1.ODA一般
●今回のODA総合戦略会議の第2回目のところでも、すでに国別援助政策についていろいろ話されている、出だしが始まっていると聞いています。使われている額そのものが大きい、小さいというのはすぐに出されているODA白書を見てわかります。小さな国に援助してはいけないとは申しません。ただ、小さな島国、例えば1万人とか1万7000人のオセアニアの太平洋州の小さな島国に関して、一人あたりどのくらいのODAのお金が使われているか、自分なりに計算してみました。そうしたら、一人あたりに換算すると8000~9000円。けれども、ある国では2000年のODA白書を見ると17万円の額が使われています。つまり一人あたり17万円、日本のODAから援助しているということになります。これはどういった基準でそれがされて、また投入額はどういうふうにされているのか。またその国、パラオに対して、また13年、14年といわゆる無償協力で、国際空港の建設が約束されています。そういったことが一国民としても、どういった基準で決められていくのか、その辺をはっきりさせていただきたいと思っております。(参加者)
○非常に基本的なとても重要なご質問を最初からいただいたと思います。9100億円という話をして、本当にそれがどういう基準で、どういう国に行っているのだろうか、何に使われているのだろうかということをきちんと説明しないといけないと思います。
まずいくつかの考え方でやっているのですが、先程申し上げたように、例えば、日本は相手の国が自分で開発を進めようと考えている国を援助する。いくつか留意点を言いましたが、そういうことは基本的な考え方としてベースにあります。そして、その国がまず何について日本の援助をほしいと思っているかを聞くところから始まります。そしてその要請が出てきます。
何が欲しいかということを考えるときに、その国の開発の政策がきちんと行われていることも大事なので、いくつかの国との関係では政策対話ということもやっています。これは政府と政府の間で、例えば環境政策として、その国はどういう政策をとるのがいいのかというような政策対話です。
そういういったことを経て、その国がどういうことについて日本からの援助がほしいかということを言って来ます。言ってきたその要請を受けたあとで、日本としては日本の立場で、その案件がその国の開発に、あるいはその国の必要としていることに本当に役立つかどうかということの精査をします。きちんと検討するわけです。それで、その検討と、その国が日本にとって、どれくらい重要な国なのかということも調べます。
そういったことをやったうえで、ODAの4つの原則というのがあります。ODAの大綱ということで、例えば軍事的な用途で使用してもらっては困るとか、そういうことです。そういうことも踏まえて決めるということです。(川口大臣)
○今までの日本のODAというのは、ご案内のとおり要請主義で、基本的には途上国側からの要請を日本政府が受け入れる。しかし、途上国が現在では150を超えてあるわけですが、その国々がそのような案件形成能力があるかといえば、ないわけですから、当然ながら、日本の商社だったりコンサルだったり、あるいはその他の企業が知恵をつける場合がないわけではなかった。
その結果、1980~1990年代にかけて、右肩上がりに日本のODAの額は急速に増えてきたわけです。しかし急速に増える過程では、いろいろな環境だとか、さまざまな新しい分野に関するニーズがあっても、すべてそれを受け入れることができたわけです。しかし、今回のような状況になりますと、今まで金持ちだった日本が、何と言いますか、大所高所から配ってきたお金を何とか節約しなければいけないといったときに、初めてその要請主義というものがいいのかどうかということになります。数年前から具体的に日本の外交にとって、どういうところから援助を重点的にやったらいいのかという国別の援助の計画をスタートさせて、今度、外務大臣の下にODA総合戦略会議を立ち上げて、もちろんNGOを含めて途上国側とも話し合いを緊密に行うわけですが、日本側が主体的により本格的な計画を作ることになりました。
もう1つだけ申し上げますと、太平洋島嶼諸国の場合には、日本が漁場を確保するための見返りの側面もないわけではありません。(草野教授)
○どういう国を選んでいるのかというのは、基本的には例えば世銀とかDACで、どのくらいその国の開発の段階が低いか、大きいかということを比べて、まず開発ニーズがあるかないか、要するに一人当たりGNPの大きさがどうかというのが1つの大きな基準になっています。それに加えて、今度は、人間の幸せというのは、お金だけではないでしょう、例えば学校に行けるでしょうか、ちゃんと安全に生まれるでしょうか、等々、社会的な主なセクターを考えて、それでもってある種の物差しを作っていこうという考え方があるわけです。加えて、その相手の国との、これまでの歴史的なつながりであったり、関係であったり、地理的な距離であったりというものを考えて、総合的にどういう国に対して、いわばより優先的に援助するか、しないかを決めているというのが、いわゆる2国間の援助の考え方だろうと思っています。
太平洋島嶼国の場合には、もう1つ特殊な事情がありまして、一個一個は非常に小さな国で、もともと経済単位としては成り立つか成り立たないかわからないところですから、今の私が申し上げたようなグローバルなスタンダードは必ずしも当てはまらない特殊な要因もあるということは、ご理解いただければと思います。(西田経済協力局長)
●不況下で、ODAについてはゼネコンとの癒着ですとか、相手国のことを考えていない援助ですとか、いろいろ批判が寄せられていると思うのですが、そうした批判について外務省の方はどのように考えていらっしゃるのかということ、またそうした批判がどうして出てくるのかということについて、お考えをお聞きしたいと思って質問させていただきました。(参加者)
○そういうことが、いろいろなところで言われていることは私もよく知っています。実は、こういう会合を開いた1つの目的は、まさにODAの真実に迫るということで、ODAがどのように使われているか、そういうことに使われていることがあるのかどうかということも含めてお話をしたいと思ったのです。
