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外務省タウンミーティング第4回会合
川口外務大臣と語るタウンミーティング
(平成14年11月30日、於:名古屋 名古屋観光ホテル 那古東中の間)
「WTO新ラウンド
~グローバリゼーションの世界における貿易問題~」
(ディスカッション)




はじめに

【高島外務報道官】

 さて、それでは会場の皆さまと、川口外務大臣、そして、コメンテーターの方々との対話を、これから始めさせていただきたいと思います。
 時間が大変限られておりますので、このようにさせていただきたいと思います。事前に、応募をしていただいたときに、それぞれの方がどんなことに関心をお持ちかということを書いていただきました。
 グラフで出しましたように、WTOですとか、国際経済一般に関心をお持ちだった方が28%、全体で312件の回答をいただきましたが、そのうちの28%がWTO・国際経済関係、それから、24%がアジア諸国との経済関係、さらに、外務省・外交政策全般に関するご質問、ご意見が20%ということになりました。ですから、テーマをこの3つにまとめて、一つひとつについてご発言をいただき、これに対する回答を、大臣始め、パネリストの方からいただくということにしたいと思います。
 時間が大変限られておりますので、恐縮ですが、ご発言は1回2分ということにさせていただきます。

WTO・国際経済一般

【高島外務報道官】

 まず、WTO・国際経済一般でご質問をくださった方がいらっしゃいます。

【参加者】

 本日は非常にわかりやすいお話をありがとうございました。
 皆さまご存じのように、今年の夏に、サミットがヨハネスブルグで開かれまして、私が特にその中で注目したのは、貿易と環境の項目でございます。というのは、環境保護がWTOのルール内でしか考慮されないという合意がなされたのですが、その後、環境保護に取り組んでいますNGOの活動によって、その部分が一部修正されました。
 そのことに関しまして、環境においても、開発においても、世界においてリーダーシップを取っていますわが国の一代表として、大臣がどのようにお考えであるか、ぜひご意見をお聞かせください。

【川口外務大臣】

 環境と貿易、それからヨハネスブルグ・サミット、これは非常に良い問題です。ヨハネスブルグ・サミットでは、環境と貿易だけの話ではなくて、もっとより広く、どうやったら発展途上国が成長するか、どうやったら先進国は支援することができるか。環境も、気候温暖化とか、水とか、感染症とか、さまざまなことが話されました。
 私は環境大臣もしていましたけれども、環境と貿易をどうやって組み合わせるかということは本当に難しい問題で、今度のWTOの一つの大きなテーマです。今のところ、それについて、結論は出ていない。これから世界的に話をして、結論を出していく問題です。
 持続可能な開発と言いますけれども、環境を守らなければ、われわれが経済を成長させて、発展していく基盤自体が失われてしまう。これはまったくそういうことだと思います。経済活動をやったら、温暖化ガスを出すCO2が出る。それが行き過ぎると温暖化が進んで、基盤自体が失われてしまう。
 逆に、経済成長しなければ、環境保護をする基盤がなくなってしまう。環境保護にはお金がかかります。炭酸ガスを削減するための技術がいります。この技術というのはやはりお金が必要で、開発をしていくということになります。ですから、経済成長もしなければ、環境保護はできなくなってしまう。両方を同時にやっていくということが今必要で、そのためのルールというのは、いろいろな場で今、議論されています。
 あと一つだけ。貿易というのは、経済成長のための大きな手段です。ですから、貿易をやっていくことは経済成長のために大事で、例えばイルカ。マグロを捕るためにイルカが引っかかってきて、マグロを捕ろうとするとイルカを殺すことになる。環境に悪い影響をもたらすというような問題も、貿易と環境の関係ではあって、それをWTOの場で、これからみんなでうんうん言って議論をしていく、そういうことになります。

【参加者】

 こんにちは。きょうはとても楽しみにして来ました。
 私の家は農家なので、農業の問題に関しては、いつも新聞を眺めながら、どうなっていくのかなということを考えているんですけれども、日本は、さっきも伺ったんですが、食料品の多くを海外からの輸入に頼っているということで、その重要性はよくわかったんですけれども、では、日本の農業をなくすことなく守っていくには、どうしたらいいのか。あと、最近重視されてきている農業が、環境問題に占めている重要性みたいなものの役割を、どう考えていらっしゃるかお聞きしたいと思います。

【川口外務大臣】

 では、まずひと言、最初に。
 先ほど言いましたように、貿易交渉というのは、基本的に自由化をしていく交渉ですから、弱い産業、日本の場合は農業を含みますけれども、が影響を受ける。その結果として、農業に従事している人は、外国から安い農産品が入ってきて、仕事をしていくのが難しくなるという問題があります。
 他方で、私は、農業というのは日本の環境保全、あるいは、地域的に農業に依存をしている地域があるわけですから、その地域が健全に発展していくために、そういった地域の健全な発展を守ることも大事だと思っています。
 それをどうやって両立させるかということですけれども、世界全体として、世界の特色ある農業、あるいは多様な農業、そういうことが生かされるように、そして、自由化の影響が一度にあっという間に来るということではなくて、徐々にその影響が及んでくるようなやり方で、その間に、日本の農業を改善していくことができる、効率性を高めることができる。その政策は農水省がやっているわけですけれども、そういう形で交渉することが大事だと思います。
 ただ、今回の農業の交渉、農業の市場開放について、世界の国々の圧力は非常に大きなものがあります。シドニーの会合に私が出ていて、農業を輸出することによって生計を立てている国も世の中にはあるわけですから、そういう国にとって、これほど多くの人口がある、日本の農業の市場が開放されるということは大事なことであります。これからどんどん日本にはプレッシャーをかけると言って、今、脅かされている最中です。

