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町村外務大臣


町村外務大臣のイスラエル、パレスチナ自治区訪問
(平成17年1月15日~17日)
(概要と評価)


平成17年1月19日


1. 訪問の背景・意識

(1) 2000年9月の第2次インティファーダ勃発以降、暴力の連鎖が継続し、イスラエル・パレスチナ間の和平プロセスは停滞していた。03年5月に二国家の平和共存を目指す「ロード・マップ」が開始されたものの、イスラエルはアラファト・パレスチナ自治政府(PA)長官による過激派取り締まりの努力が不十分であるとして、両者の対話の道は閉ざされていた。

(2) 2004年11月11日のアラファト長官の死去を受け、1月9日には長官選挙が概ね公正かつ自由な形で実施され、穏健派のアッバース新長官が圧倒的な支持を得て選出された。イスラエル側においては、「ガザ撤退計画」の実施に向け、労働党を組み入れた新たな連立政権が成立し、同計画の実施に向けたシャロン首相の政治基盤が強化された。これらの結果、中東和平プロセスを前進させる歴史的機会が生じているというのが日本を含む多くの国の認識である。

(3) 我が国は、パレスチナ新指導部の和平努力を支援するために、できるだけ早期に具体的支援策を決定し、政権基盤を強化することが重要と考え、補正予算(昨年12月20日閣議決定)で追加的な支援(6000万ドル)を決めた。

(4) 今次訪問の目的は、こうした歴史的好機を逃すことなく和平プロセスを前進させるよう、イスラエル・パレスチナ側双方に対話の再開と「ロードマップ」に沿った各々の取り組みを働きかけること、そうした和平努力を積極的に支援する日本政府の方針を伝えることにあった。

2. 訪問の概要

 訪問直前の13日、ガザ地区でパレスチナ過激派によるテロ事件が発生。14日にはイスラエル軍がガザ地区を攻撃し、イスラエルはパレスチナ側との接触を中断。先行きに対する楽観的見方に代わり、暴力の連鎖により歴史的機会が失われることが危惧される中で会談に臨むことになった。

(1) パレスチナ側との会談

(イ) 15~16日、アッバースPA長官、クレイ首相及びシャアス外務庁長官と会談した。アッバース長官との会談は長官就任式(15日)の翌日で、最初の外国要人との会談となった。
(ロ) これら一連の会談では、公正かつ自由な選挙で選ばれたアッバース長官への支持を伝えるとともに、特に、1)パレスチナ自治政府の責任ある統治能力を再構築すること、2)「ロードマップ」に沿って暴力の停止に向けた目に見える努力を行うことを強く働きかけた。日本政府は、パレスチナ新指導部の努力を支えるため、他国に率先して追加支援(6千万ドル)を決定し、本年度の我が国の支援規模が9千万ドルになること、我が国の支援を呼び水として国際社会が一致して早急に具体的な支援を結集するよう他のドナー国(米・EU、湾岸諸国に)働きかけていることも伝えた。更にアッバース長官の訪日を招請した。
(ハ) パレスチナ支援については、従来の1)人道、2)改革、3)信頼醸成の三分野に加え、自立した経済開発のための支援を行う方針を伝達した。
(ニ) これに対して、アッバース長官よりは、1)治安への取り組みが最重要課題であり、2)19日にもガザ地区を訪問し、暴力の停止に向け、ハマス等パレスチナ諸派に対する最大限の働きかけを行うとの強い決意の表明があり、町村大臣に対し、対話が中断していることから、和平への強い決意のメッセージを是非イスラエル側へ伝達して欲しいとの要請があった。
(ホ) パレスチナ側より、6000万ドルの追加支援を含め我が国の支援に対する謝意と積極的支援の継続に対する期待が表明された。また、次回日・パレスチナ閣僚級政治協議(外相会合)を本年2月末に開催する方向で日程調整を行うことが合意された。さらに、パレスチナ側よりは、ハーン・ユーニス地区での下水処理プロジェクトの速やかな着手に対する要請があった。

(2) イスラエル側との会談

(イ) 16~17日、イスラエルのカツァブ大統領、シャロン首相及びシャローム外相と会談した。
(ロ) これら一連の会談では、13日のテロ事件の犠牲者に弔意を表しつつ、テロをきっかけに暴力の連鎖に陥って和平前進の機会を逃すことがないよう、パレスチナ新指導部との間で早期に対話を再開するよう、とりわけ、成立して間もない新政権にテロ対策をとる時間を与えるよう働きかけた。その際、アッバース長官よりの要請を受け、イスラエル側に対し、1)パレスチナ新指導部の和平への強い決意、2)対話の早期再開への期待、3)最重要課題としての治安への取り組みの三点のメッセージを伝達した。さらに、「ガザ撤退計画」に関し、国内政治上の困難にもかかわらずシャロン首相が同計画の実施に向けて努力していることに敬意を表しつつ、我が国は、同計画が「ロードマップ」の前進につながるものとなることが重要で、そのためにパレスチナ側との協議・調整が必要と伝えた。さらに、パレスチナ人の生活環境改善のため、「ロードマップ」に沿った封鎖政策の緩和、バリアの建設中止、入植地の拡大中止等の措置を講じるよう働きかけた。
(ハ) これに対して、シャロン首相からは、ガザ撤退計画の実施にあたって撤退の円滑な実施と撤退後の治安維持の観点からパレスチナ側との調整が望ましいと考えており、また旧知のアッバース長官との対話を通じて痛みを伴う譲歩についても検討の余地はあるが、市民の安全に責任を負っている立場から治安について妥協の余地はなく、テロ取り締まりに向けた最大限の努力が具体的行為を伴って実施されない限り、パレスチナ側と対話するのは困難であり、また、パレスチナ側との調整の有無にかかわらず撤退計画は断固実施する方針である旨述べた。
(ニ) シャロン首相よりは、我が国との頻繁な接触への期待が表明された。町村大臣よりシャロン首相の訪日招請を行い、イスラエル側より小泉総理のイスラエル訪問要請があり、今後、外交ルートで調整していくこととなった。その他、二国間関係に係る幅広い議論を行い、二国間の関係強化で合意。大臣よりイスラエルの東アジア地域への武器輸出をやめるよう申し入れ、国連改革では先方より日本は安保理常任理事国メンバーの資格ありと発言。

3. 訪問の評価

(1) 我が国は、中東和平問題の公正かつ包括的な解決なくして中東地域の平和と安定は実現しないとの立場から、これまで積極的に中東和平問題の解決に向け努力してきた。具体的には、1)積極的なパレスチナ支援(93年以降今次補正予算を含め約7.6億ドル)、2)イスラエル・パレスチナ間の信頼醸成措置、3)有馬中東和平担当特使など政府高官の派遣、4)良好な日米関係をもとに、当地域に大きな影響力を有する米国との意見交換等である。

(2) こうした我が国の役割については、シャロン首相、アッバース長官を始めとした双方首脳から高い評価が示され、我が国の積極的関与の継続に強い期待が表明された(シャロン首相からは、日本が、地理的に離れていながら、中東問題に真剣に取り組んでいることを評価するとの発言があった)。

(3) また、パレスチナ新政権成立直後にテロ事件を受け両者の対話が中断したため、今次訪問において大臣は、和平プロセスを頓挫させることなく、対話の途切れた就任直後のアッバース長官とシャロン首相との間の対話の橋渡しを行うという重要な役割を担うことになった。

(4) 我が国としては、こうした当事者の期待に応え、これまで以上に中東和平問題に深く関与し、積極的役割を果たしていきたい


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