そういう変な使われ方をしていないということを、きちんと見ていただくために大事なことは、情報を公開することだと思っています。いろいろな情報を外務省としても公開しています。案件を決めるときに入札をします。そうして、入札をしたどの企業がそれに応札した、いくらで応札したということも全部公開します。そういった情報公開をしていくことは、非常に大事だと思います。たぶん皆さんが思うよりも、はるかにずっと情報公開は進んでいます。ただ、情報の公開度は、私は決してそれで十分だと思っているわけではなくて、もっともっと公開度、情報の透明度は高めたい。それから先程言いましたように、監査や評価、そういうことをきちんとしていって、それも公開して、皆さんに納得をいただけるような、変な要素が入らないようなODAにしていきたいと思っています。(川口大臣)
○(ODAの情報公開は)日本の他の公共事業の情報公開の程度に比べますと、はるかに高いのです。こちらは技術協力に関する情報公開なのですが、無償資金協力に関してもJICAの図書室に行きますと、同じように見られます。無償資金協力というのは具体的にいえば病院だとか、学校といった箱物と呼ばれているものです。そしてまた円借款は、JBIC(国際協力銀行)に行けば、まだホームページ上にアップはされておりませんが、今言ったようなものが見られるということで、透明度はかなり高くはなっております。相当程度、関係者は努力しているということだろうと思います。
ただ、失敗案件も正直言ってあったわけです。しかしどうでしょうか。ある種、日本のODAは、海外における公共事業なのです。日本の公共事業は国内で、みんなうまくいったでしょうか。そんなことはないです。反対もありました。しかしその反対を乗り越えて、その大きなプロジェトが完成して我々の経済発展が保障されてきたということになります。もちろん同じ過ちを海外で繰り返してはいけないわけです。その点に関する環境のチェックだとか、そういったものは、ずいぶんJBIC、JICA、外務省で、整備されてまいりました。そういう反省に立って、これからのODAをやるということで、メディアが失敗案件だけを取り上げてきたというのは、私はやや不満と申し上げておきたい。(草野教授)
●私の友だちが海洋測量で海外の方でずっと仕事をしているので、それから聞いた話では「ODAのお金で僕は仕事をしている」と言われました。実際我々の税金を使っているのですが、回り回って日本の企業にまたそのお金が戻ってくるような感じで、その友だちは言っていたのです。実際それがそうなのか。もし一般競争であれば外国の企業も、実際その応札には応じているのかどうか、以上です。(参加者)
○ひもつき、ひもつきではないということで、まず今の現状がどうなっているかということについては、ご案内のとおりで、基本的に有償援助です。いわゆる円借といわれるものについては、基本的にアンタイド、いわばひもつきでないかたちで援助を実施しております。したがいまして、入札には日本の会社のみならず、世界のどこの会社からも応札をすることができる仕組みになっていまして、競争というものがより担保されたかたちになっています。
それが一方でございまして、他方、無償援助、これは贈与でありますが、その中には資金協力の贈与と、それから技術協力をやっているものと2つございますが、これについては基本的に今はタイドで考えております。これは考え方がいろいろあろうと思いますが、非常に明らかなのは技術協力でありまして、技術協力というのはいわゆる顔の見える援助ですから、日本が持っている世界に冠たる技術を移転するということです。技術というのはご案内のように、紙に書いてあるものではなくて、やはり人間が人間に伝えていくことが最も技術移転がなされる根本であろうと思います。国際的にもやはり技術援助については基本的にタイドで、つまりその国の者がやるという考え方が、今の時点でもまだ主流です。
無償につきましては、世の中の考え方はかなり分かれている状況です。有償と同じように全部国際競争にしたらいいではないかという考え方もありますし、やはり無償は贈与ということもございますので、やはりそれぞれの国が優先的な権利を与えられてしかるべきではないかという両方の考え方がございます。(西田局長)
●私は援助関係に少し携わったことがありまして、数件、アフリカや東ヨーロッパの方に入ったことがあります。私はODAには非常に賛成なのですが、結局インプット、何を入れるかということが一番大事だと思うのです。金額がどうだとか癒着がどうだとかいう前に、何をインプットするのか。そのインプットするときの決め手となるのがコンサルタントの能力だと思うのです。現地に入りますと、現地の人たちから意見を聴取できないコンサルタントが非常に多いのです。いわゆる英語力が低すぎて、相手の言っていることがわからない人がいるので、そこら辺の基準を作られた方がいいのではないかと思います。(参加者)
○日本のコンサルタント企業がもっと国際競争力を持つようにならなければいけないということは、おっしゃるとおりだと思います。ただ、その基準を作るかどうかということですが、市場メカニズムの中では競争で、コンサルタント業者を選ぶ段階で、まさに競争に負けるわけです、日本の国際コンサルタント企業の競争力が弱ければ。ですから、そういった国際競争で淘汰していって、そんなことではだめだと思って強くなるというのが、マーケットメカニズムを重視する日本の経済システムのあり方だと思います。ですから、マーケットが、いい力のあるコンサルタント企業と力のないコンサルタント企業とを自然に淘汰していく、そういうことだと思います。日本のコンサルタント企業はもっと力をつけなければいけないというのは、おっしゃるとおりだと思います。(川口大臣)
●特に途上国で大事な問題として、今エイズやポリオ、そして大臣の最初のお話にありましたが、地雷撤去というのがかなり優先順位が高いと思います。そういったさまざまな問題点があるのですが、集中と選択、優先順位等でコメントがありましたらお聞かせ願いたいと思います。(参加者)