【村上部長】

 今、大臣がお答えいただいたことに、基本的には尽きるわけでございますけれども、改革を進め、自由化を進めるのがWTOの交渉でございますけれども、日本の農家にとってみれば、これ以上自由化するのかという気持ちが非常に強いだろうと思います。日本のコスト構造、自然条件というものから見ますと、ある一定の保護、措置というのは、WTOで交渉を進めるにしても、必要だということを言っているわけでございます。
 改革を進めながらも、各国のいろいろな農業が存続できるようにしていかなければいけない。そういう意味で、例えば関税の引き下げの方式にしても、一律に下げてしまうのではなくて、各国である程度、品目によって、その重要度に応じて、柔軟に設定ができるような方式とか、国内の保護、助成補助金などについても、そのへんの配慮ができるようなルールにしましょう、削減はするけれどもそういう方式にしましょうということを、具体的には言っているわけです。
 環境との関係では、農業は環境と密接に関係している、文化とも非常に関係している。もちろん食料生産が一番大きな側面ですけれども、それ以外の機能、公益的機能を維持していく、文化を維持することが重要ではないか。そういう中で、WTO交渉だけではなくて、国内政策においても、新基本法の中で言っておりますように、できるだけ価格支持からセーフティネットへ移行し、農家が創意工夫できるような仕組みにもっていくということが、重要ではないかと思っています。

【参加者】

 私たちはWTOの問題について95年から、APECが大阪であったときからやっているんですが、きょうのお話を聞いていて、いろいろ言いたいことはあるんですが、一つ大きなテーマとして、このルールですね。私たちは、貿易はしなければいけないし、貿易ルールも必要だと思っています。問題は、そのルールが公平なものでなければいけないと。先ほど、田中さんが、設定について、アメリカがいろいろなことをやっている。それは確かに問題で、私も問題だと思っています。ただ、同じ轍を日本が踏んでしまうということが、本当にいいのかなと。
 そもそも、WTO、あるいは貿易ルールというものは、みんなにとって公平だから、ガットのときもそうですが、前文にちゃんと書いてあって、完全雇用を達成するとか、全体の利益を求めるために、そもそもあったはずなんですね。もちろん、個別の戦略が個々にあるとは思いますが、そこのあたりで、基本的なコンセンサスが必要ではないかと思います。
 私たちがやっているのは、環境問題と貧困問題がありますから、この観点で一つの例を挙げますと、確かに、途上国で輸出を促進して、国を建てるという形はあると思います。問題は、それによって、国の中でアグリビジネスをやっているセクターと、自給的な農業をやっている人たちもいるわけですね。そこの利益はきちっとわけていかないと、結局、アグリビジネスをやっている人たちの輸出を促進してしまって、実は、それが貧困を増やしてしまっているケースも考えられると思うんですね。
 もう一つ、投資のルールについてもあったんですけれども、時間が来ましたので、よろしくお願いします。

【参加者】

 先ほど川口大臣が、WTOの協議などは、基本的に障壁をなくしていく、自由な貿易にしていくことを目指しているとおっしゃっていて、こういう考え方は、ちょっとまずいんじゃないかなというふうに思いまして、発言したいと思いました。
 先ほども、9月11日、昨年の9.11の事件について、これは貧困が原因であると、ひと言でおっしゃっていましたけれども、しかし、こういう貧困を生みだしてきたのは誰なのか。WTOでいろいろ協議しながら、自由貿易を作っていくというふうにしてきた、企業とか、政府とか、そういう人たちではないのかと。
 先ほど、NGOの方がおっしゃっていましたけども、いろいろな国で、農業とか、自給的に生活している人たちがいる中で、アグリビジネスというのが踏み込んでいって、生活をぶち壊してきたのがWTOなどのシステムではないのかと。
 そういうものに対して、反撃をああいう形で行ったのがイスラムの人たちであったわけだし、今も、アメリカとともに、こういう対テロ戦争という名において、日本がイラクへの攻撃に荷担しようとしていくことを、僕は絶対、日本の学生として許すことはできないと思いますので、ぜひ意見を聞かせてください。

【川口外務大臣】

 これは両方に関係するんですけれども、貿易の持つ意味は何かということを考えてみたいんですね。自分の国の持っている資源、あるいは自分の国の持っている技術、それだけで一つの国が自給自足的にやっていけるだろうか。もしそうだとしたら、日本はほとんど成り立たない国ですね。エネルギーはほとんどない。99.99%の石油は、海外からきている。その石油を買うために、日本は輸出をしなければいけない。それぞれの国が成立をしていくために貿易は必要だと、それが私は、世界の国々が成り立っていくための基本だと思うんですね。
 その貿易を、どうやったらうまく円滑にやっていけるか。これはルールが必要だということなんですよね。輸入障壁を作らない、あるいは輸出を、あるものについてうんと安くして、その国の産業が困るようなこと、これはダンピングですけれども、ということをしない。そういうルールを作っていって、自由で多角的に貿易が広がっていく。これをやろうとしているのが、先ほどお話ししたように、過去のWTO、あるいは過去のラウンドであるということです。
 それをやるときに、こちらの方のお話と関係しますけれども、国内の、さまざまな違う利害があるわけですね。例えば、食品を製造する人と、農業の生産者とは利害が違うかもしれない。例えば、大豆を国内で生産すると非常に高くなるけれども、アメリカから買えば非常に安い。味噌を造るということを考えたときには、海外から安い大豆を買って作ったほうが、お味噌の値段は下がって消費者の利益になる。
 そのときに、大豆を作っている人は困るかもしれない。国内の利害はいろいろあるわけですね。全体として、そういう意味では、何がその国の国益につながるか。経済的な利益につながり、消費者の福祉につながるか。そういうことを考えながら政策というのはやっていくわけですし、そのために今考えられているのは、市場メカニズムでやっていくことがいいだろう、そういう考え方だと思います。
 ですから、いろいろな利害の調整をするというのは非常に難しいけれども、それをして、貿易のメリットを最大限に生かす。これが全世界の国民のメリットであり、全人類のメリットだと私は思っています。

