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ASEAN拡大外相会議全体会合(ASEANプラス10)
池田外務大臣ステートメント

平成9年7月28日
於:クアラルンプール

(1、はじめに)

  アブドゥラ外務大臣閣下、
  ASEAN各国及び各対話国の外相の皆様、
  ご列席の皆様、

 私はまず、今年、東南アジア諸国連合(ASEAN)が創設30周年という記念すべき年を迎えられましたことに対し、心よりお祝いを申し上げたいと思います。また、会議の成功のために多大な努力を積み重ねられたマレイシア政府、我が国との調整の労を取られたタイ政府を初め、ASEAN関係者各位に深甚なる敬意を表したいと思います。
 この30年間、ASEAN諸国は多様性と協調性とを維持しながら、目覚ましい発展を遂げてまいりました。その間、ASEANを取り巻く国際環境も大きく変動しております。冷戦構造下での東南アジア地域における対立も今や過去のものとなり、ヴィエトナムの正式加盟に続き、今般、ラオス、ミャンマーが新たに加盟されるに至りました。我が国としてはASEANメンバーの拡大が東南アジアの平和と安定に資すると共に、ASEANがより一層国際的役割を果たすことを期待しています。
 カンボディアについては、我が国を含む国際社会の大きな努力により達成された和平が後戻りすることのないよう、情勢の改善に向けて引き続き同国の指導者に対する働きかけを行っていく所存であり、ASEAN諸国とも協力を行っていきたいと考えています。

(2、ASEANの役割に対する評価と国際社会からの期待)

 ご列席の皆様、

 ASEANはこの30年間、顕著な経済発展と域内協力により、各国及び地域の強靱性を高め、国際社会に於いて積極的な外交的イニシアティブを発揮しております。本拡大外相会議(PMC)をはじめ、アジア太平洋における政治・安全保障分野を対象とする対話の場であるASEAN地域フォーラム(ARF)、更に欧州との関係強化を図る歴史的、象徴的意義に満ちた取り組みとして、昨年より発足したアジア欧州会合(ASEM)等、いずれもASEANと国際社会との対話と協力の枠組みとして着実に進展してきています。更に、AFTAの推進に伴い域内の貿易投資が増大し、多角的な相互依存関係が着実に進展する中で、昨年6月のメコン河流域開発関係閣僚会合開催、及びASEAN投資地域(AIA)創設の検討に見られるように、域内協力に対する積極的な取組が行われております。
 今般、ASEANが新たなメンバーを迎えるに当たり、アジア太平洋地域の発展と安定に寄与してきたこうした好ましい動きが停滞することなく、一層強化されることを期待します。そして、それは新たにメンバーに加わった国に対しても建設的な影響を与えることになると確信しています。
 即ち、ASEANがこれまでの政経両面における成功を遂げる中で培ってきた、各国との協調外交、市場経済原理、自由貿易、法の支配といった基本的精神が、市場経済化と対外開放政策を進める新規メンバー国の努力を一層促進させることが期待されます。また積極的な外交努力を続けるASEANへの参加は、新規メンバーの国際社会との関係強化に貢献することになると思われます。また、メコン河流域開発等のイニシアティブは、未だ脆弱な経済基盤の上に立つ国々の開発に大いに寄与することが期待されます。

(我が国の対ASEAN協力)

  ご列席の皆様、

 我が国は、これまで30年間、ASEAN各国と一貫して友好協力関係を築き上げて参りました。本年1月には橋本総理がASEANを歴訪し、新しい時代に相応しい、より幅広く、より深いパートナーシップを構築していくことで各国と合意したところです。具体的には、第一に首脳間の対話の緊密化、第ニに固有の伝統、文化の継承と共生に向けた多角的な文化交流、第三に国際社会全体が直面する諸課題に共同して取組むこと、を三つの柱とし、アジア太平洋における豊かで開かれた社会の創造に向けて共に歩むこととしております。
 新メンバーを加え、新たな第一歩を踏み出さんとするASEANは、コンセンサス形成やイニシアティブの発揮のため、これまで以上の努力を要求されるでしょう。また域内各国間の経済格差や貿易投資面での競争激化といった新たな課題にも直面することと思われます。
 しかし、私は、拡大したASEANが、新たな課題に対し、これまで同様、粘り強い結束努力を発揮し、解決に向けて種々の困難を乗り越えていくことを確信しており、またそのために我が国としてなし得る協力を惜しまない所存です。
 アジア太平洋地域においては、民間レベルでの経済交流が進展し、相互依存関係が深まりつつありますが、多様な発展段階にある国々を包摂する当該地域において、経済社会開発の実現に向けて、政府開発援助(ODA)が果たす役割は依然として大きなものがあります。他方、我が国を含め援助国におけるODAを巡る環境は益々厳しくなっており、限られた資金を一層効率的かつ効果的に活用するとともに、一層の民間資金の有効活用及び南南協力の推進が不可欠となっております。こうした状況下で、我が国としては、ODA等を通じ、ASEAN各国のニーズに応じて、経済社会開発に向けた経済協力を共に追求して参りたいと考えております。具体的には、市場志向型経済への移行努力に対する支援や法整備支援等の制度整備支援及び人材育成を実施していく所存です。またメコン河流域開発をはじめとする国境を越えた広域開発案件への協力が重要となっております。更に、ASEAN域内の開発途上国のみならず、アフリカ地域も含めた開発途上国の経済社会開発事業に対し、共同で取り組む試みを開始しています。今後ともこうした新たな協力のあり方を共に検討して参りたいと考えます。