○ODAの優先順位ですが、地雷は非常に大事だと思います。優先順位については先程少し言いましたが、人を重視する、人づくりが国づくりの基本だから、ということ。それからアジアを重視する。そして、国づくり。(国づくりの範疇に入る、地雷除去の分野では)アフガニスタンでも日本の地雷除去というのは非常に大きな力を持っています。たくさん地雷除去の援助をしています。地雷を探す犬の支援、それから機械でやる支援、それから地雷を探す機械を開発をするところ、いろいろなところに日本は支援をしています。(川口大臣)
2.対中ODA
●昨今、日本の経済状況が悪い中で、ODAを見直すべきだという議論、それから特に中国に対しては減額も含めてODAを見直すべきだという非難、議論が展開されていると思います。私個人も大国化する中国に対して、ODAを今、見直すという1つの方向がもう出ているのではないかと思っておりますので、そのことに対して大臣のご意見を伺いたいのです。
その前に、私は対中ODAに対する非難には非常に危険なものがあると思います。一口で言って、非常に感情的、ワイドショー的で、庶民の言葉でいえば「なんで自分たちが苦しいときに、感謝をしない国にお金をあげないといけないのか」ということだと思うのです。ただ、その傍ら、日本の国は大人の国の一員として、自分の所得の1%ぐらいは世界平和のために使ってあげていいのではないかということは理解していると思うのです。なのに、なぜ対中に対して感情的な議論が高まるかというと、私はやはり、これは1つは外務省批判、不信ではないかと思っております。
やはり外務省の、日本の国の中国に対する姿勢がはっきりしない。この間の瀋陽の総領事館の事件は非常にその典型的なもので、日本の主権(※ママ)を侵害した中国の警察、国に対して、もう少し毅然とした態度で抗議をしてほしかった。そういうところでの外務省不信があり、その外務省が、中国にODAというカードを国益にかなったかたちで本当に切れるのかという不信がもとになっているのではないかと思っております。
中国は21世紀、非常に大切な国です。その大切な国と日本がいいパートナーシップを組んでいくためにも、ぜひODAを国益にかなったかたちで切っていただきたいというお願いと、大臣の対中ODAに対するお考えをお聞かせいただきたいと思います。(参加者)
○まず中国のODAの実態からいきますと、昨年度の実績はその前の実績、つまり平成13年度の実績は12年度の実績と比べて25%減っています。だから、実態としてはかなり大幅に減ったという現実があります。中国が援助を必要とする国であるかどうかということからいいますと、一人あたりの国民所得、一人あたりの収入は、ざっというと1年間に600ドルぐらいです。国際機関で援助をする基準があって、借款(貸付)ですと一人あたり3000ドル以下、無償の場合は1500ドル以下の国は援助をしましょうということになっています。ですから、中国の収入は、国際的な基準から見ると援助を必要としている国ということです。
中国について2つ簡単にいいますと、日本のすぐそばにあって、この国が平和で安定的に推移するということは、日本にとって非常に重要なことだと思います。中国は今、沿岸部、東側は、上海とか北京を見ると本当に発展をしていますが、中国全体で考えると、まだまだ援助が必要な部分があって、それが所得に現れているわけです。そういった中国が安定的に平和に発展していくための支援をすることは必要だと私は思います。
それから2番目に、環境問題を考えると、中国は水がない、あるいは砂漠化をしている。私は1月に環境大臣として中国に行きました。北京の本当に郊外、北京の中心から車で1時間ぐらいのところに行きましたが、水道がなくて、人々がかついで、ペンキ缶に水を入れて運んでいるという状態です。それから川は枯れて、水がない。砂漠化を止めることは、日本に黄砂が来ることを考えると、実は日本のためでもある部分があるわけです。そういった援助も必要だということで、一件一件きちんと本当に必要か考えていく必要はあると思うのですが、全くなくていいかというと、私はそういうことではないと思います。(川口大臣)
●ODA4原則がありますが、これは現在でも守られているのでしょうか。実際、対中ODAに関しては4原則から外れていると思いますが、大臣はどう思われますか。(参加者)
○4原則とおっしゃったのはODA大綱のことだと思いますが、この4つは、答えから言うと、ちゃんと守っています。4つというのは1つは「環境と開発の両立」、2つ目は「軍事的用途への使用をさせない」ということです。それから3つ目は、「開発途上国の」-この場合は中国ですが-「軍事支出に注意を払う」ということです。それから4つ目は「開発途上国の人権の保障の状況に注意を払う」、この4つです。これについては、きちんと中国との関係では守っています。
中国の軍事支出に対しては、それがどういうことかちゃんと説明をしなさいと、今、予算が増えているといわれていますが、まず軍事に使われないということはちゃんと保証をとってやっています。それから、軍事支出が増えていく状況については、きちんと透明度を上げて説明しなさいということは言っているし、注意も払っている。そして人権状況についても注意を払っているということで、守っているということです。(川口大臣)
○私は、4原則は守っていると言わない方がいいと、つまり原則はあくまで原則でして、これは政治的な解釈ができるものだと言った方がいいと思います。例えば、今日はWTOの話は出ていませんが、WTOに中国が加盟するようになったのは日本のODAのおかげなのです。これだけ中国が開かれた経済に参加する国になったのは、まさに日本のODAの、例えば道路や鉄道などは相当部分、日本の円借款が入っているわけです。そのようなことから考えますと、もちろんミサイルの問題などがありますが、政治的に解釈して、こちらの方を優先させたという説明の方が、私は正直でいいのではないかと思います。(草野教授)
3.NGOとの連携
●ODAとNGO(の関わり)というのは、1989年に外務省のNGO事業補助金制度から始まっていると思います。このことによって、ODAとNGOが初めて関わりを持っていったと思います。そして、1996年にはNGO外務省定期協議、これは同じ議場で、いわゆる政策に関する外務省からの説明、状況等々についての意見交換、またNGOからのNGO支援に対する改善策の協議に関する意見交換をするということで、外務省にとっては非常に新しい試みであり、NGOと同じ議場になるということを試みられたと思っております。