【佐々江局長】

 今、貧困の問題というのは、1950年代、60年代、多くの植民地の国、これはアジアもそうですし、アフリカもそうだったわけですけれども、独立していって、そのとき以来、皆さんご承知のように、先進国と発展途上国の間に、大変大きな南北格差というものがあります。これを背景に、当時、東西の冷戦がありまして、貧困国の間で、東西の冷戦に別れて、大きなイデオロギー、あるいは戦争等が行われた時代が長く続いてきたわけです。アフリカでも大変な紛争がありましたし、アジアでもあったわけです。ところが、こういう東西の冷戦についても、だんだん終結に向かいまして、ご承知のように、90年代の初めごろには、それが一応終わったわけです。
 では、南北はどうだったのかと言いますと、南のほうの国の中で、大変発展してきた国も出てきたわけですね。つまり、特にアジアのアセアンのような国、大変貧しかったんですけれども、まだまだ先進国と比べると格差はあるわけですけれども、発展してきましたし、インドとか、ブラジルのように、あるいは、最近では南アフリカのように、以前は大変困っていた国も、大きく成長してきたということで、南の中でも格差が出てきた。つまり、南南と申しますか、貧しい国の間にも差が出てきて、非常に多様化したということがあるわけです。
 そういう国が、実は以前のガットに、今はWTOでございますけれども、多くの国は参加していなかったわけです。主としてこれは、先進国といつくかの途上国の交渉だったわけですが、世界で多くの独立した途上国がガット、WTOに入ってきて、今や140数カ国になっています。こういう多くの国々が、自分たちにどういう利益があるのか、あるいは、今までのルールはひょっとして、先進国に有利にできているのではないか、あるいは、先進国と同じルールを適用されるべきではないのではないか、途上国は貧しいんだから、違う扱いをしてくれということを言っているわけです。
 これに対して、先進国がどういう答えを出せるのかというのが、一つの非常に大きな問題でございます。先ほど、川口大臣がおっしゃられましたように、例えばエイズの問題は、その一つの例でございますけれども、その他にもいろいろございます。例えば、繊維のような問題であれば、途上国がせっかく発展して、繊維産業が発展し、大いに先進国に輸出をしようとしているときに、先進国側がこれを規制するということになりますと、せっかく輸出によって豊かになろうとしている途上国の努力をくじくということで、そういう問題も含めまして、今度の交渉では、これはドーハ・ラウンド、ドーハ・アジェンダと申しますが、ドーハ開発アジェンダ、つまり、「開発」というのが今度のWTOの交渉の名前の中に入っている。すなわち、今度の貿易交渉というのは、そういう意味で、開発にも焦点が当たっている交渉であると言えると思います。

【團野部会長】

 今、自由貿易に非常に批判的なお話がありましたけれども、56年ごろは、ガットにおいて22カ国ぐらいでこういう打ち合わせをやっていたんだけれども、最近、WTOは144カ国でしょう。そして、今、もっと入りたいという国々が、途上国を中心にして30カ国ぐらいが待っているんですよ。そういう状況であるというのが一つ。
 もう一つは、私どもは研究所だからいろいろな統計資料があるんだけど、15年前に比べまして、先進国と途上国と、どっちが貿易を伸ばしてきたか。途上国が圧倒的に伸びているんですよ。そこのところを、一つ勉強していただきたいと思います。
 ただ、将来のマスタープランもないし、いろいろ体制的な問題があって、どうにもならない貧困にあえいでいる国が、アフリカを中心にしてたくさんあります。この問題についてどう対応するかは、これからの人類としての大きな問題だと思います。ありがとうございました。

【高島外務報道官】

今のは、確かLDCと言ったと思います。国連のカテゴリーで49カ国、世界にあります。この人たちには特別な扱いが本当に必要です。

アジア諸国との経済関係

【高島外務報道官】

 では、次の問題にいきます。アジアとの経済関係についてのご質問をいただいています。

【参加者】

 きょうは、こうしてタウンミーティングに参加できまして、光栄に思っております。ありがとうございます。
 私からの質問ですが、今回の皆さまのお話の中でも、何度か中国のWTO加盟のお話が取り上げられていましたが、それに関して、中国は去年12月に加盟しまして、そのあとを追うかのように、台湾も今年の1月にWTO加盟を果たしました。その前後において、日本の両者に対する貿易、経済的な対応の仕方に変化があるようでしたら、具体的に教えていただきたいなと思います。
 中国と台湾の問題は、すごく複雑な政治的問題を抱えているんですけれども、今、日本は中国と台湾両方とも、文化的な交流は盛んになってきていると思うんです。私の大学でも、たくさんの留学生が両方から来ているんですけれども、経済的な視点から、どういう対応をされているのか、お聞きしたいと思います。お願いします。

【川口外務大臣】

 まず、中国と台湾がWTOに加盟して、日本との間でどういうふうに関係が変わるかということですけれども、中国と台湾というのは、日本のすでに非常に大きな貿易のパートナーです。通商白書の統計ですけれども、ちょっと古いですが2000年で言うと、日本からの輸出で、台湾は第2位、中国は第4位です。日本が輸入するほうで言うと、中国が第2位、台湾が第4位ということになっていて、1位は両方ともアメリカですけれども、両方とも、すでに日本は非常に強い関係を、貿易面で持っているというのが一つです。
 これらの国や地域がWTOに加盟した。その結果として、貿易をやっていくときのルールが同じになる。仮に紛争があったとします。その紛争をどうやって解決をするか。WTOのルールで、今はやっていけばいいということになるわけですね。
 それから、貿易を拡大していくためのさまざまな試みを、WTOのルールで一緒にやることができる。ですから、同じルールでやっていくことによって、台湾、あるいは中国との貿易、ひいては経済関係はますます拡大をする。その基盤ができたということだと思います。

【高島外務報道官】

 アジア諸国との自由貿易協定を、今後どう進めていくかという点はいかがでしょう。

【川口外務大臣】

 その話について、アセアンの国々と強い経済の連携をやっていきましょうということを、小泉総理が、今年の1月にシンガポールで発表をなさいました。アセアンの国というのは、最近、非常に経済的に成長してきている国で、日本と大変に近い、親しい経済関係を持っています。それらの国々と一緒に、日本が相互に、貿易でお互いに利益を与えながら伸びていくことが大事だと。
 先ほど、WTOとFTAのお話をしましたけれども、WTOという144カ国、一緒にルールを作っていきましょうという、それと同時に、アセアンの国、アジアの国というのは、地理的にも非常に近いわけですし、日本として、もっと近い関係を持つことが大事であるわけですね。ですから、それらの国々と、数は小さいですけれども、その国だけでもっと経済的に関係を強くしましょう。これが、小泉総理が提案なさった、経済連携構想です。
 シンガポールは、きょうから発効しました。そして、韓国との間で交渉をする前の段階として、今、産業界、学会、官で、勉強会を今やっていて、できるだけ早く、そういう動きになったらいいと思っています。それから、タイやフィリピンも、日本とそういう交渉をすることに関心を示していまして、話し合いが始まっている、そういう状況にあります。

