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川口外務大臣


東アジア開発イニシアティブ(IDEA)
閣僚共同声明(仮訳)

2002年8月12日 東京

I.前 文

  1. ASEAN諸国と中国、日本、韓国の外務大臣と開発担当大臣は、小泉純一郎日本国総理大臣が2002年1月に提唱した東アジア開発イニシアティブに基づき、2002年8月12日、東京で会合を開催した。これは、東アジア地域が新たな課題に直面していることに鑑み、更なる発展を達成していくために行うASEAN+3諸国の共同作業の一環である。

  2. 閣僚は、これまでの自国の開発経験と知見に基づき、各国及び地域の開発努力と協調した開発協力のあり方や、持続可能な経済発展に向けた域内協力の方向性について、自由な意見交換を行った。同時に、経済成長を実現しながら貧困削減を進めてきた東アジアの開発の成果を提示し、国際協調を深めていく方途についても検討した。

II.東アジア型開発の成功要因

東アジアの開発経験の特色

  1. 閣僚は、顕著な経済発展を達成した東アジア諸国の開発の主な特色に注目した。同時に閣僚は、ASEAN諸国、中国、日本、韓国において、経済成長あるいは経済回復のよい機運がみられることを歓迎した。

    国家的課題としての開発
     安定的な国内環境、卓越した政治的リーダーシップ、健全なマクロ経済政策及び地域的平和に支えられ、経済発展が国家的課題として一貫して掲げられてきた。同時に地域において多様な開発戦略や道筋が展開されたことが共通の繁栄につながった。また、高い行政能力と強いオーナーシップにより開発政策が着実に実施された。特に、産業育成は雇用機会や生活水準の向上、国内資本の蓄積をもたらした。
    持続可能な成長のための3つの前提条件
     閣僚は、持続可能な経済成長の達成にあたって3つの主要な前提条件を確認した。
    経済インフラ整備は民間経済活動のための基盤を提供し、外国からの直接投資の積極的な誘致につながった。
    官民両部門における人材育成と制度構築
    貿易と投資の連携はビジネス・チャンスの創出と国内産業育成にとって重要である。
    貧困削減、公平な所得分配と社会開発への配慮 経済成長に伴い生じる歪みや格差の是正にも取り組みがなされた。そのために、貧困削減、より公平な所得分配や社会開発等、様々な措置が講じられた。世界の貧困人口の1/3が集中していた東アジアでは、10年前と比べて絶対的貧困人口が劇的に減少した。

東アジアにおける開発協力が果たした役割と特色

  1. 閣僚は、開発協力が、多様な国情や開発ニーズがある中で、東アジアの経済成長を支えたことを確認した。

    有償資金協力や無償資金協力、技術協力等の多様なODAスキームの適切な組み合わせと順序づけが被援助国とのパートナーシップの中で進められ、またオーナーシップを支える形で行われた。インフラ開発や人材育成にODAが投入され、それがミレニアム開発目標にそった形で貧困削減に貢献した。
    南南協力を通じた開発経験の伝播
     自国の開発に成功した国の中には、自らの資源を活かして他の国の開発に貢献するに至った国も出現し、南南協力として後進の開発途上国との開発経験の共有が進んだ。
    開発のための良好なマクロ経済環境の醸成、金融安定化の達成、技術移転の促進、市場アクセス改善及び外国直接投資の促進措置もまた、東アジアの開発協力の重要な要素であった。

III.東アジアが直面している今日的課題

強靱な経済社会基盤の形成とグローバル化への対応

  1. 閣僚は、経済グローバル化が加速し、急激な技術革新を伴う今日の国際経済環境の中で、東アジアが抱える開発ニーズが依然として多いことに着目し、これらニーズに対応する上で開発協力が果たすべき役割について検討した。これらのことは、人材育成や、経済社会インフラと制度の整備を通じて、また、途上国にとっての市場アクセス向上を含む貿易と投資によるグローバル化の恩恵を享受することによって実現できる。閣僚は、持続可能な成長を実現するための強靱な基盤を構築することの重要性を確認した。

  2. 国内及び域内格差の過度の拡大や、経済的ショックの瞬時の波及といった、グローバル化の負の効果への対応に際して、ODAが果たすべき役割がある。貧困問題や所得格差の問題に対処する上で、低所得地域や弱者に対して、より一層の配慮が必要である。金融危機の折に、地域の金融安定化のために複数の国がとった責任ある行動に引き続いて、金融システムの改革及びコーポレート・ガバナンスの促進を含む、危機への対応力を高めていく必要がある。

良い統治

  1. 閣僚は、地域の多様性と価値観を尊重する一方で、東アジア地域の中長期的な安定と健全な経済発展を達成するために、良い統治の実現・強化が主要課題であることを強調した。同時に、国家レベルの取り組みは地域的・国際的なレベルの良い統治の実践によって、支援・補完される必要があることも確認した。

地域の平和及び安定の向上

  1. 2001年9月11日の米国におけるテロ事件以降、貧困削減をはじめとする開発の問題は、国内の治安や地域の安全保障と密接に結びついていることが改めて認識されている。閣僚は、地域の平和及び安定の向上と促進のために、密接に協力することを約束した。

