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過去の記録

日中首脳会談
概要

平成11年7月9日

 9日午前9時30分から約45分にわたって、小渕総理と朱鎔基総理による少人数による日中首脳会談が行われ、引き続き、約1時間10分にわたって全体会合が開かれたところ、概要下記のとおり(主な同席者は、日本側:野田自治大臣、高村外務大臣、鈴木官房副長官、野田郵政大臣、谷野駐中国大使、丹波外務審議官、阿南アジア局長、中国側:唐家セン外交部長、陳健駐日大使、王毅外交部部長助理、寧賦魁外交部アジア司副司長)。なお、会談は極めて和やかかつ温かい雰囲気で行われた。

I.少人数会合

1.日中関係総論

 冒頭、朱鎔基総理より熱烈な歓迎の意を表し、小渕総理より感謝の意を述べた。双方は、昨年の江沢民主席訪日に際して、両国は歴史を総括すると共に、広範な共通認識を確認し、「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」の構築を共同で宣言したが、これを受け、日中関係は新たな段階に入ったことを確認。また、朱総理より、その後の日中関係の発展に満足している旨述べた。

2.歴史認識

 総理より、昨年の江沢民主席訪日の際、深く突っ込んだ議論を行い、自分からも、過去の歴史についての真摯な気持ちを表明した。そこで得られた共通認識を再確認する、我が国としては、これを踏まえ、歴史を直視し、両国が共に未来を切り開いていくために、実際の行動によって引き続き平和のために貢献していく考えである旨発言。
(注:本件についての朱総理の発言は「全体会合」末尾。)

3.我が国の防衛政策(含む台湾)

(1)総理より次のとおり説明。

(イ)我が国は、過去の反省に基づき、平和憲法の下で、戦後、一貫して平和国家としての道を歩んできた。専守防衛の堅持、非核三原則の遵守、軍事大国にはならない、という我が国の基本的な方針は、今後とも些かも変更ない。

(ロ)日米安保体制は、過去40年間、アジア太平洋地域の平和と安定を維持するため貢献してきた。日米安保体制は全く防御的なものであり、特定の国や地域にむけられたものではない。

(ハ)「指針」関連法は、このような日米安保条約の目的の枠内のものである。

(ニ)この法律は、いわゆる周辺事態における我が国の対応を予め法定して透明性を高めるものであり、また、自衛隊の活動を国会承認の対象とするとの規定も置いている。我が国が武力の行使又は武力による威嚇を行わないことも明記している。

(ホ)また、周辺事態が生じているか否か、また、その際にどのような対応措置をとるか、というこの法律の運用は、自国の国益を確保する観点から、我が国自身の主体的な判断の下に行う。

(ヘ)我が国の防衛政策は以上のとおりであり、この政策の下で、中国との友好関係も重要な国益の一つとして重視していくので、何ら御心配には及ばない。

(ト)台湾に関する我が国政府の立場は、日中共同声明に述べられているとおりである。その第3項は、台湾に関する中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重した上で、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持すると言明している。我が国として台湾の独立に与したり、これを支持するようなことはあり得ない。日中共同声明に示されている中国は一つとの認識は不変である。

(チ)海峡両岸の問題は、中国人自身が話し合いによって平和的に解決すべきものである。また我が国政府は、貴国政府も平和的解決を旨としていることを歓迎しており、そうした解決が実現することを心から期待している。またきっとそうなるであろうと信じている。現実にこの地域を巡る武力紛争が発生することは想定していない。以上申し上げた立場は、日中国交正常化以来の日本政府の一貫した立場であり、これには何らの変更もない。

(2)朱総理よりは、日米安保協力の問題は、当面中国政府、中国人民として懸念する問題である。台湾は中国の不可分の領土であり、この点は広く国際的に認められている。日米安保協力に台湾を直接、間接に含めることは、中国として受け入れられない。本日、小渕総理から丁重な御説明を伺った、日本は今後、実際の行動でお話の趣旨を実証してほしい旨発言。

4.海洋調査船問題

 総理より、当面の懸案として、最近の我が国近海における中国の海洋調査船や軍艦の問題を提起しつつ、海の利用に関する問題は、国際法に基づき日中友好関係の大局に立って粘り強く根本的な解決を目指すべきである、日中間の海を対立の場としてはならない旨述べた。これに対し、朱総理より、海洋資源の平和的利用も日中でよく話し合っていきたい、排他的経済水域の境界画定問題についてもできるだけ早期に解決したい、中国の調査船は、正常な調査を行っているものであり、ご理解を得たい旨応答。

5.朝鮮半島情勢

(1)総理より、概要以下のとおり述べた。
 日本の北朝鮮政策の基本目標は一貫して、(イ)国交正常化を進める、(ロ)そのプロセスは朝鮮半島の安定に資するものでなくてはならない、(ハ)以上を2本柱として関係国と密接に連携する、ということである。その実施に当たっては、「対話」と「抑止」の間の適切な均衡を旨とする。ペリー調整官の「包括的且つ統合されたアプローチ」は、北朝鮮に対して、現状維持よりも、更に多くの道筋を示すものであり、我が国としてこれを支持。他方、長射程ミサイルの再発射があれば、日米韓との関係が大きく後退することは必至であり、ミサイル再発射の抑止が極めて重要である。拉致問題をはじめとする人道問題の解決も重視しているので、貴国の協力を得たい。