【田中部長】

 私も先ほど、この話を少ししましたけれども、中国と台湾が加盟しまして、中国と日本との貿易は、さらに自由になるわけであります。ただ、WTOのルールというのは、結果としては、むしろ大国を縛るためのルールでありまして、日本が中国に、入ってくれということを一生懸命後押ししてきたわけですが、それは、中国と日本の貿易を、きちっとルールに基づいてやりたいということでやったわけです。
 アメリカとの関係も同じでありまして、アメリカと競合すると、昔、「ジャパンバッシング」などという言葉がありましたけれども、アメリカから叩かれて、日本が自主規制をして輸出を抑える。自動車の自主規制なんていうのがありました。ああいう措置は、今回の前のウルグアイ・ラウンドで、灰色措置はもうやめようということで、違法にしたわけでありまして、表に出て、みんなに見える形で、ルールの下で貿易をやっていこうということを取り決めたのが、ウルグアイ・ラウンドであります。
 今回のドーハ・ラウンドも同じように、それをさらに進めていこうというわけですから、中国が入って、日本との貿易も、お互いにルールに基づいてやる。バッシングゲームではないといっても、これから日中関係、それから、東アジアとの貿易関係はますます深まっていきますので、昔と同じように、日米関係でさんざん摩擦が起こったのと同じことが、当然起こるんですね。起こったものを、きちっとルールに基づいて、お互いに納得づくで解決していこうではないかというのが、このWTOに中国が加盟した意味でありますので、われわれにとっては、むしろありがたいことだと考えています。そうしないと、中国もアメリカもそうですが、大きな国は核兵器を持っているわけでございますので、そういう国とわれわれが交渉するというのは、なかなかタフなことです。日本は戦後、平和の国家としてここまで生きてきたわけなので、われわれが通商交渉をやるときには、そのぐらいの覚悟で、使える武器はなんでも使う。WTOのルールというのは、その武器であるという意味だと、お考えいただいたらいいと思います。
 もう一つだけ言わせていただきますと、先ほど、アセアンとFTAの話がずいぶんございました。FTAも同じでございまして、今、メキシコと日本は交渉を開始したところでございます。なぜメキシコとやるかというと、大変おもしろいのですが、メキシコはNAFTAという形で、北米の自由貿易地域に入っています。それから、最近になりまして、ヨーロッパと交渉してFTAを結びました。
 そうなりますと、結んでいない大きな貿易相手国は日本でありまして、日本からメキシコへの貿易は、どんどん減ってしまっているわけです。それによって失われたビジネスは、実は何千億円、何万人の雇用という数字が、計算すればできるわけでありまして、その協定がないことによる被害は相当大きいものがあります。
 したがって、われわれはメキシコとの間で、シンガポールと違いまして農産品も当然対象になってきますので、難しいこともありますが、これはぜひやりたい。これをやることが、世界に対して、日本が新しくFTAの道を踏み出したという、大きなシグナルを送ることになると考えていますので、これは是が非でも実現したい。
 今度は、アセアンと中国もやっています。中国とアセアンが先に出ると、まさに、日本とメキシコとの間と同じことが起こります。アセアンと中国の間で、貿易がもっと盛んになっていきます。その場合、日本はどうしてもそこに付いていくように、やはり地域連携をアセアンとやっていかなければいかんとなってきます。米国、欧州も同様です。世界中で大変な競争が始まっているとお考えいただいたらいいのではないかと思います。

【参加者】

 今回のこの話の中で、自由貿易をするということの前提は、あくまでも日本の製品が、競争力があって、他諸国の製品に勝てるという前提だと思うんですけれども、私はアメリカの大学に留学していたことがあるんですけれども、アジア諸国の留学生は、日本が戦後成し遂げた経済成長を目標に、勉強しているわけですね。
 例えば中国でも、ホンダの工場が中国にありますけども、今、6割以上の部品が、中国で作られていて、その部品の品質と言えば、日本以上だという話になっています。そうしますと、自由貿易をすると、果たして本当に日本の製品が、いろいろな国で売れるという、ある程度の目安と言いますか、予想を立てていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思いまして、質問いたしました。

【田中部長】

 大変いい質問でございます。まさに、家電ですとか、自動車も、いよいよ中国で生産が始まる。韓国の自動車も競争力が出てきています。鉄鋼にしてもそうでございます。日本がより高度な、付加価値の高いものに移っていかない限り、負けるのは必然でありまして、最近、大学にもアジアの学生がたくさん来て、一生懸命勉強していると聞きます。よく質問をするのも、アジアの学生だと聞きます。
 きょうは、日本の学生の方々がたくさん質問してくれて、僕はとってもうれしいのですが、みるみる日本との差が縮まってきているというのは明らかであります。それに向けて、われわれはそれと戦える商品を使っていかなければいかんということで、今まで、守られていたセクターから、守られていないセクターへビジネスを移さないといかん。これが産業構造転換の最大の課題であるわけです。
 おもしろい話ですが、IBMという会社は、IBM360というコンピュータをモジュラー方式で作ることでアメリカで成功しました。モジュラー方式は何かというと、パネルであるとか、記憶装置であるとか、キーボードとか、それぞれ別々に開発して、それをインタフェースだけをきちっとデザインしておけば、大変いいコンピュータができたわけです。
 ところが、何が起こったかというと、それぞれの部品を作っている会社が大変うまくいって、IBMからスピンアウトするということで、別々の会社を創ってしまった。その結果として、大成功したIBM360は、IBMの凋落をもたらしたわけです。
 しかし、話はまだ続きまして、その結果として出てきたスピンアウトの会社はシリコンバレーを創ったというのが、アメリカの産業構造の転換だったわけで、今、日本で経済産業省が中心になって、産業再生と言ってやっておりますのは、そういう大きな企業からスピンアウトした人が、新しい会社を作れる環境、それに対する金融支援、いろいろな税制上の恩典。こういったものを整備して、みんなに新しいものを作ってもらう。こういう世界、社会を作りたいというのが、われわれの最大の狙いであります。
 まだ、われわれは諦めているつもりではありません。金融関係で不良債権問題は、苦しいものがあります。日本経済は大変苦しいと思います。しかしながら、今までやってきたことを考えると、まだまだいけるし、いけるものがある。液晶にしても、いろいろなデバイス関係にしても、バイオにしても、それから、最近本当にうれしいニュースですが、ノーベル賞をもらった田中さんにしても、こういう部分に技術はあるわけでありますので、まだまだ競争できる製品は十分ある。
 私が知っていれば自分でビジネスをやりますが、知りませんので、むしろ、役所というのは、ビジネス環境の制度を作って、みんなが自由にやりやすいように、われわれ役人が変なことを言われても、そういうことに関わらず、やれるようなルールを作るというのが、今のやり方だと思っています。

