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川口外務大臣


「日本の多角外交、中東貢献」川口順子


 外務大臣に就任して三か月弱、外務省改革を最優先課題としてきた。その一方で、外交課題は待ったなしである。特にパレスチナ情勢は、一昨年からのイスラエル・パレスチナ間の衝突が激化し、中東地域、ひいては世界の安定にも影響を及ぼす事態になっている。このような状況に対してどう取り組むか、私の試論を述べてみたい。
 目下の緊急の課題は、両者の停戦実現である。日本はこれまでイスラエル側に即時撤退を、パレスチナ側にテロの停止を求めてきており、この努力は今後も継続する。しかし、やはり決定的な役割を果たすのは米国である。日本はパウエル国務長官の仲介努力を最大限支援する。
 次の課題は、停戦成立後の政治プロセスを如何(いか)に軌道に乗せるかである。私は、当事者間の信頼が大きく損なわれた現状では国際社会が関与した重層的なプロセスを新たに作る必要があると考える。
 日本としてこれに積極的に関与していきたい。このプロセスでは三つの要素を同時並行的に進める必要がある。
 まず第一に、停戦の維持と当事者間の信頼回復のために、国際会議を開催し、停戦合意とその後の政治プロセスを国際的に保証することである。この点については、既に幾つかのアイデアが出されている。
 例えば、パレスチナ国家の樹立を前提とし、期限を切って交渉を進めるという考え方には、ゴールを先に明確に示すことによって、当事者の意欲を刺激するという点で有用な要素が含まれている。日本は、そうした取り組みを推進したい。
 第二に、国際社会が「和平の果実」である地域の安定と発展を後押しする体制を強化することが重要である。そのためには、中断している中東地域内の協力事業を促進する多国間協議を再開することが一案である。日本は、今までこの分野をリードしてきており、今後とも貢献したい。
 さらに、第三に、両当事者間に幅広い信頼関係を作っていくための取り組みが必要である。私は、政府当局者に限らず、幅広い双方の関係者が一堂に会し、イスラエル・パレスチナの「平和共存」のあり方や将来のパレスチナ国家のビジョンを様々な視点から議論する場を日本で開催する用意があると考えている。そうしたビジョンを示すことで、和平プロセスによって明るい未来を得るとの希望を、パレスチナの人々の間に取り戻したい。
 こうした政治プロセスを進めていく上で、日本のパレスチナ支援は引き続き大きな役割を持つ。二十三日、日本は、三百三十万ドルの緊急人道支援を決定した。今後、停戦成立、和平交渉の再開・進展、パレスチナ国家の樹立といったプロセスに沿う形で支援のロードマップを示し、両当事者に和平へのインセンティブを提供していきたい。
 さらに、日本が中東において多角的な外交を展開することも、重要な貢献である。
 典型的な例としては、紛争の南レバノンへの波及を避けるために、最近日本が、関係する周辺諸国への働きかけに奔走し、これら諸国の理解を得て一定の成果をあげたことだ。これに加え、エジプトやヨルダン、またサウジアラビア等の湾岸諸国との対話を通じて、和平への建設的な努力と協調を働きかけていくことは、イスラエル・パレスチナ間の和平促進と、地域の安定に寄与する。
 私の来月三日からのイラン訪問の目的のひとつはこのような対話にある。多角的外交は、この地域の多くの国との対話のチャネルを豊富に有する日本こそが適切に果たし得る役回りである。私は、このために特使を派遣したい。日本が数々の役割を果たすことで中東地域全体の人々の未来に対する期待を高めていきたい。

(平成14年4月25日付読売新聞朝刊13面から転載・禁転載)


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