外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 会談・訪問 過去の記録
過去の記録


日米共同記者会見概要

平成8年4月17日

17日、橋本総理及びクリントン大統領は、共同記者会見を行いました。その概要は次の通りです。(日本側同席者:久保副総理・大蔵大臣、梶山官房長官、池田外務大臣、塚原通産大臣、臼井防衛庁長官。米側同席者:モンデール大使、クリストファー国務長官、パネッタ首席補佐官、レイク補佐官。司会:橋本外務報道官。)

1.両首脳冒頭発言

(橋本総理)ただいま、私はクリントン大統領とともに二つの文書に署名しました。その一つは、今日の日米関係と21世紀へ向け両国が協力して進むべき方向を示した「両国国民へのメッセージ」であり、二つめは「日米安全保障共同宣言」です。
 「両国国民へのメッセージ」では、民主主義や自由の大切さ、地域問題への両国の協力、国連改革や軍縮に向けての協力、経済関係などに触れつつ、日米関係が両国国民にとっていかに大切か、また、両国が将来の課題にどのように協力していくかがまとめられています。
 そして「日米安全保障共同宣言」には、わが国の安全、アジア・太平洋の平和と安全を図る上で、日米安全保障体制が、これまで同様、今後とも、重要な役割を果たしていくことを確認し、また将来へ向けての両国の協力の出発点とすることが記されています。
 首脳会談で我々は、安保、経済など、日米両国間の諸課題や、国際社会の抱える諸問題等幅広い議題を取り上げました。
 沖縄施設・区域の整理・統合・縮小の問題については、沖縄の方々のご負担を軽減するため、両国政府が誠心誠意努力をしています。我々は、一昨日に発表された特別行動委員会の「中間報告」の内容を改めて評価し、この中間報告にある措置を的確に実施していくことが重要であること、また11月の最終合意に向け、引き続きお互いに全力を尽くすことを確認し合いました。
 日米経済関係については、私より、わが国の経常収支黒字が縮小傾向にあること、日本政府は規制緩和等日本の経済構造の改革に向け努力中であることをご説明し、また、個別の問題についてもこれまでの実績を踏まえ、必要な場合にはいつでも話し合っていこうと申し上げました。
 我々は、また、人類や地球社会に対する脅威に日米両国が協力して立ち向かっていくことの重要性について話し合いました。そのために「コモン・アジェンダ」と呼ばれる協力に、テロリズム、地震のような自然災害、新しい感染症等に協力して対処していくよう、新たに6つの分野を追加するとともに、民間や第三国にも加わっていただき、こうした協力を一層発展させていくことを確認し合いました。また、21世紀型の自然と共生する発展のあり方につき共に検討していくこととなりました。
 また、我々は、限られた時間の中、中国、朝鮮半島、ロシア、旧ユーゴスラビア、中東などの情勢についても意見を交換し、両国の政策方針につき、話し合いました。
 私の印象を率直に申し述べるなら、本日の首脳会談は太い柱と大きな屋根で支えられていました。太い柱とは日米両国民の相互理解という柱であります。私は大統領に対し、この柱を一層太くしていくためにも、将来もっと多くの米国の若者が、日本に来られる機会を作っていくとの決意をお伝えしました。
 そして、大きな屋根とは、これまで両国がともに守ってきた価値であります。民主主義、人権、開かれた経済といった普遍の価値を国家の基本に据えている日米両国は、世界の将来にとってもかけがえのない関係を築き上げており、このきわめて大切な関係の再確認こそが本日の首脳会談の本質であったと申し上げます。