そのあと、NGO・JICA協議会、そして1999年にはNGOの、特に海外プロジェクトではなく、国内の組織支援のための環境整備事業として3つのプログラムがスタートいたしました。
このようにジャパン・プラットホームを含んで、NGOの支援が増えています。その中でNGOに対する外務省の基本的な姿勢として、外交政策を一義と考えられる外務省にとって、NGO支援がどういう役割をされているかという点、そして予算を増やして、この3年間ある意味で非常にアピールされているNGO支援というものの中で、能力強化したNGOをどのようにイメージされているか、どのようなNGOであることを望まれているかということをお聞かせください。(参加者)
○私は、NGOは3つの分野において、外務省が発展途上国に援助をしていくときのパートナーだと思っています。3つとは何かというと、1つは案件を決める段階で評価をしたりするわけですが、それについてNGOの力が必要です。それから2番目には、実施していく段階で政府と一緒になって、お互いに補完的な立場で協力してやっていくことが大事です。それから3つ目は、その案件が終わったあとで、本当に役に立ったか評価をするわけですが、その評価の分野でやっていくことが必要だと、3つあると思うのです。その3つの分野でそれぞれ、NGOは政府が援助をやっていくときのパートナーだと思います。
ではそのNGOの能力、あるいはNGOを政府としてどのように能力を高めていくか、どのように資金的に支援をしていく考えかということですが、私は本来的に、NGOはもっともっとたくさんあっていいし、もっともっと活躍をしてもらいたいと思っていますので、その支援は大事だと思います。ただ、NGOという性格からいって、100%政府に頼ってNGO活動ができるような団体であるのはまちがいだと思います。本来、NGOは政府に頼らないで活動ができるべきであるわけですが、いくつかの欧米の国と違って、日本の税制その他、あるいは寄付でNGOの人がお金を集めて自立して行動するというのは、なかなか難しい状況にあるので、政府としてNGOには仕事をお願いするということ、あるいは能力を高めるために援助をしていくことは必要だと思います。
それから3番目に、NGOの方もかなりそういうことで動いていますが、なさった仕事なり、会計なりを、透明性をもって世間に公表していくことが必要です。それがNGOの中での競争力を高めることに役立つと思っています。(川口大臣)
●(NGOと外務省の関係は)見ていると、「やらせてやっている」というのと「やってやっている」という関係に見えるのです。それと川口大臣がおっしゃっていたあるべき関係とのズレはいったいどこから来るのか、大臣自身はどのように思われているのかを伺いたいです。(参加者)
●NGOと外務省の関係についてですが、外務省とNGOではできることが僕は違うと思っております。外務省自身は相手国、政府といった大きな枠組みを相手に、そしてNGOは地域活動や人々の生活といった細かな面で活動するのが、それぞれの分野だと思っています。それに関して、どのような使い分けというか、スタンスを変えておられるのか、具体的にお聞かせいただけたらと思います。(参加者)
○私はNGOの人に政府が「やらせてやっている」と思ってやっているわけでは全然ないということを申し上げたいと思います。それからNGOの方も、私は、アフガニスタンで活動している日本のNGOの人と話をしましたが、「やってやっている」と思ってやっているわけでは全然ない。本当に心から打ち込んで献身的にやっていらっしゃると思います。ですから基本的に政府としてもNGOの人の力を必要としています。例えばアフガニスタンの大きな都市から離れた北のはずれの方で、4~5人で診療所をつくって、そこで診療活動をしている。本当に一生懸命やっていて貴重なのです。それは、政府が自ら行ってはなかなかできません。やっているNGOの方を支援してやっていただくわけで、補完的な関係、パートナーであると思っているのです。(川口大臣)
○私なりの答えは、外務省とNGOは競争者、それから補完的立場にあるということだと思うのです。補完的立場、まさに大臣のご指摘のとおり、それぞれ得手不得手があるという意味において、補完関係にあることはまちがいはない。ご質問のとおりだろうと思います。同時にやはり重なる部分もあるのだと思います。それは競争して、どちらがより上手に、どちらがより有効な援助ができるか、いい意味で競争したら私はいいと思っております。併せ持って切磋琢磨する関係にあることが、一番健全ではないかと思っています。
それで、これまで外務省がやってきましたのは、1つには、そうはいっても日本のNGOが、世界的にいってまだまだ小さい、あるいは必ずしもキャパシティがないということにおいて、NGOの方がそれを強めていくことをお手伝いできないかという面をプラスしてきたということであります。そういう意味での制度改善も、それなりに努力をさせていただいてきたのではないかと思っております。アフガニスタンのみならず、例えばカンボジアなど、日本のNGOの方は大変に大活躍をしておられます。そういう場面では、大臣ご指摘のとおり、補完関係もあるけれど競争関係もあるということになっていくのだと思うのです。
そういう意味で、例えば、先程コンサルの話も出ましたが、やはり日本のNGO、さらには日本のODAを国際的に競争力のあるものとして磨いていかなければ、国際条理において意味を失っていくというのが非常に大きな問題なのではないか。そういう意識を持って、いろいろな制度改善に今、努力をしています。この点についても、ホームページ等々ございますので、ぜひ学生の方には、いろいろなかたちで勉強していただければ、思った以上にODAとNGOは実は仲がいいのだということが、おわかりいただけるのではないかと思います。(西田局長)
4.外務省改革
