谷野作太郎在中国大使講演
21世紀における世界の中の日中関係
2000年6月7日
於:外交学院
1.はじめに
楊福昌外交学院院長を始めとする外交学院の皆様。
この度当外交学院において、講演をする機会をいただいたことに、感謝申し上げたいと思います。外交学院においては、そちらに座ってらっしゃる陸建元教授の取り計らいにより、先月から当館館員により、日本の経済、科学技術、教育の各分野に関する講義を行っております。本来であれば、それら一連の講義に先立ち私の講演を行いたかったのですが、日程の都合がつかず最後になってしまいました。
将来、中国外交を背負って立つ人材を集中的に養成している本学院においては、現下の国際情勢、就中中国と密接な関係を有する我が国との関係には高い関心が寄せられていると考えます。本日は、外交の実務に携わる立場から、日中関係の現状と今後の展望につきお話させていただこうと思いますが、皆様の今後の勉強や仕事に少しでもお役に立てればと思います。
2.唐家セン外交部長訪日から見た日中関係
(1)先ず、つい先日唐家セン外交部長が訪日されました。同部長は本学院の指導者でもあるわけですが、その概要についてご説明しつつ、そこから見える現在の日中関係につき説明したいと思います。
唐部長は、今更説明するまでもなく中国外交部で日本関係の仕事に長年携わり、日本での知己が多く、まさに中国政府の要路の中でも抜きんでた日本通として知られています。唐部長は、滞在中外相会談の他、総理、各党党首、経済界の方々等との会談や記者会見も精力的にこなし、それらの場において、中国の見解の一方的な表明に止まらず、日本側の主張にも熱心に耳を傾け、率直な話し合いを行い、日中間の相互理解の促進に大きな役割を果たされました。両外相の話し合いの結果、本年10月中旬の朱鎔基総理の訪日も正式に決定されたことはご承知の通りです。
今回の唐部長の訪日は、日程及び内容の両面から見ても密度の濃い訪日となりましたが、何よりも、今次訪日において河野大臣と唐部長の間のしっかりした信頼関係が築かれたこと―ちなみに唐部長の滞在中、両外相が接した時間は計9時間以上に及びました―は、今後の日中関係のためにも大変良かったと思います。
(2)今回の河野大臣と唐部長の会談においては、二国間の問題、国際情勢に加え、来るべき九州・沖縄サミットの問題、西部大開発といった幅広いテーマが取り上げられましたが、ここでは個々のやりとりを離れて3点だけ紹介したいと思います。
一つ目は、両国の外交当局の最高責任者により日中間の多くの問題につき本音ベースで意見交換ができたということです。外相会談の内容や、個々の問題については、既に皆さんはある程度中国側の報道を通じ承知のことと思いますし、また御存知でない方は大使館のホームページでも紹介していますので、そちらを参考にしていただくこととして、ここで改めて一つ一つ説明することは避けますが、日本側からは、中国における投資環境問題、対中ODAにかかる日本側の率直な考え方、軍事費の増大に対する日本側の懸念等日本国内にある時として厳しい雰囲気や考え方といったことについても日中関係の更なる発展の文脈から取り上げられました。これに対し、唐部長は、一定の理解を示しつつ、中国の立場を説明していました。また、九州・沖縄サミット、海峡両岸関係についても、双方の考えを丁寧に説明しあいました。
これらの問題において日本国内において、時として中国に対して厳しい意見が出て来るのは、日中関係が益々緊密化していること、日本国内において中国に対する関心が高まっていることの一つの表れでもあります。それ故に、重要なことは、このような率直な意見交換を通じて、お互いがそれぞれどのような立場にいてどのような考え方をしているかにつき相互理解を深めた上で、冷静に問題に対処することです。そのような観点から、今回の外相会談は極めて有意義であったと思います。
なお、残念ながら、中国の報道においては、いつものことながらこういった問題について日本側から示された日本側の考え方については全くと言って良いほど紹介はされていません。不特定多数の読者に向かって、中国にとって耳の痛い話を紹介することを躊躇する気持ちも分からないわけではありませんが、国民レベルの広範な相互理解を深めるためは、中国においても耳の痛い話でも冷静に紹介していくことも必要かと思います。もとより、日本側も中国側の主張、考え方にはいつも虚心坦懐に耳を傾ける用意があります。日本のプレスは、そのような中国の日本に対する辛口の見解こそ遠慮会釈なく報道します。真の相互の信頼感を打ち立てるためにも、しっかりとした相互理解は不可欠です。
