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小泉総理大臣


米国訪問及び第57回国連総会出席
内外記者会見

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平成14年9月13日

小泉総理冒頭発言

 今回の訪米は、ボストンより始まり本日日本向けて帰国の途に立つ。ボストンにおいては、ハーバード大学学長をはじめ若い方々との交流もでき、ブッシュ元大統領と初めてのアメリカン・フットボールの観戦もできた。ニューヨークに来て外交評議会での日米関係についての演説、そして本日国連総会での日本の姿勢に関する演説を終え、この間ブッシュ・アメリカ大統領をはじめ、各国首脳との会談もいくつか行うことができた。テロから一周年たって追悼記念式典にも出席し、改めてテロの卑劣さ、テロ攻撃による損害の大きさ、ご遺族の今なお癒すことができない悲しみを目の当たりにし、テロは二度と起こらせてはならないという決意と同時にテロとの戦いはまだ終わっていない、どこでも起こり得ることと、今後世界各国と協調しながらテロとの戦いを続けていかなければならないという思いを持った。

 私は、今回国連総会各国首脳演説、そしてブッシュ大統領との会談において、イラクの問題、私の北朝鮮訪問に際しての金正日総書記との会談、そして日本の経済構造改革等の問題について率直に意見交換を行った。その中で、私は多くの方々、特に各国の首脳も世界も注目しているイラクに対する対応については、まずイラクが過去何回も決議されている国連における決議を守ること、この重要性と同時に、アメリカがイラクに対する対応をとる場合にも最も重要な視点は、国際協力体制、国際協調であるということをブッシュ大統領にも強く主張し、この考えについてはブッシュ大統領も国際協調の重要性を十分認識されていると感じた。また、私が初めて北朝鮮を訪問し日朝関係局面打開に向かって一歩踏み出したいという話もした。

 私の北朝鮮訪問に際してブッシュ大統領からは力強い支持を頂いた。今後北朝鮮と日本との関係、私としては不正常な関係を一日も早く正常化したいという思いで金正日総書記との会談に臨むつもりである。その会談においては日本における拉致問題、また米大統領が関心を持っている大量破壊兵器の問題、核の問題等についても十分心して私は会談に臨むつもりである。この日朝関係の問題は韓国と米と日本、この三国が緊密な連携・協力の下に、対応していくということを私は今まで公言してきたが、今回の北朝鮮訪問の際にも、そして今後の北朝鮮に対する対応も、日米韓、しっかり連携・協力しながら対応していきたい。この北朝鮮訪問に際しては、ロシアのプーチン大統領からも、また中国政府からも強い支持と歓迎の意向を頂いている。

 私は今回の北朝鮮訪問、日朝関係は、単に日朝関係の問題にとどまらない、朝鮮半島の平和と安定、ひいては国際社会の平和と安定にも資するものだと思い、敢えてまず首脳同士が意見交換をしない限り、現在の日朝関係は一歩も進まない、という感触を得たからこそ決断したのであり、なおかつ私が日本の総理大臣に就任以来、日朝の国交正常化問題については、過去、現在、将来、これらの色々な懸案があるが、この問題を包括的に取り上げようと、真剣に日本は正常化交渉に取り組んでいるのであるから、北朝鮮側も誠意ある対応を期待していると常々言ってきた。

 さる8月30日、私は金正日総書記と会談するために9月17日北朝鮮を日帰りで訪問すると発表した。この発表自体電撃的であると多くの皆様は思われるが、1年近く前から事務当局同士が水面下で何回も交渉を行ってきた。私自身もその報告を受け、北朝鮮側も誠意ある対応をしたいという意欲を感じたからこそ私は今回北朝鮮訪問を決断した。もともと外交交渉としては異例のはっきりとした成果が見えない中でのトップ同士の会談である。リスクが大きいのではないかとの批判も承知の上である。しかし、私はリスクというよりもむしろ今後日朝関係を打開する、正常化に持っていけるようなチャンスであると受け止めてこの訪問を決断した。分からない部分も多々あると思うが、しかしまず一度も会ったことのない、それも50年以上経って、日本の総理大臣が北朝鮮のトップと一度も会っていないというこの異常な関係を今回の訪問によって一歩でも二歩でも正常化に向けて、一つの可能性なり糸口を見出すことが出来ればと思う。

 また日本としては、国際社会の中で相応の役割を期待されているということを各国との首脳との会談で改めて痛感した。アフガン等の問題においてもカルザイ大統領との会談においてアフガンの国づくりのために出来るだけ協力を行うという、特にブッシュ大統領、カルザイ大統領、サウジアラビアの外務大臣とともに幹線道路建設に日本も協力しながら、この建設に役立とうという支持を表明することが出来た。私は今回の国連総会の演説においても世界の平和と繁栄に向けた国連の役割の重要性、そういう視点から加盟国の一層の協力を訴え、我々が直面する色々な課題、テロの問題、平和の定着と国造り、環境と開発、核軍縮への我が国の考え方を表明した。そして国連改革の必要性も訴え、今後とも日本は最大限国連の強化、発展のために努力をしていきたい。

 結論を申し上げると今回の訪米は、テロ1周年という時期をはさんでの訪米であり、各国首脳と意見交換が出来、私にとっては、特に今後北朝鮮への訪問を控え、色々な会談の中で、適切な助言も頂き日本の外交の果たす役割も大きいなという認識を強くし、有意義な訪米であったと関係各位のご協力、また暖かい歓待に厚く御礼を申し上げたい。

