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小渕総理の訪中
(内外記者会見の概要)平成11年7月9日
9日午後5時(現地時間)から北京市内のホテルで行われた小渕総理の内外記者会見(約20分間)の概要は、次の通り。1.総理冒頭発言 (注:番号と小見出しは便宜上付したもの。)
(1)確固たる展望
今回、未来志向の日中関係の熱情とトキ「優優」の写真を携えて訪中した。朱鎔基総理との首脳会談、江沢民国家主席との再会、李鵬全人代委員長との会見等を通じ、21世紀に向けての日中関係の確固たる展望を開くことができた。(2)最も重要な二国間関係
日中関係は、我が国にとって最も重要な二国間関係の一つで、両国はお互いに欠くことのでない相互依存関係にある。同時に、日中両国はアジアひいては世界における責任ある大国であり、環境や人口、食糧といった地球的規模の問題においても、共同して対処し、世界に大きく貢献していく時代に入りつつあると考える。(3)21世紀へ向けた新たな段階、朱総理の訪日招請
昨年の江沢民主席の訪日の際、両国は「日中共同宣言」を発出し、日中関係は、広範な共通認識を基に、21世紀へ向けて新たな段階に入ったと考える。今回の朱鎔基総理との首脳会談で、この点を改めて確認した。
日中間で首脳レベルの対話を続けていくことは極めて重要。来年の適当な時期における朱鎔基総理の訪日を招請したのに対し、朱鎔基総理はこれに謝意を述べ、今後双方で具体的な時期を調整していくこととなった。(4)33項目
江沢民主席訪日時に合意した将来に向けての33項目の日中の協力分野について広く意見交換を行ったが、特に次の2点が意義深いと考える。
- (イ)WTO
中国が今後国際場裡で活躍していく上で重要な中国のWTO加盟についての日中間の交渉が妥結。今回、サービス貿易に関する二国間協議が実質的に妥結し、これにより二国間の協議全体が実質的に妥結した。この合意によって、現在中国が他の諸国・地域とも進めている二国間の協議が加速され、中国のWTOへの年内加盟へ向けてはずみがつくことを期待。(ロ)緑化基金
中国が昨年の大洪水の経験もあり江沢民主席自らが陣頭に立って取り組んでいる緑化運動に対して、日本として、国民を挙げて「実のある」支援を行うため、100億円規模の「緑化基金」を設立することを提案。これは、急速に発展する中国において、全ての人が安心して暮らせる豊かな隣国となってほしいという我が国の国民の気持ちであり、同時に環境という地球規模の問題に関し、地域の大国としての役割を果たさんとする日中両国の協力のあらわれでもある。これまでに日中間の環境協力として、竹下元総理による「日中友好環境保全センター」が設立され、橋本前総理の「日中環境開発モデル都市構想」が打ち出されているが、この「緑化基金」をもって日中環境協力の「三部作」としたい。これに対して、朱総理はこれを貴総理のイニシアティブとして歓迎、感謝する旨述べた。
- (5)日米防衛協力のための指針
中国側の強い関心に鑑み、我が国の防衛政策の基本方針について改めて明確に説明。即ち、我が国は専守防衛に徹し、非核三原則を遵守し、決して軍事大国にならないという方針に変更はないこと、日米安保体制は全く防御的であり、特定の国や地域に向けられたものではないこと、また、「指針」関連法はこのような日米安保条約の目的の枠内のものであること等を説明。また、台湾に関する我が国の立場については、1972年の日中共同声明に述べられているとおりであり、これを堅持していくことを表明するとともに、海峡両岸の問題が中国人どうしの話し合いによって平和的に解決されることを希望する旨述べた。
これに対して、朱総理は丁重な説明を受けたが、「言は必ず信なり」との言葉があり、実際の行動で示してほしいと述べた。(6)歴史認識
昨年の江沢民主席訪日の際に得られた共通認識を再確認した。我が国としては、これを踏まえて、両国が共に未来を切り開いていくため、実際の行動により引き続き平和のために貢献していく考え。(7)国際情勢
良好で安定的な米中関係はアジア太平洋地域ひいては世界の平和と繁栄にとり不可欠の要素であるとの観点から米中関係を取り上げた他、朝鮮半島情勢、国連改革問題等について話し合った。(8)閣僚の同行など
今回、野田自治大臣、高村外務大臣、野田郵政大臣が同行。また、中国側の招待を受け日本の財界の方々が、一部の行事に参加した。このように、日中間の友好協力パートナーシップが、今後、政府全体、さらには国民の各層各分野の支援によって、より確固たるものとなって発展していくことを希望。
