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川口外務大臣と語るタウンミーティング (ディスカッション)
(高島外務報道官) さて、これからは皆様のご質問を頂き、また、ご意見を頂きながら、日本の平和のための外交とはどういう姿であるべきかをまず考えてみたいと思います。できれば、まず、平和、軍縮、もちろん広島ですから核の問題などを中心に、ご意見、ご質問を頂きたいと思います。そして、そのあと、話題をもっと広げて、外務省、日本外交、国際政治にかかわる全般的なテーマでお話し合いいただきたいと思います。たくさんのかたがいらっしゃっていますので、ご質問でもご意見でも、お一方2分以内に制限させていただきたいと思います。 平和・軍縮・核問題 (参加者) 東アジアの冷戦という観点で、大臣も90年で冷戦は終わったと言われましたが、広島の原爆の惨禍が起こらないために、一回も東アジアの冷戦がどうのという考えは聞いたことないのですが、率直な感想として、その辺どうなのでしょうか。 (川口外務大臣) まだアジアでは、冷戦がヨーロッパで終わったような形では終わっていないのではないかと私は思っています。それは平たく言ってしまうと、国境がすべてのところできちんと決まっているわけではなく、この前の戦争の名残がたくさん残っているということだと思います。そういう意味で、例えば、安全保障ということを考えたときに、我が国としては、やはり自分の安全保障のために何が必要かを引き続ききちんと考えていく必要があるだろうと思います。我が国に対する脅威がなくなったということではないと私は思っています。 (参加者) ご質問というよりは、川口大臣が広島においででございますので、提案に対してご見解なり、ご意見を頂ければと思っています。 実は私の提案の中身は、広島市に国連のアジア本部を設置されたらどうかということです。間もなく被爆から60年を迎えますが、この被爆惨禍の歴史的史実、この情報発信、さらには核廃絶の訴えという、広島においてのこの58年間の活動は、一定の成果を出してきたと思います。しかし、この60年を節目に21世紀を展望したときに、この運動の抜本的な見直しが必要ではないか、あるいは、世界に通用する平和運動というものを再構築しなければ日本外交としてもまずいのではないかと考えます。 すなわち国際都市として広島の都市機能作りをして、さらに、広島だから情報発信できる、この核廃絶、さらには被爆を人類共通の認識にしたいということになればと考えており、広島の地で国連の本部を1兆円規模のプロジェクトで立ち上げ、それを提供すること、これが唯一の平和外交の日本の顔になるだろうと思いますので、ぜひご検討いただきたいと考えています。 (川口外務大臣) 広島の経験を世界人類の共有の経験にしていくことを行うのが使命だと思っていると先ほど申しました。それをどうやっていけば、うまく、よくそれができるかについての問題意識からの御意見だと思います。その問題意識は私も共有いたします。 広島は、今までとてもいい活動をなさってきていると思いますし、恐らく、単にそういった悲惨な場所であったということだけではなく、その後の活動によって広島の名前を知っている人は世界には非常に多く、子供は別として、知らない人はいないぐらいではないかと思います。 それから、国連のアジア本部を持ってくることですが、先ほど申し上げた問題意識に基づいて、どういうことを広島が今後やっていくかについては、広島市民の皆様、広島県民の皆さんが、これをまず自分たちの問題としてお考えになることだと思いますし、国も発信をしていくことでは引き続き努力をしていきたいと思っています。 他方で国連のことを考えますと、今、日本政府が言っているのは、これは国連もそのように思っていると思うのですが、国際機関の活動が非常に広がってきており、参加国、メンバー国、加盟国の立場から、どのように活動を効率的に国際機関がやってくれるかが一つの別な意味での政策課題なのです。特に日本は、国連の費用の2割弱を負担していますので、国連がほかのことを変えない状況で新しいことをやれば、それは直ちに日本の財政負担になってくるという世界でもあります。 ですから、国連の活動は、安全保障の分野、政治の分野、アフガニスタンでやっているような国づくり、アフリカでの活動など、必要なことにいかに集約して、効率的に、しかし効果が大きく挙がるようにやってくれるかということを各国は思い、国連に対して言っています。そういうことと、そのために国連が、例えば広島にアジア本部を作ることとがどう整合性があるかも一つ考えていかなければいけない課題だろうと思います。しかし、問題意識は共有します。 (天野軍備管理・科学審議官) 天野でございます。よろしくお願いいたします。 まず、大臣のおっしゃった冷戦ということですが、確かにヨーロッパでは、冷戦の象徴である分断されていた東西ドイツが一つの国になったということがあります。