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小泉総理大臣


ASEAN+3首脳会議後の内外記者会見(要旨)


平成14年11月5日

【冒頭発言】

 今回、経済発展に向けた活力にあふれるここプノンペンで開かれたASEAN及び日・中・韓の各国首脳会談、そしてフンセン・カンボジア首相などとの二国間会談では、経済を中心とした地域協力に関する議論とともに、地域の安定にかかわる問題について率直な意見交換を行うことができた。

 まず、日朝関係については、日朝国交正常化交渉において拉致問題及び核問題をはじめとする安全保障上の問題を優先課題として臨んだことを紹介した。今後の交渉を通じて引き続き北朝鮮側に粘り強く働きかけていく決意を表明するとともに、これを地域の平和と安全につなげていきたい旨表明した。

 このような考えを踏まえ、ASEAN+日中韓首脳会議声明として、北朝鮮の核開発計画の放棄について、明確なメッセージを発表することができたと思う。

 日中韓首脳会合では、これに加え、私からは、東アジアでの協力も視野に入れた日中韓協力として「知的交流・研究センター」のネットワークづくりを提案し賛同を得ることができた。

 ASEAN+日中韓首脳会議では、経済連携の強化、ASEAN統合の強化に向けた取組み等についても意見交換した。私からは、「人材の育成」・「人の交流」の促進のために有識者による検討を進め、来年の首脳会議に報告してもらいたいと提案し、参加国より基本的な支持を得ることができた。

 日・ASEAN首脳会議では、私が本年1月のASEAN諸国訪問の際に提案して以来検討作業を続けてきた「日・ASEAN包括的経済連携構想」について、その実現を加速していくための基本的な方針を謳った「共同宣言」に署名した。

 このほか、「日本ASEAN交流年2003」を明年1月から開始することを正式に決定した。また、明年12月11、12両日に日本で日・ASEAN特別首脳会議を開催することを決定した。

 二国間では、カンボジアのフン・セン首相、タイのタクシン首相及びミャンマーのタン・シュエ議長と首脳会談を行った。カンボジアの人材育成や社会制度の整備などのための支援、タイとの経済連携の必要性、ミャンマーの民主化・経済改革等について短時間ではあったが率直な意見交換を行うことができた。

 また、会議の合間をぬって、PKO活動の中で亡くなった高田警視、中田氏の慰霊碑にお参りすることができた。この両氏の貴重な犠牲が日本カンボジア間の障害にならず、この両氏の意志を継いで日本とカンボジアの交流促進、国造りに努力していこうという芽生えが両国に広がっていくのを感じて心強く思っている。

 日本は25年前、福田首相の時代、福田ドクトリンという演説を当時の福田総理がされたが、この25年前から一貫してアジア重視、ASEAN重視の政策をとってきたが、本年1月のシンガポールでの演説で表明したとおり、「共に歩み共に進む」という基本的考え方に立って、今後とも政治経済文化あらゆる分野においてアジア地域との交流と協力を日本は進めていきたいと思っている。以上が、今回の会談における私の考えを要約したものである。

【質疑応答】

【質問】今回、北朝鮮の核開発を破棄させることで連携が確認出来たと思うが、他方、北朝鮮の外務省は日朝国交正常化交渉の空転が続くようであれば、ミサイルの発射中止延長等を考え直すといったことを言及しはじめている。この発言につき、総理はどのように受け止め、今後の国交正常化交渉の中で,核、拉致、ミサイル問題を取り扱っていく考えか。

【小泉総理】9月のASEM、先月のAPEC首脳会議においても、安全保障上の問題として核を放棄することについて各国首脳からの強い支持を得た。また、今回のASEAN+日中韓会合においても、同様に北朝鮮の核問題につき各国が重大な懸念を有していることを確認した。
 これにより、核開発問題は地域の平和と安定にとり重要であるという共通の認識を得ることが出来、また、今日、北朝鮮側のミサイル問題について色々報道されているが、自分としては国交正常化に向けて、日朝平壌宣言に盛られた約束を誠実に実行に移すことが、日朝国交正常化の前提と考えている。
 また、北朝鮮もこの宣言を誠実に守ってもらいたい。宣言の前提から外れた発言を自分は受け取っておらず、また、北朝鮮も、そうした日朝平壌宣言の原則精神を踏みにじるようなことはしないと思っている。

【質問】ASEANの経済的な情勢はどう変わったか。中・ASEANの協定が進行中であり、包括連携協定構想が打ち出される中、どのように変わってきたか。

【小泉総理】ASEAN日中韓の人口は世界の約3割である。また、総貿易量も約2割である。非常に大きな経済発展の原動力たりうる地域である。それを考えると、私はますます、日本とASEAN、日中韓とASEANの交流を深めていく必要がある、それが地域の発展はもとより、世界の発展に資するものと考えている。
 また、中国とASEANとの協力関係も、私は中国にとってもASEANにとっても、また日本にとっても刺激になる、お互い経済連携に向けた協力はいろんな分野で広がっていくものと期待している。包括的な経済連携についても、それぞれの国内事情は違うが、その違いを越えて協力し、貿易、投資、経済交流、人的交流等様々な分野で、開かれた社会、その中での地域を越えた役割は充実していくし、充実していかなければならない。
 ASEANと日本との関係は、来年は「日本ASEAN交流年2003」ということで、いろいろな行事が様々な分野で計画されている。それも契機として、さらに交流を深めていきたい。お互いのためになる、お互いの利益になると確信している。