(クリントン大統領)皇室、橋本総理が暖かく我々をもてなして下さったこと、日本の国民の方々がすばらしい歓迎振りを示して下さったことに感謝しています。 私はここに、過去50年間に日米間で構築してきた特別なパートナーシップを祝うために、また新しい時代に入っての要求に応えていくための同盟関係を強化するためにやってきました。橋本総理と私は、最も強大な民主主義国家として、また2つの経済大国として、特別の責任をもっているということで合意しました。今や、すばらしい可能性を秘めた時代です。両国が可能性を最大限活用できる将来性をもっている時代であると同時に挑戦のある時代でもあります。国境を越えた問題がますます国境の中に入ってきています。単独行動をとる凶暴な国から免疫性をとることは誰もできません。大量破壊の武器が拡大しています。犯罪、麻薬の密輸、環境の劣化、経済的な混乱があります。しかし、日米が力を合わせれば、これらの問題が共通の解決法になってきます。過去3年間、両国は、このことをしてきました。多様性に満ちた絆を見るならば、安全保障、貿易、コモンアジェンダという分野に広がっています。結論は簡単です。日米関係は今までにないほど良い状態にあります。日米の安全保障同盟は、太平洋に平和を維持していくために欠かせません。特に、たくさんの地域的変化が起きている時代においては、そうです。総理と私がたった今署名した安全保障宣言は、1年以上の作業の結果できたものです。21世紀に向けて日米間の同盟関係を強化していく。米国は在日米軍のプレゼンスをおおむね現在の水準を維持する。日本の自衛隊との協力を深めていく。そして日本の人達に対する米軍基地の負担を軽減していく。特に沖縄の人達に対する負担を減らしていく。それによって我々の防衛能力を減らすことはありません。
 貿易関係も良い軌道に乗っています。これは両国民にとって良いことです。私が大統領に就任したとき、米国に本当のフラストレーションがありました。日本の人々に米国のモノやサービスをなかなか売り込むことができませんでした。私が就任してから21の別個の協定を結ぶことができました。自動車部品から医薬品、コンピューターまでわたっています。その結果米国の輸出はこれらの分野で85パーセントという劇的な増加を見ました。米国にとって良い給料の良い仕事が生まれてきました。日本の人々にとっては、安い価格の多くの選択肢が出てきました。自由で公平な貿易は、日米両国に利益をもたらします。この仕事をまだまだしなければならない分野もあります。保健、半導体、フィルムの分野でまだ作業が残っています。易しいものではありません。しかし、私たちは、問題ができたときには忍耐をもって現実的な解決を図るプロセスを作りました。日米間のこのパートナーシップは世界の人々におおきな違いをもたらすことができます。ボスニアで力を合わせて、復興に努力しています。日本政府は5億ドルという非常に寛大な救援パッケージを発表してくれました。これは日本政府の力強いコミットメントです。
 総理と私はコモンアジェンダの下でとられているたくさんのイニシアチブについても話をしました。西暦2000年までに小児麻痺を根絶するために努力をしています。地震災害軽減パートナーシップを通して、天災の害を減らす努力をしています。森や海を守るための努力をしています。先端技術を通して人々の生活水準を上げていますし、包括的核実験禁止条約(CTBT)を完成し署名する努力をしています。平和と自由と祝福を多くの人にもたらす努力をしています。米国の人がより多く訪日するための交流プログラムのイニシアチブに対し、総理にお礼を申し上げたい。今の時代は可能性とチャレンジのある時代です。こういう時代において、日米両国及び世界の人々にとって、日米のパートナーシップは、今以上重要なことはありません。このパートナーシップにより、平和を世界の人達にもたらす強力な力になります。

2.質疑応答

(日米防衛協力のための指針の見直しについては、国内から、憲法で禁じられた集団的自衛権の行使との兼ね合いについて、今後意見調整が必要ではないかとの意見があります。この問題について、国民的合意を得るために、総理は、どのような取り組みをするのですか)

(総理)我々は、昨年、今までの防衛大綱を変えて、新しい防衛大綱を作りました。これは、冷戦終結後の、今の国際情勢に合わせて、日本の防衛力を根本的に位置づけたものです。当然ながらその中で変化が生じているから、我々は色々な変化に対応した研究をしなければなりません。今まで、これは本当に日米安全保障条約のおかげだったと思いますが、第2次世界大戦に敗北を喫して以来51年間、平和の中で暮らすことができました。そのため万一の場合ということを我々は余り考えてこなかったような気がします。そしてその万一という場合、例えば、その地域にいる在留邦人を救出する、あるいは避難民を受け入れる、そうした事態を想定することなく暮らしてこれたことは幸せなことです。しかし、今我々はそうした事態を想定しながら、何ができるか、そして何ができないかをきちんと研究しておくことは本当に必要であると思っています。こうした議論がややもすると憲法の議論、あるは有事法制の議論といった観念的な議論から始まってしまうことを大変不幸だと思っています。我々は現在の法体系の下でもできることがあるはずです。こうした点をきちんと研究していくことは、私たちの責任ではないでしょうか。改めてこの機会に私たちはそのことを訴えていきたいと思っていますし、本当に危機が生じたとき、日米安保体制が円滑に機能する、効果的に運用されるためにも、日米協力について我々はできることとできないことの研究はきちんと行っておかなければならないと思っています。

(イスラエルとヒズボラ・ゲリラとの間の停戦をもたらすための米国の努力についてお話しください。また、このような暴力行為についてどう思いますか。)

(大統領)まず最初に、停戦は守られませんでした。ヒズボラの人達が合意を破ったのです。そしてイスラエル北部にロケットを撃ち込み、それが挑発行為になりました。あらゆる手を尽くしてこうしたことを終わらせることが大事です。日本ともこうした重要な問題について協力しています。国務長官はこの問題のために数日間大変な努力をしました。ありとあらゆることをして暴力行為をやめさせ、機能するような合意を作りたいと思っています。今ここで合意の進展について特にお話しすることはありません。