それに対して、アジアではまだ、非常に不幸なことですが、南北朝鮮が分断されており、冷戦のマイナスの遺産は解消されていないという点があります。 ただ、冷戦が終わったかどうかという点は別にしましても、私は世界には危険な地域が三つあると思っています。一つは中東、もう一つは南アジア、さらに東アジアの三つです。さらに絞り込めば、東アジア、中東は世界でも緊張のいちばん高い地域です。日本に住んでいますとあまり感じませんが、世界的に見ればそういう地域に我々はいるわけで、その中で、どのようにして一方で平和を追求し、一方で安全を追求していけばいいのかは、本当に我々皆が考えていかなければならない問題だと思います。 次に、国連のアジア本部ということですが、アジア本部というほど壮大な構想ではありませんが、実は90年代半ばに、国連のアジア軍縮センターの支部でもいいから広島に誘致できないかと、私も働きかけたことがあります。アジア軍縮センターは本籍がネパールにあります。支部でもいいからどうだと提案したわけですが、それに対してさまざまな反応がありました。 まだあきらめたわけではありませんが、日本ないし広島に国連のアジア本部やアジア軍縮センターを誘致する、あるいは置くというお気持ちは大変よく分かりますが、実現はなかなか難しいというのが私が90年代に実際に働きかけて得た経験です。 (参加者) 川口外務大臣には、日ごろ、平和外交ということで大変ご努力をしていらっしゃると思います。私はイラクの問題について話させていただきたいと思います。 イラク戦争は、当初は大量無差別破壊兵器がある、それを隠しているのではないかということで戦争に至ったわけですが、日本としても、イラク自らがそれを証明しなければいけないと川口大臣もテレビでおっしゃっていました。ドイツ、フランスなどは、それに対してもっと査察を続けていくべきだと主張したのですが、結局、アメリカは早期に戦争を開始したわけです。 結果的には、いまだに発見されていないわけですね。結局、アメリカの戦争の大義はなかったことは皆さんご承知のとおりだと思います。そして、復興支援で莫大な資金を日本は投下することになり、アメリカから言われるとおりにしているわけです。私は復興資金を出すことは反対ではないのです。当然、日本もそうすべきだと思います。ただ、間違った戦争で、また、アメリカの言いなりになったような形で資金を出すのは、国民が納得しないのではないかと思うのです。 ですから、国際平和協力、平和外交を推進する日本ということでありましたら、アメリカの顔色を気にするだけではなく、言いたいことをアメリカにしっかりと言い、本当のリーダーシップを執っていくなら、それを主張していくのが日本ではないかと思うのです。唯一の被爆国であった日本ですから、人命の重さを日本国民は十分知っているわけです。本当にそれを国際外交の中で推進していけるのが日本ですから、口だけで「平和外交」「平和外交」と言うのではなく、アジアの中で、アメリカとの関係の中で、そういうことの推進をもっともっとリーダーシップを持ってやっていただきたいというのが私の願いですし、ほとんどの国民がそう思っているのではないかと思います。 (参加者) 冒頭、川口大臣の資料館でのご感想の中にあった、「改めて平和を考えさせられた」という言葉は、亡き姉が恐らくこの一言に慰められたのではないかというふうに聞きました。 ついでながら申し上げるのですが、この広島あるいは長崎に、アメリカ大統領をはじめ核保有国の首長が来て、ぜひこの資料館を見学していただきたい。これは私たちの切なる願いであることを知っていただきたいと同時に、そのことが、やはりこの地球上の平和の実現につながっていくのではなかろうかと私は思っております。 それを前置きにいたしまして申し上げるのですが、5年前、インド、パキスタンが核実験をやったとき、反核・平和であの45度の中を私は訴えて回ったわけですが、どこへ行っても跳ね返ってくる質問が、「アメリカに追随した日本。この日本政府に対してあなたはどう思うか。被爆者としてどう思うか」というもので、非常に私は苦慮し、答弁に困ったことも再々ありました。 そういったことからおしなべて考えるのですが、あの経済援助をやりながらも、この日本が多くの世界の国々から本当の意味で信頼されていないのではなかろうかという疑問を持ったわけです。本当に信頼される平和外交というものをもう少し前面に押し出してやっていただきたい、これをお願いしたいと思うのです。 たまたま今年の8月6日、平和記念式典に総理がおいでになって、終了直後、記者団のインタビューに答えられました。広島の被爆者たちの中から、「日本はアメリカに追随した外交をやっているではないか」という意味のことを質問されたのに対して、「アメリカに協力することによって日本の平和が確保できるのだ。そういう意味で大切なのだ」という答弁が跳ね返ったということですが、私はこの記事を読みまして、そういう面もあるだろうが、逆の面もある、不安だということもあると思ったのです。 