(3)会談について紹介したい第二の点は、河野大臣から改めて日中国交正常化以降の歴史を振り返りつつ、両国がお互いの体制・制度の違いに対する相互理解と相互尊重を踏まえつつ、今後とも両国の関係を発展させていくことの重要性を述べたことです。と申しますのも、最近日中間で見られる問題の中には、日中それぞれの体制・制度の違いに対する相互の理解が十分でないことに起因するものが決して少なくないからです。
3.世界の中の日中関係
第三の点は、「世界の中の日中関係」という視点です。外相会談において、河野大臣より、日中関係は、98年の江沢民主席訪日を経て、ただ単に二国間の善隣友好を唱える関係から、国際社会が現実に直面する課題やアフリカその他第三国支援のために日中が共に行動する関係へと移行すべき段階にあることを強調し、唐部長もこの認識を共有しました。このような視点こそは、私自身長年、日中関係に携わる中で強く主張してきた点でもあり、本日のテーマでもある「21世紀における世界の中の日中関係」のひとつの方向性を示すものでもあります。以下、この点について詳しく述べたいと思います。
今さら言うまでもなく、中国は、国際社会の運営に大きな責任を有する、まごうことのない大国です。また、国連の安全保障理事会常任理事国としての大きな責任もあります。他方、日本も、単に日本のことだけに関わり合うだけでなく、その持てる力を発揮して、国際社会の平和と発展のために、貢献していく意思と能力を備えた国です。そのようなお互いに隣国同士の2つの国が相携さえて、アジア太平洋地域そして国際社会の様々な問題に貢献していくということの意義は益々大きくなってきていると思います。例えば、昨今話題になっている朝鮮半島の平和と安定の問題、或いは二年前に発生したアジアの経済危機にどう対処するかというような問題、更には、アジア地域の環境、エネルギー問題、更にはAIDS或いは国境を越える犯罪といった問題に両国が協力してどう対処するかといったことが挙げられます。
4.世界の中の日中関係(最近の動き)
日中の協力関係が地域的な広がり、ひいては世界的な広がりを持つようになってきていることを示す最近の事例を紹介したいと思います。
一つ目は、昨年11月、マニラで開催されたASEAN+3-この3というのは日本、中国、韓国のことですが-、その首脳会合の際に行われた日中韓の最高首脳会合です。
この会合で3首脳は、経済問題を中心に議論し、中国の円滑な市場開放に向けた協調など、経済面で協力を強化していくことで基本的に一致しました。この会合は、初の試みでもあり3カ国が共通の関心を有するこの地域の経済問題について、議題を定めずに自由な意見交換を行うことが目的であった訳ですが、その目的は十分達したと思います。会議の成果として、三国首脳は、今後それぞれの国が指定した研究機関の協力作業を通じ、東アジア地域の経済協力のあり方につき検討を進めることに合意しました。今、そのような三国間の協力の仕組みを立ち上げるため準備等が進行中です。私は、東アジア地域において共通の文化基盤を有し、密接な交流を有している3カ国の首脳が今回初めて一堂に会したことの意味は決して小さくないと受け止めており、出来得ればこのような会合が今後ともいろいろな機会をとらえて行われることが望ましいと考えております。
二つ目は、本年2月26、27両日に北京で日中共通の隣国である韓国の参加を得て行われた日中韓の環境に関する大臣レベルの会議です。
その中で、3ヶ国の環境大臣は、「環境共同体意識の向上」、「淡水(湖沼)汚染防止」、「陸上に起因する海洋汚染の防止」、「環境産業を如何に育てていくか」といったテーマにつき、今後、3カ国環境協力プロジェクトを形成・推進していくことを柱とする共同コミュニュケに署名しました。私は、まさにこのように現在国際社会が緊急の問題の1つとして取り組んでいる環境問題について、日中の枠組みを越えたところで日中両国が協力していく-この場合は韓国の参加も得て-ことは、今後の日中の協力の1つの方向を示すものであると受け止めています。
三つ目としては、中国のWTO加盟に関する日中間の協力も「世界の中の日中関係」の文脈でとらえるべきものです。