(首脳会談において、台湾海峡の問題について話をしましたか。宣言の中には述べられていないようですが)

(大統領)安全保障宣言は、日本を守ることのみならず、アジア太平洋地域を守ることも入ります。ということは、台湾もこういう安全保障の保護の下にあるということだと思います。総理と私は、中国・台湾の問題についてかなりつっこんで話し、台湾海峡の問題も話し合いました。私たちのパートナーシップは、平和を守り、地域の全ての人達を守るために設計されています。米国は明らかに「一つの中国」という政策を維持しています。一方で、中国と台湾は、問題を平和的に解決するといった、何年か前に行った合意を守る必要があります。その道筋をこれから守っていくということで総理と合意しました。そういう形で台湾海峡の話もしました。過去数ヶ月の間に、より秩序のある平和的な関係が両者の間で見られるようになってきており、それを私たちは強く希望し、両者に対してもそのように要請します。総理もご意見をどうぞ。

(総理)台湾海峡を巡る情勢が大変緊迫したとき、私たちは双方の当事者に自制を求めました。そして私共もまた、日中共同宣言以来、中国は一つであるべきという主張を支持しています。その上で、私たちは、双方の当事者が平和な中で問題を解決してもらいたいと心から願っています。

(韓国において発表された4カ国協議の中で、日本はどういう形で話し合いに参画していきますか。米国としてどういう日本の役割を期待しますか。また、在日米軍の47000人という数字は、固定化されたものですか、それとも将来は柔軟に対応できますか。)

(大統領)まず2番目の質問に答えます。我々は米軍を東アジアに今の水準で維持することを約束しています。日本、朝鮮半島等を巡る情勢は日々変化しており、世界も変わりつつあります。しかし、米軍はおよそ現在のレベルを維持し、我々の約束を守っていく必要があります。私と金大統領が提案を発表したときに、総理にはその提案を支持すると述べていただき、ありがたく思っています。私と総理とは、現在のレベルをおおむね維持するということにも同意しています。我々の提案は、四ヶ国で平和交渉に入りたいということです。これは、米国と中国とが43年前に朝鮮半島の休戦条約に参加していることにもよります。しかし、朝鮮半島の平和は、朝鮮半島の人達が決める必要があります。友人や隣国の人達が、朝鮮半島にどういう解決が可能なのか意見はあると思いますが、総理の方から、金大統領と私が提案をするやいなや、支持の御発言を頂き、うれしく思っています。他の国々もそういう発表をし、朝鮮半島の平和へのプロセスを勇気づけてくれることを希望します。

(総理)私はあの発表を聞いた時、非常に嬉しくその内容を受け止めました。そして朝鮮半島を巡る情勢の中で、アメリカ、中国を加え、韓国と北朝鮮が前提条件なしに話し合いの場につく、それが本当に朝鮮半島の平和のスタートになればいいと心からそう願いました。そして私は日本としてその話し合いの中で求められれば、どんな役割でも果たして行くべきだと思っています。しかし、やはりこれは朝鮮半島に今、韓国と北朝鮮という二つの線が引かれ、そしてそれに休戦協定を作るときに参画したアメリカと中国が加わって話し合われるべきだと思います。そこで日本から積極的にああしたい、こうしたい、ということをいうべきではないと私は思っています。求められた役割は一生懸命に果たして、平和がよみがえるための努力をするのが当然だと思っています。

(コモン・アジェンダの追加分野の中で発表された日米間のテロリズム対策は具体的にどのようなものですか。日米の当局間での情報交換を図ること等も検討中ですか。)

(大統領)勿論、詳細はこれから検討されなければならないものですが、枠組みについて私の考えを簡単に述べたいと思います。国というのは国境がありますが、国境はますますオープンになり、お金その他のものが国境を越えて、一秒間の何分の一のスピードで動いています。私たちはますます統合され、二つの種類のテロリズムの危険が高くなります。一つは、日本の地下鉄での経験、米国がオクラホマで経験したものです。もう一つはテロリズムで、国境の外で起きてきたもので、例えば、NYにある世界貿易センターで起きたものです。我々がその被害を受けたわけですが、こういう種類の攻撃は、単に罪のない国民が殺される危険があるのみならず、開放された地球規模の経済に対して大きな脅威をもたらすものです。この問題には2つの形で対処できます。1つは、情報をどんどんと共有していく、そして国際的なテロリズムに対抗していくことです。これはたくさんの国々が一緒になって、日米でできることがたくさんあるということです。もう一つは、国内から出てきたテロリズムにどう対抗するのかということです。日本でも米国でも、国内のテロリズムに同じように対処することができます。例えば、サリンガスは作れたが、米国でも作れるのです。オクラホマ市の連邦政府の建物を爆破した爆弾の製造方法も入手可能です。この経験から、どのようなことを学ぶことができるのか、どう予防できるのかということを国内的な関心から話し合うことができます。警察当局との協力についても国際的な場で話し合うことができます。こういうテロリズムは、今後20年間、如何なる国でもますます直面していく可能性は増えていきます。人命を救い、平和を保つために協力する分野はたくさんあります。