今朝、テレビで報道された、あのアフガンあるいはイラク戦争の過程の中でアルカイダ、テロ集団が言ったとされる言葉ですが、オーストラリア、イギリスなどの一群の中に入って、日本がテロの目標になっています。それはなぜかと私は思うのですが、いち早くイラク攻撃をアメリカが単独でやると宣言したとき、日本政府がいちばん先に「支持する」と。なぜそんなばかげたことを言うのかと、私は腹立たしさを持ってそれを聞いたのですが、どうでしょうか。本当に平和外交をやるのなら、日本の安全の確保だけではなく、世界の平和確保のための外交を推し進めていただくのが日本の歩むべき道ではないかと私は思います。 (参加者) こういう形のタウンミーティングを設置していただいて、大臣のイニシアティブは素晴らしいと思います。ありがとうございます。 皆さんお話ししている内容と大体似ているのですが、軍縮や平和を考えるとき、アメリカこそが、例えば軍産複合体の状況であったり、核軍縮の問題にしてみても、アメリカが非常に軍備開発をしているわけですね。そのアメリカに対してどういう姿勢で日本の外務省は発言していくのか。対人地雷禁止条約にしても、アメリカが足を引っ張っているようなところもあるかと思うのです。 もちろん単独主義的な動きの中で、国際刑事裁判所に批准していかないという動きもあったりしますが、軍縮・平和という側面だけ見ても、イラクの中で使っている兵器はアメリカが開発し、軍縮の動きを妨げているのではないかという気がするのです。そのアメリカの動きに対して、日本としてどうやって意見を言っていくのか。 もちろん日米同盟などいろいろな側面があるとは思います。しかし、国家主権のそういう壁を超えて軍縮外交を展開していくことを国連外交の中で中心に据えているわけですから、必ずしも日米同盟だけという論理ではなく、本来的な平和・軍縮を日本として進めることこそが恐らく日本の顔が見える道なのだろうと思うのです。そういうアメリカの軍産複合体、あるいは一極主義的な動きにどう意見を述べていくか。あえて言うと「デモクラシーの帝国」という言い方もありますが、その帝国に対して、日本としてどのような姿勢で意見を言っていくのか。その辺のことをお伺いできればと思います。 (川口外務大臣) 何人かの方から出たご質問の中で幾つかの問題点の提起があったと思いますが、それぞれ、今、日本で言われている、あるいは疑問が持たれている問題点をかなり広く含んだご質問ばかりだったと思います。そういう意味でいいご質問を頂いたことについて、ありがとうと申し上げます。 幾つかありますが、まず、イラクです。イラクと大量破壊兵器の懸念ということで、イラクは実際に大量破壊兵器を使った、例えばクルドに対して使ったということが現実としてあるわけです。それから、国連の査察団がクウェートに対するイラクの武力行使が終わったあとにイラクに入っていますが、その査察団に対して、イラクは実際に自分が持っている、あるいは持っていたいろいろな大量破壊兵器について、何をどれぐらい持っていたか、持っているかを自ら申告しています。例えば、VXガス、サリンなど、たくさんありますが、そのうちのどれぐらいを廃棄したかも自分で申告しているわけです。その申告に基づいて、それらが本当になされたかどうかを国連の査察団が査察をしていったわけですが、その中でイラクの言ったとおりではないかもしれないという疑念を国連の査察団が持っていたわけです。この辺は天野審議官が非常に詳しいので、後で必要なら話を追加してもらいます。 しかし、その後、査察団がイラクの中に入れなくなった時期が何年かあり、国連決議に基づいて、イラクは大量破壊兵器を自ら廃棄し、かつ、廃棄した証拠を出さなければいけないとされているのですが、それがなされませんでした。今年初め、あるいは昨年終わりから、国連の安保理の場で度重なる議論が行われ、さらに満場一致で決議が採択され、イラクが最後の機会を与えられて、それを自ら証明しなければいけないことになりました。証明できなければ、あるいは不完全な証明をすれば、さらなる国連決議に対する違反であり、深刻な事態になっていくだろうと国連の決議に書かれているわけです。にもかかわらず、非常に残念なことに、イラクはそれに応じようとしませんでした。それが武力行使に至った背景であることを再度申し上げたいと思います。大量破壊兵器についての調査が、今、戦争が終わったあと行われています。今の時点で大量破壊兵器がなかったという結論を出せる状態ではありません。 もう一つ大きなテーマとして、ご質問の中にずっとあったのは、日本とアメリカの関係をどう考えるかということかと思います。まず、アメリカと日本の関係を考えるとき、日本はアメリカの言いなりではないかという意見が往々にしてあります。言いなりかどうかですが、日本はアメリカに対して、こうあるべきだということはいろいろ言っています。 幾つか例を申し上げたいと思いますが、例えばイラクで武力行使が行われるに至る段階で日本がずっとアメリカに言っていたことは、「これはアメリカとサダム・フセインの戦いではない。国際社会と、大量破壊兵器についての懸念を持たれているイラクとの間の戦いであることをきちんと踏まえて物事を考えるべきである」ということです。