質疑応答

(質問)日朝関係に関連し、総理は「拉致問題の解決なくして国交正常化交渉はない」と述べられているが、現時点で拉致問題について進展する感触如何。

(小泉総理)今までの水面下の交渉で何度か日本は拉致問題を取り上げた。その都度北朝鮮側は拉致問題は存在しないと全く否定するか、拉致の問題を取り上げる会談ならば会談する必要がないといって席を立つこともあったようである。しかし私は総理に就任して以来、日本が重要だと思っている懸案は如何に相手が怒ろうが拒否しようが、主張すべきことは主張すべきでそれで相手が席を立つなら仕方がないという指示を交渉当局者に出していた。その結果、何回目かの会合で拉致の問題を取り上げても相手側は席を立つこともなく交渉を中断させるようなこともせず、交渉は続いてきた。そういう中で日朝の外相会談、赤十字会談が行われ、局長会談もオープンで行われるようになってきた。私の主張、日本政府の姿勢、全く一貫して変わらぬ中で、北朝鮮もこの交渉に粘り強く今まで中断されることなく行ってきたということは、私もそれなりに日朝国交正常化に向けての誠意ある態度が出てきたと感じることが出来たからこそ、私は今回訪朝の決断をした。今の時点で日本側の考える拉致問題、 北朝鮮側の考える拉致問題がどう合致するのか違うのかまだ分からない点もあるが、私はこの拉致問題を棚上げして日朝国交正常化はありえないということを何度も発言しており、そういう中で北朝鮮側が会談に応じてくるということ自体、何らかの誠意ある対応がなされるのではないか、またなされなくてはならないと思って会談に臨むつもりである。

(質問)イラク問題について、先ほど総理はブッシュ大統領は国際協調の重要性は十分認識していると述べられたが、一方で外交努力が成功しなかった場合は他の道を考えるとも述べられている。実際に武力行使となった場合の日本政府の対応如何。

(小泉総理)結論から申すと、武力行使が行われたらどう考えるかということに対して、未だ武力行使は行われていないわけである。そういうことの予断について今から私は答えるのは、適切ではないと考えている。そういう想像の下に、今あらゆる外交的努力がなされている。湾岸戦争、クエートをイラクが侵略した際の、あの湾岸戦争の際にも、そして昨年の9月11日のテロリストの攻撃に際しても、世界が大きな憤りを覚え協力してこの問題に当たった。軍事力行使は最後の手段であると、万策付きてやむを得ないというところまで、ぎりぎり国際協調を得ることができるような対応をすべきだと。アメリカ合衆国は政治的にも、軍事的にも、経済的にも世界最強だということは誰もが認めるところであると思う。強ければ強いほど最後の手段というのは使わないに越したことはない。国際協調体制を取ることができるように今後も一段の努力をすべきだということを、色々な例を挙げながら、私はブッシュ大統領に話をした。ブッシュ大統領も十分私の考えを十分理解してくれたものと思う。 そういうことから、今の時点で攻撃したらどうかという予断に対して答えることは差し控えたいと思う。

(質問)どのような要素から北朝鮮訪問は成功か失敗かを決定するのか。

(小泉総理)私は、北朝鮮と日本との関係というのは、過去の問題と現在の問題と将来の問題があると思っている。この問題を包括的に取り上げたい、総合的に取り上げるべきだと思っている。今まで金正日総書記と直に会った首脳の中で、金大中韓国大統領、プーチン・ロシア大統領から直にあった印象なりを伝えてもらい、また韓国は韓国なりに、ロシアはロシアなりに、助言というか意見を率直に自分に聞かせてもらった。また昨日は、ブッシュ大統領と直接核の問題を話し合った。その中で私もはっきり言った点は、北朝鮮側にとって最も利益になることは何か。それは、私が思うに、北朝鮮が国際社会の中で、責任ある一員になることだと。こういう点について私は包括的に色々な問題を取り上げて、国際社会に窓を開くように、国際社会と協調するために対話路線を積極的にとるということが、北朝鮮にとっても、日本にとっても、朝鮮半島にとっても、世界にとっても一番プラスになるんだということを率直に伝えたいと思っている。 そういうことによって北朝鮮側も現在の日朝の敵対関係を協調関係・協力関係にしようかなと前向きの態度を取ってくれれば、私はこれは大きな成果と言えるのではないかと。そういう気持ちで私は金正日総書記との会談に望みたいと思っている。

(質問)北朝鮮について、昨日ブッシュ大統領との会談で大統領は大量破壊兵器、ミサイル開発、通常兵力の問題も述べられたと聞いているが、通常兵力削減について小泉総理はどの程度具体的に日朝首脳会談で金正日総書記に話をされるつもりか。

(小泉総理)北朝鮮は、韓国との国境沿いに通常兵力を集結させている。これは、核兵器ではなくてもいわば国境線の近くにそういう兵器なり兵力が大きく存在しているということは、韓国側にとってみれば、頭に銃を突きつけられた状態で話し合いを始めるという意向を持ってもおかしくないと思う。そういう敵対意識を捨てて、協調路線をとることが日朝においても南北朝鮮半島の平和についてもプラスではないかと思う。この日朝間の国交正常化の問題は、同時に南北朝鮮、韓国との関係も重要であるので、先ほども私は申し上げたが、韓国とアメリカと日本が緊密な連絡を取ると、韓国の頭に銃口を突きつけて交渉するというようなことは、日本にとってもアメリカにとっても似たような意味があるから、そういう態度は取るべきでないと、むしろ対話路線、協調路線、戦争の準備ではなく国民を豊かにするための準備に変えることが、北朝鮮にとっても、日朝間にとっても、朝鮮半島にとってもプラスになるということを、私は強く金正日総書記に話したいと思っている。



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