タクシン・タイ首相の訪日
(概要と評価)
平成13年11月26日
11月18日~21日、タクシン・タイ首相が、スラキアット外相他複数の閣僚を帯同し、公式実務賓客として日本を訪問した。その概要及び取りあえずの評価は、次の通り。
1.概要
(1)天皇陛下拝謁、日タイ首脳会談等の公式行事(19日)
- タクシン首相は、天皇陛下に拝謁するとともに、小泉総理と約1時間に亘り首脳会談を行った。日タイ関係者を交えての総理主催晩餐会も催された。
- 首脳会談では、二国間関係に加え、ミャンマー政策、薬物対策等地域協力案件についても、率直な意見交換がなされた。
- 両首脳は、2001年6月の日タイ経済協議の成果である「日タイ経済パートナーシップ枠組み文書」が、今後の日タイ経済関係強化のための指針となるとの見解で一致し、会談終了後日タイ両外相が本件文書に署名した。
- タクシン首相は、その他、アジア地域の投資・貿易拡大のために日タイを含む数カ国の外相による「アジア協力対話」の創設、「日タイ自由貿易協定」乃至「経済連携協定」の検討等を提案した。
- 小泉総理は、両国間の経済関係の強化は、「枠組み文書」を基礎に進めて行くことが重要であるとした上で、二国間関係強化のための様々なアイディアを今後とも機会を捉えて議論して行きたい旨応答。この関連で、留学生交流の重要性等にも言及。
(2)日タイ友好議員連盟との昼食会(20日)
- 河野洋平・日タイ友好議員連盟会長主催昼食会が開催され、日タイ間の議員交流の活発化に向けて意見交換がなされた。タクシン首相は、日本側議連メンバーのタイ訪問を招待した。
(3)経団連との朝食懇談会、タイ経済投資セミナー(20日)
- タクシン首相一行は、経団連との朝食懇談会に出席した他、タイ投資セミナー(タイ投資委員会及び日ASEANセンター共催)に出席し、800人以上の企業関係者を前に、タイの投資政策について説明し、日本からの投資を歓迎する旨のメッセージを発出した。日本側よりは、タイの投資環境改善に向け率直な意見が述べられた。
(4)大分県訪問(一村一品運動視察)(21日)
- タクシン首相が推進している一村一品運動のモデルとなった大分県のプロジェクトを視察し、平松大分県知事をはじめ、地元の方々から温かい歓迎を受けた。
- 平松知事は大分県の地域リーダーのタイへの派遣等、タイにおける一村一品運動を今後とも支援していく旨表明。タクシン首相よりは首相の出身県であるチェンマイ県と大分県との地方間交流構想が提案された。
2.とりあえずの評価
(1)小泉総理とタクシン首相の個人的信頼関係の醸成
- タクシン首相は、2001年2月の首相就任以来、アジア重視を打ち出し、特に、日本、中国を重視し、早期訪日に強い意欲を表明していた。今回、初の首脳会談での率直な意見交換や、総理主催晩餐会での親交を通じて、両首脳間に個人的な信頼関係が醸成された。タクシン首相はこれまで、日本政府要人とのパイプが比較的少ないとされていたことを考えれば、今回の訪問によって、今後更に日タイ関係を増進する基礎が確立したと言える。
(2)日タイ・パートナーシップの拡充
- 両首脳の間で、日タイの伝統的友好関係の重要性を確認し、今後ともパートナーシップの拡充を通じて、二国間関係を一層増進するとともに、地域の平和と安定に貢献して行くことが確認された。
- 特に経済面において、「日タイ経済パートナーシップ枠組み文書」が今後の政策指針として確認されたことの意義は大きい。また、対ミャンマー政策や薬物対策等地域の課題についても、日タイで協力して取り組み、パートナーシップを拡大して行くことについて合意された。
- 他方、今回タイ側より初めて提案のあった、「アジア協力対話」等の構想については、今後我が方として検討を進めるためにもタイ側の考え方を具体的に確認していく必要がある。
(3)日タイ関係を反映した幅広い交流
- タクシン首相一行は、閣僚級9名、国会議員、経済団体代表、一村一品運動に関わるコミュニティー・リーダー、マスコミ関係者を含む総勢104名で訪日。日本各界要人と精力的に交流を行い、幅広い日タイ関係の増進に貢献した。
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