そして、「国際社会の協調を大事にしていくことが非常に大切だ」と、ずっと日本はアメリカに対して言ってきています。 戦争が終わったあと、ごく最近も私はフランス、ドイツ、ロシアの外務大臣と電話で話をしましたが、イラクの復興をやっていくためには国際協調が大事だということはヨーロッパにも言いましたし、アメリカにもそのように言っています。時間が非常に大事であること、時間がかかるようなことがあってはイラクの復興を順調に、円滑に進めることができないことを言っているわけです。それはまさに日本が信じるところでありますから、国際協調が重要であることと、国連が大きな役割を持つ形で戦後の復興が行われるのが大事であることをずっと言ってきています。 大事なことは、日本とアメリカの意見が同じである場合、それはベースとしている考え方が同じであるから意見が同じなのであり、アメリカがそう言うから日本がそれに同調しているのではないことを理解していただくことだと思います。民主主義、自由、市場経済、言論の自由、あるいは人権など、いろいろなことについて日本とアメリカは同じような考え方を持っており、考え方が多く似てくることは当然のことながらあります。そういう意味では、ヨーロッパの国とアメリカも考え方は非常に似ているということだと思います。 ですから、日本がアメリカと同じような意見を持ったときに、それはアメリカがそうだから日本が同調していると考えるのは間違いであって、日本はそもそもそういう考え方をしている国で、そうでなければアメリカと同盟関係は持てないということだと思います。日本の安全を守るという意味で非常に大事な国は、もちろんアメリカであり、アメリカは日本が安全保障の面で条約を持っている世界で唯一の同盟国であります。 それから、テロの話がありました。これが本物かどうかは問題がはっきりしていませんが、日本を名指しにしたテロの脅迫があります。それは新聞にも出ているとおりですが、先ほど申しましたように、今、世界が直面している新しい脅威は、どこかの政府、どこかの国によるということではなく、テロリストの脅威です。テロに対して敢然と立ち向かわなければいけないことは、皆さんも同じようにお考えではないかと思います。テロに屈するようなことがあっては、ますますテロリストが跳梁跋扈するのを許すことになると思います。 イラクで今起こっていることは、そういったテロリズムに対する世界全体の戦いであると思います。先ほど、ヨーロッパの外務大臣と電話で話をしたと言いましたが、そのときにヨーロッパの外務大臣も言っていたことは、「世界は今みんな同じ船に乗っている。このイラクでの復興という戦いに世界の国々が、国際社会が勝つことだ。そしてイラクをきちんと平和で繁栄する国にすることができなければ世界は負ける」ということで、私も同じことを言ったわけです。それは、武力行使に入る前にどのような立場を取っていたかとは無関係に、もしイラクの復興がうまくいかなければ、フランス、ドイツ、ロシア、日本もアメリカも含めた国際社会が、全部テロリズムに対して敗北をしたことになるという意味で、今、戦いを続けている中に当然日本もいなければいけませんし、それが日本が行っているさまざまなイラク復興に対する支援の一環であると考えています。 ちょっと戻りますが、アメリカに日本がどのような意見を言っているか。例えば、国際刑事裁判所という新しくできた枠組みがありますが、これに対しても、日本はこれが非常に大事だと考えて、これを作るのに積極的な役割を果たしてきています。アメリカはこれに入ることはしないと言っていますが、日本が今入っていないのはアメリカが入らないからではなく、これに入ってやっていくための国内的な法制がまだ十分できていないからでして、こういった面についても、今後、引き続き取り組んでいきたいと思っています。 (天野軍備管理・科学審議官) それでは、少しだけ補足させていただきます。 日本はアメリカに追随しているのではないかというご質問がありましたが、私もいろいろなところでお話ししますと、そういうご質問やご意見をよく伺います。 今年の決議案(核軍縮決議)につきましても、大臣から146か国の賛成がありましたと申し上げました。ただ、2か国、反対がありました。それはどこか。1か国はインドです。インドはNPTに反対していますから、NPTの普遍化、すべての国がNPTに入ってくれという日本の決議案を受け入れません。もう一つ反対した国はアメリカです。アメリカはCTBTの早期発効を主張している日本の立場に同調できないということで反対したわけです。ただ、アメリカは同時に、「CTBTの早期発効には反対だが、日本が言っていることはよく分かる。全体の趣旨には賛成する。そこのところはきちんと会場でも言う」と言ってくれました。 これを一言で言いますと、同盟国との間、日本とアメリカとの間で意見が違うことはありますがそれはきちんと言いつつ、反対のものは反対と言っています。ただ、全体について多くのことで合意できることは合意するということです。