●川口大臣ご自身が、外務省改革にどのくらいの手ごたえを感じておられるのか、そして先程も少し紹介があったのですが、今後の外務省改革の取り組みについて、もう少し具体的にお話しいただけたらと思います。(参加者)
○まず外務省の改革の手ごたえ、これは私は非常にはっきりと感じています。先程言ったような公募制とか下からの評価、外部からの人材の登用など、いろいろなことを言っていますが、そういうことはどんどん、実際にできることはただちにやるということでやっています。
それから、これから何をするかということですが、22日に「変える会」の報告が出ます。これは私の、外務大臣の私的懇談会で、議論を今、皆さんでしていただいているわけです。それから外務省の中で「変えよう!変わろう!外務省」という会がありまして、ここで5つの分野について議論をしていて、この報告は先般出ました。私のところにも皆さんが来て、話を聞きました。あとは与党の中でも、野党の中でもそういう議論がなされている状況にあります。
そういった動きを踏まえて、外務省として7月の終わりから8月の初め、8月にかかると思いますが、どういうことをやっていくか。私は大事なのはアクションだと思っていますので、何をいつまでに、この「いつまでに」というのが大事で、今まで外務省改革はいろいろなことを言ってきたのですが、「いつまで」ということをきちんと明示していませんでした。これが非常に大事で、それをやっていこうと思っています。
それで、実はこれは2段ロケットでありまして、人事制度をどう変えるとか、それからいろいろなことが言われていますが、それはどちらかといえば組織の中でいうハードウェア、制度を変えるということなのです。それはそういうアクションプログラムを作る。そのうえで、あるいはそれをやることの最終的な目的は、外務省が日本の国益にかなった強靱な外交をすることができる組織になるということなのです。それは、単に人事制度を変えたり、NGOの人たちと話し合う場を作ったり、経済協力を改革するだけでできるかというと、もうちょっとプラスアルファが必要だと思うのです。それは、組織、あるいは組織の動き方、動かし方のところで、もう少し何か考えることがあるのではないだろうか。政策の作り方、作る過程、そういったことについても、その先議論をしていくことが必要だろうと私は思っているということです。今、申し上げたことを通じて外務省の改革をやっていくということです。
改革はこれからしっかりやっていく。アクションプログラムにのっとってやっていく。その成果、いろいろなこと、やったことは発表していきますので、ぜひ注目をしていただきたいと思います。(川口大臣)
○この2~3日、非常に新聞等々で賑わっておりますが、いわゆる内閣府に援助庁を置くという声がだいぶ出ております。先程、大臣もご指摘になった22日に発表される「変える会」の中でも、そういうことが言われるのではないかと。
私は小さな政府という小泉内閣の流れ、あるいは今までそういう組織改革をいろいろ日本政府はやってまいりましたが、新しい組織を作ることになると、いろいろなところから人が集まることになって、結局、組織が肥大化してしまうのではないかという懸念があります。そういう点から考えて、大臣の援助庁構想についてのご意見を伺いたいと思います。(草野教授)
○これはもうすでに何回も言っていることで、別に今まで言ったことと変わりはないのですが、援助というのは、先程来出ているように、日本が国際社会で国益をきちんと出していくために非常に必要なことだと思っています。外務省というのは、その外交をやっていくということですから、今、援助の50%ぐらいをやっているのですが、これを外務省がやり続けることは大事だと思っています。
ただ同時に、もう少し必要なことは、各省庁、ほかの省庁も援助をやっているわけです。例えば、文科省は、留学生を呼んだりしていますが、これも援助の予算です。そういうことをやっているわけです。例えば、アフガニスタンで教育をしましょうということをやっているわけですが、そういうときには外務省と文科省と一緒に連携をしていくことは非常に必要です。ですから、経済協力は外務省で、屋上屋で内閣に援助庁を作ることについて私は反対ですが、同時に各省で関係があることについては、連携を深めていくことが必要だと思っています。すでに各省の連絡会議はあってやっているのですが、それをもっとやっていく必要があると思っています。(川口大臣)
●先程、幹部を含む50のポストとおっしゃいましたが、その幹部というのは、省庁の役職概念からいったらどのようなものかということを1点と、もう1つ、猪口さんをあのように活用されまして、その後の経過をどのように評価されて、それを今後の改革にどのように結びつけるおつもりかということをお伺いしたい。(参加者)
○公募、どういう幹部のポストがあるか。例を挙げますと、在外の公館では、総領事です。総領事のポストもたくさんありますが、それが公募に入っています。それから本省の中では審議官というポスト、これは局長の下で課長よりも上、こういうポストも公募に入っています。
それから猪口大使については、つい昨日、猪口大使が一時帰っていらっしゃったので、私はお会いして、どういう仕事をしていらっしゃるか伺いました。大変に張りきってお仕事をしていらっしゃいますし、学者の方でいらして、組織にずっといらした方でないという印象が私にはあったのですが、ちゃんと組織の中を仕切っていらっしゃることがよくわかりました。「すべてのことは報告しなさい。私は責任をとってあげる。そして私もその代わりやったことは全部あなたたちに言うから」ということで、組織も非常にきちんとマネージしていらっしゃると思いましたし、自宅に大勢の人を呼んで軍縮の話をしていらっしゃるなど、立派な活動をしていらっしゃると思います。それをどう改革に役立てるか。私はいい活動というのは、水平展開をしていくことが大事だと思います。そういうこともしていきたいと思います。(川口大臣)
●やはり私は外交と援助というのは基本的には違うのではないかと思います。先程来、お話を聞いておりましたら、人事面や、いわゆるハードウェアを変えて、外務省を改革していくのだとおっしゃっておられて、援助をすることによってNGOとも連携を深めて、それが役立っているのだとおっしゃっておられるのですが、それは外交とはちょっと違うのではないかと私は思うのです。
