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小渕総理大臣演説
UNCTAD第10回総会における小渕恵三総理大臣スピーチ
平成12年2月12日 議長閣下、各国代表各位、国連事務総長閣下及びリクーペロ事務局長閣下を始めとする諸国際機関の代表各位、並びに御列席の皆様、私は先ず、未曾有の経済危機を官民の一致協力により乗り越え、本日、新ミレニアム最初の大型国際会議であるUNCTAD第10回総会の開催にこぎつけられたチュアン首相閣下並びにタイ政府及びタイ国民の皆様に、深い敬意と感謝の念を表したいと思います。国家間の経済活動の壁が取り除かれ世界経済が一つのシステムに向かって進んできた20世紀を振り返るとき、私は今日改めて、世界は急速に変化したと感じます。 次世紀へ連なる道の出発点において、世界経済一体化の恩恵を如何に活用し、同時にそれに伴う問題に如何に挑戦していくかを議論することは、今後の世界経済システムの安定的発展、ひいては全人類の将来の繁栄のために誠に大事なことであると思います。 議長、 20世紀後半には、貿易・投資・資本の流れが大幅に自由化され、各国の経済制度の調和も日進月歩です。おかげで、地球上のどこにあってもまるで自国内にいるように経済取引ができるようになりつつあります。通信も自由になり、入手できる情報量は飛躍的に増加しました。電子商取引の発達により、近所の店で買い物をする気楽さで、地球の反対側から商品を購入出来るようになりました。正にグローバル化の威力であり、凄みです。 消費者はこれを歓迎し、生産者も競争は厳しくなったかもしれませんが、その一方で世界の情報や技術を容易に入手できるようになり、創意工夫がはるかに容易になりました。大事なことは、こうした効率的経済活動の利便を更に高め、これを世界中の人々が等しく享受できるようにすることです。このことを念頭に我が国は、望ましい国際経済体制の構築に向けて積極的に外交活動を展開してきております。 途上国が21世紀においてグローバル化の利益を十分享受していくためには、こうした高度に情報化された世界経済に積極的に参画していくことが極めて重要です。こうした観点から我が国は二国間協力及び多国間協力を通じ途上国の高度情報通信社会の発達のため資金的支援並びに人材育成のための協力を行います。 議長、 今日、最も重要な国際経済運営の課題のひとつは、WTOを中心とする多角的貿易体制の維持・強化ですが、シアトルでの閣僚会議の経緯をも踏まえ、私は今こそ途上国との信頼醸成が大事な課題であると感じます。今後、途上国の関心事項にも適切に応えつつ、市場アクセスのみならずWTOルールの強化も含む包括的なラウンド交渉を早期に立ち上げることが重要です。途上国も多角的貿易体制から便益を得られることを認識できるよう、我が国は他の国々と共に可能な限り協力したいと思います。 その一環として、途上国の中にはWTO協定実施上の困難を抱えている国もあることに鑑み、我が国は、協定履行に関するキャパシティー・ビルディングのため、今後5年間に途上国の約2500人の方々を対象にした人材育成支援策を行っていく用意があります。更に、特に開発の遅れた諸国からの輸入については、無関税・無枠の特恵待遇を実質的に全ての産品に対して供与し、実施するとのイニシアティブを主要国の参加を得て推進していきたいと考えています。 議長、 グローバル化の中で成長を遂げた多くの途上国諸国の経験はその他の途上国には貴重な教材になると思います。途上国の開発経験の移転を積極的に行うUNCTADの活動に我が国は支援して参りました。一昨年(1998年)、我が国はモーリシャスでのUNCTADアフリカ国際会議に全面的な資金協力を行い、また今般、我が国はタイ政府の提案される貿易開発研究所の将来の活動を支援していくことも検討したいと思います。
グローバル化の下で開発が進むためには、開発に必要な資金が安定的に途上国に供給されることが大事です。グローバル化の中で旺盛な世界の民間経済活動は途上国への資本供給を加速し、それが開発を活発化させています。このメリットを生かすには、大規模かつ急激な資本移動によるリスクを高めることなく民間資本を安定的に確保する必要があり、各々の途上国が資本自由化を注意深く順序立った方法で進めていくことが重要です。途上国側は、自国の金融システムの強化、一貫性のあるマクロ経済運営、貿易・投資環境の整備等に努める必要がありましょうが、先進国側も民間セクターがきちんとリスク評価をした上で投資するよう促す必要があります。 議長、 グローバル化の光が世界をあまねく照らすよう、あるいは構造的に、あるいは一時的な危機のために、この波に乗り切れないでいる人々には支援の手を差し伸べる必要があります。そうした人々が取り残されないよう、私はUNCTADの活動に期待するものであります。 97年央に発生したアジアの経済危機は、グローバル化の中で急速に成長する経済にも脆弱性があり、また半世紀にわたり確立されてきた国際社会の支援システムも必ずしも完全ではなかったということを痛感させました。我が国も、自らの困難な経済状況の中で、危機に直面した国々に対し新宮沢構想をはじめ総計800億ドルに上る支援を表明し、着実に実施しています。これら諸国は昨年(1999年)より回復基調にありますが、その過程で各国が知恵を出し、それぞれの方策で危機を克服されたことに私は感銘を受けました。 今後こうした危機が世界の何処にも発生しないよう、記憶の新しいうちに今次危機の元凶を探り、グローバル化のもたらす困難を極小化するための取組みを続けることが重要です。昨年(1999年)、日・タイ両国政府はこのテーマでシンポジウムを共催し、その成果はAPEC首脳会議に提出されましたが、こうした努力はこれからUNCTADでも続けられるべきでありましょう。我が国は引きつづき、UNCTADのこうした活動を支援していきたいと考えます。 議長、
構造的にグローバル化の波から取り残され、特に重い対外債務を抱えて苦しんでいる国々に対しては債務救済が喫緊の課題であり、昨年(1999年)のケルン・サミットではそのための方策に合意しました。この合意はODA債権の100パーセント削減を含む画期的なものであり、その早期実施が急務です。我が国は今年のサミット議長国として、他のG7諸国とともにこの合意の迅速な実施に向け一層の努力を行っていく所存です。
後発開発途上国48カ国中33カ国が集中するアフリカでは、近年民主化や経済改革などが進んでいる一方で、依然、貧困、紛争、難民といった問題が山積しています。国際社会は最重要課題の一つとして、開発に向けたアフリカの自主的な努力を支援していくべきであり、このことは1998年の第2回アフリカ開発会議での「東京行動計画」においても確認されています。特に今後はアジア・アフリカ間の協力が重要であり、我が国は現在、国連等と共に第3回アジア・アフリカ・フォーラムの準備を進めています。 議長、 世界の長い歴史の中で急速な変化を経験できる世代はそれほど多くありません。私達の世代には、その変化が世界の全ての人々に恵みをもたらすようにする責務があります。 本年(2000年)7月、我が国が主催する先進国首脳会議は2000年という大きな節目の年に行われるだけに、20世紀を総括し21世紀を展望するものになることが期待されています。この会議の目標は、経済のグローバル化や経済取引における情報化が加速する中で、地球上の全ての人々が繁栄を共有し、安定の中にひとりひとりが心の安寧を享受できる世界を実現するための方策を模索することでありましょう。私は今次総会での議論をも踏まえ、本年(2000年)の先進国首脳会議を実りあるものにする所存です。 先進諸国の努力に、貧困と戦い開発を進める途上国の努力が重なって、世界に真の繁栄がもたらされるよう祈念しつつ、私の演説を終わります。 ご清聴ありがとうございました。
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小渕総理大臣演説 / 平成12年 / 目次 |
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