私はこれがまさに健全な同盟国の関係であると思います。 ちなみに、この決議をめぐる現在の状況で申しますと、10年前は非常に厳しい状況でしたが、日本が核兵器を廃絶しようという真剣な気持ちを持っていることは、次第に各国が分かってくれまして、今はアメリカのCTBTの問題がありますが、中国とアメリカを除いて英仏ロの核兵器国は賛成してくれています。長い時間をかけて、日本の真意、広島・長崎の方々の気持ちが世界に伝わったものと私は思っております。 外務省・外交政策全般 (高島外務報道官) どうもありがとうございました。 先ほど来、イラクの問題で、単に平和、軍縮、平和の定着など、それに限らず幅の広いご質問やご意見を伺っておりますが、今からは、外務省、日本外交にかかわるいかなる問題でもけっこうです。ご質問やご意見がおありの方、ぜひこの機会に川口外務大臣にそのお考えをお伝えいただけたらと思いますので、お手をお挙げいただけますでしょうか。 (参加者) 広島は被爆者への福祉に多大の税金を当てております。私は被爆しておりません。生活手当、医療費等、かなりの出費、税金の支出をこちらに当てていると思っているのですが、長崎、広島県を除いて、他都市にない負荷を広島は担っていると思います。 先ほどから、平和について広島が貢献していることについてお話がたくさん出ておりますが、今、広島市の財政は非常に危機的なところにきております。こういったことについて、非常に今日は微細なこととお受け止めの方もたくさんあるかと思いますし、北方領土の問題等についても私は非常に気持ちは持っておりますが、今、被爆手帳を世界各国から求める声がどんどん挙がってきております。こういったことについて、国として広島の負荷を担っていただきたいとお願いしたいと思い、勇気を出してここに意見を述べさせていただきました。よろしくお願いいたします。 (川口外務大臣) 具体的なお話なのですが、実は被爆者の支援、特に在外の被爆者との関係ではいろいろ問題があり、こういうことをしてほしいという要望をたくさん頂いています。できるだけ対応したいと思っていますけれども、具体的に何をするかは、残念ながら厚生労働省が担当しており、私が詳しく申し上げるところまで詳しい内容は把握していません。 幾つかのことについて申し上げられるのは、例えば、最近では韓国の在外被爆者の方からの訴訟の問題があり、日本政府は敗訴したのですが、日本政府としては人道上の立場から上告はしていません。その在外の方が被爆者であるという認定を得た場合は、認定自体は日本の国の中でやっていただかなければいけないのですが、日本の外で引き続きそういった被爆者の手当の支給が行われるということを今やっております。 あと、いろいろ細かい支援をやっておりますが、その内容についてはここで私が丁寧に申し上げるほど自分の仕事として把握しておりません。もし何か具体的にさらにありましたらお聞きいただければ、厚生労働省の担当のところにお話をつながせていただきたいと思います。 (参加者) ちょっと話が戻るのですが、先ほどどなたかがおっしゃっていた、アメリカの大統領や、核兵器を持っている各国の首脳にぜひ広島を訪れてもらう、就任と同時に必ず核兵器保有国の首脳は平和都市広島を訪れ、資料館を見学して目の当たりにしていただきたいという提案があったのですが、そのことについて実現できないものかどうか具体的にお伺いしたいです。 というのは、私はやはり戦争やテロリズムは絶対悪だという立場なのです。いろいろな大義名分などがあると思うのですが、平和資料館などを通るたびに、やはりどうしても、どんな暴力も戦争もテロリズムも大義名分などないと思ってしまうのです。そういうことは、やはり実際見てもらわなければ分からないことだと思うし、世界の偉い人たち、核兵器を持っている立場の人たちに来てもらって見てもらえれば、また何かの選択肢が彼らにも増えると思います。 また、先ほど被爆者の支援問題がありましたが、多分、結局お金があれば解決することがたくさんあると思うのですが、例えばそういう核兵器保有国の首脳たちに来てもらえれば、世界中の核で被害を受けている方々を支援する基金をお金を出し合って設立しようではないかという提案も起きてくる可能性もあるのではないかと思います。世界の核兵器を持っている国の偉い人を呼んでいただけるようなことは実現できないものかどうか、可能性をお願いします。 (川口外務大臣) 私も資料館を今日見せていただいて、前にも2回ほど来ていますが、さらに広くなった資料館を拝見して、一人でも多くの人にここを訪れてほしいと思いました。今も思っています。ですから、首脳も、ほかの仕事をしている人たちも、世界中の多くの人が一人でも多く見てほしいと思っています。 具体的にどれぐらい世界の政府の主要なポジションにいる人がここを訪れているかについては私は把握していませんが、何人かの人が訪れていると思いますし、例えば、お辞めになったあと、大統領が訪れたこともあったという記憶があります。