(総理)大統領が述べたことに付け加えるとすれば、既に我々の間では、例えば麻薬犯罪に関してのマネー・ロンダリングを共同で摘発する行動が進んでいます。ただ、それをどういう手法でやるのか公表することは勘弁していただきたい。しかし現実にマネー・ロンダリングに対する対応のように協力の進んでいるものはあります。テロリズムと戦うときも様々なやり方があると思います。

(在日米軍の役割が日本、アジアにおいて不可欠だと、安保共同文書において述べられています。なぜ不可欠なのでしょうか)

(大統領)まず私は、在日米軍のプレゼンスは必要だと思います。みんなが恐怖をもっている限り必要です。どこかの国が他の国を独占しようとするかもしれませんし、アジアが戦場になるかもしれません。また、安全保障の問題が起きて、この国々の独立・安全が脅かされるかもしれません。日本のみならず他の同盟国にそのようなことが起きるかもしれません。この地域にいる人達が地域の安全を決めなければなりません。私が大統領として一番うれしいことの一つは、安全保障のパートナーとしてアジアに我々は参画しており、そして米国がここにプレゼンスを保つことによって安定の元になっているとみられていることです。この地域の人達は皆、我々のこの地域のプレゼンスの目的を知っています。我々は占領をしようとは思っていませんし、他の国をコントロールしようとは思っていません。また、軍事力を使って不適切なことをしようとは思っていませんし、同盟国である日本や韓国、地域の他の国々も、同盟国として基盤を提供してくれています。これらの国々が米国のプレゼンスを望む限り我々は駐留を希望します。我々のプレゼンスが希望されないときは、それに気がつくと思います。我々がプレゼンスを保ってきたのは、地域の人達が希望されているからです。

(総理)今の大統領の最後の部分を受けて答えます。まさに私は我々がこの地域における米軍の存在を歓迎しており、そしてそれがアジア太平洋地域の安定に役立っている、ということが一番大事なことです。東西二大陣営の対立という冷戦の時代が終わり、確かに大きな紛争要因は減りました。しかし実は地域紛争は増加しました。色々な原因で不安定な地域がいくつもあります。そしてこの地域には大量破壊兵器もまだたくさんあります。その中で、日本だけで日本の安全を確保することは、大変な努力を必要とするだけでなく、日本の行動に対して国際的に安心してもらうような雰囲気にはならないでしょう。米国が自国の若い兵士たちの実際の姿で現に存在してくれていることが、どれほどこの地域に多くの安定をもたらしているかは、当然のことながらご理解いただけると思います。

(今回の合意が日本の安全保障を転換するきっかけになると思いますが、どの様にお考えでしょうか。)

(大統領)我々の安全保障関係を強化するものです。それ故、転換期というより、より成熟したものにしていく、ということです。例えば、総理が米国が沖縄の人達の負担の心配を考慮してくださいという要請をしました。不幸な事件が沖縄で起きました。これらの問題の根幹がこの暴行事件の前には解決されていませんでした。だから、米国は対応する機会を与えられてありがたいと思いました。適切な形で対応したと思っています。ただし、これは米国の防衛力を軽減することなく行われました。それ故必要な形で今後とも日本に協力をすることができます。将来の問題にも対処することができます。日本の安全保障のアジェンダが今後もできていくでしょう。日米関係は、古い友人のようなもので、成熟した形で対処していきます。そして世界の直面する問題にこれからもこういう形で応えていきます。

(エボラウィルスがテキサスで出たということですが)

(大統領)疾病対策センター(CDC)がそれに取りかかっています。少なくとも分かっていることは、一般大衆に対する大きな脅威はないということです。だから、一般大衆はこれに過剰に反応しないようお願いします。エボラウィルスについてより懸念するような状況になれば、できるだけ速やかにそのことは知らせるつもりです。ただ、現在連邦政府が適切な対応をとっています。国民にとって現在過剰反応する理由は全くないと考えています。




Copyright (c) 1996 Ministry of Foreign Affairs, Japan All Rights Reserved.

目次

外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省