外交戦略を考えてやっていくうえで、援助ということは、やはり国のレベルの問題ではないかと思ったときに、話が前後してしまいますが、基本的にものをあげる、援助をするというのは非常に難しいことだと思うのです。NGOは、その辺をすごくよくわかってやっている部分で、ある意味、援助はNGOに任せて、もっと外交の部分で外務省は頑張ってほしいと私は思っているのです。それでNGOにもっと目を向けてほしい。競争関係とおっしゃっていましたが、ちょっと違うのではないかと私は思いました。
1つ聞かなくてはいけないのは、ロシア大使館にプールができるというのを聞いているのですが、フィリピンの女の人などに聞くと、やはり大使館というのは、日本の外交をする窓口というよりも、向こうで何かトラブルがあったときにもみ消すためのものという感じがあるみたいなところもあります。人事面の部分というか、人間のソフトウェアの開発という部分で頑張ってもらいたいと思います。
○外交、あるいは外国にある公館に対して、多少シニカルな見方をしてらっしゃると思って伺いました。まず強靱な外交をしていくということが大事だというところ、ここにより焦点を当てた2段ロケットだという話をしました。人事というのは一番わかりやすい例だったので申し上げたのですが、そのときに私は、「10の改革」と言っています。そのうちの1つが経済協力であり、1つがNGOとの新しい関係であり、それから政と官の関係というのもありますし、人事もありますし、秘密保持の徹底もあります。それから外務省の予算を効率的に使っていくということもありますし、広報体制の話もありますし、大使館の業務の見直し、政策立案過程の透明化など、そういうことを並べているのです。ですから人事は、その1つの例で、そういったことをやったうえで、それに基づいて、強靱な外交をしていくということです。
経済協力で、「あげる」のは難しいとおっしゃいましたが、非常にわかりやすくする意味で、私は「援助」という言葉を使いましたが、日本の協力は、あげる、贈与するだけではありません。大きなのは借款です。貸して返してもらう。これの意味は、貸してあげると返さなければいけないと思って一生懸命にやります。そうするとその自助努力、自分で一生懸命やるということになりますから、開発にプラスになる。それから、返さなければいけないと思うと、返せもしないようなプロジェクトにお金を貸してくださいとは言わない。そういった意味で、援助のお金、税金を効率的に使う手段だと、私は思っています。
そういったことについて経済協力を一緒にやっていく過程、あるいは案件を選ぶ過程、あるいはそれを評価する過程で、NGOの人たちとパートナーとしてやっていくことが必要だというのが私の考えです。競争関係にあるとおっしゃったのは別の人なので、何かあれば。(川口大臣)
○援助あるいは開発という言葉は、非常に多義的に使われていると思うのです。例えばNGOといっても、これまた非常に多義的で、何というのでしょうか、小粒でもピリッと辛いというタイプのNGOの方もおられるし、例えばエイズを撲滅しなくてはいけないという、いわゆる主導者で、非常に大きな世界的な組織を持っていて、ほとんどIBMみたいなNGOもあるわけです。
それで、開発には、国、国際機関、世銀とかアジア開銀等々ありますし、それから国連の関係の機関、UNDP等々あります。それからNGOがあるし、場合によっては市民団体そのものがやっていく、例えばビル・ゲイツがやっていくようなもの、これは企業ともある意味で非常に結びついていますが、ビジネスもやっていく。だから、いろいろな同じ開発、あるいは国際社会が抱えている共通の課題にどうやって取り組むのかという意味においては、同じようなプレーヤーであり、そう意味では協力していくと同時に競争していく、そしていいゲームをしていくという趣旨で申し上げたつもりです。NGOとODAがけんかして競争して、勝った、負けたということではないので、誤解がありましたら訂正したいと思います。(西田局長)
5.外交政策一般
●現在、日本の景気も低迷しており、また海外からの評価、国債の格付け等見てもおわかりのように、非常に厳しいものがあります。それらを払拭するためにも、今後の外交政策がいろいろあると思いますが、京都議定書の兼ね合いもあり、特に日本政府として、国際的イニシアチブを発揮するチャンスでもある8月後半からのヨハネスブルグ環境サミットは結構重要なものだと思います。具体的な分野別の環境ODA、政治宣言等がまとまっているのであれば、ご説明していただきたいというのが1点です。
また環境問題については、ご存じのように非常に関心が高まっておりますし、ビジネスの側面からも注目されています。今回はODAについての質問ですが、貧困等の問題もありますが、大臣がお考えの効果的な環境ODAとはどういったものか、お伺いしたいのです。(参加者)
○ヨハネスブルグのサミットですが、先程言いましたけれども、私は大木環境大臣と一緒に出席をするつもりです。私は外務大臣になる前、環境大臣でもありましたから、この会合には非常に関心があります。
それで、みんなが国際的に言っているのは、この会合はリオでの会議以降、10年後の会議で、ぜひ成功させなければならない。準備をずっとしてきているのですが、なかなか合意に達しないのが今の問題でして、これから8月の終わりまでの間に、さらに議論を重ねて、ぜひ合意をしていかなければいけない。
こういう国連の会議に出ていると、本当にひしひしと感じるのですが、南対北という非常にはっきりした図式に分かれてしまうのです。だけど、南だっていろいろあるわけです。南の中でも非常に経済的に開発が進んでいる国もあれば、アフリカの1日一人1ドル以下で暮らしている国もあります。
我々、日本が言っているのは、これはあとで側嶋さんに話をつなげてもらいますが、グローバルなシェアリング、世界的にお互いに責任を分け持つ、戦略も一緒に持つということです。南対北の問題では、実はないのです。南の中でも、南が南を援助するということも、これから十分にやっていかなければいけないわけです。そういった、それぞれの国のあり方を考えて、グローバルに分かち合っていこうということを日本は言っています。実際に、できない目標を作るのではなくて、実現可能な目標を作って、それをやっていくこと、それで一歩一歩現実に進んでいくことが大事だというのが考え方です。(川口大臣)