今、第一線の大統領や首相といった方々が日本を訪れることも非常に多いわけですが、この間ブッシュ大統領が来ましたが日本に滞在したのは数時間でした。しかも、詰まっている日程の中で最小限の時間日本にいてというケースが非常に多いので、現実的にどれぐらい東京あるいは大阪から足を伸ばして見てくださる時間があるかというと、実際にはなかなか難しいだろうと思います。 しかし、私としても、そういうことをできるだけ大勢の人に知ってほしいと思っていますし、前に確かそういうご要望を広島市から頂いたこともありまして、それについては、そのご要望はお届けはしてあります。 (天野軍備管理・科学審議官) 昨年は準備が間に合わなくて実現できませんでしたが、国連の場で秋に原爆展を何回か開催してきておりまして、外務省もその点についてお手伝いさせていただいております。大統領、首脳ほどレベルは高くありませんが、若い人たち、約500人近くに広島・長崎に来ていただいています。そういう方のかなりが軍縮の分野にとどまりまして、今のジュネーブの軍縮代表部で、10人はいかないかと思いますが、かなりの方が大使になっておられます。 また、その大使よりも若いレベルの人にも、「広島・長崎を訪問したことがある。そのときに自分はこの軍縮の分野で働こうという決心をしたのだ」と話をしてくれる方がいます。そういう意味で、ご要望の首脳レベルももちろん訪れていますが、全員が首脳レベルということはないけれども、広島・長崎の資料館、広島・長崎のご経験から多くのことを学び、軍縮に尽くしている方が世界中にいることをご報告したいと思います。 (参加者) 私たちは学校で、独立国家の要素として3要素あり、領土と国民と主権の三つが整って初めて独立国家といわれると学んだと思います。果たして、領土におきましては、竹島問題にしても尖閣列島にしても、ことごとく中国、韓国等にやられております。また、主権におきましても、戊辰戦争以後、護国の英霊として亡くなられた方々をお祀りしております靖国神社にわが総理大臣が正式に参拝できないという問題。これも中国や韓国が横やりを入れてお参りできません。 国民においてはどうか。これはまさしく、今、北朝鮮に拉致されている、横田めぐみさんを筆頭にした大きな問題がございます。昨年度、やっと北朝鮮は拉致を認めましたが、長い間それを否認しました。特に横田めぐみさんは、小学4年生までこの広島の地におられました。そういう関係で、我々も拉致の問題には非常に関心を持っています。この拉致問題は、やはり外務省が中心となって日本の主権というものを確固たるものに守ると言いましょうか、そのためには早急に解決し、被害者の家族のかたたちが一日も早く安寧の日を迎えられることを願っております。 そこで、大臣として拉致問題を今後どのように解決されるか、その点を一言お願いしたいと思います。 (川口外務大臣) 拉致問題を一日も早く解決したいということについては、私も全く同じように考えています。それで、どのように解決するつもりかということですが、まず、日朝平壌宣言というものがあり、昨年、小泉総理が金正日総書記との間で署名をしたものです。ここに、国民の安全に関する問題、それ以外の問題もありますが、これを解決して日本と北朝鮮とは国交の正常化をする、要するに、それを解決しない限りは国交正常化をしない、国交正常化をしなければ日本は北朝鮮に経済協力をしないという趣旨のことが書かれているわけです。日本はこの平壌宣言にのっとって問題を解決していくことが基本です。 今、5人の拉致被害者は日本にいますが、その方々のご家族が北朝鮮に残ったままになっているわけで、我々は、この北朝鮮に残っている家族の人たちを一日も早く日本に帰すべきであると北朝鮮に言っています。もう一つ、拉致をされた、日本に帰っていない被害者の人たちについて、どういうことになっているのかの事実関係、真相をはっきりすべきであるということ、この二つを今、北朝鮮に対して要求しています。 8月終わりに6者会合が開かれました。それで、2回目の会談を開きたいと関係国は思っています。8月末の会合で日本は拉致の問題を提起し、そのとき、北朝鮮と日本との間では、この問題については日朝間で議論をしていきましょうということになっています。日本は北京にある大使館を通じて日朝間の協議を開くことを言っていますが、残念なことに、北朝鮮からはまだこれについての反応が来ていません。しかし、日本は繰り返し繰り返しこのことを北朝鮮に対して言っています。 さらに、拉致問題について国際的に関心を持ってもらい、日本のやっていることを支持してもらうことが非常に大事だと考えています。ゆうべも私はハンガリーの外務大臣と会談をしましたが、二国間の問題、イラクの問題、その他いろいろ話をした中で、私はハンガリーの外務大臣にこの拉致問題の話をしまして、ハンガリーとしてこの問題に対して日本の行動を支持してほしいと言っています。向こうからも、この問題の重要性についてはよく分かるし、日本を支持すると言ってもらっています。