安定的・調和的発展と人間中心の開発の追求

  1. 閣僚は、数多くの今日的課題に留意した上で、東アジアの多様性や個々の社会のアイデンティティーと調和的な形で開発を進めること、持続可能な開発を重視すること、そして、誰もが開発と進歩の果実を享受できるような、人間中心の開発を実現することの重要性について、意見の一致をみた。

IV.地域協力とODAの役割

平和と繁栄に向けた地域協力

  1. 東アジアにおいては、ASEAN10が実現し、ASEANを推進力とするASEAN+3やASEAN地域フォーラム(ARF)等、政治、経済をはじめとする多様な分野での協力と対話が進展している。閣僚は、このような重層的な地域協力と相互依存関係が、グローバル化の課題に取り組み、地域の平和と繁栄を追求する上で有益であることに意見の一致をみた。このような協調は、投資先および市場としての東アジア地域の魅力を高めることに資する。

  2. 東アジア地域の関心事項に団結して取り組むため、地域協力を促進していくことが重要である。東アジア地域にある透明で重層的な様々な形態の協力を継続していく上では、域外からの協力を促していくことも重要である。この関連で、閣僚は、メコン地域経済協力、チェンマイ・イニシアティブ、他の成長地域及びASEAN統合イニシアティブ(IAI)といった地域協力の重要性及びこれらへの支持を再確認した。IAIについては、2002年8月15-16日にジャカルタで開催されるIAI開発協力フォーラム(IDCF)において、様々なパートナーシップが、特にプラス3(日中韓)諸国との間で形成される見通しである。今後ASEANに存在する開発格差を縮めるように優先度の高いプロジェクトに資源が動員することが期待される。さらに閣僚は、東アジアスタディ・グループ(EASG)が、カンボディアで行われるASEAN+3サミットにおいて多様な開発プロジェクトの提案を含む報告を提出予定であることについて歓迎の意を表した。

  3. 閣僚は、地域協力を強化する手段として、適切なODAが維持されることの重要性を確認するとともに、国内および海外の資源の動員を含む他の開発資源と連携しつつ、経済連携を推進するとの観点を踏まえて、より効果的なODA活用の方途を検討していくことで意見の一致をみた。閣僚は、東南アジアの後発途上国にとってODAがもつ特別な重要性を確認しつつ、三角協力に補完された南南協力を推進することの意義を確認した。このほか閣僚は、安定的かつ持続可能な成長を促進する国内及び広域経済基盤整備や域内ネットワークの確立、更には、地域統合プロセスを進展させるための能力構築を促進する重要性について認識を共有した。

V.結 語

東アジアの開発経験の再確認と地域協力の強化

  1. 閣僚は、域内諸国の多様性と調和し、貿易・投資と密接に連携し、さらには地域の平和と安定と繁栄を求める、公平で市場・成長志向の東アジア型開発アプローチを追求することにより貧困の問題に取り組むことを確認した。閣僚はまた、先進国によるODA、海外直接投資および市場アクセス等の面における努力をさらに強化していくことを通じて開発が進められるべきこと、また途上国が、国内資金を動員して、貿易と投資を促進する環境整備に努めることが必要であるとの考え方で一致した。さらに閣僚は、地域協力が開発協力の重要な要素であることを強調した。これに関連して、閣僚は、東南アジア、特に地域の後発国に対する海外直接投資を促進することが地域の経済発展と繁栄にとって大きな意義を有することを強調した。

東アジア型開発アプローチと経験の他地域との共有

  1. 閣僚は、東アジア型開発アプローチと経験は、他地域にも役に立ち得ることを確認した。このような認識を踏まえ、ヨハネスブルグで開催される「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」や2003年の「第三回アフリカ開発会議(TICAD III)」などの機会に、開発に関する東アジアの成功経験を他地域と共有することを目指して一層協調していくことで合意した。

  2. この会合を締めくくるにあたり、閣僚はカンボディアで開催されるASEAN+3首脳会議にこの声明を提出することに合意した。また閣僚は、東アジアの開発経験に関する分析が知的コミュニティーにおいて進められ、もって開発に関する国際的な議論が一層深められることへの期待を表明した。


IDEAプロジェクト

  1. IDEAの精神を具現化するとの観点から、閣僚は、高級事務レベルに対し、開発協力に関する東アジアの既存メカニズムや、付属文書に掲載された指針を活用しつつ、プロジェクトの可能性を検討するよう指示した。


付属文書:将来の協力プログラム(IDEAプロジェクト)に関する指針

地域共通の開発ニーズに適合すること
パートナーシップに基づくこと
- すべてのステークホルダー国、機関との協働
経済成長と社会開発のための基盤強化に役立つこと
(例)
- 経済・社会インフラ開発
- ICT、科学技術
- 人材育成
- 制度的及び法的枠組みの強化
IAI、ハノイ行動計画、ASEAN+3プロセスなどの既存の地域開発イニシアティブとの整合性及び相乗効果があること


目次


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