【團野部会長】

 お話があったとおりでありますけれども、日本が東アジアにどれぐらい依存しているかということを考えますと、輸出はNIESと言われる韓国・台湾、アセアン、中国の順です。それから、輸入は中国から一番たくさん入っていて、アセアン、韓国・台湾という順番ですが、貿易の依存度という見方でみると、日本の過去の貢献度でもあったんですけれども、日本の経済、産業は、4割、東アジアに依存しているわけです。
 それから、投資で見ますと、44%というのが2000年の対東アジアの数字なんですね。どういうことかと言うと、WTOルールにどんどん入ってきていただいて、われわれももっと協力をし、支援をすることによりまして、特に中国はそうですけれども、警戒だとか、怖いとか言っていないで、協力することによって、彼らの生活水準が上がって、工業水準が上がって、市場が大きくなったら、その大きな市場の中で、日本の産業も利益を享受する。こういう思想で、まだまだいけるとわれわれは思っています。わが国にはお金は十分にあります。皆さん、抱え込んでいるから動かないだけです。
 それから、技術はまだ十分あります。R&Dという開発のお金を企業はようやく使い始めましたから、まだまだ先は捨てたものではない。ですから、そういうことができるような仕組みを、政府にはぜひ作っていただきたいと考えている次第です。

外務省・外交政策全般

【高島外務報道官】

それでは、3番目の分野に移ります。日本の外交政策一般、また、外務省に対する注文も含めてということにいたしましょう。

【参加者】

 僕が思っていますのは、今の日本政府は、北朝鮮の拉致問題とかありまして、北朝鮮の家族を日本に帰さないならば、食料援助を北朝鮮に行わないであるとか、そういうことを安倍副長官が言っていると思うんですけども、これはとんでもないんじゃないかなと思うんですよね。
 食料援助とかしないならば、北朝鮮の人たちが400万人くらいも餓死するのではないか。そういう報告も出されていると思うんですよ。こういうことを、絶対僕は許せないんじゃないかということで、外務省の人にも言いたいなと思いまして、きょうは来ました。
 日本政府は、過去の朝鮮半島の植民地支配に、反省も謝罪もしていないと。今度は北朝鮮の300万人を、みすみす殺すんですか。これは新たな国家的犯罪ですよ。そういうのは、僕は絶対許しません。

【参加者】

 先日、26年間、長い間北朝鮮におられた方が帰国されました。そのときに、たぶん国民の要望にお応えになったと思うんですけれども、北朝鮮に帰さなかったんですが、それから1カ月経ちました。その間に、政府のほうでは、拉致被害者支援法案の成立に向けて動いているという、いいことがある一方で、日朝国交正常化の交渉のめどが立たないということになっているんですけれども、この1カ月間で、難しいことがいろいろと出てまいりましたが、今後、どのように解決していくのか、対応されていくのかをお聞かせ願いたいんですけれども、よろしくお願いいたします。

【川口外務大臣】

 北朝鮮との国交正常化の交渉が、9月17日に小泉総理が北朝鮮に行って、金正日国防委員長とお話をして、そこから再スタートした訳です。その進展の状況について関心を持っていて頂きまして、大変に有り難いと思っています。
 おっしゃられたように、(拉致問題の解決に関して)あまり進展がないような状況にあるということで、政府としてもこれについては、拉致被害者のお子さんや家族の方が北朝鮮にいらっしゃいますので、この方々に早く日本に帰ってきてほしい、ということで北朝鮮に働きかけていまして、これをできるだけ早く実現させたいと思って、今頑張っているところです。
 北朝鮮との間で、小泉総理が「日朝平壌宣言」に署名をしました。日本としては、この日朝平壌宣言を重視をして交渉をしてきています。北朝鮮についても、同じ姿勢で(交渉を)やってほしいと思っていますし、北朝鮮側もそれを守っていくと言っています。日本としては交渉において二つのことが最優先課題だということを言ってきています。一つは拉致の問題、そしてもう一つは核の問題です。北朝鮮が核兵器、あるいは他の大量破壊兵器を持っているかもしれないという疑いがあって、それを目に見える形で、検証、他の国が検証できる形でなくしてほしい、ということを言っています。この二つについて、そういうことをやらない、すなわち核兵器などを持たない、それから拉致の問題についても解決をしていきますということも、平壌宣言にきちんと書いてあります。従って我々としては、北朝鮮に対して、平壌宣言を守ってほしいということを言っている訳です。
 この拉致被害者のお子さん達、家族の方々が日本に帰ってくるということは非常に重要で、それによって、彼らが御家族として自分たちの将来について自由な意思決定ができる環境に来て、それで自分たちの将来を考えることができる、そのために政府は(御家族の帰国を)要求しているわけです。それから、今、北朝鮮に残っている(御家族の)方々が、安全であるように、帰ってくるまで安全に生活できるようにということも要求をしています。今、北朝鮮との正常化交渉の本会談は今動いていない状況にありますけれども、北京の大使館を経由してとか、あるいは違うルートで、コンタクトを持っていまして、そういうことを続けていって、できるだけ早く、我々の要求が達成するように、あくまで要求していることについては貫くということで考えています。
 それから、もう一つの、今のご質問の食料援助のことですけれども、北朝鮮が様々な事情によって食料の面で非常に困難な状況にある、ということはかなり知られているところでして、これについて、国際機関であるWFPというのがありますけれども、それとか他の色々な国が食料支援をしています。アメリカでも核兵器については強い態度をとっていますけれども、食料援助については、ずっと続けていたということです。日本も過去食料支援をしたという経緯もあります。
 この食料支援をどうするか、これはいろいろな考え方があると思います。今、そちらの学生さんがおっしゃったような、北朝鮮との他の交渉がどうであれ、人道的な立場から食料支援はすべきであるという意見もあると思いますし、それから、むしろそうではなくて、北朝鮮に対してこちらの毅然とした要求をし続ける、それが貫徹するまでは、北朝鮮に対しては、食料支援をしない、してはいけない、という考え方もあります。多分、この会場の中にも両方のご意見があると思います。
 政府としてどういう風に考えるかというのは、基本的に、最終的には、国民の皆様がどう考えるかということによる、ということですけれども、今、日本政府として考えていることというのは、従来日本政府は食料支援については、人道的な立場や、その他の北朝鮮と日本の関係に関連する様々なことを総合的に考えて行った、ということでして、今後食料支援をするかどうかということは、そういうこと、すなわち人道的な立場から食料支援をすることが必要かどうか、それから日本と北朝鮮の間の様々な今ある懸案――拉致の問題とか、核の問題とか――そういったことを総合的に考えて判断をする、というのが今の日本政府の立場でして、今の時点で北朝鮮に対して、食料の支援をするということは考えていない、検討を具体的にはしていない、というのが日本の立場です。
 ですから、これについては、様々な意見があると思いますけれども、日本政府の立場というのは現在そういうことだということです。