ハンガリーだけではなく、会う外国の外務大臣、ほかの大臣たちに対しては、まず大体、全部そういうことを言っており、これは私が外務大臣に就任したときからずっとやっています。 また、国連、人権委員会といった場でこの問題について日本が話をし、調査してもらうということで働きかけをさまざまに行っています。できること、考えられることについては、今すべてのことを全力を尽くしてやっていますし、引き続きやっていく考えでいます。 核の問題その他いろいろな問題がありますが、日本の立場は、拉致の問題を含めて包括的に解決する、そして、包括的な解決がない状況では、日本は北朝鮮に対して経済協力などをするということはしない。包括的に解決していきます、平和的に外交的に解決していきますという考え方でおります。「対話と圧力」という言葉を使っていますが、必要に応じて圧力をかけ、対話をし、日本としてできることを全部やっていくという考え方に全く変わりはありません。 (参加者) 1点に絞ってご質問します。 先ほどからの核兵器の廃絶について、1945年8月10日、まだポツダム宣言の受諾をしていない時期でしたが、日本政府はアメリカに、原爆は国際法違反の兵器であるとして、これを使ったことに抗議をしました。それ以降、戦後、日本政府は、先ほどもありましたが、究極的廃絶の立場を取られてきています。しかし、日本の最高裁判決でも明らかなように、核兵器は国際法違反の兵器であり、あるいは国際司法裁判所の勧告的意見においても、原則的に核兵器は国際法違反というものが出されています。 今日、外務大臣は資料館をごらんいただいたということですが、戦後58年たっている今日、いまだに広島では58年前の核兵器によって多くの被爆者が命を奪われていっています。58年という半世紀を超えた今日、なお1発の原爆によって命を奪われている現実。こういう点から、政府は究極的廃絶ではなく、国際法違反の核兵器は直ちに廃絶するという立場を貫いていただけないかという点について質問します。 (川口外務大臣) 核兵器と国際法の関係ですが、今おっしゃったようなことを戦前、日本政府が言ったということが実際にあったと私も承知をしています。核兵器と国際法との関係についてはさまざまな意見があるというのが私の理解ですが、日本政府としては、大事なことは究極的な核兵器を廃絶していくことのために国際社会が一致をしてその方向に進んでいくように努力をすることだと思っています。 現実社会、現在の国際政治の現実は、現在、究極的な廃絶をできるような状況にあるかといえば、残念ながらそうではありません。核兵器を持っている国は、NPTで核兵器国として位置づけられている国も、あるいは、そうでない国でも核兵器を持っていることを強く示唆している国もあるわけです。そういった現実の状況で、我が国として、我が国の安全保障を考えたときに、核の抑止のもとにあることを全く今の時点でなくしてしまうことができるかという課題もあるかと思いますが、いずれにしても、重要なことは、そういった究極的な目的に向かって少しでも前に進んでいくことであるというのが私たちが今考えていることです。 (天野軍備管理・科学審議官) 先ほどちょっと申し忘れたのですが、確かに94年には究極的核廃絶決議案ということで出しました。これが我々の意図に反してえらく評判が悪く、究極的とはいつまでもやらないことではないかというご批判も頂きました。ただ、この究極的廃絶とは、第1回の国連の軍縮特別総会、NPT、CTBTなどで使われている言葉ですので、その国際的な用語を使ったわけで、いつまでたってもやらない、いつかやればいいのだという趣旨では毛頭ございません。 2000年のNPT(核不拡散条約)の運用検討会議におきましては、核兵器を廃絶するための明確な約束が合意されましたので、2000年からは、私どもは「核兵器の全面廃絶に至る道程」と決議案のタイトルと内容を変えて提案しています。核兵器使用の国際法上の違法性、合法性についてはさまざまな意見があり、また大変多くの著書なども書かれていますが、大臣が申し上げましたとおり、大事なことは核の廃絶を目指して実現可能な措置を一つ一つ積み上げていくことであると考えています。 (参加者) 広島に落とされた原子爆弾が非人道兵器かどうかというのが、先年、ハーグの国際司法裁判所でしたかで審議されたことを覚えておりますが、そのときに、広島、長崎の首長、それから外務次官が出席されて、「あれは明らかに非人道兵器だ」ということを広島、長崎の首長がおっしゃるにもかかわらず、外務省から派遣された次官は、「あれは人道的兵器だ」とおっしゃっていた。この辺をどういうふうにお考えなのか。 それともう一つ、北方領土の問題ですが、明治時代に戊辰戦争で五稜郭に立てこもった榎本武揚が、戦争が終わって新政府のメンバーの一人として北海道に、今の北海道長官とでもいうのでしょうか、そういう役職を与えられて、そのとき、シベリアを単独でソリでモスクワへ行き、何回も足を運んで、千島列島の最北端の占守(シュムシュ)島から南が日本領土であるということを平和的に締結して、それがずっと続いてきたわけです。