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演説

森総理大臣演説

(日経新聞主催)
「アジアの未来」晩餐会における森総理挨拶

平成12年6月8日(木)

 アブドゥルラフマン・ワヒッド・インドネシア大統領閣下、
 マハディール・マレイシア首相閣下、
 シーサワート・ラオス首相閣下、
 リー・クアンユー・シンガポール上級相閣下、
 スパチャイ・タイ副首相閣下、
 御列席の皆様、今晩は。

 ただ今、御紹介に預かりました森喜朗でございます。
 この度、日本経済新聞社の主催により第六回国際交流会議「アジアの未来」が開催され、この晩餐会において皆様にお話申し上げる機会を頂きましたことに厚く御礼申し上げます。
 本日の会議では、既に、アブドゥルラフマン・ワヒッド大統領、リー・クアンユー上級相から「甦るアジア 新世紀への課題」として貴重な御意見を披瀝して頂いたと伺っております。

 また、本日は、小渕前総理の合同葬がアジアからも多くの方々をお迎えし、しめやかに執り行われました。
 小渕前総理は、経済危機後のアジア経済の回復に向けて全力で取り組んでこられ、昨年のこの席においては、「アジア経済再生ミッション」の派遣を発表され、同ミッションの提言を踏まえ、人材の育成と交流の強化のための「小渕プラン」を発表されました。同時に、九州・沖縄サミットの成功に向けてアジアの声を大切にしたいとのお考えから、アジア各国の首脳の方々との対話に力を入れてこられました。こうした努力が実り、アジア経済の回復の道筋が見え始めた矢先に、小渕前総理は病に倒れ、ついに還らぬ人となられました。ここに心より御冥福をお祈りしたいと思います。
 小渕前総理のアジアを思い、アジアを愛する精神は、私の中に引き継がれております。日本政府のアジア重視の政策にはいささかの変更もないことをこの場で改めて明らかにしたいと思います。私は、21世紀のアジアの安定と繁栄のために全力を尽くす覚悟であり、今宵この場に御列席の皆様の御支援を頂戴できればと存じます。

 御列席の皆様、

 我が国は、来月の九州・沖縄サミットを「20世紀を総括して21世紀を展望する場」として位置づけております。また、7年ぶりにアジアで開催されるサミットであり、アジア諸国と歴史的つながりの深い沖縄で開催されるということから、アジアの声をサミットの議論に盛り込むべく、これまでも様々な機会にアジア諸国の声を伺って参りました。サミットまで残すところ40日余となりましたが、本日のこの晩餐会の機会も含め引き続き、皆様方の御意見を伺って参りたいと思います。
 九州・沖縄サミットにおいては、21世紀が「全ての人が一層の繁栄を享受し」、「一人一人の心に安寧が宿り」、「より安定した世界に生きられる」時代となるとの希望を全ての人が抱けるよう、明るいメッセージを発信したいと考えていますが、21世紀は、アジアにとっても明るいものであるというメッセージとなるように努力したいと思います。

 御列席の皆様、

 21世紀をアジアにとって明るいものとするため、我々は如何なる課題に取り組み、また、我が国としてアジア各国とどのように協力していくべきでしょうか。本日は夕食会の場ということもあり、限られた時間の中で申し上げたいことをすべて網羅する訳には参りませんので、アジアの地域協力の推進という点に絞って、私の考えをお話し申し上げたいと思います。

 21世紀を目の前にして、経済活動や情報の流れが瞬く間に世界全体に伝わるという「グローバル資本主義」が大きな流れとなっています。同時に、共通通貨ユーロの誕生やNAFTAの形成など、地域統合の動きも顕著です。アジアにおいても、アジア通貨危機を契機として生まれた地域協力の気運を大事に育て、開かれた協力を推進する必要があります。

 我が国は、アジア域内におけるヒト、モノ、カネ、情報の流れを活性化するため、人材の育成と交流、貿易・投資、通貨安定化のための金融協力、情報通信分野という4つの分野で協力を強化したいと考えております。

 特に、情報通信分野については、アジアの発展の潜在力は極めて大きいものがあると考えております。日経「アジアの未来」でも、IT革命についての議論が行われると承知しておりますが、九州・沖縄サミットでは、21世紀に向けてますます進展すると予想されるグローバル化の中で、先進国・途上国を問わず人類の繁栄の一つの鍵を握るのはIT(情報技術)であるとの認識の下、IT革命によりもたらされる恩恵を皆が享受できるようにするための方途について意見交換を行いたいと考えております。特に、我が国は、G8議長国として、途上国との協力においてリーダーシップを発揮すべく、次の4本の柱からなる包括的な支援策を打ち出したいと考えております。第一に、ITは途上国においてもチャンスであるとの認識の向上に努めつつ、政策・制度作りへの知的支援を行っていくことであります。第二に、研修・教育を中心とする人造り支援であります。第三に、情報通信基盤の整備・ネットワーク化支援であります。そして、第四に、開発援助を通じたIT利用の促進であります。

 シンガポールのゴー・チョクトン首相は、eーASEAN構想やこれを近隣のアジア諸国に広げるeーASIA構想を提唱されていますが、これらの構想を積極的に推進することが、21世紀のアジアの繁栄を実現する上での鍵を握っていると思います。我が国は、IT人材教育に関する支援、電子商取引のルール作り等を通じて、積極的にeーASIA構想に協力していきたく、できる限り早い時期にASEANとの協議の場を持ちたいと思います。

 こうした地域協力を推進する上で大きな障害となり得るのが、グローバル化の中で深刻化する経済格差の問題です。特に、ASEAN10が直面する課題の一つとして、新旧加盟国間の格差の問題が取り上げられるようになってきております。アジアにおける経済格差の拡大は、地域の安定にも影響を与え得るものであり、我々はこの格差の問題に真剣に取り組んでいく必要があると思います。こうした観点から、メコン河流域開発が再び重要なテーマとなっています。我が国としては、引き続きできる限りの支援を行う方針です。

 御列席の皆様、

 グローバル資本主義は、アジアにとって挑戦であるのと同時にチャンスでもあります。そのチャンスを活かすことができるように、皆様と協力していきたいと思います。また、21世紀の国際社会が種々のグローバルな問題に取り組んでいくにあたり、アジアの多様な経験や考えをより一層活用していくことが必要であります。例えば、現在の国連の安保理の構成は50ヶ国を越えるアジアのメンバーが十分に代表されているとは言えません。我が国としては、安保理の構成が現在の国際社会を反映したものとなるよう9月の国連ミレニアム・サミット等の機会を利用しつつ、安保理改革を進めるべく努力していく考えです。

 アジアの強みはまさに多様性にあります。そういう意味では、アジアは、私が学生時代に青春を捧げたラグビーになぞらえることができます。ラグビーは、大男や俊足の選手ばかりが集まっている訳ではなく、それぞれの体型、足の早さにあったポジションがあります。それぞれのプレーヤーが個性を発揮して初めて、チーム全体として本当の強さを発揮することができるのです。私は、ラグビーではスタンドオフというポジションを務めていましたが、試合において選手の多様な個性をうまく引き出すという役割を担っていました。私は、21世紀においては、我が国が、アジアのそれぞれの国の知恵やクリエイティヴな心を最大限に引き出し、世界という舞台においてアジアが輝けるような「アジアのスタンドオフ」としての役割を果たしていければと思います。

 御静聴ありがとうございました。

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