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平成11年7月
I.「ASEANビジョン2020」1.経緯
1996年の第1回ASEAN非公式首脳会議(於ジャカルタ)において2020年までのビジョンの起草に合意。97年の第2回ASEAN非公式首脳会議(於クアラ・ルンプール)において採択。
2.特徴
(1)21世紀を目前にして、2020年までの20余年間における地域の発展及び域内協力を通じた豊かな生活の達成についての展望を示した未来志向の中期計画。
(2)経済協力、政治・安全保障、文化等全ての分野を包括する地域協力の在り方を提示。
(3)現在の経済危機の対応につき、創設以来30年間におけるASEANの存続と成功を振り返り、未来を指向する必要性を指摘。
(4)対話国・機関との関係強化を重視。
3.内容の骨子
(1)東南アジア諸国間の協調
- 調和がとれ紛争のない平和と安定の時代を志向。
- 平和的手段による問題(Differences)の解決を堅持。
- 核兵器及び大量破壊兵器の排除を希求。
- 人材育成及び天然資源の開発により繁栄を共に享受することを期待。
(2)ダイナミックな発展のためのパートナーシップ
- 域内の緊密な経済的統合を志向。
- 持続的かつ衡平的な成長を重視しつつ、域内各国及び地域の強靱性(Resilience)の向上に貢献。
- 貧困の撲滅及び生活水準の平均化を図るため、域内各国間の発展レベルの格差を縮小することを期待。
- 人材及び潜在的な能力(Human Potential)の開発を含む全ての分野で域内の経済協力を推進。
(3)CARING SOCIETYとしてのコミュニティ
- 歴史的及び文化的遺産の絆を踏えた、共通の地域的なアイデンティティにより結びつけられたコミュニティの構築。
- 性別、人種、宗教、言語または社会的・文化的出自にかかわず、全ての人が人間として向上・発展するための公平な機会を享受することを期待。
- 飢餓、栄養失調、略奪、貧困の面での問題がなく、強い家族の絆が支える社会の構築。
- 社会的弱者(Disadvantaged groups)に対し特別な支援と社会的正義を供するとともに、法の支配が優先する社会の構築。
- 不法な薬物の撲滅の推進。
- 人材の資質向上を伴う科学技術の振興。
- 天然資源の持続的開発を通じた地域環境の保護。
(4)外に目を向けるASEAN
- 域外に目を向けるとともに、国際場裡において中心的役割を果たす。
- 相互尊重に基づく、対話国との関係の強化。
II.「ハノイ行動計画」
1.経緯
昨年12月の第6回ASEAN公式首脳会議(於ハノイ)において、「ASEANビジョン2020」実現のための最初の行動計画を「ハノイ行動計画」(99年~2004年までの6カ年計画)として採択。
2.ハノイ行動計画の柱
- (I)マクロ経済と金融に関する協力の強化
- (1)地域のマクロ経済と金融の安定維持。
(2)金融制度の強化。
(3)金融サービス部門の自由化の促進。
(4)通貨、税、保険関連分野での協力強化。
(5)ASEAN資本市場の開発。
- (II)経済統合の強化
- (1)AFTA(ASEAN自由貿易地域)実現の加速。
(2)AIA(ASEAN投資地域)枠組み協定の実施。
(3)サービス貿易の自由化。
(4)食糧安全保障とASEAN域内の食糧、農林産品の競争力の向上。
(5)産業協力の強化。
(6)中小企業の育成。
(7)知的所有権に関する更なる協力。
(8)電子商取引の奨励。
(9)ASEAN域内観光の促進。
(10)地域的インフラの開発。
- (III)科学技術開発の促進と情報技術インフラの開発
- (1)ASEAN情報インフラ(AII)の確立。
(2)2004年までにAIIの情報内容を開発。
(3)2001年までに科学技術センター及び学術機関のネットワークを確立。
(4)応用技術の研究開発の強化。
(5)2001年までに科学技術指標システムを組織化。
(6)プログラム管理や科学技術支援の歳入捻出のためのシステム開発。
(7)情報技術における政府と民間部門の協力を推進。
(8)情報技術の利用から生じる新たな労働条件及び生活環境の進展に関する研究の実施。
- (IV)社会開発の促進と金融・経済危機の社会的影響への取り組み
- (1)経済金融危機の社会的インパクトの緩和。
(2)ASEAN農村開発貧困撲滅に関する行動計画及び社会的セーフティ・ネットに関する行動計画の実施。
(3)貧困、社会経済格差の問題を取り上げた活動や社会開発計画の支援のためにASEAN基金を利用。
(4)児童のためのASEAN行動計画の実施。
(5)女性及び児童の売買や暴力犯罪に対するASEANの協力強化。
(6)老人、障害者の介護に関する家族及び地域社会の対応力強化。
(7)ASEAN地域エイズ情報照会ネットワークの強化。
(8)ASEAN諸国間での人権分野の情報交換の強化。
(9)児童の権利に関する条約及び女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約その他女性及び児童に関する国際文書の完全な実施に向けて行動。
(10)国際犯罪に対する域内の対応力の強化。
(11)薬物乱用規制に関するASEAN行動計画を作動させるための作業計画の実施。
- (V)人材育成の促進
- (1)大学間ネットワークを強化し、ASEAN大学の形成に向けた作業を進める。
(2)全てが平等に教育にアクセスできるよう教育制度を強化。
(3)自家営業や起業家に機会を与えるために、ASEAN非公式部門開発作業計画を実施。
(4)2004年までにASEAN卒後青年技能訓練作業計画を実施。
(5)HRD(人材育成)センターのネットワーク作りの強化。