これは国際的に認められたことですが、それがどうして歯舞、色丹なのか、うそも100回繰り返せば本当になるというような、そういうペテン師が使うようなことを日本の外交官が使ってはいけない。もっとはっきりして、あれは宣戦布告もきちんとなされずに、日本大使に伝えた後ソビエト政府が電話線を切ってしまった、そして、サハリンと満州から攻め込んできたという内情も聞いております。 それともう一つは、こういうことを踏まえて、日本の外交の基本的なプリンシプルといいますか、哲学といいますか、そういうものをはっきりさせていただきたいと思います。それからきちんとした外交をされないと、軍備がないときに軍備に代わるものは外交しかないのです。お願いします。 (川口外務大臣) ご質問が三つぐらいあったかと思います。北方領土のお話ですが、我が国の北方領土についての考え方というのは、北方領土4島ですね、4島は我が国の歴史的に固有の領土であるということです。4島は我が国固有の領土である。したがって、我が国が今ロシアに言っていますことは、4島の帰属、どこに属するか、帰属の問題を解決して、そして我が国はその後ロシアと平和条約を締結するということです。それはもう全く変わっていないということです。 では、今、それをどうやって解決しようとしているのかということですが、先般、小泉総理がロシアに、今年の1月だったかと思いますが、行かれたときに、ロシアとの間で行動計画ということの合意をしています。この行動計画には六つの柱があるのですが、政治対話の深化、平和条約の問題、経済の問題、国際場裏(国際舞台における協力の話)、あるいは安全保障・防衛の話、文化交流の話と六つあるわけですが、これに従って日露間を今後やっていきましょうということです。そういう日露間の関係を、前向きな、肯定的な関係にする中で、平和条約の問題、領土の問題ですね、これを解決していきましょうということを言いました。それが今の我が国の方針です。 私は、ロシアのイワノフ外務大臣とはいろいろな場でよくお会いし、よくお話ししているのですが、先般、イラクの問題で電話をしてお話ししたとき、来年、どこになるか分かりませんが、「ぜひロシアに来てほしい」と先方からお話がありましたので、私も「ぜひ行きたい。そのときにその平和条約の話をじっくりといたしましょう」ということを言っております。そういう努力を重ねていきたいと思っています。 それから、我が国の外交の基本的な考え方ということですが、我が国の外交の目的というのは、当然のことながら日本の国の平和を確保するということと、繁栄をしていくということの二つです。では、それをするために何をしたらいいのかということで言いますと、日本は島国であり、外国に資源その他多くを依存している国ですから、国際社会が平和で安定して繁栄している状態でなければいけないと考えています。 今、日本が、先ほど来お話しした平和の定着にしても、今のお話のテーマになっている軍備管理や軍縮、あるいはその他の多くの日本の外交の課題にしても、みんなそのために何が必要か、何をすべきかということを考えてやっていて、これが日本の基本的な外交の考え方であるわけです。日本が自らの安全保障をどのように確保するかということで言えば、そういった外交力、日米安全保障条約、そして、日本が持っている適切な防衛力を総合して日本の安全を確保していくという考え方でおります。 それから、先ほどと同じ、国際法との関係についてのご質問がありましたが、過去、だれが何を言ったかということについては、私は今の時点ではっきり把握をしているわけではありませんので、そういう事実関係についてはちょっとよく分からないと申し上げるしかないと思います。 (高島) そうですか。先ほどご質問がありました、国際司法裁判所における核兵器の人道上の問題について、当時の外務次官がどのような発言をしたのかということは、私も申し訳ございません、つまびらかにいたしておりませんので、帰りまして調べたいと思います。お許しください。
(川口外務大臣) 土曜日の午後の、しかも3連休の初日の日に、これだけ大勢の方にお集まりいただいて、非常に率直に思っていらっしゃることをお聞かせいただき、また、私どもが意見をお話しする機会を頂いたことについては大変にありがたいと思っています。 中で申しましたように、私は、広島・長崎での体験、経験を世界の共有の経験としていくことが日本の使命だと思っていまして、これは猪口大使のジュネーブの軍縮の会議、あるいは先ほど申し上げたCTBTの会議、あるいはほかの場で、そういうことについては自分のできる限りのことを今までもしてきたつもりです。また、ここにいる天野審議官もいかにプロであるかがお分かりいただけたと思いますが、外務省はそういったプロを集めて、この分野で引き続き取り組みを頑張っていきたいと思います。ぜひ率直なご意見を引き続き頂きたいと思いますし、また、ご支援も頂ければと思っております。今日はありがとうございました。 |
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