(参加者の数名が指名に従わず大声で発言)

【高島外務報道官】

 今、川口大臣から、皆さんの中にも、いろいろなご意見がおありだろうという発言がありました。
 今の学生さんの意見は、北朝鮮で餓死に近いような、つまり、飢餓状態が起きていて、大変に食糧不足で困っている人たちがたくさんいる。したがって、日本は拉致の問題があろうと、核の問題があろうと、今、北朝鮮に対して、食料支援をすべきだというのが、今の学生さんの意見でした。
 逆に、川口大臣の意見は、今、北朝鮮に対して、核をなくしなさい、拉致した5人の家族を、早く日本に送り届けてくださいということを要求する、そのことがまず大事だから、食料支援は今はやらないで、北朝鮮に圧力をかけたほうがいいという、二つの意見があります。
 今、この段階で、北朝鮮に食料支援をすべきだとお考えの方は、お手をお挙げください。(3~4人)
 今は、北朝鮮には食料支援をすべきではないとお考えの方、手を挙げてくださいますか。(多数)
 ありがとうございました。発言された学生諸君に申し上げます。
 いろいろな意見があるということを、あなた方もご存じだと思いますが、あなたの意見がすべてではなくて、いろいろな意見があって、きょうこの会場にいらっしゃる方々は、あなたとは違って、今の段階で食料支援をすべきではないと考えている方のほうが、圧倒的に多い。これも現実なんだということを認めてはいかがでしょうか。
 それでは、もう一つ、外務省と日本の外交について、ご意見をいただいております。

【参加者】

 今朝も新聞に、裏金工作、並びに追加処分というようなことが出ておりましたけれども、今後、大臣の将来の外務省のお考え、理想論を、ここでお聞かせください。よろしくお願いします。

【川口外務大臣】

 外務省の将来の理想像というのは、ひと言でいってしまえば、国民の信頼をいただけるような、力強い先見性のある外交ができる、そういう役所になるという、それに尽きると思っています。
 私は2月に、外務省に外務大臣として来ましたけれども、改革については、いろいろなことをやってきました。そして、その前からも、河野大臣時代からそのあとずっと、田中大臣のときも、改革の手はいくつか打っています。例えば、今、報償費というのが非常に問題になっていますけれども、これについては、1口10万円以上のお金については、副大臣以上が決裁をしていますし、調達をする、例えばものを買う、お客さまが外国から来て夕食会をやる、そういったときの手続きを、今まではそれぞれの部署でやっていたのを、会計課というところで一元化してやることにしました。プール金というのをまさにそれぞれの部署でやっていて、それぞれの部署でプール金を積み上げてきたということにも鑑みて、調達を一元化してそこ(会計課)でやります。全部は申しませんけれども、さまざまな改革を進めてきて、その改革は十分軌道に乗っていると思います。
 昨日した処分というのは、新たに起こった事件ではなくて、昨年11月に、プール金の処分をしましたけれども、そのときには、まだ浅川事件(で進行中の刑事手続)があって、警察に書類を押収されていたのでよく分からなかった部分等々がその後新しく分かったので、それを処分をし直したということで、新しく事件が起こったわけではまったくないということです。
 (改革について)この8月に、外務省は「行動計画」というものを作りましたが、それには何を何月までにやるということが書いてあるんですね。それに則って着々と行動してやっていることについては、今はだいぶ体制を立て直しましたので、きちんと国民の皆さまにも見ていただいて、北朝鮮にしても、イラクにしても、アメリカにしても、やらなければいけないさまざまな外交を前向きにやっていく。ということで、国民の皆さまに、一日も早くそれを現実のものとして理解していただけるように、外務省の職員が一丸となって、同じことを考えているということです。

【参加者】

 提案なんですが、私は愛知県国際交流協会のボランティアと、豊橋国際交流協会のボランティアをやっていまして、仕事はタクシードライバー、浜松でタクシーをやっています。ポルトガル語が少し話せるんですが、そのことについて提案したいんです。
 今、日本人は英語力がすごく上がりましたが、外務省の方はもちろんうまいですけど、第二外国語となると、特別な方以外は皆無に等しいんですよね。知り合いのスイスの女性から聞いたんですけど、普通は英語を使うけど、アメリカ人に対する悪口はドイツ語で話すというわけですね。そういった言葉の力というのは、大臣、やっぱり必要じゃないですか、日本人は。
 スペインでもそうですけど、スペインへ行きまして、ツアコンの方がスペイン語がうまいんですけど、それを黙っていて、最後にスペイン語でベラベラと言いましたら、ちょっとものが届いたということで、やっぱり、言葉を知っているということは、相手に対してあなどられないということは必要なもんですから。
 今、たくさん来ていますね、出稼ぎ労働者が。いろいろな言葉をしゃべる天才なんですよ。そういった方々にご協力していただくということも、考えてもいいんじゃないかと思うんですけど、どうでしょうか。それが一応、提案なんですが。

