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小泉総理大臣


日露首脳会談(概要)


平成15年1月10日


 1月10日12:06から14:57にかけてモスクワにおいて小泉総理とプーチン大統領との間で日露首脳会談が行われた(12:06-13:47は少人数会合、13:51-14:57は全体会合)ところ、概要以下のとおり。


1.冒頭発言

(1) プーチン大統領より、日露関係はアジア太平洋地域のみならず国際社会全体にとっても重要であり、今回の総理訪露が日露関係発展への大きな刺激となることを期待する旨発言した。

(2) これに対し総理より、自分は日露関係に新たな息吹を吹き込むために訪露した、日露間には対立点もあるが、より多くの協力しなければならない分野がある、領土問題については、この問題を解決し平和条約をできるだけ早く締結する決意である、日露関係の潜在力を十分に生かすため、あらゆる分野で関係を発展させていかねばならない旨述べた。

(3) 総理より、昨夜ボリショイ劇場でクルミ割り人形を鑑賞したが、劇場の雰囲気、観客の暖かさ、チャイコフスキーの音楽といったすばらしいロシア文化の一面を見られた旨指摘し、プーチン大統領は暖かい評価に感謝する旨発言した。


2.日ロ関係発展の重要性

(1) プーチン大統領より、日露関係発展は全世界のためにも有益であり、短期的でなく戦略的な意味において日露は互いを必要としている旨述べた。

(2) これに対し総理より、ソ連からロシアへの変化は、ロシア自体のみならず国際社会全体の変化であり、革命と呼んでも良い、かかる変化を的確に読んで日露関係を発展させていくことが必要であると述べた上で、以下の心暖まるエピソード、辛い歴史を紹介した。プーチン大統領は黙って注意深く聴いていた。

(イ) 1783年にロシアに漂着した大黒屋光太夫がロシア側の支援を得て帰国を果たしたというエピソード。

(ロ) 日露戦争後6千人のロシア人捕虜が松山で収容された際、手厚く遇された上、松山での死亡者の墓地が整備され、毎年3月に慰霊祭をやっていること。

(ハ) シベリア抑留:60年前ソ連が日ソ中立条約を破り参戦した結果、60万人の日本人がシベリアに抑留され、うち6万人が現地でなくなったという辛い過去。

(3) さらに総理より、以下の発言を行った。

 日本は米国との間でも激しい戦争を行ったが、今では良好な友好関係を築いている。露仏・露独間でもかつて激しい戦争があったが、現在は良好な状態にある。また、日中間、日米間の貿易高は日露間のそれぞれ20倍以上、40倍に達している。
 日露間においても、その潜在力を最大限に発揮するため、領土問題を解決し、日露関係を完全に正常化することが必要である。


3.領土問題・日露行動計画

(1) プーチン大統領より、以下の通り発言した。

 日露行動計画は、最も困難な問題を含むあらゆる問題につき協議する用意が双方にあることを示している。いかなる形で平和条約締結問題を解決するにせよ、その解決の可能性を追求する文書としてこの行動計画は有益であり、今後の交渉の基礎となる。両国関係の改善を阻害しているファクターを取り除くことが必要である。

(2) これに対し総理より以下の通り発言した。

 日本政府は、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという一貫した立場を堅持している。幅広く日露関係を発展させながら領土問題を解決し、平和条約の締結に努めていきたい。
 我々が合意する行動計画は今後の日露関係の「海図」となるものであり、今後は、これを具体化し成果を上げていくことが重要である。

(3) これに対しプーチン大統領は、行動計画は、日露の歴史上初めてサインされる新しい種類の文書であり、これが今後の日露関係の「海図」となるという評価に同意する旨述べた。


4.テロ対策

(1) プーチン大統領より、本日総理がテロ事件の舞台となった劇場で献花したことに感謝する、テロとの闘いでの日本よりの支持及び共同行動は重要である、現在調整が進められているアフガン・タジク国境での麻薬対策のための日本側よりUNDCPを通じるロシア国境警備隊への協力も極めて重要であり、このような協力を継続するべきである旨述べた。

(2) これに対し総理より、劇場占拠事件に際しては、貴大統領の決断は辛く厳しい立場におかれた上でのものであったと思う、貴大統領の指導力に敬意を表する、また、タジク・アフガン国境での麻薬流出防止のための協力は、日露協力の重要な柱である旨述べた。

(3) 同席のイワノフ外相より、麻薬流出の防止に関する協力につき謝意表明の上、テロリズムとの闘いでも二国間の協力が進んでいることを歓迎している、最近、テロに関する二国間協議が行われ、これを今後とも継続していくことで合意されている旨発言があった。


