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過去の記録

橋本総理の中国訪問の概要と評価


平成9年9月9日


1.日程・概要

 9月4日から7日の日程で中国を訪問し、北京において李鵬総理と日中首脳会談を行った他、江沢民主席、喬石全人代常務委員長、朱鎔基副総理とそれぞれ会談。更に、遼寧省(瀋陽及び大連)を訪問し、地方指導者の表敬を受けた。また、北京では国家行政学院で政策演説を行い、瀋陽においては柳条湖事件の史跡(9.18事変博物館)を視察した。

2.全般的評価

(1)日中国交正常化25周年の記念すべき年に訪中し、中国側との間で、国交常化以来の両国関係の発展を高く評価するとともに、両国関係の重要性を改めて確認した。

(2)中国政府首脳との間で、日中関係から国際情勢、更には地球規模の問題に向けられる日中間の協力といった幅広い話題について実りある意見交換を行い、新たな四半世紀に向けての対話と協力の関係を強化していくための基礎を築くことが出来た。具体的には、今後少なくとも年1回、いずれかの側の首脳レベルが相手国を訪問することになった他、特に防衛分野でのハイレベル交流につき意見の一致を見た。本年11月の李鵬総理の来日、来年の江沢民主席の来日を通じ、日中関係が更に進展することが期待される。

(3)中国側から強い関心が示されてきた日米安保の問題、就中、いわゆる「指針」の見直しについては、総理より日本の基本的な考え方について説明を行った結果、我が国の立場に対する中国側の理解を深める上で一定の成果を得たものと考えられる。

(4)地球規模問題に向けられる日中間の協力として、「21世紀に向けた日中環境協力」と題する構想(注:環境情報ネットワーク、モデル都市構想の二つの柱からなる)を橋本総理より提案し、中国側の賛同を得た。

(5)今次総理訪中を前に、新たな漁業協定につき実質的に合意。中国のWTO加盟交渉については、二国間協議の結果、モノ(関税・非関税)の貿易につい実質的合意に達し、本件についての共同発表を行った。また、4日には、両首脳立ち会いの下、本年度分の円借款の交換公文の署名も行われ、相互信頼の基礎でもある実務面の協力が進展した。

3.李鵬総理との首脳会談の主要点

 4日、李鵬総理と橋本総理との間で日中首脳会談が約2時間15分に亘り行われ た。

(1)日中関係総論:日中間の対話の強化に努めるべく、毎年両国の首脳レベルのどちらかが相手国を訪問すること、安全保障面での対話の拡充、特に防衛関係のハイレベル交流を進めることについて、原則合意。

(2)歴史認識、台湾、日米安保:李鵬総理より、これら3つの問題を原則に関わる問題として提起した。
 橋本総理よりは、(イ)歴史認識に係る戦後50周年の内閣総理大臣談話は政府の立場であると共に自分の認識でもあること、(ロ)台湾に関しては、日中共同声明の立場に些かの変わりもなく、いわゆる「二つの中国」や台湾独立を支持することは今後もあり得ないことを説明。また、(ハ)「指針」見直しは、(i)日米安保条約をはじめとする日米同盟関係の基本的枠組みを変更するものではなく、(ii)憲法上の制約の範囲内において行われるものであって、(iii)国際法の基本原則並びに関連する国際約束にも合致するものであるとの基本的な前提及び考え方に従って行われており、(a)日米間で、中国を含め特定の国や地域における事態を議論して行っているものではない、(b)今後とも日中共同声明及び日中平和友好条約を遵守していく方針は不変である、(c)中国政府が台湾問題は中国人同士の問題として平和解決を目指していると信じており、現在の情勢認識として、台湾地域を巡る武力紛争が現実に発生するとは考えていない、(d)日本としては、当事者間の話し合いにより平和的に問題が解決されることを切に期待すること等を説明した。更に透明性確保のため、「指針」見直しの作業の結果について改めて説明を行うことを述べた。

(3)日中経済:総理より増値税の問題や大連工業団地の問題を取り上げつつ、投資環境整備の重要性を指摘。

(4)漁業:出来るだけ李鵬総理来日時の署名を目指して努力したい旨総理より発言。

(5)遺棄化学兵器:緊迫性をもって取り組んで欲しい旨中国側より要望あり。

(6)エネルギー、文化協力、経済協力:「21世紀に向けた日中環境協力」構想を進めていくことが原則的に合意された(同構想では、第一の柱として、中国国内の主要な100都市において、環境情報センターの充実に対する協力を行いネットワーク作りを支援。第2の柱として、「モデル都市」を定め、大気汚染酸性雨対策、循環型産業・社会システムの形成、温暖化対策を実施。)。
 なお、一定の環境対策について供与される円借款の供与条件を大幅に緩和する旨も表明。
 その他、三峡ダム建設に伴う文化遺跡保存、農業分野における協力、東海・黄海における水産資源管理・海洋環境保全、第三国研修、北京・上海高速鉄道等についても意見交換が行われた。

(7)中国のWTO加盟:二国間協議の結果、モノの貿易について実質的に合意し共同発表案がまとまったことを歓迎すると共に、サービス貿易他の分野での交渉を加速化させることを確認。

4.要人会見

 5日午後、江沢民国家主席、喬石全国人民代表大会常務委員長、朱鎔基副総理との会談を行った。

(1)江沢民主席との会談(5日16時30分~17時40分)
(イ)日中関係総論:マニラ会談以降日中関係が改善基調にあること、首脳交流を進めながら、関係の更なる発展を目指すことに合意。 
(ロ)歴史認識、日米安保、台湾:江沢民主席より、過去の不幸な歴史を若い世代に伝え教える必要がある、日米安保に関心を有している、橋本総理の中国での行動は中国人の感情を和らげた、香港が中英間の歴史の所産であったのに対して、台湾は中国国内の問題である等の発言あり。橋本総理より、我が方の基本的立場を説明すると共に、台湾問題については平和的解決を希望する旨発言。

(2)喬石全人代委員長との会談(5日15時40分~16時20分)
(イ)日中関係:日中共同声明、平和友好条約が基礎であることを確認。総理より、その上に更に積み上げる努力が必要である旨指摘。
(ロ)台湾:喬委員長より、粘り強く平和的な方法で両岸の解決を目指す旨発言。橋本総理より、台湾に関する日本の立場を説明。
(ハ)全人代の法制整備:喬委員長より、国際人権規約A規約年内加入に向け作業を進めている、人権については対立でなく対話が重要である旨発言。

(3)朱鎔基副総理との会談(5日14時50分~15時35分)
(イ)日中経済関係:総理より、大連工業団地、投資環境(増値税還付、知的所有権の保護等)、商工会の扱い等を取り上げ、善処を求めた。
(ロ)中国のWTO加盟:総理より、モノの貿易についての実質的合意を受け、今後(サービス他)残りの分野について出来るだけ努力してほしい旨発言。
(ハ)訪日招請:総理より朱鎔基副総理の訪日を招請し、朱副総理より謝意を表明。
(ニ)歴史認識:朱副総理より、中国側の敏感な感情をよく理解して欲しいとの趣旨の発言あり。

5.政策演説

 5日午前、橋本総理は、国家行政学院において、「新時代の日中関係ーー対話と協力の新たな発展」と題する政策演説を行い、日中関係の一層の発展を目指す上で、両国間の対話と強力を推進していくことの重要性を述べ、日中両国が来世紀に向け、アジア太平洋地域そして世界のことを考え、幅広い問題について話し合い、協力していくべきことを強調。


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