今回の訪中によって、中国首脳との間でより深い信頼関係が築かれたと確信している。2.質疑応答
(1)江主席訪日の際には、日中関係の光と陰のうち、特に陰の部分が強調されたが、今回の中国首脳との会談で話された、歴史認識、台湾、ガイドライン、北朝鮮のミサイル等の問題に対する中国側反応を如何に評価しているか。
- (イ)昨年の江主席の訪日は、日中両国間にいささかのわだかまりを残したものでもなく、21世紀へ向けての新しい関係を切り開きたいとの共同宣言を発出した。その意味で、非常に成功した訪日であったと改めて理解している。近い国どうしでも、首脳の交流が度重なれば、相互の理解をより深める。ガイドライン、歴史認識等につき我が方の従前通りの考え方を明らかにした。憂慮している朝鮮半島の情勢については、その安定が日中両国にとり極めて重要な安保上の問題である。北朝鮮のミサイル発射により、日本国民は大きな驚きを受け、その憂慮の念は計り知れない。北朝鮮と長い間いろいろと関係を有する中国に対して、この念を伝達し機会があればこのことを北朝鮮に伝えてほしい旨述べた。
(ロ)日本政府としては、現時点で北朝鮮のミサイルの再発射が差し迫っていると判断しているわけではない。そのような前提に立ち、朱総理との会談において、仮に北朝鮮による長距離ミサイルの再発射があれば、日米韓との関係が大きく後退することは必至であり、ミサイル再発射を抑止することが極めて重要であるとの我が国考えを中国側に説明。
(ハ)これに対し、朱総理は、中国は朝鮮半島の平和と安定のため努力してきている、今後もできることはやるよう努力する、どの関係者も朝鮮半島の平和と安定に逆行するようなことはすべきでない旨述べた。また、李鵬全人代委員長は、機会があれば日本の心配の気持ち北朝鮮に伝えたい旨述べた。
- (2)21世紀へ向けての日中経済協力強化について如何に考えるか。
- (イ)1972年の国交回復以来、日中間の経済関係は飛躍的に発展し、現在では両国関係の重要な基礎となっている。日中間の貿易・経済関係が日中双方の努力を通じて再び拡大基調が回復することを期待。さらに21世紀に向けた日中経済関係の安定的な発展を図るべく、官民の様々なレベルでの意志疎通を一層緊密にしていきたい。その一環として、今回財界の方々に同行いただいた。
(ロ)政府開発援助を通じる改革・開放政策への支援は変わらない。今後は環境、内陸部開発、食糧・農業、人材開発といった分野を重点に取り組んでいきたい。我が国国民には対中ODAに対する見方には厳しいものがあり、日中経済協力は両国国民の理解と支持を得つつ進めることが益々重要。中国においても日本の協力について国民レベルでの認識が深まることを期待。
- (3)日本側のガイドラインの説明に対して、中国側は今後の行動で実証してほしいる旨述べたが、日本の立場に対して朱総理の一定の理解が得られたと考えるか。WTO加盟についての日中交渉の妥結に加えて、米中関係改善に向け日本は何を成し得るか。
- (イ)日本側の真意は、日米安保条約はあくまで日本の平和と安全のためのものであるということ。同条約は日中国交正常化以前から存在しており、それ以降の歴史的経過を踏まえても中国に不安と不信を与えたことはなかったと確信しているので、自信を持って説明した。
(ロ)朱総理は、私(総理)自身、日本及び日本国民が中国に対する熱烈な良き関係を維持していこうとの気持ちを持っており、そのことが説明の中に流れていることを理解していただけたと考える。信頼が大切だということなので、信頼には応えるよう自分としても日本政府としても努力していきたい。
(ハ)先般のG8サミットの場で、また、クリントン大統領に対しても述べたが、米、中、日によるより良き関係の維持が世界平和及びアジアの平和のために重要であるとの認識は(日中間で)一致している。米中関係は、朱総理の努力にも係わらず中国のWTO加盟問題が決着していない。また、私(総理)より亡くなった方々に哀悼の意を表したが、ユーゴではNATOによる中国大使館の爆撃という悲劇が起きた。米中関係が一日も早く改善する必要があると強く認識している。今回、日中間でWTO加盟問題につき最終的に合意に達したことは大きな成果であると認識。このことが世界貿易の発展のため、米中においても努力が加速されて良い結論が出ることを期待する。米、中、日は、大きな貿易国として世界をリードしていかなければならず、日中間のWTO交渉の妥結が大きな前進のきっかけとなることができれば嬉しい。
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