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アジア金融・経済情勢に関する声明 |
(1998年4月3日 ロンドンにおいて)
安定回復に向けた共通の関心
- 1.首脳は、アジアにおける最近の金融・経済情勢について議論し、これが世界経済に与える影響を強調し、アジアの人々が被る負担についての懸念を力説した。首脳は、この危機に果断に対応する必要性を再確認し、金融・経済の安定を推進するためにアジアの関係諸国が実施しつつある諸改革を歓迎した。首脳は、必要な政策改革の完全実施と強力な相互支援により金融の安定が回復されることへの自信を表明した。経済の基礎条件が強靱であれば、アジアにおけるこれまでの印象的な成長は中期的に継続可能となろう。首脳は、アジアの金融困難解決、並びに、現在の問題の克服に向けとられている多数国間及び二国間の努力への完全参加に欧州側が高い関心を示していることに留意した。首脳は、また、アジアのメンバーが行っている意味のある金融・経済支援に留意した。
- 国際社会からの支援を伴ったアジアにおける改革
- 2.首脳は、グローバルな問題に対するグローバルな対処を行う上で中心となる国際通貨基金(IMF)の役割を更に強化することが重要である点で意見の一致をみた。首脳は、アジア経済及び金融市場への信認を回復する上で枢要な役割を果たす、IMF、世界銀行、アジア開発銀行との間で合意された改革プログラムの完全実施に対する強い支持を表明した。首脳は、当該アジア諸国における調整努力を評価し、慫慂した。首脳は、政策実施が公然と、透明性を伴い、差別なく行われるべきであることを強調した。
- 3.首脳は、国際社会が今日まで危機への対応を適時に行ってきたことを歓迎した。 首脳は、当該アジア諸国支援に向けて、国際金融機関や数々の補完的な二国間金融支援の仕組みにより実施されてきた相当額の財政支援を評価した。首脳は、特に、強力な調整プログラムを支援するため多額のIMF資金が供与されることを支持し、新たなIMF補完的準備融資制度の創設を歓迎した。
- 安定のための国際金融制度の改革と強化
- 4.首脳は、危機の予防及び投機により誘発される不安定を含む潜在ショックに対する国内金融システムの脆弱性の低減に焦点を当てつつ、マニラ・フレームワークに含まれている方策を含め国際通貨金融制度を改革し強化しうる数々の方途を検討した。
首脳は以下を求めた:
- -IMFが金融困難に対して適時に、かつ断固とした対応を取れるようなIMFの機能強化、増資並びに新規借入取決め(NAB)の早期批准を通じたIMF資金の拡充。
- -アジアに新たに設立された地域サーベイランス・メカニズムによって補完される、より強化されかつ透明性を増した世界的なIMFサーベイランス。
- -金融分野における協力と規制と監督の強化、並びにIMFやその他の国際的な規制当局が、短期資本フロー監視の可能性を含め、金融市場及び資本市場における透明性改善のための方策を検討。
- 民間セクターの参画
- 5.首脳は、民間セクターが、公共部門のアプローチを支援しつつ、公共部門と協力しながら、必要かつ適切な場合に財政支援に参画することを確保するための戦略を工夫する重要性を強調した。首脳は、特に、債務者/債権者会合を成功させ、また、各国において貿易信用が供与されるようにする上で、民間セクターの関与が特に重要である点を強調した。首脳は、この点で、欧州、アジア及びその他の商業銀行が果たしている建設的役割を評価した。首脳は、また、民間の投資家が、貸付けや金融取引に関する決定をするに当たり、十分かつ適正な評価を行えるよう、適切な環境の整備が重要である点で意見が一致した。首脳は、また、公共部門と民間セクターでより多くの接触と情報交換を行うことが、潜在的な金融困難を防ぐことに寄与しうることを認識した。
- 輸出金融
- 6.首脳は、IMFによって設定された枠組みの下での経済回復のためには、貿易金融へのアクセスが維持されることが重要であると認識した。首脳は、アジアにおいて貿易金融を提供するため、1998年2月20日に開催されたG7蔵相・中央銀行総裁会合会期中に主要輸出信用機関により出され、その後他の国々によって出された諸提案を歓迎した。首脳は、当該アジア諸国の輸出部門における流動性不足を緩和するため、輸出信用機関が更に特別な信用供与を行うことを慫慂した。
- 技術協力
- 7.首脳は、国際金融機関との間で合意された改革プログラムを支援する上で、ASEMを通じた技術協力が大きな役割を果たしうる点で意見の一致をみた。首脳は、欧州とアジアの専門知識を活用しつつ、金融セクターの構造改革と貧困軽減のための効果的方途の探求の双方の面で技術協力及び知的助言を行うための資金手当てを目的に世界銀行に設立されたASEM信託基金を歓迎した。首脳は、また、アジアのASEMメンバーの一つが、世界銀行及びアジア開発銀行の既存の信託基金においてこれらの分野に対する技術支援のための資金配分を最近強化させたことを歓迎した。