WTOは、全地球的な唯一の多角的自由貿易体制の枠組みであり、GATTとして発足以来、既に50年以上に亘り、自由貿易を維持発展させることに成功してきました。このような全地球的な貿易枠組みに中国の参加が不可欠であることは論を待ちません。中国は今や世界の経済・貿易に大きなシェアを占めており、中国のWTO加盟は自由貿易の下で世界の諸国が中国と共に新たに発展するための機会を提供することになるでしょう。
日本政府は中国のWTO加盟を一貫して強く支持してきました。皆様御承知の通り、日本と中国は昨年夏の日本の小渕総理訪中を機に、早々とWTO加盟にかかる日中間の交渉を妥結させました。そしてその後中国は11月には米国と、また、最近ではEUとのバイの交渉でも合意に達し、また最近、懸案の米国議会における承認も得られるなど、中国はWTO加盟に向けて大きな進展を示しました。
WTOへの加盟は、中国に対し外国市場へのアクセスの機会を与えると共に、自由で開かれた国内経済体制を構築することにより中国への投資と技術導入が加速する等、発展のための新たな機会と同時に短期的には挑戦ももたらすでしょう。しかし、諸外国との厳しい競争こそが、不断の技術革新と新たな経済発展をもたらすことは、我が国を始めとするWTO加盟国が等しく経験してきたことであり、創意工夫の精神に富む中国の皆様は、必ずやこの挑戦に打ち勝ち、一層の発展を遂げていくものと信じております。私は、中国がWTOに加盟することは、何よりも中国が世界に開かれた経済体制を指向していること、またその実現の過程で我が国をはじめ諸外国との間でも経済的な交流を一層活発に進める条件が整っていくことになる、という点から有意義であると受け止めています。日本としても、引き続き中国のWTO加盟を支援していきたいと考えており、また、中国政府からの要請を受け、日本の経験を学んでもらうための専門家派遣や研修員の受入を現在検討しています。
四つ目として、日中間のアジア太平洋地域における平和と安定に対する取り組みについて言及したいと思います。日中間では、首脳レベルでの頻繁な対話の場において、アジア太平洋地域の安定と平和のために協力して取り組もうとの政治的意思が確認されています。また、この10年来、外交及び防衛当局の間で地域の平和と安定に関する様々な問題に関する対話が、様々なレベルで確実に深まっており、そうした対話は、両国の外相会談、貴国の国防部長と日本の防衛庁長官の会談、中国の人民解放軍と日本の自衛隊間の交流、両国の外交及び国防担当の実務責任者が共に参加する年1回の日中安全保障対話といったチャンネルで行われています。こうした場において、双方が共に自国の国防政策について説明を行うことで安全保障面における二国間の信頼醸成に努めている他、朝鮮半島の平和と安定の問題などについて話し合いが行われています。また、アジア太平洋地域では、6年前に「ASEAN地域フォーラム」という名の対話の場が初めて設置され、その下で、年1回の閣僚による全体会合の他、様々なレベルの専門家会合が開催され、この地域における政治安全保障面での信頼醸成措置の構築に向け努力が行われています。日中両国は共に協力しながら、この対話の場で主導的な役割を果たしつつあります。
また、以上述べた以外にも、国連をはじめとする多くの国際機関において、経済問題、軍備管理、人権など、今日国際社会が面しているいろいろな問題についての活発な意見交換など、日中間では様々なレベル、チャンネルで話し合いが行われるようになってきています。私はこのことを大変良いことだと思っています。来年には上海でAPECの首脳会議が行われ、中国はマルチの場でますます重要な役割を担うことになります。日本としても、上海APECが成功するよう全面的に協力していきたいと思っています。
私は、以上に述べたように日中関係は21世紀に向けて、ますます世界の平和と繁栄のために共に協力していく方向に発展していくと思いますし、その様に期待しております。
5.日中関係
(1)私が以上の「世界の中の日中関係」という視点を強調するのは、皆さんの関心を本来の日中関係からそらそうという下心では決してありません。そこで、次に日中間の両国関係について少し話をしたいと思います。日中関係を語るとき、中国の人たちからよく指摘を受けるのが、いわゆる「歴史認識」の問題と台湾問題です。まず、この二つの問題について話を進めたいと思います。
(2)いわゆる「歴史の問題」について、(イ)日本が過去の一時期、中国との関係において軍国主義という誤った道を歩み、中国をはじめとする多くのアジアの人たちに多大な損害を与えてしまったこと、(ロ)これに対し、日本政府は謝罪もし、また大多数の日本人も申し訳ないことをしたと思っている、そして日本はそのような誤った国策に対する厳しい反省の上に立って、戦後営々と平和国家の王道を歩んできたこと、これは間違いのないところです。