5.エネルギー分野での協力

(1) 総理より、この分野での協力の重要性を強調したのに対し、プーチン大統領より、太平洋パイプラインプロジェクトは興味深い、ただし、資金確保の問題、経済的採算性につき検討する必要がある、サハリン・プロジェクトにも関心がある旨述べた。

(2) さらに総理より以下の通り述べた。

 この分野での協力は、日露の近接性、ロシアの潜在性にかんがみれば、日露協力の重要な柱となる。サハリン・プロジェクトは、ロシア最大級のプロジェクトであり、日本は既に10億ドルを投資しており、最終的には80億ドル投資を行う。太平洋パイプライン・プロジェクトには我々も注目している。建設規模は50億ドル以上と言われ、日量100万BDの輸送が可能となる。これは、シベリアの開発にも貢献する。石油価格の安定化にも役立ち、この機会に日露の協力の推進を確認したい。

(3) これに対し、プーチン大統領より、日本側がこの分野における協力の拡大の用意を表明していることに感謝する旨述べた。


6.その他経済関係

(1) 総論

 プーチン大統領より、日露経済関係の発展の水準の低さ、及び既にロシア国内法上の問題は除去されていることを指摘の上、貿易投資促進機構は多くの問題を解決する上で有益なものとなろう旨発言した。これに対し小泉総理は、貿易投資促進機構の早期創設を目指して努力したい、近く我が方の提案 を伝えたい旨発言した。

(2) 漁業

 プーチン大統領より以下の発言があった、

(イ) 北方四島周辺の操業枠組み協定の延長につき合意できたことは良かった。この協定は両国関係にとり有益なものであり、経済的なバランスを維持しつつ、この地域での漁業分野での協力を継続する用意がある。
 日露間の密輸・密漁分野での協力とその進展に関心がある。海洋資源の保存は、日露双方にとっての関心事項である。

(ロ) これに対し小泉総理より、水産分野での日露の協力は、伝統的に重要な協力の柱である、密漁・密輸の分野においても、今後とも協力していきたい旨述べた。

(3) 原子力分野での協力

(イ) プーチン大統領より、クルチャトフ研究所からプルトニウム処分と原潜解体を進めるとの提案が行われているが、この提案を支持することが双方にとり有益である、また、日露非核化協力の体制見直しが重要である旨発言した。

(ロ) 小泉総理より、ITERの青森六ヶ所村への誘致について協力を要請した。


7.治安・防衛分野の協力

(1) プーチン大統領より、防衛協力の分野での協力の進展に満足している、高いレベルでの国防責任者の往来が行われており、これらは両国間の信頼の雰囲気を醸成する、石破防衛庁長官の訪露が具体的な成果をもたらすことを期待する旨述べた。

(2) これに対し、小泉総理より、2002年10月日本での国際観艦式にロシアの艦船バリャーグも参加したが、その大きさは一際人目を引いていた、この分野での協力の推進は、二国間協力のみならず、地域の安定のためにも重要である旨述べた。


8.「ロシアにおける日本文化フェスティバル2003」

(1) 小泉総理より、2003年は、「ロシアにおける日本文化フェスティバル2003」として、多くの文化行事を行い、相互の理解を促進しようと考えている、また、サンクトペテルブルク建都300周年の機会に同地を訪問することを楽しみにしている旨述べた。

(2) これに対しプーチン大統領は、「ロシアにおける日本文化フェスティバル」の成功のために尽力したい、300周年記念行事への貴総理の来訪を歓迎したい旨述べた。


9.北朝鮮

(1) 総理より、北朝鮮のNPTからの脱退表明は遺憾であり、日露がこの問題につき共通の認識を示すことが重要である、国際社会も注目している旨述べ、プーチン大統領はこれに同意する旨述べた。

(2) 総理より、訪朝に際してのプーチン大統領からの助言に感謝する、日本は拉致問題および安全保障上の問題を解決して日朝国交正常化に至ることが重要と考えていると述べ、ロシアの協力の重要性を強調した。さらに、プーチン大統領と金正日主席の関係もあり、また、ロシアは北朝鮮に対して伝統的な関係を有しているので、それを利用して協力をお願いしたい旨述べた。

(3) これに対しプーチン大統領より、ロシアとしても可能な限りの協力をしたい、金正日は話ができる人間であると思う旨述べた。


10.イラク

(1) プーチン大統領より、イラク問題について世界全体の関心は、イラクが実際に大量破壊兵器を持っているかという一点に注がれるべきであり、もしそれが見つかれば撤去しなければならない、大量破壊兵器があるかどうかは、ブリックス委員会の分析に基づき国連安保理が判断することになる旨述べた。

(2) これに対し小泉総理が、日本として、イラクに更なる重大な違反があった場合、ロシアを始め国連安全保障理事会が一体とした対応を維持していくことが重要であると考えている旨述べたところ、プーチン大統領は、その立場はロシアの立場と非常に近い旨述べた。



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