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小泉総理大臣


G8エビアン・サミット
小泉総理大臣記者会見
(概要)


 6月3日、エビアン・サミットに出席した小泉総理は、同サミット国際会見場において、内外報道関係者に対する記者会見を行ったところ、概要以下の通り。


1.冒頭発言

 エビアンと言うと、日本の国民にとっては水で有名である。しかし、実際エビアンを訪れて、すばらしいのは水だけではなく、レマン湖の湖畔という美しい景観、おいしい食事、そしてシラク大統領をはじめ、エビアン市民の心からなるおもてなし、さらにスイス政府の安全面へのきめ細かなご配慮、ご協力に対し心から感謝を申し上げたいと思う。また、会議においてシラク大統領の議長としての卓越した采配ぶりには心から感服している。当初、イラク問題等の問題をめぐり、対立が指摘されて、果たしてこのエビアン・サミット、各国とも協調体制はいかがかと懸念する向きも多かったわけであるが、実際に会議が始まってみると、途上国とG8サミット首脳との対話、そして各国首脳との話し合いにおいても、一時的な対立は永続的な対立ではない、今後イラク問題も、北朝鮮問題も、あるいは世界経済、環境問題についても、国際協調の重要性の認識を共有することができたと思う。シラク大統領の名采配ぶりに改めて敬意を表したいと思う。

 私にとり3回目のサミット出席であるが、この間各国首脳との対話、懇談を通じて、個人的な親近感、信頼感を築いた上での今回のサミット会合ということもあり、私にとりきわめてうち解けた雰囲気の中で率直かつ有意義な会議が行われたと思っている。主な議題としては、世界経済、イラク問題、北朝鮮問題、テロ対策、SARSやエイズの感染症対策、そして環境問題の重要性、これが主に論じられた。私からは環境問題に関しては、京都議定書の早期発効の重要性を強調した。日本政府は経済開発と環境保護を両立させようと思っており、懸命に取り組んでいる。かつては、経済発展のためには多少環境保護を犠牲にしてもいいのではないかという考えもあったが、これからはそうではない。環境保護と経済発展を両立させなければならない。この両立させる鍵は科学技術という点を特に私からは強調した。また、日本の経済再生、特に構造改革、これについては、各国からも関心が寄せられたが、日本経済の発展・成長は日本国民だけの問題ではなくて、世界各国が日本の経済成長を望んでいる。そういう点から私も構造改革に積極的に取り組んでいく。今後も改革を進めて、日本の経済発展が世界の発展に貢献することができるように、この改革路線を邁進していきたいということを強調した。

 また、北朝鮮の問題については、多くの国々は核開発プログラム、核の問題に関心が行きがちであるが、日本にとり、核の問題もさることながら、拉致問題も同様に重要である。拉致の問題、核の問題、総合的に、包括的に取り上げていく。そして、北朝鮮に対しては、イラクに対する対応とは違って、平和的、外交的解決を追求する、ということにおいて共通の認識を持つことが出来た。

 いずれにしても、このG8サミットは世界で最も経済的に発展した国々の集まりとして出発したが、現在ではアフリカ諸国、あるいは途上国の主要な国々も今回招待され、先進国も発展途上国もお互い協力していかなければならない、そういう認識を共有できたと思っている。

 改めてシラク大統領とフランス政府関係者、スイス政府関係者の暖かいご配慮とご協力に感謝をしたいと思う。ありがとうございました。


2.質疑応答

(1) 問. 今回のサミットで、総理は、国際協調の再構築に道が開けたという発言を冒頭したが、日本として今度はイラクに対して具体的な貢献策が求められると考える。総理はイラク復興に自衛隊を派遣することについては、国際情勢等も睨みながら判断していくとしたが、国連の決議案が採択され、国連で準備的会合も開かれると聞いている。現在の時点で、自衛隊を派遣する余地というのはあると考えるか。新法の制定を含め現時点の考え如何。

  答. 今までも日本としては、イラク問題に関して、戦闘行為には参加しないが、イラクの戦後復興、国づくり、これに対しては積極的協力していきたいと表明してきた。日本として独自にイラクの復興、国づくりに協力できること、またORPHAを通じて協力できること、国際機関を通じてできること、さらに国連の決議が採択されればそれを通じてできること、これについて積極的にイラクの復興、復旧については協力していくということを表明してきた。現在でもその基本方針に変わりはない。
 そこで、日本の自衛隊の派遣、あるいは自衛隊の協力についての今の質問だが、これはすでに周辺国に対しては、法律の範囲内で、自衛隊の輸送機と人道支援の支援をこれまでも行ってきた。これからも、本日日本に帰国にしてから、自民党はじめ与党の皆様と相談して、現行法の範囲でできること、さらに国際情勢を睨みながら、自衛隊として、イラク国民が必要としていること、イラク国民がどういう分野での協力を期待しているか等、状況を見極めて、自衛隊が行ったほうがいいなら自衛隊を派遣する、必要ないなら派遣しない、全般的な状況をみながら、与党の皆さんとよく相談して、帰国してから決定したい。

(2) 問. G8首脳会合において、ブッシュ大統領が強いドル政策を支持する旨表明したが、これによって円はどのような影響を受けると考えるか。また、円安を期待するか。