(6)2004年までに教育及び訓練のネットワークの確立・強化。
(7)ASEAN女性技能訓練ネットワークの強化。
(8)2000年までにASEAN科学技術人材育成計画の実施開始。
(9)文民のための地域訓練計画の実施とネットワークの強化。
(10)1999年に専門資格認定団体のネットワークを確立。
- (VI)環境保護と持続的発展の促進
- (1)2001年までに、ASEAN越境公害協力計画(特に地域ヘイズ行動計画)の完全実施。
(2)2001年までに、森林及び地上火災のモニターに力点を置いてASEAN特定気象センターを強化し、越境煙霧に関する早期警戒を準備。
(3)2004年までに、ASEAN土地森林火災管理地域研究訓練センターを設立。
(4)2001年までに、ASEAN生物多様性保存センターを強化し、協同訓練、研究活動を実施。
(5)ASEANの遺産公園及び保留地の保護のための地域調整を促進。
(6)2001年までに、沿岸地帯の総合的な保護管理のための枠組みを開発し、地域調整を改善。
(7)アジェンダ21その他の国際環境協定の実施のため、制度的、法的対応力を強化。
(8)2001年までに環境データベースを統一。
(9)2001年までにASEANの地域水保存計画の実施。
(10)2004年までに環境上健全な技術促進のための地域センターまたはネットワークを確立。
(11)2004年までに遺伝的資源へのアクセスに関する議定書を策定、採択する。
(12)2004年までに海洋環境を保護するための地域行動計画を開発。
(13)循環空気及び川の水質に関する長期環境目標を達成する枠組みを実施。
(14)気候変動に取り組む地域的な努力の向上。
(15)環境及び持続的開発の問題の啓発、参加についての広報教育の向上。
- (VII)地域の平和と安全保障の強化
- (1)ASEANの連帯、結合及び調和の強化。
(2)二国間及び地域レベルの協力及び技術援助に関する整合的、包括的計画を促進。
(3)東南アジア友好協力条約(TAC)第二議定書のできるだけ速やかな批准。
(4)対話国その他関係国のTACへの加盟を奨励。
(5)TACにて構想された理事会運営の手続き規則案を策定。
(6)加盟国間で未解決の境界画定問題の解決にむけた努力の奨励。
(7)国境の安全確保及び安全かつ至便な国境横断の円滑化。
(8)加盟国間の国境関連の問題等安全保障上の意味を有する事項の解決のための協力を奨励。
(9)核保有国の東南アジア非核兵器地帯(SEANWFZ)条約議定書への加入を含め、SEANWFZ条約の確実な受諾に向けた努力を促進。
(10)SEANWFZ条約委員会の召集。
(11)軍縮特に大量破壊兵器不拡散のための努力の支援、活発な参加。
(12)ASEAN加盟国の紛争当事国が友好的交渉を行い、国連憲章に定められた紛争の平和的解決のためのプロセス、手続きを利用することを奨励。
(13)1982年の国連海洋法条約を含む国際法に従って平和的手段により南シナ海における領有権問題を解決する努力を促進。
(14)南シナ海における信頼醸成措置を推進する努力の継続。
(15)南シナ海に関するASEAN宣言への署名を慫慂。
(16)南シナ海における地域的行動規範を確立する努力を促進。
(17)外務、防衛官僚間で既存のメカニズムによりASEAN域内安全保障協力を強化。
- (VIII)アジア太平洋及び国際社会におけるASEANの役割強化
- (1)ARFプロセスにおけるASEANの議長の地位を維持。
(2)ARFにおけるASEANの役割を強化する措置を活発かつ精力的に実施。
(3)ARFを予防外交促進に前進するイニシアティブを策定。
(4)ARFのプロセスにおけるASEANの役割の必要性に関する啓発を促進。
(5)ARFの活動に外務とともに防衛官僚の引き続き関与させる。
(6)アジア太平洋地域の協力的平和を推進するために、東南アジア友好協力条約(TAC)に基づく基本原則の発展。
(7)国際連合等の国際フォーラムでのASEANのポジションに関する協議、調整の促進。
(8)ASEANと対話国との関係の再活性化。
- (IX)国際社会でのASEANに対する認識と地位についての啓蒙促進
- (1)ASEANについての啓蒙のため、ASEAN基金及びその他の利用可能な資金及びメカニズムの活動への支援。
(2)国際社会におけるASEANの地位を促進するための協調的コミュニケーション計画を開始。
(3)2000年までに、ASEAN衛星チャンネルを設立、始動。
(4)金融経済危機に対処するASEANの努力に関する資料の公刊、伝播。
(5)ASEANの対話国との対外メカニズムを通じたハノイ行動計画の優先事項の公表。
(6)ASEAN協力の重要分野に関する広報において、マスメディア・ネットワーク、ウェブサイトとの連携を促進。
(7)2000年までに文化遺産に関するASEAN宣言を作成、採択。
(8)ASEAN内外で、専門的なASEANのパフォーマンス、展示会をより多く行い、かかる活動に関して適切なマスメディア報道を提供。
(9)青年向けの芸術文化キャンプ、交流計画を企画し、青年の他のASEAN加盟国への旅行の奨励。
(10)2001年までに専門的な訓練計画を実施するASEANマルチ・メディアセンターを設立。
- (X)ASEANの機構とメカニズムの改善
- (1)ASEANの活動の拡大、加盟国の増加、地理的状況に鑑み、効率性、実効性を更に改善するためにASEANの全般的な機構構造を検討。
(2)対話国、地域機構、その他経済グループとの対外関係メカニズムの検討と合理化。
(3)ハノイ行動計画の実施を支援するための、ASEAN事務局の役割、機能、キャパシティーを検討。
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