○大臣からご説明のありましたグローバル・シェアリングについて、まず補足させていただきまして、それから現在のヨハネスブルグに向けた準備状況について、またご説明させていただきたいと思います。今、大臣からご説明があったように、援助の目標のところでも、「地球環境の保護のために」という1つの項目がありましたが、このかけがえのない地球を保護していこう、保全していこうという観点から持続可能な開発に関する世界首脳会議が開かれるわけです。そこで、南北対立ではなくて、それぞれの国、すべての国が、この地球環境の保全のために戦略と責任と、経験、情報を分かち合っていこうではないかということを日本は主張してきております。引き続き、そういう考え方に立って、本番のヨハネスブルグに向けていくということだと思います。
それから、今の準備状況ですが、残念ながら5~6月にかけてのバリの会合では、政治宣言についてほとんど議論されませんでした。それからヨハネスブルグ実施計画というものについて、ある人の言い方では、75%はまとまったけれども25%はまだ積み残されているというようなことで、この中に実は、貿易の問題、それからODAの問題も入っております。例えば先程0.7%の目標がありましたが、これに期限をつけるのかどうか、その観点から、日本はこれまでに、もうすでにいろいろな約束がありますので、その着実な実施が大事だという観点から、いわばパートナーシップということで、いろいろなプロジェクトを立ち上げておりまして、とにかく実施していこうということで対応しているところです。(側嶋地球環境課長)
●対北朝鮮についての外交について質問させていただきます。去年、成田で金正日の息子一家と思われる方が捕まりました。私は新聞や本を読んで、なぜああいう経緯で北京まで送っていってすんなり返したのか、どう考えても理解ができません。その真相をぜひ教えていただきたいということと、今もし全く同じ事態が起きた場合、川口大臣は、どう判断されますか。(参加者)
○去年起こった段階で、私はその時点では外務大臣ではなかったので、あとで聞いた話でありますが、外国から来ると、まず入国管理のところを通るわけです。その時点で、入国管理上、問題があるという判断があって、本当は出発したところ、東南アジアのどこかから来たのだと思いますが、そこに送り返すわけです。この人が金正男であるということは、日本としては確認できていません。したがって、この人については、本当は来たところに返すのですが、本人が北京に行きたいと言われたということで、北京に送り返した。そういうことだと思います。
それで私が外務大臣であったら、どういう判断をしたかということですが、この人の身元がわかるかどうかというのが一番のかぎだと思います。ですから、身元がわかれば、わかった人なりに整理を考えていくわけですし、そこが第1歩だということは、この前の判断もそういうことだったので、それなりに対応したということだと思います。(川口大臣)
6.フリーディスカッション
●私は外務省改革というよりも、戦後日本の外交のあり方、特にアメリカに対する姿勢を根本的に問い直すことが今必要ではないかと考えます。なぜなら、この根本的な問題を解決してこそ、先程から論議されているODAの問題、あるいはNGOとの連携の問題も解決されると思います。戦後57年たちましたが、アメリカは原爆に対して、いまだに謝罪をしておりません。日本の本当の独立国としての自主性を貫くために、川口外務大臣に、戦後日本の転換点として、ぜひアメリカに対して、原爆という人類史上最大の虐殺行為に対する謝罪を求めていただきたいと思うのですが、いかがお考えでしょうか。(参加者)
●外務省の予算を外務省の特定の人間が私物化しているのではないかと、僕は常に思っているのです。こういう話をすると西田局長や隣の課長は、そんなことはないと言うかもしれないのですが、特定の人間が予算を私物化したからこそ・・・。(参加者)
○政策を考えるときには、外務省の一人の人が決めるわけではなくて、例えばお金の支出もそうですが、その段階では何人か関係の人が集まって、ちゃんと相談をしたうえで決めている。したがって、それに伴うお金は相談をしたうえで支出している。それから、通常、例えば外交団をお招きして懇談をするということについても、お金が必要になる部分がありますが、きちんと省内で決済をしていますので、私物化してお金を使っているということは全くないと思います。(川口大臣)
●環境と開発、大臣は本当に両立すると思っているのでしょうか。日本は経済的にはかなり発展、成功したと思いますが、環境という面では失敗したと思っております。あと、ヨハネスブルグの会議にも行かれるということですが、日本政府は、かなりその会議について、アメリカと同じように足を引っ張っていると聞いておりますので、ぜひヨハネスブルグに行って成功するように頑張ってください。(参加者)
○環境と開発が両立するか。これはしなければならない。しなければ地球は存在しえない。(川口大臣)
●言葉と実行が伴っていない面があるのではないか。例えば、「不適切な関係」と言われて処分をされた。厳正な処分だと。厳正とは「厳しく公正」だが、とてもそんな処分をされたようには思えない。したがって、その後、次から次へと同じようなことが出てくる。これは厳正な処分がないからではないか。瀋陽のときには毅然としてもらうと言われた。その毅然とした交渉が、ちっとも見えてこない。大臣は先程、改革は進んでいる、手ごたえありと言われましたが、それを発信してください。(参加者)
●文部省からの派遣でイギリスにも行ったことがあります。そのときに例えば、大使館においてALTのパーティ、同窓会的なパーティが予算で開かれていました。例えば、NGOの博覧会などを文部省主催で開くとか、ヤフーなどにNGOを専門に集めたホームページのリンクサイトを設定してもらうとか、あとは服などを送ることは、例えば日本で余っている古着などをモンゴルなどに送る組織があるのですが、それは輸送費がかかるのです。例えば日本郵船などの船の会社に外務省が依頼して、例えば飛行機でも空席は安く買えたりするでしょう。安くそういった古着を送れば、それが環境問題にもつながるでしょう。(参加者)
