![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() | ||||||||||
|
トップページ > 報道・広報 > 演説 |
![]() |
![]()
平成12年4月27日
海賊対策国際会議
森内閣総理大臣、
荒井海上保安庁長官、
御在席の皆様、本日、こうしてアジアの各国、各地から海上警備機関の長官各位をはじめ関係者の皆様をお迎えし、「海賊対策国際会議」が初めて開催されますことは、私の大きな喜びであり、御出席のアジア各国、各地の代表の皆様を心から歓迎いたします。
ご承知の通り、海賊対策国際会議は、(ただいま総理より御紹介のありました通り、)昨年11月マニラで開催されました日・ASEAN首脳会議の際、当時の小渕総理が、昨年秋派遣したアジア経済再生ミッションの報告書の提言も踏まえ、その開催を提案し、ASEAN各国の賛同を得たものです。その直前には、「アロンドラ・レインボウ」号事件が発生し、船体・積み荷の盗難と苦痛に満ちた漂流の末に、関係各国の真剣な捜査・救難の努力により、乗組員全員が無事救助されました。ここに、改めて、関係各国のご協力に対し心より感謝を申し上げます。
近年アジアで頻発する海賊問題は、貿易立国たる我が国の輸送ルートへの脅威となっているばかりでなく、地域全体の社会の安定と経済の繁栄に大きな影響を与え得る問題であります。その意味で、今回の海賊対策国際会議は、アジアにおける海賊対策への本格的な取り組みへの力強い一歩になると考えます。
御在席の皆様、
海賊問題は、単なる海上での取り締まりという観点からのみではなく、種々の社会的、経済的な問題が背景にあることや国際的な組織犯罪への取り組みの一環として位置付ける必要性があることを十分認識する必要があり、海賊対策のための地域協力を進めていく際には、こうした認識に立った包括的なアプローチが必要であると考えています。
私は、外交当局の責任者として、以下の四つの柱による総合的対策を検討することを提案したいと思います。
第一に、アジアでの海上武装強盗事件の背景には、1997年夏に起きた、通貨・経済危機の影響などによる貧困や高い失業率などの社会的な要因が指摘されます。我が国としては、アジア経済危機に見舞われた諸国に対し、最大限の支援をして参りましたが、引き続き、貧困対策を含め、アジアの発展のためできる限りの支援を行う方針です。また、同時に、沿岸国の海賊対策に我が国として如何なる協力が可能か、沿岸国との協議を緊密化して参りたいと考えております。
第二に、アジアでの海上武装強盗事件は、公海上よりも、領海内、又は群島水域で発生した件数が圧倒的に多いという傾向がありますが、同時に、複数の国にまたがる複雑な事件が多いとの点が指摘できます。また、一部の海賊事件の背景には、国際的な犯罪シンジケートがあるとの指摘もあります。こうした国際的な犯罪に対応するためには、海上警備機関と陸上の警察機関等の関係機関相互の連携・協力を含め、国際組織犯罪への取り組みを多数国間で一層強化していくことが必要であり、我が国としては、こうした取り組みへの協力を強化していく考えです。
第三に、海洋航行の安全に対する不法な行為の犯人が、刑事手続きを免れることのないよう、国際的な体制が取られることが重要であるとの観点から、私はここで出席国の中で「海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」未締結の国にその締結を呼びかけたいと思います。
第四に、首脳や外相レベルでのASEAN+3(日中韓)会議やASEAN拡大外相会議といった場に於いて、関係各国政府の強い意思として、海賊問題に対する協力の必要性をアピールしていくことが、海賊問題への地域的取り組みのモメンタムを維持していく上で極めて重要であり、そうした場において具体的な協力に合意することができれば、大きな意義があると思います。また、海賊問題は、地域の安定と繁栄に対する脅威であるという認識から、既にARFの場でも取り上げられているところです。海賊問題は、広く「人間の安全保障」といった観点からも国際的な取り組みを強化していく必要があり、我が国としては、こうした議論に積極的に参加していく方針です。
これら四つの柱を中心に、国際的な協力を進めることが、海賊のいない平和で繁栄した海を実現するための第一歩であり、今回の会議がそうした第一歩となることを確信して、私の挨拶を締めくくりたいと思います。
ご静聴ありがとうございました。
平成12年 / 目次 |
| ||||||||||
![]() |