- 8.首脳は、金融セクター改革に資する技術的助言の質・量両面を拡充するため、既存の二国間支援の仕組みに加え、アジアの専門知識を活用した形で欧州ネットワークを創設するとの提案を歓迎した。首脳は、金融監督当局間の協力の強化を慫慂した。
各国経済制度の強化
- 9.首脳は、アジアの潜在する可能性を実現し、持続的な経済開発を達成するためには、国内金融制度及び企業部門を含む経済構造の強化と改革が特に重要であることに留意した。首脳は、アジア諸国が、必要な金融セクター改革遂行に向けた努力を払うことが、透明性、予見性、そして適切な監視機能の確保を通じ、投資家の信認回復を得る上で決定的な役割を果たすであろうことに留意した。人材養成、中小企業振興、技術協力及び投資環境の改善におけるASEMメンバー間の協力が、経済基盤を強化する上で主要な役割を果たすであろう。首脳は、関係当局が、アジア欧州ビジネス・フォーラム(AEBF)と緊密に連携し、中小企業の振興に向けた提案を検討し、また適切と認められる場合にはそれら提案を策定することを指示した。
- 社会的影響の低減
- 10.首脳は、アジアにおける金融困難が与える社会的影響に配慮する必要性を認めた。首脳は、包括的な改革プログラムの実施が持続可能な将来の成長に向けた強固な礎を築く機会を提供することに留意した。ただし、それらの実施に当たっては、社会関連支出は可能な限り守ることが重要であろうし、貧困者を保護するため精巧かつ費用のかさばらない社会安全網を策定することが重要であろう。
- 11.経済政策と社会政策が相互補完することの重要性にかんがみ、首脳は、社会経済上の影響に対処するためにバランスのとれたアプローチをとることで意見の一致をみた。首脳はこの点に関し、世界銀行及びアジア開発銀行の努力を支持し、これらの機関において新規及び既存の信託基金が貧困問題に焦点を当てていることを歓迎した。
- 世界経済に与える影響
- 12.首脳は、また、アジアが現在直面している困難が世界経済に及ぼす影響についても検討した。首脳は、健全な経済及び金融政策が引き続き実施されれば、世界経済全般に与える全般的影響は現実のものであっても対処可能なものであろう点に留意した。アジアのいくつかの国々では、対外収支の面においてかなりの改善が見られるものの、いまだ困難から脱却しておらず、警戒の必要性が残っている。
- 13.すべてのASEMメンバーは、アジアにおける回復見通しに対する信認を表明しつつ、この危機を乗り越えるために、消費者及びビジネスの信認を強化するために適切な措置をとる必要性を認識した。また、世界経済の安定のためには、欧州の国々が自らの経済を健全な状態に保つことも重要である。
- 開かれた貿易体制を維持することの重要性
- 14.首脳は、貿易及び投資のフローの変化や調整上の必要性から、今般の経済危機が保護主義的な反応を惹起する可能性があることを認めた。首脳は、いかなる保護主義圧力にも抵抗し、少なくとも現在の市場アクセス・レベルを維持するとの共通の決意を表明した。同時に多角的自由化を更に模索していく共通の決意も表明したが、これこそ、保護主義圧力を跳ね返し、危機克服支援のための最も効果的な手段であると認識された。首脳は、また、WTOのルールにも定められているように、WTO上の権利の正当な行使であっても、特定の事態を改善するのに必要な限度を越えて制限的措置をとらないことを約束した。貿易と投資に関わるこの約束はすべてのASEMメンバーに適用されることを明らかにしつつ、首脳は、また、ASEMに属していない貿易パートナーも、この約束に参加するよう慫慂した。
- 15.首脳は、また、アジアの経済改革プログラムが、保護主義圧力を掣肘し、投資を活性化し、世界貿易体制の強化のための全世界的努力に対し、重大な貢献となることを認識した。
- 16.首脳は、アジア市場における状況変化が、投資を双方向に減少しうる可能性に留意し、海外直接投資(FDI)の維持及び拡大を可能ならしめるために最善を尽くすことを約束した。首脳は、すべてのASEMメンバーが、これまで以上にアジアと欧州との間の貿易を開拓し投資を拡大するため、貿易円滑化行動計画(TFAP)及び投資促進行動計画(IPAP)を完全かつ迅速に実施することを強く求めた。
将来の協力
- 17.首脳は、これらの問題には今後も精力的に取り組んでいくべきであるとし、蔵相及び経済担当閣僚に対し、これらの問題に対処するための具体的な措置の検討を求めることで意見の一致をみた。
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