(3、アジア太平洋における「21世紀に向けた挑戦」とPMCの役割)

  ご列席の皆様、

 我々を取り巻く国際社会を顧みたとき、21世紀が一層の希望の世紀であると共に、種々の挑戦に直面する世紀でもあることは明らかです。 第一に、アジア太平洋地域においては、朝鮮半島情勢をはじめとして、依然として種々の不安定要因が散見されます。我が国は、橋本総理が先般の歴訪の際に明確に述べたとおり、日米安保体制が地域の安定と経済的繁栄維持のための基盤を成すものと考えており、今後とも日米安保体制の信頼性を高めるための努力を継続していく所存です。
 第二に、アジア太平洋地域が今後とも豊かな繁栄を享受していくためには、域外に対して開かれた協力を推進しつつ、自由で公正な競争に基づく活力あふれる国際経済を維持していかなければなりません。そのためには、各国がウルグアイ・ラウンド合意を着実に実施する等、WTO体制の維持・強化に貢献するとともに、APECの下での貿易と投資の自由化・円滑化に向けた協力を強化していくことが必要です。特に、APECはアジア太平洋地域の首脳が一同に集まる唯一のフォーラムであり、APECの諸活動のモメンタムを維持・強化していくことは、この地域の経済発展だけでなく、政治的安定にも寄与するものと考えます。
 そして、第三に、国際社会全体で取り組まなければならない人類共通の課題が挙げられます。環境、エネルギー、食糧、人口といった諸問題は、アジア太平洋地域の経済成長に伴い、一層の深刻化が懸念されており、エイズ、麻薬、テロといった問題とも併せ、それらの解決には国連諸機関を通じた取組の強化を含めた各国の協力が必要不可欠となっています。
 アジア太平洋においてこうした様々な「21世紀に向けた挑戦」に対し真摯に取り組む必要性が高まっている中、PMC会合は、ASEANと国際社会における主要なプレーヤーとの対話の場として、特に重要な意味を持つといえます。言うまでもなく、これまで、PMC会合はこのような対話の機会を提供し、相互間の信頼感醸成に大きく貢献して参りました。こうした地道な対話努力がARFを初めとする地域協力の礎となったのであり、今後ともそうした重要な役割を担うことが期待されます。
 先に述べた第一の課題である地域の平和と安定の確保については、ARFが対話と協力の場として域内諸国間の信頼醸成を着実に促進する役割を果たしつつあります。従って、本PMCは、ここに集う我々を取り巻くその他の主要な課題を共に議論し、検討していく場であるべきであると考えます。そうした観点から、今次会合が国際政治経済問題や地球規模問題といった課題を議題として採り上げていることはまさに適切なアプローチであり、我が国としてこれを高く評価したいと思います。

(4、終わりに)

  ご列席の皆様、

 21世紀に向け、アジア太平洋が政治的安定を確保しつつ、経済成長のダイナミズムを維持、拡大していくことは、この地域のみならず、世界の平和と繁栄にとって極めて重要であります。
 そのためにはASEANと対話国が、この地域、ひいては世界全体に対する責任を自覚しつつ、アジア太平洋が直面する様々な「21世紀に向けた挑戦」に対し、真摯に取り組んでいくべきであると考えます。私は、ここで、我が国は、創設30周年を迎えたASEANと共に、アジア太平洋地域のそうした歩みの原動力となるべく最大限の努力を行う決意を明らかにしたいと思います。そして、このPMCを通じて築かれていく各国間の信頼と協働の精神が、一歩一歩、我々を希望に満ちた新たな時代へと導いてくれるものと確信しております。



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