サンクトペテルブルクにおける日露首脳会談(概要)
平成15年5月30日
5月30日11:10~11:38まで、サンクトペテルブルク建都300周年記念行事出席のため訪露中の小泉総理がプーチン大統領との間で日露首脳会談を行ったところ、概要以下のとおり。
本首脳会談は、プーチン大統領も学んだ「上級総合スポーツ学校」にて行われたが、会談に先立ち両首脳は柔道の練習を視察した。その際、指導のために来訪中の山下泰裕東海大学教授よりロシア側に対し柔道着が贈呈された。また、日露両国の柔道チームが山下教授の指導の下日本において共同合宿を行うことが決定された。
1.日露関係全般・平和条約締結問題
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総理より、1月の公式訪露の際のロシア側の歓待に感謝した上で、以下の趣旨を述べた。
1月の訪露の際に採択した「日露行動計画」は、領土問題を解決して平和条約を締結するとの目標に向け、様々な分野で日露間の交流を拡大することとを定めている。これは、国民間、指導者間での信頼感、親近感を高めるために重要であり、自分は平和条約締結のためにこれはよい方法だと考えている。
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(2) |
これに対しプーチン大統領より以下の趣旨を述べた。
(イ) |
ロシアとしては、極めて重要な問題である領土問題を解決したいとの強い気持ちを持っており、これを先延ばししたり、「沼に埋めよう」というような考えは持っていない。心から日本との関係の拡大を希望しており、これは、二国間のみならず国際社会全体の文脈の中で、日露関係の進展が重要であるとの考えに基づくものである。ロシアにとり日本は重要であり、日本にとってもロシアは重要であると思う。この関係に障害があってはならない。
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(ロ) |
平和条約締結問題は開かれた目で見る必要があり、これが国内政治に利用されることは避けるべきである。個人的利益からこの問題を煽り立てる人もいるかもしれないが、悪循環に陥らぬよう、問題解決を目指すべきである。日露専門家間の協議・作業を一層進めるよう自分としても上から指示を与える考えである。
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2.日露経済関係
(1) |
総理より以下の趣旨を述べた。
(イ) |
「行動計画」が順調に実現されてきていることは喜ばしい。例えば、エネルギー分野では、サハリンプロジェクトに大きな進展があった。また、原潜解体分野での日露協力も近く具体的に動き出す。こうした協力は、相互依存、相互互恵の観点から非常に重要である。日本には資源がないがロシアは資源が豊富である等、日露は基本的に相互補完的関係にある。相互依存、互恵の関係を進めることは友好の機運を盛り上げることにつながる。
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(ロ) |
特にナホトカ・パイプラインプロジェクトは日本において関心が高い。これが実現すれば、互恵の観点から極めて意義深く、期待している。
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(2) |
これに対しプーチン大統領より以下の趣旨を述べた。
(イ) |
極東の開発の作業の進展(サハリンプロジェクト)及びナホトカ・パイプラインについての協力の進展を歓迎する。中国ルートのパイプラインはより早く、より安くできるとの議論もあるが、シベリアの未開発の資源を開発し、アジア太平洋地域をはじめとする世界市場に送ることが重要であり、この観点から、専門家が注意深く検討することが重要である。
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(ロ) |
非核化協力の分野で日本の協力が他国に比しても進んでいることを評価している。
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3.プーチン大統領への訪日招請
総理よりプーチン大統領の訪日を招請したのに対し、プーチン大統領は、喜んで訪日したいが、来年3月の大統領選挙もあり日程についてよく考える必要があるので今後相談していきたい旨述べた。
4.極東における演習
総理より、日露防衛交流の促進を重視しているとしつつ、ロシアが今夏極東において計画している演習の一部が北方四島で行われるとの話があり懸念している旨発言したのに対し、プーチン大統領は、総理の問題意識は受け止めた、日露関係に悪影響を与えることにならぬよう話し合っていきたい旨述べた。
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