政策をその方に預けるかという段階で、その人は調整権限を持たないわけですから、結局、基本的には4人の人が出るのと同じような形になっていくというのが現在の姿です。 あまり日本の役所の在り方、交渉の在り方をここでさらすと、実際に交渉が始まったときに日本が損をするといけませんから、これ以上言いたくないのですが、いろいろと工夫が必要だし、中長期的には大きな課題だと私は個人的には思っています。 (参加者) 12月のASEANとの首脳会談でもあったように、東アジア経済構想というものが挙がってきていると思います。これに対して、これはEUやNAFTAに対抗するようなものなのか、政治的共同体を考えてのものなのかということをお聞きしたいと思います。 あと、こういう考え方は、マハティール首相がEAEG構想というものを90年代に打ち出したのですが、このときにはアメリカの反発がありました。このように東アジアにおけるFTAの交渉にはアメリカの反発が考えられるのですが、そのことに関してのご意見をお願いいたします。 (川口外務大臣) まず、東アジアコミュニティと小泉総理が昨年1月にシンガポールでおっしゃったこととEUとのいちばん大きな違いというのは、もちろん発展段階の違いということもありますが、そもそもEUを構成している国々の均質性と比較して、東アジアの国々というのは非常に多様であり、これが根っこのところで違っているということだと思います。 東アジアは多様ですから、今考えているのは、非常にルースな多様性を生かした何らかの形の連携があるであろうというぐらいで、具体的にそれがどのような形をとって究極的にどうなっていくかということは、まさに歩きながら、ともに進みながら考えていくしかないということだと思います。ですから、先がどういう方向になるか、今の時点で誰も分かっているわけではなく、ともに歩み、ともに進もうというのが小泉総理のおっしゃったことで、それをしながら考えていくということです。 小泉総理が一つ引かれた例でオーケストラの例がありまして、オーボエにしろバイオリンにしろ、それぞれがきちんと音楽を奏でていて、全体が集まって非常にいい音楽になっていくようなことであろうかと思います。 それから、経済連携協定というのは、それを結びながら制度あるいは政策の考え方が調和をしていき、東アジアコミュニティにつながっていくということでもあります。 アメリカですが、シンガポールともそうですし、先ほどタイもアメリカと交渉を始めたと言っていましたが、アメリカも東アジアの国々とつながっているということだと思います。アジアの国々の中には、アジアとアメリカの関係をどのような距離感を持ってやっていくかということについて、国の違いがあります。日本はアジアの平和と安定には米国の存在が欠かせないと思っています。 (参加者) 私はインドネシアに駐在していましたが、町で走っている車の9割ぐらいは日本製、家電も7割ぐらいはマーケットシェアは日本製です。私も国際貿易にずっと携わってきたのですが、だいぶ前に物の自由化があって、それから資本の自由化があって、槙原会長が言われたようにサービスの自由化もあった。 一方、日本に帰ってきますと、海外から見るとちょっと違和感を感じるのは、例えば年金問題というのは、日本の人口がどんどん減っていく、分母が少なくなるということが言われていますが、例えばアメリカでは外人であっても働く人は全部ソーシャル・セキュリティ・ナンバーを取って、年金も払うと。その代わり10年働くと年金ももらえるようになる。そういうオープンシステムになれば、日本の狭い意味だけでとらわれることなくトータルで解決できる。 日本の産業界も、昔は日本の国内市場だけであったわけですが、東南アジアでは圧倒的に日本製ということで、これは日本も潤う、東南アジアの国も助かる。そういうことから言いますと、例えば農業問題は、「むつ」とか「ふじ」とか、あるいはさくらんぼとか米とか、現地で我々がいると絶対買うものがあります。これは今、日本の市場だけではなくて、一部出ている海外の市場にもぜひ出ていってやっていただければ、大きな部分で生きていけるのではないか。 それから、人も、先ほど労働市場の問題がありましたが、介護の問題とか、これは私も女中さんを使って助かっていましたので、ぜひ検討していただきたいと思います。 (高島外務報道官) ありがとうございました。今のは半分はご意見だっただろうと思うので、後ほど何かとまとめて回答をもらうことにいたしましょう。 (参加者) 交渉の中に、特に農業交渉の中で、一つのコンセプトみたいなものが欠けているのではないかと感じます。先ほどの質問の中で、エネルギーがものすごく大事だという話がありました。平成5年には米がなくて大騒ぎをした。ああいうような歴史的な経過を踏まえれば、自給率は何%にしなければだめだということが、そういう交渉の底流に流れていていいのではないかと一国民として考えています。