
日米コモン・アジェンダ
21世紀に向けてのパートナーシップ
平成8年4月17日
過去50年間にわたって作り上げられてきた日米間のパートナーシップは、21世紀の安全保障並びに経済的及び地球的規模の課題に取り組むために必要不可欠のものである。日米両国は、21世紀の太平洋地域及び世界の安全、安定及び繁栄に向けての共通の価値観と未来像を分かち合っている。この強力なパートナーシップには、日米両国の経済及び安全保障の問題だけではなく、新たに持ち上がっている国境を越えた課題に対する取組についてのコミットメントも含まれている。
地球的規模の課題についての協力を一層推進するために、宮沢総理(当時)とクリントン大統領は、1993年7月に日米包括経済協議の一環として地球的展望に立った協力のための共通課題(「コモン・アジェンダ」)を打ち出した。創設以来、コモン・アジェンダは、保健及び人口、環境、麻薬取引、技術、経済発展など様々な分野における地球的規模の重大な課題に取り組んできており、世界で最も成功を収めている二国間協力の一つとなっている。
コモン・アジェンダは、我々が地球的規模の課題に取り組むに当たって、互いの専門知識及び資源を結集するための協力のモデルとなっている。我々は、単独で活動するよりも、協力して活動することによって、より多くの成果をあげることができる。
コモン・アジェンダの下の既存の計画の概要
まもなく3周年を迎えるコモン・アジェンダは、5つの柱の下、20を超える分野を対象としている。
「保健と人間開発」の促進のため、日米両国政府は、西太平洋地域におけるポリオの事実上の根絶に貢献し、また、南東アジア地域においても大きな進展をもたらした。さらに両国政府は、この計画をアフリカ諸国に拡大しようと考えている。我々の最終的な目標は、西暦2000年までに全世界からポリオを根絶することである。また、我々は、開発途上国の子ども向けのワクチンの普及を支援している。我々は、開発途上国におけるヨウ素欠乏症対策及び微量栄養素プログラムにおける協力の可能性について検討する。我々は、アジア、アフリカ、中東及びラテンアメリカの重点国における人口及びエイズ問題についてのイニシアティブに関しても緊密な協力を続けている。1995年、我々は、開発途上国における女子教育の機会を拡大し、女性による零細企業を支援するための「途上国の女性支援」(WID)を協力分野として追加した。
「人類社会の安定に対する挑戦」への対応として、1994年、両国政府は、麻薬の国際的な取引に対し協力して取り組むことを決定した。この計画には、法執行、需要削減、薬品管理及び代替作物プログラムに関する協力が含まれる。
「地球環境」の保護に資するため、両国政府は、国際社会の他のパートナーとともに、1995年、貴重な海洋資源の保護と保全を目的としたプログラムである「国際珊瑚礁イニシアティブ」(ICRI)に対する世界的な支援を呼びかけた。また、我々は、全地球的な目標達成のためにICRIの地域的戦略の開発を促進している。我々は、現在、アジア・太平洋地域で珊瑚礁保全研究センターの設立を支援するために協力している。
両国政府は、インドネシア及びフィリピンにおける環境保全努力を共同で開始した。我々は、インドネシア生物多様性プログラムにそれぞれ資金を提供し、また、「危機に瀕する公園計画」を通じて、中南米及びカリブ地域の数ヶ国における自然保護においても協力している。太平洋総合観測研究イニシアティブ及び地球観測情報ネットワーク(GOIN)が進行中である。また、我々は、北極圏研究に関する協力をまもなく開始する。さらに、我々は、二酸化炭素の隔離やフロンに関連する技術など、環境に優しく、かつエネルギー効率の良い技術に関する共同研究開発も行っている。
「科学技術」を推進するため、我々は、民需産業技術、高度道路交通システムなどの道路技術、並びに高齢者及び障害者の輸送方法などの運輸技術の分野において協力することを決定した。
「相互理解のための交流」を助長するため、米国の技術者は、現在、日本の工場で日本の技術者とともに働き、将来の製造方法についての意見交換を行っている。
新たなイニシアティブ
これまでのコモン・アジェンダの成功を基に、橋本総理大臣とクリントン大統領は、1996年4月、東京での首脳会談において、新たに6つの協力分野を発表した。
新興・再興感染症についてのイニシアティブ 感染症が地球全体に復活し、強力な抗生物質に対しても生き残り、変異を起こして危険で新しい変種になっている。このイニシアティブは、再興している結核のような感染症及び新興の感染症を予防し、鎮静化するための地球的規模の取組を促進することを目的としている。日米両国の感染症専門家の初会合が、1996年7月、京都で開催される。
自然災害の軽減についてのイニシアティブ 日米両国は、しばしば自然災害に見舞われるが、両国政府は、自然災害の早期警戒についての情報交換のための国際ネットワークを強化することを決定した。また、我々は、地震から地域社会が被る損害を軽減するために科学技術の進歩を加速化することを目指して地震被害軽減に関する協力を開始することを決定した。両国政府は、1996年秋、予防及び応急対策の向上をはかるため、科学者及び政府関係者を集めて地震シンポジウムを開催する。
市民社会と民主化についてのイニシアティブ 両国政府は、被援助国と協力して、選挙監視、司法制度強化などの分野における支援を調整するための方途を模索する。
テロリズム対策についてのイニシアティブ テロリズムは、市民の安全、国家の安全及び国際社会の繁栄に対する脅威であることを認識し、両国政府は、この分野での協力を強化し、生物・化学テロに関するP8専門家会合の準備を含む現在行われているテロリズム対策に関する二国間協力をコモン・アジェンダに取り入れる。
地球的な食料供給についてのイニシアティブ 両国政府は、飢餓及び栄養不良に直面する国々における確固たる食料供給の欠如がもたらす重大な問題、及び将来の地球的規模での食料供給力を確保することの重要性を認識している。我々は、食料生産力の向上のための科学技術研究、持続可能な農業発展の推進などの分野における協力を検討する。
21世紀のための教育工学についてのイニシアティブ 教育は、社会の幸福のための基礎であり、技術は、教育分野を大きく変革する。両国政府は、技術面での世界的なリーダーとして、コンピュータ及びその他の先端技術を教育に利用する可能性を模索する。
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