  答. この問題は、サミット以前のブッシュ大統領とのテキサスにおける会談の際にも、ブッシュ大統領から強いドルを望んでいるとの発言があった。日本は今改革に取り組んでいるが、アメリカ、あるいはイギリスは、自国の通貨が安くなっていく時に経済改革を始めた。その点日本は違い、30年前に比べてドルと円を比べると円が3倍高くなっている。イギリスと日本を比べると、ポンドと円では円が5倍強くなっている。しかも、ある民間の国債の格付け会社によると、日本の国債の格付けはボツワナ以下である。財政状況も良くない中で円は何故こんなに強いのか、このような中でブッシュ大統領は米ドルが強いことを望んでいる、という発言をされた。
 この発言に対し、私は直ちに歓迎の意を示すともに、ドルが強いことを歓迎すると表明した。どちらかといえば、私は、今、円については実体以上に高く評価されすぎていると考えている。
 どの程度の円安が良いかについては、私が言うべきことではなく、市場が判断することである。また、円が強くなる、安くなる、ドルが強くなる、安くなるという問題は日米間のみならず世界の経済に大きく影響する問題であるので、私の口から円安が良いとか円高が良いとかいう判断は言うべきではないと思っている。

(3) 問. 総理に北朝鮮問題について伺う。このG8で北朝鮮の拉致問題と核開発問題の包括的な解決という方向性が確認された。この確認を踏まえ、今後具体的にどのように交渉を進めていくつもりであるか、その展望を伺うが、まず、現在の三カ国協議に日韓が入ることへの現時点での展望をどう描いているか。また、このG8では、北朝鮮に対しては中国の果たす役割が特に指摘されたが、総理が日米会談で「対話と圧力」という新たな方針を示されたが、この「圧力方針」については、中国及びロシアは必ずしも全面的に同調しているようには見えない。この「圧力方針」に関して特に、中国にどのような働きかけをしていくつもりであるのか、その点を伺いたい。

  答. 北朝鮮に対する対応については、先のブッシュ大統領との二者会談においても、ブッシュ大統領は、中国の役割を高く評価されていた。中国の働きかけによって、米国、中国と北朝鮮の三者協議が行われたが、これから仮に、三者協議が再び行われる場合であっても、近い将来協議が行われる場合は、日本と韓国を含めることが不可欠だという認識を、同会談でも確認した。「対話と圧力」という言葉であるが、今回のサミットにおいても、北朝鮮の問題については、極めて熱心な議題になった。特に最終日の自由討議の場においては、この北朝鮮への対応が大きな焦点になった。
 プーチン大統領をはじめ、各国首脳が、北朝鮮問題に対し、強い関心を持っていることがわかった。特に拉致の問題については、なかなか理解し難い、という質問を受けたが、率直に言うと、私も理解し難い。なぜ北朝鮮は日本人を拉致する必要があったのか。拉致された本人とご家族の辛さ、ご苦労、これは本当にひどいものだ。なぜ拉致するのか、この非常識さ、非人道的な行為が、私も本当にわからない。しかし、現実に残った問題である。日本の拉致問題に対する関心の強さと、拉致問題と核問題は同列に、包括的に扱わねばならないという問題について、各国首脳から強い共感と、日本の対応について強い支持を頂いたと受け止めている。特に、プーチン大統領からは、北朝鮮との友好国との立場から、非常に貴重なご意見を頂いたと感じている。金正日総書記に対する見方や対応振りについて、極めて率直なお話を頂いた。
 私も直に、昨年の9月11日、金正日総書記と会談を行ったわけであるが、今後北朝鮮に対しては、各国が関心を持つということが、北朝鮮を世界に開かせるために良いのではないか。暴発しないように、「圧力」という言葉を使うか、「働きかけ」という言葉を使うか、それは人様々である。しかし日本だけで対応できる問題ではない。また、日本と韓国と米国の緊密な協力の上に、友好国である中国とロシアとの関りも非常に重要であると思う。北朝鮮は、米国と日本を敵と見ているが、韓国に対しては38度線という朝鮮戦争の経験があるが、同じ民族としての親近感もあると思う。中国とロシアは、友好国である。北朝鮮のまわりの国々は、対応がそれぞれ違っている。しかし、一致しているのは、核問題についての脅威、これを完全に払拭しなければならないということと、あくまでも平和的、外交的解決を追求しているという認識である。特に、昨晩の自由討議においては、各国首脳がそれぞれの経験を踏まえ、またイラク問題への対応を踏まえて、率直な、充実した意見交換を行うことができたと思う。首脳の意見を参考にし、各国と協力しながら、日本は粘り強く、平和的解決を求めて、努力していきたいと思う。

(4) 問. 日本としては、北朝鮮問題を国連の安全保障理事会に持ち込みたいと考えているか。あるいは、シラク大統領にこの話を持ち込み、協力を得たいと考えるか。

  答. 日本として、北朝鮮の問題を国連の場に持ち込みたいか、ということだが、北朝鮮はこれを望んでいない。イラクの場合とは状況が違う。また、北朝鮮は米国との二国間協議を望んでいたことをよく認識しなければならない。米国は北朝鮮との二国間会議には応じない、と言っていたのを、中国の調整と協力により、北朝鮮と米国、そして中国の三者協議の場が持たれた。今後、日本と韓国が入ることは不可欠であると思う。中国とロシアも、当然重大な関心を抱いている。その前に、すぐ、国連の場で協議という話は、現在の段階では時期尚早ではないかと思っている。できるだけ国連の場に持ち込まなくても、北朝鮮が国際社会の責任ある一員として、核を完全かつ速やかに放棄し、国際社会が抱いている懸念を払拭し、また、日本の拉致問題にも対応して解決する、という立場を北朝鮮が取れば、何も国連の場に持ち込む必要はないわけである。そのような働きかけをこれからも続け、将来、国連の場に持ち込むべきか否かという問題は、まだまだ交渉を続けて判断するべきであると思う。



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