交渉の中でそういうものが必ずありますというのだったら、何%ぐらいということをお答えいただければ幸いかと思います。よろしくお願いします。 (花元JA全中副会長) 今、食料の自給率は、日本の食料政策の中で45%を目指していくということが国の計画であるわけですが、実質的には食料自給率はずっと下がってきています。外国とWTOなりFTAの交渉をするときに、外国の人も日本の自給率がこんなに低いということをまだよく知らない人もいるのです。ですから、国の基本的な食糧をどこまで補充するのかというのは日本国民にとって大事なことですが、ただ、ヨーロッパあたりの先進国を見てみますと、原材料ではなくてもう少し加工のほうで増やしながら自給率を上げていくということも頑張っています。そういう方向も含めて、自給率というのは国民のためにできるだけの手当てはしておく必要があると私どもは考えます。 (高島外務報道官) 大臣、実際に交渉されるときには、例えば目標としての食糧自給率が45%、しかし実際には今40%程度といったことを頭の中に入れて、例えばメキシコとの交渉などに臨まれたのでしょうか。 (川口外務大臣) 直接今のお答えをすれば、答えはイエスです。答えはイエスですが、直接的にこれが絶対に獲得しなければいけない目標であるというふうに表に出ているということではありません。農水省として農業に対する政策の、自給率というのはその重要な一環を成すものですから、そういった政策を反映する形で交渉のポジションを作るという形で間接的に現れてきているということなのです。 ただ、ぜひお考えいただきたいと思うのは、日本が大事だと思う幾つかのことというのはあります。農業の自給率をどうするかということもそうでしょうし、それから、日本はエネルギーを海外に依存していますから、例えばエネルギーについて日本が輸入できなくなるような貿易の仕組みがあってはいけないわけです。いろいろと日本が生存していくために重要だと思うことが幾つかあります。 そういったことを全部確保していくということがいっぺんにできれば一番良いわけですが、常に交渉というのは相手があるわけですから、日本が自分の欲しいことを全部取るというわけにもいきません。そういう中で交渉をしているということなのです。ですから、トレードオフといいますか、こちらが立つようにすればあちらが立たずとか、いろいろな綱引きというものがあります。最終的に、ではどういう主張がほかのものに比べてより大事か、これは本当に抽象的な架空の例ですが、食料の自給率を守ることか、エネルギーの輸入ができることか選択して下さいと言われたら非常に困るわけです。そういう困るような選択肢をしょっちゅう選びながら、政策というのは実際に実行されてきているということなのです。 また、そのときにその判断の基準となるのは、何かをやるときの日本全体への広い意味でのコスト、お金の面だけではなくて広い意味での負担が一体どういうもので、だれがそれを背負うことになるのかということです。片方でそういう全体的な判断があり、それをやることによってどういう新しいことを日本が獲得できるかという判断があり、抽象的に言えばそういうものを常に比べながらやっていくというのが交渉だと思います。 (槙原経団連副会長) 外交交渉において、例えば食料はどうしても40%、エネルギーであれば80%という単純なルールができていればそれに越したことはないと思いますが、実際は今大臣が言われたように、非常に多くの要素をバランスしての話だと思います。 一方、食料の自給率という話になりますと、私は冒頭でも申し上げましたが、もちろん国内でできるものを自給率に結びつけることも大事ですが、安定供給源という考え方も重要と考えています。例えば米国とは輸出規制ということは絶対ないということがはっきりすれば、小麦とか大麦とか大豆とかについて、米国は、日本にとっての安定供給源ということになりまして、自給率とはいえないでしょうけれども、通常の場合には頼れるサプライソースだと考えられます。そういうことを認識しながら交渉を進めていくことが私は必要なのではないかと思います。単に国内のものだけということではなくて、安定供給源という、その外にある一つのものも考えていいのではないかというのが私の意見です。 (参加者) 今ほどの自給論は私も極めて大きな関心を持っていまして、とりわけ大臣のほうからそういうご意見を申されました。そして今、槙原さんからも、安定供給さえあればいいのではないかとおっしゃっていますが、私としては極めて大きな疑問だなと思うところです。ぜひ安定供給だけではなくて、やはり自分たちの国でよりきちんとした自給率を持ってやっていただきたい。 先ほど槙原さんは、一定の作物において数百%の関税率があるとおっしゃられましたが、やはり守るものは守っていかなければならないというような主張をこれからぜひやっていっていただきたいということを私のご意見として申し上げたいと思います。