●東南アジアの子どもたちを救済する仕事をしています。日本のODAによる向こうのプロジェクトで、貧しい人たちが土地を奪われて家族ぐるみのホームレスになるとか、ゴミの山の中で住まなければならないという状態がかなり以前から起こっていますが、このことについて考えてください。(参加者)
●ワン・ワールド・フェスティバルといいまして、関西のNGO団体、行政、ODAが一緒になって国際協力のお祭りをやっています。先程の話では外へ向けての意識が多かったのですが、私が考えているのは、もっと国民の意識を外へ向けるような、そういう国内の活動も大切なのではないか。そういうことでワン・ワールド・フェスティバルというものを力を入れてやっているのです。これで平和と環境、教育問題について一生懸命やっているのですが、その辺の関心を、国内に向けての、国民に対しての意識についての関心はおありなのかどうか。(参加者)
●ICC(International Criminal Court)を日本はなぜ批准されないのでしょうか。もしそれが、アメリカ追随でないのであれば、どういった理由で批准されないのか、お教えください。(参加者)
○ICCに批准しないのはアメリカに追随しているからではなくて、これを批准したときには、全部国内の法律でそれを担保することができなければいけません。例えば、集団を扇動して、ルワンダであったような事件について、日本はどういう国内法で対応ができるかというとできない。そういった国内法を全部整備する必要があるので、まだ批准できていませんが、ICCには前向きで、日本もこの規定の議論には相当積極的に関与しています。(川口大臣)
●先程、ODAの内容が大事という質問もあったのですが、その中で国語や倫理、道徳の問題は援助するというのは難しいと思うのですが、日本の経済援助として算数や理科などの科目があるのに、音楽や芸術、体育などが少ないのはどうしてでしょうか。(参加者)
●まず外務省の改革ですが、大臣はまず意識改革をしていただきたい。外務省の省員の意識改革が必要だと思います。自分たちは特権階級であるという意識が非常に強いと思います。まず1点は、大使館でどういう仕事をされているのか。2点は、やはり外国にいる日本人をいろいろ助ける役目があると思うのに、皆さんは「大使館には絶対頼まない」と、「頼んでも何もしてくれない」という声が多いです。そういう点をやはり改革してほしい。(参加者)
●日本の外交官は英語がしゃべれないと、よくいわれていると思うのです。そういった問題で、(瀋陽)総領事館の問題でも「謝謝」と言ったとか言わないとかの問題に発展してしまったと思うので、外務省内部で語学の教育に関して、もう1回改革の見直しをされた方がいいのではないかと思います。(参加者)
○言葉がしゃべれないのではないかということですが、私の知っているかぎり、英語がしゃべれない外務省の職員はいないと思います。例えば中国やアラビアなど、なかなか言葉が難しい、日本としてはあまり習っていない言葉はありますが、そういう国に行っている人については、その国の言葉をしゃべれない人もいます。だけど、大事なことは、入ったときに研修して、それぞれ言葉を自分で選びますので、アラビア語をしゃべれる人がほかの国で勤務をする、逆にいうと、中国語、いわゆるチャイナ・スクールを出た以外の人、英語で研修した人が、中国で勤務することも私は非常に重要なことだと思っていますので、そういう意味で言葉はいろいろあります。少なくとも英語をしゃべれない人はいないと思います。(川口大臣)
●外務省には対米局(※ママ)しかないなどと言われているように、アメリカに追随する外交、そして中国の領事館で起こった事件など、外務省に対する不満で、これだけの多くの国民に今日集まってもらったと思うのですが、これからの改革を、今日は川口大臣に、ぜひとも約束してほしいと思います。よろしくお願いします。(参加者)
○アメリカとの関係で、対米追随ではないかということですが、アメリカは大事な同盟国であります。日本にとって非常に大事な同盟国で、日本の安全保障もアメリカと安全保障条約があって、この地域の平和と安定が保たれているという要素はあると思います。(川口大臣)
●大臣は先程、国益を考えた援助を行っているとおっしゃいましたが、私が考えるのは、やはり援助を受けた国、あるいは人々の満足度はどのようなものかというのが大事ではないかと思うのです。そういった評価などはされているのでしょうか。どのようなかたちでされているのかというのも併せて聞かせていただきたいのです。(参加者)
●NGOにもいろいろあって、たくさんのNGOがあればいいと思うのですが、すべてのNGOに対して連携するのは無理かと思います。よいNGOと悪いNGOと、NGOの中にもいろいろあると思います。だからその辺でよりよい判断をしていただきたいと思うのです。(参加者)
○たくさんのご意見を、そして非常に率直にいただいたことを、まずありがたいと思います。
外務省は改革を今、全員で一生懸命やっているということをまず申し上げたいと思います。そのうえで在外で何をしているのかとか、いろいろご意見ありましたが、何か外務省のやっていることで問題があると思われましたら、できるだけ具体的におっしゃって、ぜひ先程のホームページもありますし、電話も手紙もありますから、おっしゃってください。できるだけ一つ一つについて誠実に対応したいと思いますし、こちらの考え方もお話していきたいと思います。
それから強靱な外交、国益が何かということをきちんと考えるということが大事でして、そのときそのときで何が国益かということは違いますが、全体として、先程の瀋陽の事件も含めて、省内で議論をきちんとして政策に反映させる、言うべきことは言うことが大事で、その過程でもう少し透明性をもって政策をやっていくことが大事だと思っています。それは改革の一環として注意をしたいと思います。(川口大臣)
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