外務報道官談話
インド政府およびパキスタン政府による外務次官級協議再開について
平成9年3月28日
1. | わが国は、従来より印パ間のカシミール問題につき、両国が自制を働かせ、シムラ協定に基づき、両国間の話し合いによって平和的に解決すべきとの立場をとり、今日まで種々の機会をとらえ両国に対話を呼びかけてきたところ、3月28日にデリーにおいて印・パキスタン間の外務次官級協議が再開されたことを歓迎する。 |
2. | この外務次官級協議は、1994年1月の第7回会合後、カシミール問題をめぐり双方の意見が平行線のまま中断していたが、昨年6月のインドにおけるゴウダ政権、今年2月のパキスタンにおけるシャリフ政権という両国の新政権の間での今回の対話再開の合意により、印パ両国関係改善に向けての環境が改善されたものと評価しており、今後両国間の対話が更に進展することを期待する。 |
[参考]
- 1.カシミール問題
- カシミールはインド亜大陸北部に位置する。1947年8月にインド・パキスタンが分離独立して以来その帰属を巡って印パが争ってきた。第一次印パ戦争が国連安保理決議による停戦を迎えた結果、カシミールは停戦ラインを境界として印パで暫定的に分割領有されることとなり、今日に至っている。なお、1972年7月の第三次印パ戦争後、両国間の懸案は「二国間交渉もしくは両国の合意するその他の平和的手段によって」平和裡に解決すべきことを規定するシムラ協定が両国間で調印されている。
- 2.外務次官級協議
- 印パ両国は、二国間問題および信頼醸成の促進を目的として90年7月に印パ次官級会合を開始。これを通じ、核施設不攻撃に関する協定、軍事演習・部隊移動の事前通報に関する協定、化学兵器全廃に関する共同宣言等の信頼醸成措置がとられ、一定の効果があった。94年1月の第7回会合でカシミールが初めて取り上げられたが、双方の意見が平行線のまま成果もなく中断。
96年6月のゴウダ印新政権発足に際し、ブットー・パキスタン首相(当時)はゴウダ首相に祝意のメッセージを送り、その中で永続的和平実現に向けた対話を呼びかけた。これに対し、ゴウダ首相はブットー首相への書簡の中で、外務次官級協議再開を提案するも、その後もこの協議の枠内で如何にカシミール問題を扱うかに関し印パ間の考え方に乖離があり、また、同9月に印側カシミールにおいて州議会選挙が実施されたことにパキスタンが反発したこともあり、ブットー前首相から印による右提案に対する返答は為されなかった。この間、同12月に行われたSAARC外相会議の際に印パ外相会談が開催されたが、印側はこの会談は「対話の再開を意味しない」旨述べていた。
97年2月のシャリフ・パキスタン新政権の発足後、外務次官級協議開催提案を内容とするシャリフ首相発ゴウダ首相宛書簡が発出され、印が右提案に同意したことを受け、今回の同協議再開となった。なお、この協議再開決定後、英外務省および国連事務局が右を歓迎する旨のステートメントを発出している。
今後、同協議再開を受け、4月の非同盟外相会合、5月のSAARC首脳会合において、各々印パ外相会談、首脳会談が行われ、印パ関係が一層改善されることが期待される。
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