
宮中晩餐会での乾杯の辞
1996年4月17日
天皇皇后両陛下、橋本総理大臣閣下ご夫妻、ご来賓の皆様;
私は、妻ヒラリーと米国代表団を代表して、皆様の格別なるご歓待に感謝の意を表したいと思います。前回両陛下とお会いした2年前、両陛下は我が国を訪れ、アメリカ国民を魅了されました。両陛下は、アメリカを横断されて、日本国民と日本文化の特質と品位をすべてのアメリカ人に気づかせて下さいました。
両陛下は、ご訪米の折りに、両陛下に接する光栄を我が国民に与えて下さいましたが、今夕は、両陛下のおもてなしに授かる光栄を私達に与えて下さり、世界に冠たる日本の気品と優雅さをもって私達を迎えて下さいました。1200有余年前、帰国の偉大な歌人大伴家持は、「そきだくも おぎろなきかも こきばくもゆたけきかも ここ見れば うべし神代ゆ 始めけらしも」(あんなにも広々としていることか こんなにも豊かであることか このさまを見ると 神代の昔から宮殿をここに設けられたのも当然だろう)、と詠んでいますが、私達も今夕、友人への礼讃という古からの伝統を体現しているこの壮麗な宮中で歓迎を受けました。
私は、日本の国民の皆様にも感謝いたします。私達が東京で受けた歓迎は、大統領としては二度目の経験ですが、日米両国民の友情を如実に物語っています。皆様のお陰で私達はとてもくつろぐことができました。日米関係ほどに大きく複雑で、しかも極めて多種多様に分析されている関係においては、いかなる数字や統計を持ってしても、両国にとってこの友情がもつ価値を捕らえることはできません。
歴史は国家間の同盟の変貌でちりばめられています。しかし、日米両国民のように半世紀という短い期間にこれほど強い友情を結んできた国民は、歴史にもほとんど例を見ません。確かに私達両国は、長い道程を共に歩んできました。両国がこれほど長い道程を踏破できたのは、私達が普遍的な価値観で結ばれており、同じ目標を求めているからです。それは、全ての国民にとっての自由、平和の恵み、そして日米両国民が自分達の人生を最大限活かすことを可能にしてくれる繁栄です。
日米両国は手を携え合って、現代史における一つの偉大な民主的伝統を生み出しました。それは、両国民の最高の願望を叶えることを目指して結束し協力するという伝統です。この50年という短期間に、両国は、絶えざる変化と多発する激動の時代に、世界最大の二つの経済を構築し、安全と安定のための強大な力を創り出すことによって、大いなる恩恵を享受してきました。
今日、私達は、この伝統をさらに前進させ、アジアにおいてきわめて重要な安定をもたらしてきた同盟を再活性化させました。私達はまた、経済問題での精力的な作業を続けましたが、その結果、未来の機会の扉が開かれることになるでしょう。さらに私達は、世界が直面する新たな問題に取り組むという日米共同の努力も前進させました。私達はきわめて多くのことを達成しました。きたるべき新世紀において、もし私達が決意を維持していけるなら、日米両国はこれまでよりもはるかに多くのことを達成することができるのです。
ご来賓の皆様、両陛下の健康を祈念して、また、可能性に満ちたこの新時代の夜明けに、進歩と希望のための目覚ましい力となっている日米両国民の友情を祈念して、杯を上げようではありませんか。
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