【質問】中国については刺激となるとのことだが、ASEANとの自由貿易協定を含む経済連携では、日本は中国の背中を追う展開となっている。日本には農業分野という市場開放の上で非常に難しい問題があるが、今後の具体的な構想如何。

【小泉総理】自分(総理)は、4月のボアオにおいて、中国脅威論をとらないと演説し、また、9月のテロ1周年追悼記念式典のためニュー・ヨークを訪問したが、その際の外交評議会における演説でも、日本としては中国脅威論をとらないと話した。今でもその考えに変わりない。
 かつて、日本も日本脅威論を言われたことがあった。現在、中国が持つ市場経済を目指す、民主化を目指す、そしてASEAN諸国と連携を深めていくという発想は、市場経済の発展を考えない限り出てこないはずである。いわば、市場経済重視、相互依存関係を深めていくという中国の積極的な姿勢を日本も前向きに受け止めることでそれを刺激とし、新しい時代に向けて、お互い共存共栄を図っていく。
 そして日本人にありがちな、悲観主義に陥り、中国の影を追うとか、中国に先を越されるのではないかといった後ろ向きの姿勢ではなく、お互い前進し、お互いに発展していく。
 各国の首脳の発言を聞くと、それぞれが困難な事情を抱えている。日本も困難な事情を抱えているが、日本だけではない。むしろ、日本人は日本は駄目だと思っているが、それどころか、各国は日本の潜在力に期待している。日本を見習うべきだという声も依然として失われていない。
 日本がこれまでに支援、協力してきたことに対し、各国から率直な感謝の表明があった。それは裏返せば、期待の表明である。そうした期待に応えるために、日本の潜在力をいかに表に出していくかが、自分(総理)の最大の仕事であるので、自信と希望を持って進んでいかなければならない。
 また、中国が、ASEANと協力していくことは日本としても歓迎したいし、日本もASEANとの交流を深めて行きたいと考えている。日中韓も、共に持てる力をそれぞれの発展のために活かしていく。そうした前向きな姿勢をとるべきだと考えている。
 そういう意味において、今後、農業問題という難しい問題があるが、これは日本とASEANだけに存在するものではない。米とEU間にも農業分野には常に対立と摩擦がある。日米間、日・EU間においても農業問題は、経済問題のみならず、政治の問題へと発展しやすい問題であるということも理解している。
 しかし、それを乗り越え、お互いの相互依存関係を深めていくことが大事であり、それは日本とASEANの関係、日中韓とASEANの関係と似たようなものだと思う。対立、摩擦を超え、お互いプラスになるような協力関係を維持するべきであり、発展させていくべきだと思っている。

【質問】今朝、ミャンマーの首脳との会談を行ったとの事であるが、民主化の問題を話されたと思うが、総理の方からさらに政府のアウンサン・スーチーに対する政策を許すようにとの話がなされたのか。また、選挙の結果について話がなされたのか。それに対するミャンマー政府からの反応如何。

【小泉総理】ミャンマーのタン議長と会談を行い、その政治犯スーチー女史の話も話題になった。私は、ミャンマーの平和造り、国造りが成功するためにも民主化の努力が必要であると表明した。
 タン議長からは、今の状況を説明させて欲しいと発言があり、今までの民主化に向けた努力、様々な事情をお話し頂いた。既にミャンマー政府とスーチー女史との間では、107回の会談を行っていると聞いた。これはタン議長の口からである。そしてスーチー女史はもう自由にミャンマー国内を活動し、各地区を回って活動されているというお話を伺った。
 このように、ミャンマーとして民主化の努力を続けているという話を伺い、私は是非とも民主化の努力が今後ミャンマーの国造り、平和造りに寄与するよう、国際社会も注目しているので是非とも改革に向けて頑張って欲しい旨述べ、意見交換をすることができた。

【質問】先程、中国と前向きな関係を保っていくとの決意を表明されたが、ではなぜ、中国とのFTAを後回しにするのか。FTAを進めていく相手国を選ぶ際の基準及び順番につき総理の見解如何。

【小泉総理】現在、日本とASEANとの包括的な経済連携構想を進めており、まず、できるところからやっている。シンガポール、そして現在、タイとフィリピンとも協議を進めているが、自由貿易協定というものを急いで目指す前に、包括的経済連携構想を進めることが重要であり、段階的に進めるべきである。
 各国が、お互いの事情を持っており、決して後ろ向きということではない。急に進めてもうまくいくとは限らず、お互いの事情を考えながら協力を進め、できるところから進めていくという方針に何ら変わりはない。これが重要であり、中国とも全く同じである。


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