(2)これに対し、朱総理より概要以下のとおり述べた。
 朝鮮半島には、時々摩擦も起きるが、全般的には安定した状況と言える。各国が、北朝鮮と様々な接触をしているのは、良いことである。中国としては、各国が共同で信頼関係を樹立して、朝鮮半島の平和のメカニズムを確立することが重要と考える。中国は、朝鮮半島の平和と安定のためにできることはやる用意がある。関係各国が共に努力して、平和と安定のため不利なことをしないよう希望する。中国は、北朝鮮と伝統的友好関係を持っている我々ができることは、我々として努力していきたい。

(3)更に、総理より、北朝鮮との関係改善、国交正常化は、日本ににとっても重要な課題である旨再度述べ、これに対し朱総理より、北朝鮮が米国、日本、そしてEUと関係を正常化することを歓迎する、同時に、その実現を期待している旨述べた。

II.全体会合

1.朱鎔基総理訪日

 総理から明年の訪日を招請。先方は、謝意を表明した上で、招請を喜んでお受けする、日程の詳細は外交当局間で詰めていきたい旨応答。

2.ホットライン

 双方は、開設のための作業を正式に開始することを確認した。

3.WTO

 双方は実質合意を確認。総理より、朱総理のリーダーシップ、その他の関係閣僚等の努力に敬意を表し、この合意が米中交渉のはずみになることを期待する旨述べた。これに対し、朱総理より、総理のこれまでの一貫した前向きの姿勢を称賛したい旨述べた上で、米中二国間交渉について、(ユーゴ大使館爆撃、特使派遣に触れた上)米側の交渉姿勢は積極的であるが、再開の条件は整っていない、大使館爆撃についての明確な説明がほしい旨述べた。また、中国はこれまで約束した内容から後退するつもりはないが、米国が一方的に要求を増やしている部分につき譲歩するつもりはない旨応答。

4.日中経済

(1)広東国際信託投資公司(GITIC):総理より懸念を表明し、有効な解決を要望。朱総理は、GITICについては救済が不可能となったので、破産の決定をしたが、債権者の利益にも配慮している、債権者と債務者の間の話合いが大切と述べ、現在中国は金融改革が必要であるとした上で、日本の銀行の理解を求めた。

(2)鉄鋼輸入制限:総理より問題解決を要望。朱総理は、人民元の切り下げはしないが、アジア経済危機によって輸出が伸び悩んでおり、国内生産できるものは国内調達を目指したいと述べた上で、中国で生産しないものまで規制することは真意でなく、真剣な調査を約束。

(3)保険市場参入:総理より、中国保険市場への参入につき2社目以降の追加認可を要求。先方は第2の認可に向けた作業中であり、検討したい旨述べた。

5.米中関係

 総理より、米中関係はアジア太平洋地域の平和と繁栄にとり不可欠な要素であるとした上で、ユーゴ大使館被爆につき哀悼の意を表したのを受けて、朱総理はユーゴ大使館被爆に関する同情に謝意を表明。同時に、米側より現在の問題につききちんと国民に対して説明のつく措置をとってほしい旨発言。

6.北京・上海高速鉄道

 総理より、本件を21世紀の日中友好のシンボルとしたいとして協力の姿勢を表明し、新幹線のシステムは大都市が連帯しているところに適している等述べた上、鉄道部長の訪日招請を行った。朱総理より、まだ認可には至っておらず、検討には長いプロセスがかかる、日本の関心を承知している旨応答。

7.緑化協力

 総理より、100億円規模の基金を日本国内に設立し、日本の市民団体等が中国で緑化協力を行うことを奨励したいと述べた上で、竹下元総理の「日中友好環境保全センター」、橋本前総理の「日中環境開発モデル都市構想」とともに日中環境協力の「三部作」としたい旨説明。朱総理より、総理のイニシアティヴとして歓迎と感謝を表明。

8.漁業

 総理より、長期的、大局的観点からの早期解決を要望。朱総理も、早期発効に向け努力したい、中国はこれまでも誠意と柔軟性を示した旨説明。

9.治安協力

 総理より治安当局間協議の早期開催を提案。朱総理も積極的な態度で臨み、協議を実現したい旨発言。総理より、賈春旺中国公安部長の訪日を待っている旨述べた。

10.ユネスコ事務局長選挙

 総理より、松浦駐仏大使への支持を要請。

11.歴史認識

 最後に、朱総理より、本件は敏感な政治的問題である、江沢民主席訪日の際には重要な共通認識が得られた、大多数の日本人は正しい認識を有し、日中友好を理解し支持していることを承知している、しかし、日本の国内にときどき戦争を美化したり、侵略の事実を否定したりする人間がいる、効果的な措置を採って人々の行動をよりより方向にもっていってほしい、若い人への教育もきちんとしてほしい旨述べた。



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