しかるが故に、日本は戦後、断固軍事大国への道を排してきました。その結果、日本は、国際紛争を解決する手段として、武力による威嚇又は武力の行使を放棄することを憲法で約束し、徴兵制を廃止し、核兵器を持つことを拒否し、また遠くまで届くような攻撃的ミサイルを持たず、遠洋を駆けめぐる攻撃的な航空母艦や足長の長距離爆撃機などの戦略兵器を持つことも拒否してきました。また、様々なハイテクを持っていながら外国に一切武器を輸出しておりません。その軍隊も自衛隊と名を改め、専守防衛、すなわちその役目は専ら日本の国土を守ることにある、というのが基本的な考え方です。また、アジアの平和と発展の中においてこそ、日本の平和と発展が確保されるという考え方に則って、アジア諸国に対する経済協力を主軸に、この面で懸命な努力を行ってきたところです。その結果、日本政府の経済援助は91年以来7年連続世界最大の規模となっております。最近中国において一部の人たちが、日本は専守防衛を放棄し、軍事大国への道を歩もうとしていると主張していますが、軍事大国にならないという基本方針は、大多数の日本国民に強く支持されており、これと異なる動きは、日本国民の反対に遭い、実現することはないと確信しております。
私達はいつでも、これらの点について中国の人たちの理解を強く求めています。いずれにしても、両国が「歴史」の問題を乗り越えるにはまだまだ時間がかかりましょう。日本は若者達のこの面での教育をしっかりやるかたわら、中国の方々には、今日の平和に徹した日本人の生き様を理解していただく努力を私たちは今後とも辛抱強く続けていきたいと思っています。皆さん方も、是非一人でも多くの方が日本にいらっしゃって日本の現実に触れていただきたいと思います。
(3)次に台湾問題です。台湾をめぐる状況は台湾において新しい指導者の誕生があり新しい状況を迎えました。今のところ中国の方も、台湾の方も、慎重に抑制した対応をして来ているように思われますが、今や台湾は、朝鮮半島とともに世界の大きなホットスポットとなりました。
台湾問題についての日本政府の基本的立場は、72年の日中共同声明に明確に述べられています。すなわち、「日本政府は、中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であることを承認し、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部分であるとの中華人民共和国の立場を十分理解し、尊重する」ということです。私は、爾来日本はこの共同声明において印されたところを誠実に守ってきたと思います。
ところで、中国の一部に「日本は台湾に対して領土的野心を捨てていない」と主張する向きがあります。これほど私達を当惑させることはありません。私達日本人はそのようなことを考えたこともないからです。また、そのような主張は、台湾の人々との関係でも通るものではないと思います。
日本政府は、また、台湾問題について、この問題が両岸の当事者の間の平和的な話し合いによって解決されることいつも強く求めて来ております。台湾周辺には多数の日本漁船が出漁し、台湾海峡、バシー海峡(台湾とフィリピンとの間)には毎日オイルタンカーも含め多くの日本船舶が運航しており、この点だけからしても、この地域の平和と安全の確保は、日本にとっても大変必要なことなのです。
(4)以上を述べた上で、私は改めて日中関係の大切さを強調したいと思います。
日中関係は正常化以降28年の間に折々の起伏を経験しながらも飛躍的な発展を遂げ、今や多岐にわたる分野での交流が深まっています。両国の首脳や閣僚レベル、国会議員や政党指導者或いは経済界の間での様々な対話が不断に行われ、また、後で述べるようにお互いに重要な貿易相手国となっています。学術、文化、観光、友好交流等も活発に行われ、最近では中国を訪れる日本人は年間100万人を越えています。中国から日本を訪れる人の数も毎年決して少なくありません。現在日中両国政府の間で、中国の方々に日本への団体観光旅行のためのヴィザを新たに発給することが検討されており、これが実現された暁には、この数も更に増えることでしょう。日中両国は、今や内容豊かな相互依存関係を築いており、日中関係はその何れの国にとっても極めて重要な二国間関係であります。また、一昨年の「日中共同宣言」において、将来に向けての日中関係が進むべき方向に指針を与え、また、多くの分野で深まりを見せる日中関係に呼応し、今後の協力に関する33の具体的項目を定めました。それは青少年交流の拡大や、環境保全面での協力、産業技術交流など多方面にわたっています。現在それらひとつひとつが着実に実現に移され成果を収めています。