【参加者】

 提案のときに、詰めていなかったものですから。先ほど、いい話がいっぱい出まして、そういうふうに、だんだん進められていった結果で、今、中国と貿易をしている方に2、3聞き取りをしましたら、まず、一つは、中国で繊維業を、向こうで生産していらっしゃいます。非常にいいふうにいっているんだけども、向こうで得たお金をこっちに持ってくるときに、非常に難しいそうです。それをなんとかいいふうにしていただかないと、中国のために一生懸命お金を出して、向こうはスッと入っていくそうです。それが、一つ問題だと。
 もう一つ、逆に、貿易していて、向こうから一生懸命買っていても、やっぱりメンバーの人なんですけれど、非常に詰めて、詰めて、商談を成立して、先にお金を払ってくれと言われて払ったら全然こなくて、それを、團野さんのような団体で、仲裁するところがないかということをどうしても聞いてきてほしいと言われたものですから、よろしくお願いします。

【参加者】

 先ほどの北朝鮮問題について発言したいんですけども。川口大臣は最初のほうで、全人類のメリットのために貿易云々と言っていたんですけども、北朝鮮の300万人の人が餓死するかもしれない、これをわかっていながらも、経済援助、食料支援はしないと言っていることに、まず、全人類のメリットなどという言葉は、欺瞞性が明らかになっていると思うんですよ。
 もう一つ、拉致問題、核兵器開発問題についてなんですけども、日本政府は、過去、戦前、日本政府が、日本帝国主義がやってきた、北朝鮮や朝鮮半島からの強制連行、数十万人と言われる方の強制連行、これについて一体謝罪をしてきたのか、保障をしてきたのか。まったくしていないじゃないですか。こういったことを、自分の過去のことを棚に上げておいて、北朝鮮の拉致だ、拉致だと、北朝鮮、許すなと、このようなことがあることを、僕は絶対許すことはできないと思います。
 核兵器開発についていえば、では、川口大臣と一緒にいる安倍官房副長官、この人が、過去何をしゃべったか、あなたもたぶん覚えていると思うんですけども、彼はこう言っていました。日本政府が核兵器を持つことも違憲じゃない。核兵器使用も違憲じゃないんだと、こういったことを言っているんですよ。核兵器を使ってもいいんだと、こういったことを言っている、いわゆる、テロリストじゃないですか。
 こんな人が、日本政府の、同じあなたの閣僚にいる。そうしたことも棚上げにして、在日米軍基地にだって、米軍の核兵器がたくさんあり、日本自身も世界で第3位の軍事費を使って、多大な軍事力がある。そういった軍事力で、海外周辺諸国に圧力をかけておきながら、北朝鮮の核兵器開発だ、こんなことを言っているのは、僕は絶対に許すことができないと思います。
戦前と同じファシズムだと思います。戦前は鬼畜米英、これが、北朝鮮許すなと。先ほど、参加者の方でも言っていましたけども、つまり、戦前、非国民だと言ったことが、今は、お前は日本人か、こういったことを言って、ファシズムを日本中にばらまき、あおり立てている日本政府のこういう行為を、僕は絶対に許せない、そう思います。
 中国は核を持っているということを、憎しみを込めて言っていました。しかし、日本はアメリカの同盟国です。世界最大の核兵器の保有国はアメリカです。それを、現に使っているのはアメリカではないですか。91年の湾岸戦争や、99年のユーゴ空爆でも使いました。アフガンでも使われています。これに協力したのは、日本政府じゃないですか。アフガンで何人死んだのか。そのことに答えてください。そして今、アラビア海に派遣している自衛隊を、直ちに、その派遣をやめてください。イラク攻撃に、私は反対です。それらも日本の国益だというならば、私は、それはまったくおかしいと思います。それから、きょう……。

【川口外務大臣】

 お答えする時間がなくなっちゃいますから。答えますから、聞いていてください。
 まず、第二外国語を学ぶ。これは、私は大賛成です。ヨーロッパの人たちが何カ国語も話すことができるということを考えたときに、条件さえ、あるいは環境さえよければ、日本人だってそういうことができるようになるはずで、一つは教え方、そして、必要性ですね。そういうことがあると思いますけれども、やる気があって、それに適性を持っている人たち、その人たちが学ぶようにできることは大事だと、私は思っています。今、文部科学省も、小学校のときから総合的な学習の時間ということで始めていますので、非常にいいことだと思います。
 それから、繊維のお話については、あとで田中さんのほうからお答えいただいたほうがいいと思います。
 北朝鮮の過去に対する、過去の謝罪の話。これも非常に大事なことで、日朝平壌宣言をぜひ読んでいただきたいと思うんですけど、そこで、過去の問題について、小泉総理はきちんとお詫びをしています。それは平壌宣言に書いてあります。その上で、北朝鮮に対して、日本としてどれぐらいの経済協力をするかということについては、それも日朝平壌宣言に書いてありますけれども、今後、正常化交渉の中で話をしていきましょうということになっています。わが国は、この平壌宣言をきちんと守ってやっていくつもりですから、お詫びというのは、あの文言を読んでいただければ書いてありますし、経済協力をきちんとやっていくということで、それは、今後の話ということになります。
 それから、核三原則についておっしゃった方がいらっしゃいましたけど、わが国としては、核については三つの原則があるわけで、それをきちんと守っていきます。これは国是と言っていいことですから変わらない。安倍副長官がおっしゃったのは、私が言った話ではなくて、安倍さんがおっしゃられたことなので、もしも間違って解釈をしていたら申し訳ないですけれども、私の理解では、憲法をストレートに解釈をすれば、そういうことは、自衛の範囲の中での小さなものという意味だと思いますが、それは不可能ではない。ただし、安倍副長官もおっしゃっていらっしゃいますけれども、日本は核については三原則を守っていきますということで、これは国是で、日本政府として変えるつもりはないです。
 きょうは久しぶりに若い学生さんが、おとなしい方が多い中で、非常に活力のある学生さんがいて、とてもうれしく思っています。

