1. 小泉総理の発言 |
今後、日本とASEANが、経済、政治・安保など様々な分野での協力関係を強化し、日本とASEANを中核として、「東アジア・コミュニティ」の形成に向けて協力したいと述べた上で、そのための方策として特に以下を述べた。
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(1) |
経済分野 |
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(イ) |
域内の様々な経済連携を網の目のように張り巡らせること。 |
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(ロ) |
投資の活発化、金融協力、IT協力などを通じて、この地域全体を近代的な経済地域とすること。 |
(2) |
開発・社会分野 |
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(イ) |
人材育成分野において、今後3年間で15億ドルを超える規模の協力を行う用意がある旨表明。人材育成にかかわる日ASEAN間の交流は、今後3年間で約4万人になる見込み。 |
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(ロ) |
ASEAN域内の格差是正のために協力すること。
- メコン地域開発に対して今後3年間で15億ドル規模の協力を行う旨表明。
- 東ASEAN成長地域(BIMP-EAGA)については、ミンダナオ島やボルネオ島の再活性化のために、アジア開発銀行を通じて、70万ドル技術支援を行うほか、現地ニーズの調査のためにミッションを派遣する旨表明。
- 「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」に対し、2004年に1億ドルまでの追加拠出することを表明(これにより、日本は世界基金に、2002年から総額2億6,500万ドルの拠出を行うこととなる。)。
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(3) |
政治・安全保障分野 |
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(イ) |
テロ、大量破壊兵器、海賊、不法薬物、人の密輸などの脅威に対処するために、情報交換、人材育成、能力強化において協力を強化していくこと。 |
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(ロ) |
ARFでの協力を強化しつつ、10月の日ASEAN安全保障シンポジウムの提言を踏まえ、次官級の日ASEANフォーラムを活用するとともに、安全保障研究者と政府関係者の入った議論の場の設立等を提案。 |
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(ハ) |
海賊対策については、連携訓練の実施を含め、海上保安当局間のネットワークを強化していくこと。 |
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(ニ) |
北朝鮮情勢について、六者会合のプロセスを通じて、北朝鮮の核開発問題の平和的解決に努めていくとともに、核、ミサイル及び拉致問題等の諸懸案を包括的に解決することによって、日朝国交正常化を図っていくとの日本の方針については、これまでもASEAN首脳の理解を得られているが、引き続き支援を要請。 |
2. 各国首脳の主な発言 |
各国首脳とも、各々の言葉で、日ASEAN関係を各分野で更に拡大させる必要性に言及したが、特に注目される発言は以下のとおり。 |
(1) |
インドネシア |
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世界は、テロ、疫病、朝鮮半島の核問題、カンクンWTO閣僚会議の決裂等、様々な分野で不確定要素が存在。日ASEAN関係が国際社会における役割を果たすために、東アジア地域にて政治・安全保障分野で協力を強化するべき。 |
(2) |
マレーシア |
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ASEANの中では一足先に発展しているグループであっても、日本からの支援を必要とする分野が依然として残存。後発ASEAN各国に対する「支援」と先発ASEAN各国への「協力」の双方を実現できるよう、日本に期待。 |
(3) |
タイ |
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今般、日タイ経済連携協定の正式交渉開始について合意したが、経済連携をめぐり、日本の農業分野での改革に向けた努力を評価。今後も、域内の農産品貿易の活発化に向けて更なる支援を期待。ASEANは日本の食糧安全保障を支援でき、食品安全においても日ASEAN協力が更に推進できる。 |
(4) |
ブルネイ |
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豊かな自然環境を活かしたエコー・ツーリズムを推進したい。日本からのこうした分野での旅行客を増やしたい。また、日本との経済連携協定の交渉を開始したい。 |
(5) |
ラオス |
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メコン地域開発への日本の貢献に感謝。今後は、特に、同地域の道路網の整備における貢献に期待。これが実現すれば、東南アジアの中心部に道路網が整備され、世界の注目を集める地域になり得る。 |
(6) |
カンボジア |
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メコン地域開発への日本の協力に感謝。今後、プノンペンーホーチミン間の鉄道建設に支援してもらえれば有り難い(本件については、ベトナム側からも同様の要請があり、これに対し、小泉総理は「将来の大きな課題である」旨応答した。)この地域で特に貧しいCLMV諸国と手を組んで、地域開発を進めており、効果は期待できる。 |
(7) |
ベトナム |
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経済連携交渉は、二国間でも進めたく、また、後発ASEAN各国を含めた多角的な連携へと広がることも希望。日本との間で、将来自由貿易を中心とした経済連携協定に向けた交渉を始めたい。特に、日本には、特恵制度の整備や市場開放によって、後発ASEAN各国のために協力してもらいたい。 |
(8) |
フィリピン |
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日本のイラクへの自衛隊派遣は、テロとの闘いを貫いた小泉総理の勇気ある決断であり、これを高く評価し、支持する。フィリピンとしても、テロとの闘いを継続し、特に国内におけるテロ対策を強化していく。 |
(9) |
ミャンマー |
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麻薬対策は安全保障における重要事項の一つ。ミャンマーは、不法薬物との戦いを続けており、二国間協議を通じて、日本からの支援を期待。ケシに代替する作物を栽培させるよう努力しているが、その代替作物を販売する市場が必要となっている。その意味でも、市場アクセスが重要であり、日本の協力を期待。
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(10) |
シンガポール |
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日本のイラクへの自衛隊派遣は勇気ある決断であり、これを賞賛。日本は、単に米国を支援するのではなく、イラク人が自分の国を作ることを支援するという意味のある行動をしている。経済連携については、米州、EUがそれぞれ連携を深める中、日本とASEANは、手をこまねていては不利になる。東アジア・コミュニティの形成を目指し、日本とASEAN、中国とASEAN等の取組みを通じて、この地域の経済連携を推進することは良いことである。
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