ありがとうございました。 (参加者) 実は、このWTOの交渉において、我が国は農業の多面的機能ということを主張をしておられる。これは政府が一致した考え方でやっておられる。川口大臣が環境大臣であられたときに、京都議定書を決められて環境の問題に非常に切り込まれた。私どもの業界でも、ふん尿処理の問題、環境の問題では非常に大きな制約を課せられました。これは環境のことなので、国民のことなので、それに対して非常な努力を今払っている最中です。 ご存じのように、来年の10月末からは、そういう施設をしていない農場はやめざるをえないということになっています。しかしながら、今、交渉をしていますメキシコは、私も現地に行って見てまいりましたが、全くそのようなことは行われていない。地球環境を崩してまで日本に輸出をしなければならないような国とこういう交渉をしていいのかどうか。そのコストは、先ほど花元副会長もお話になりましたように、生産のコストにかかってくるわけでして、それを含めた意味での価格競争はなかなかできない。生産資材の問題もあるということで、非常に厳しい状況にあるので、今後のメキシコとの交渉については一歩も引かない決意でぜひお願いをしたい。 それと、FTAとWTOをうまくかみ合わせていくのだとおっしゃいましたが、日本がFTAをなかなかやらないでWTOにこだわったのは、やはり経済がブロック化すること、それを壊そうとして第2次世界大戦を起こしたと。そういうことがあったからではないかと思うのですが、大臣の考え方をお聞かせいただきたいと思います。 (川口外務大臣) 日本がずっと多角的な貿易体制にこだわったというのは、我が国の貿易の構造自体がいろいろな国から物を輸入し、かつ日本の物を輸出するマーケットがいろいろな国にあり、360度、アジアもあればアメリカもあればアフリカもあるという体制で日本は貿易をしてきたということだと思います。 それは、戦後の日本の構造が、貿易が、輸出をしていたものについて言えば、大量生産をし、大量生産をすることによって経済の規模の利益を取って、それで安く作っていることにあります。ですから、マーケットは広ければ広いほど良く、ブロック化してしまうと日本にとって困るという背景がずっとあったわけです。戦後のケネディラウンド云々といういろいろなラウンドを経て、マルチのマーケットが全体として広がっていったことは日本にとって非常な利益であったわけです。そういうことから、日本はずっとマルチの体制を維持し続けていくことがメリットだと考えていたということだと思います。 それはまだそういう形で存在をしているわけですが、だんだんにWTOのルールの中でもそういう一定のブロックを作るということがある条件をもとに認められてきていて、そういうことをやる国が出てきます。そうすると先ほど申し上げたメキシコのような不利益を被るということも出てくるわけで、日本もWTOプラスアルファという世界でFTAを志向していったということだと私は考えています。 (参加者) 先ほどから農業の話が多かったので少し外れるのですが、FTAあるいはEPAの枠組みの中で労働力の行き来という問題も一つの争点となってくると思います。特にASEANとの交渉では、介護士あるいは看護師の問題が取り上げられています。現在、外務省の方針として、外国人の就労を目的とした滞在はかなり限定的なものとなっていると思うのですが、一方で、失業率あるいは治安の問題がありますが、これからはやはり少子化といった問題も考えていかなければならない。あと、外国人の労働者を受け入れることでの日本人が得る刺激、あるいは意欲の向上といったプラス面もあると思うのですが、この問題に関して政府あるいは経済界のかたはどのように考えていらっしゃるのかをお聞きしたいと思います。 (槙原経団連副会長) 特に少子、さらに高齢化のほうが問題だと思いますが、今の介護の状況等を考えると、現在フィリピンはEPAという話になりますと介護士あるいは看護師を送り込みたいと言っています。それに対しまして国内ではいろいろと反対もありますが、私はやはりこれは前向きに受け止めて、ただし無秩序に門戸を開くということではなくて、一定の条件のもとに、あるいは一定の資格を付したうえで導入を認めることが必要と考えます。 それから、先々、これも日本の経済がどのように変わるかということにもよりますが、日本の労働力に限界があるということ、それから、将来、日本の教養教育程度の高い国民は、徐々により高度の労働力、あるいは知識集約的な方向へ動くべきだと思います。そういうことを考えると、ある時点では、遠からぬ将来においては、これも一定の条件のもとで、いわゆる労働中心の労働する人を受け入れるということも考える時期が来るのではないかと考えています。 (高島外務報道官) 大臣、この問題は厚生労働省が所管であるとことは分かったうえで、外務省としてどういうお考えをお持ちか。大臣はどうお考えか。いかがでしょうか。 (川口外務大臣) おっしゃったご質問は、全部にかかわる問題点をきちんと押さえていらして、非常にご立派なご質問だと思いました。 20年ぐらい前に、外国人労働者を迎えるのがいいかどうかというかなり真剣な議論が国内でなされていたという記憶があるのですが、延々と20年間、いまだに結論ははっきりした形では出ていません。ただ、その過程で起こってきたのは、現実問題として徐々に外国人の姿が日本の国内で増えてきたということだと思います。日産のゴーン社長、まさに日産の救世主のような方ですし、いろいろなところで外国人労働者の姿があるわけです。 少しずつ日本の社会はそういうことに慣れてきつつあると思いますし、槙原会長がおっしゃったような少子化、高齢化、また、そういった分野での人が必要であるということも現実問題として日本で起こってきているわけです。 私はまだまだ日本国内で議論をしていかないと、はっきりこちらかこちらかというふうにはなかなか決まらないと思います。考え方が真っ二つに分かれていて、なかなか解決が難しいのですが、現実問題としてはだんだんに増えていくという形にあるわけで、また、そういうことになっていくだろうと思います。ですから、おっしゃったようなそれにまつわるさまざまな問題、物の移動だけではなくて文化の移動とか、習慣の違いのぶつかり方とか、学校の教育をどうするかとか、いろいろなことが起こってきますが、そういった具体的なことに解決策を見いだしながら物事が動いていくのかなと私は思っています。 (高島外務報道官) あっという間に時間がたってしまいまして、終了の時間がまいりました。大変申し訳ございませんが、ここでタウンミーティングはお開きということにさせていただきたいと思いますが、最後に壇上にいらっしゃるお三方から一言ずつ印象、感想、もしくは提言、ご発言をいただきたいと思います。 花元さんのほうからいかがでしょうか。 (花元JA全中副会長) いろいろなご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。 FTAというのは10年ぐらいを目安に提携をするということになろうと思いますが、いずれにしてもその国の政治がどういう形であるのか。私どもからいうと、農業の環境がどうなのか。それから、5年、10年先の農業をその国がどういうふうに見ているのか。FTAというのはその国の実情をよく見ながらこれから考えていくということと、もう一つは、国内の意見をできるだけ集約して、一体となってFTAに取り組んでいくという方向を見いだしていったほうがいいのではないか。 私どもJA全中の中にもFTAのこれからの基本方向を立ち上げていくことにしていますので、よろしくご支援をお願い申し上げます。ありがとうございました。 (槙原経団連副会長) それでは、二つだけ申し上げます。一つは、このような機会は非常に私も参考になりましたし、特に農業の代表のかた、政府代表のかたとお話しできるという、こういう機会がこれからますます大事になると考えます。 第2点は、大臣は先ほどUSTR的なものということに対して中長期的課題とおっしゃいましたが、私はこれをぜひもっと早く実現していただいて、やはり外交交渉の場にはなるだけ1人のかたが出ていってまとめることが必要であり、是非早期実現を期待したいと思います。できれば川口大臣にお願いしたいと思います。 (川口外務大臣) 今日はお休みのところ、大勢お集まりいただいてありがとうございました。私が全体を通じてぜひ申し上げたいと思ったのは、これは私の持論でずっと外務省の中でも言ってきていることなのですが、国内を改革をすることができなければ、FTAないしWTOという形で経済を開放していくということはできません。改革することができるということは日本の国力であると思います。 したがいまして、FTAを結んでいくことができるか、あるいはWTOで先進的な提案ができるかというのは、21世紀の日本の国力そのものだと思います。それができなければ、日本の国力というのは21世紀において残念なことにならざるを得ないのではないかというふうに私は危惧しますので、ぜひ改革をしてFTAを、あるいは改革をしてWTOで一歩前進をということをぜひお話をさせていただきたいと思って今日は参りました。ありがとうございました。 (高島外務報道官) 皆様本当にご熱心なご討議をいただきましてありがとうございました。 それでは、これで本日のタウンミーティングを終了させていただきます。本当にありがとうございました。 |
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