(5)つい先日、5月20日には、日中文化観光使節団として5千人にも上る代表団が北京に集まり、記念式典を行いました。これ程の規模の交流はこれまで例が無く、日中友好の雰囲気を大いに盛り上げたと思います。また、その際、江沢民国家主席が日本側代表団と会見し、日中関係につき、両国人民の相互理解を増進し、両国友好協力関係を不断に発展させることは、両国人民及び子孫後世の基本的利益であるばかりでなく、地域及び世界の平和と発展にとり有利である、という趣旨の重要講話を述べました。私は、中国の最高指導者があらためてこのような形で日中関係の重要性を訴えたことの意味は極めて大きいと思いますし、正にその講話の方向で日中関係が発展していくことを希望しております。
(6)また、ここで経済的な側面についても一言触れておきたいと思います。日中貿易は国交正常化以来着実に発展、中国にとり日本は第1の貿易相手国でり、99年は日中貿易額は史上最高となりました。外国からの対中直接投資の面でも、実行金額の累計では第2位と大きな比率を占めています。また、既に述べましたように、中国のWTO加盟が実現すれば、こうした経済交流は一層活発なものとなっていくことが予想されます。
政府ベースの経済協力についてみても、中国にとって日本は最大の援助国で、中国が受け取る二国間ベースの援助の半分以上を占めていることを皆さんはご存じでしょうか。日本は(a)改革・開放政策を進める中国の更なる安定と発展、また(b)日中の友好協力関係の更なる強化が、アジア太平洋地域、ひいては世界の安定と発展にとり極めて重要であると考え、1979年以来20年に亘り総額約1,840億元に上る政府開発援助を一貫して実施してきました。日本の経済援助は中国のインフラ整備から食糧増産、環境保全、保健医療など幅広い分野で、中国の改革開放の進展に大きな役割を果たしてきました。今後は、西部地域の開発、分野としては環境、農業、保健・医療、人材の養成等にもっと重点を置いていくことを考えております。更に、日本の経済情勢が厳しい中で中国に対する援助を続けていくためには、この面で、日本が果たしている大きな役割につき日中双方の多くの人達に知っていただくことが益々重要になってきています。
6.結び
以上日中関係の今後の方向性につき話をさせていただきましたが、私は、21世紀における日中関係を考えると、改めて両国の交流、相互理解の大切さ、就中若い人達の交流が大切になっていることを強く感じています。交流の無いところに相互理解はなく、相互理解無くしてお互いの間の信頼関係の構築は期待できません。日本の政府も中国の政府も両国の若い世代の交流を殊の外重視しており、両国の合意の下活発な交流が行われています。
皆さんのように、将来外交に携わる志を持った若い方には、日本との関係に関心を払って頂き、出来れば日本の多くの人達と交流を行って頂ければと思います。その意味からも、興味のある方々にはどんどん遠慮なく大使館を訪ねてきていただきたいと思います。私は、かねてから同僚には、大使館の垣根をできるだけ低くするようにと言って来ております。また、大使館の広報文化部には日本の最新の新聞や雑誌、ビデオを取りそろえた閲覧室を設け、皆さんの来訪をお待ちいたしております。大使館の近くには中国との文化学術交流の仕事を行っている日本の国際交流基金の事務所もあり、その図書館では日本の書籍の貸し出しも行っております。また先程触れました大使館のホームページにも日本や日中関係の情報を多く掲載するようにしておりますので、活用いただければと思います。
他方、私たちも、今後とも皆さんのところに積極的に出かけていきたいと思います。冒頭述べましたように、私の同僚も皆さんにいろいろな分野で話をさせて頂きましたが、このような交流は今後とも活発に行っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
ご静聴ありがとうございました。
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