日韓外相会談概要
平成13年7月25日
ASEAN関連外相会議のためハノイを訪問中の田中外務大臣は、25日、現地時間18時から18時50分(本邦時間20時から20時50分)までの約50分間、韓昇洙(ハン・スンス)韓国外交通商部長官との間で日韓外相会談を行ったところ、概要以下のとおり。
1.冒頭
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韓長官より、先日の韓国中・北部における集中豪雨に対する田中大臣からのお見舞いのメッセージへの感謝の意を述べ、また、先の田中大臣の訪米、欧州訪問、G8外相会合出席等の活躍につきお祝いの言葉を述べた。 |
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これに対し、田中大臣より、韓長官には何度もお会いし親しみを感じている、先日の集中豪雨で、多数の人々が犠牲となったことに、お見舞いの言葉を述べ、また、本年秋の国連総会において、韓長官が総会議長の大役を果たすことに対し、日本としても最大限協力していきたい旨述べた。 |
2.対北朝鮮政策
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韓長官より以下の発言があった。
G8外相会談において田中大臣が韓国側の要望をふまえ発言されたことに感謝。包容政策に対する日本のたゆまない支持に感謝。対北朝鮮政策においては日米韓三国の連携が重要であり、今後ともTCOG等を通じ三国の協調体制を強化するための努力を続けていくことが必要である。 |
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これに対し田中大臣よりは以下のとおり述べた。
G8外相会合では、韓国からの要望も踏まえ発言した。我が方としては、韓国及び米国との緊密な連携を維持しつつ、粘り強く対北朝鮮政策に取り組んでいきたい。 |
3.教科書問題
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韓長官より以下のとおり述べた。
教科書についての立場は既に何度も日本側にお伝えしている。未来志向の関係を築くためにも、本件は深刻な問題である。日本においても、特定の教科書に対し不満の声があり、採択に反対する動きがあることを承知している。この問題を解決するためには、総理及び田中大臣をはじめ日本の政界指導者による政治的な指導力を発揮していただきたい。この問題により良好な日韓関係が損なわれないよう努力することが重要である。日本が、アジア、世界の平和と繁栄のために、指導力を発揮するためにも問題の早期解決を期待する。 |
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これに対し田中大臣より以下のとおり述べた。
今回の日本の回答は教科書検定制度に下で、真摯な検討を行った結果である。韓国国内で強い失望と反発が表明されていることについては、大変心を痛めている。また、私のように心を痛めている人が沢山いることを理解して欲しい。日韓関係は、日本にとって最も重要な二国間関係の一つであり、本件を巡り、良好な両国関係の大局が損なわれないようにしたい。このような時こそ、冷静かつ誠意ある努力が必要であると考える。
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4.靖国神社参拝問題
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韓長官より以下のとおり述べた。
本件についての韓国政府、国民の強い懸念は日本側も承知のはず。被害者の立場に立ち、周辺国家に配慮して賢明かつ慎重に対応して頂きたい。 |
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これに対し田中大臣より以下のとおり述べた。
韓長官の御懸念は総理に確実に伝える。韓長官の抑制されたメッセージがかえって自分(大臣)には強く伝わった。総理は戦没者への敬意と感謝を捧げる思いから参拝するのであって、戦争を美化したり正当化するものでもない旨明らかにしている。靖国参拝の問題は、決められた制度のもとで行われる教科書検定と違って、総理個人が判断する問題である。8月15日までには時間があるので、帰国後、自分(大臣)としても総理とよく相談したい。 |
5.北方四島における韓国漁船の操業問題
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田中大臣より以下のとおり述べた。
日本にとって本件は、領土に関する極めて重大な法的・政治的問題である。ロシア外相に対しても、中止してほしいとはっきり伝えている。近日中にも操業が開始されるとも伝えられているが、操業はとりやめてほしい。 |
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これに対し韓長官より以下のとおり述べた。
本件は、日露間の領土問題とは関係のない商業的問題である。他方、主権に関わる問題の重要性は理解している。これまでも外務、水産当局で精力的に議論が行われており、本件の円満な解決を図ることが重要である。近日中に東京に関係者を派遣し議論したい。
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