【佐々江局長】

 中国のお話でしたか。つい、今の学生さんの迫力を、じっと受け止めておりましたが。
 今の(中国の送金の)問題は、私ども、よく聞いております。多くの企業の方々が現地に進出して、いろいろな問題があります。その中の一つに、今おっしゃられたように、せっかく現地に行って、工場を建ててやっているのに、利益がそのまま日本に持ってこられない。これは、送金の規制の問題でございます。
 実は、この問題は、中国政府に提起をしております。また、今やっておりますWTOの交渉の中で、サービスに関する交渉というのがあります。その中で、金融面での交渉がございます。サービスの交渉というのは、お互いにリクエストを出し合って、それがどこまで受け入れられるか。そのような交渉が行われるわけです。
 今、各国がリクエストを出しているところで、中国側からも、日本にリクエストがきておりますし、日本側から中国側にもリクエストしているということで、その中で、今おっしゃられたような、日本のビジネスの方々が現地に行って直面している大きな問題があります。そして、それは、この送金だけの問題ではございません。規則がすぐ変わるとか、朝令暮改でよくわからないとか、いろいろな問題があります。これは、透明性、投資、ビジネス環境の問題でございますけれども、あるいはライセンスの発給が、どうも基準がよくわからないとか、いろいろあります。
 ですから、そういう問題も含めて、われわれはしっかりと中国側とこの問題について交渉して、できる限りご要望に沿うような努力をしたいと思っています。

【田中部長】

 佐々江さんのお答えに尽きているんですが、おっしゃる問題は、WTOでも、私どもが中国に対して、いろいろな機会に言っているのことの一つであります。かつまた、佐々江さんが、例えば中国に言ってこられたと言っておられましたけれども、いろいろな役人のレベルでも、必ずこういう問題があると言ってきていることです。
 個別の解決はなかなか難しいんですけれども、確かに相手が、金を送ったけど商品を送ってこないというときに、相手がいなくなって逃げてしまったらどうやって捕まえるのか。これは、まさに中国の国内法、司法手続きの話なので、そういう司法手続きについても、きちっと方法を明らかにし、誰にでもわかりやすく、警察にもきちっと行けるような格好を作ってくれという要望は、大変われわれもきつく言っています。
 役所にできることは、どちらかと言うと、そういう格好でプレッシャーをかけていくことでありまして、あとは個別の問題が起こったときに、それを、向こうの官憲に対してもどんどん言っていただいて、それでも言うことを聞かない場合、われわれがまた後ろからお手伝いをする。こういうことで、一つひとつ変えていく。
 ただ、中国政府に話をしますと、中国政府そのものは、知的所有権についても大変厳しい態度を取るということは、今までも約束をしていますし、WTOに入るときにも約束しましたので、やっている、やっていると言うんですけど、さっき團野さんからも話がありましたように、地方に行きますと、全部それが下まで行われているかどうか。
 これは残念ながら、加盟後まだ1年経っていないわけでございますので、多少時間がかかることは大いにあるかと思います。ただ、個別のこういう話についても、できるだけ、われわれとしては、やれることはやりたいと考えています。それが役所の仕事だろうと思っています。

【團野部会長】

 日本経団連ではまさにそういうことをご要望していましてね。WTOに中国が加盟するということは、不平等であったり、不公正であったり、困ったりということがなくなるようにしてもらうということでありまして、実は、中国が加盟するときに、たくさん条件が付いたんですね。それを日本語では、「中国経過審査メカニズム」と言うんですが、そういう形で、8年間ぐらいかかって、約束したとおりに実施されているのかというのをフォローしていただく。こういう仕組みを考えていただいているんですね。ですから、すぐにはなかなか解決しないかもしれないけれども、少なくとも、今よりもいい方向に、一つひとつ解決されていくだろうと思います。
 それから、今のようなお話は、ぜひ私どものほうにお寄せいただきましたら、紛争処理に持ち込むという大きな問題にもできるだろうし、もっと個々の問題を集めて、政府といろいろ話をさせていただくことも可能だと思っております。

おわりに

【高島外務報道官】

 実は、このタウンミーティングは、4時で終了するはずでございましたけれども、ディスカッションが大変ヒートアップしましたので、少し延ばしております。  最後に、村上さんも何かご発言がありましたらしていただいた上で、最後に川口大臣から、お礼を兼ねて、まとめの発言をしていただくということでお願いします。

【村上部長】

 最後に機会をいただきまして、ありがとうございます。WTO農業交渉、FTA交渉の中で、日本はどうしても守りになりますけれども、私の個人的感想として、希望として、少しは攻め込む話もしてみたいという気がしております。
 FTAで各国別のことを調べてみますと、多少、日本からも輸出できる農産物、食料品、いろいろあるわけでございまして、そういうところは、皆さんが創意工夫ができて、希望が持てるような方向にも、ぜひ持っていきたいと思っているところでございます。

【川口外務大臣】

 きょうはお休みの日、いろいろご予定がある中をこの会にご出席をいただいて、大変にありがとうございます。そして、さまざまなご意見をいただきました。とても率直で、いいディスカッションを聞かせていただき、こちらも、そのつもりでお答えをいたしたつもりです。
 きょう伺ったさまざまなこと、貿易に関すること、あるいは北朝鮮に関すること、皆さまのさまざまなご意見については、外務省として、あるいは日本政府として、これから政策を実施していくときに、そのご意見を念頭に置いて対応させていただきたいと思います。
 きょう、時間がなくておっしゃれなかったご意見があると思います。そういったことについては、外務省ですと、ホームページでご意見を伺えるようになっていますので、ぜひ、覗いて、ご意見をお書きいただければありがたいと思います。どうもありがとうございました。


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