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川口外務大臣


川口外務大臣の中国訪問(概要)

平成14年9月8日

 9月8日、北京訪問中の川口外務大臣は、本邦時間午後3時55分から1時間半、唐家セン外交部長との間で会談を行い(於.釣魚台)、続けて、同午後6時から1時間、江沢民国家主席との会見を行った(於.中南海)ところ、概要は以下のとおり。

1.江沢民国家主席との会見

(1) 日中関係全般

(イ) 川口大臣から以下のとおり述べた。
 日中国交正常化30周年にあたる2002年、招待を受け訪中でき嬉しい。「歴史を鑑として、未来に向かう」との共通認識に基づき、これからの日中関係を深め、拡大していくために、自分としても努力したい。国交正常化30周年にあたる2002年には、様々な交流、例えば、1万人の訪中、経済界各層での交流等が行われる。このような活動を通じて両国国民各層の間で関係が深まっていくことを期待している。

(ロ) 江沢民国家主席から以下のとおり述べた。
 両国関係は数千年の交流の歴史を有しており、その間友好の時期もあり、戦火を交えた時期もあった。「前事を忘れず、後事の師とする」という言葉があり、「歴史を鑑とし未来に向かう」ということわざがある。このような考え方に従えば、両国の国民にとりプラスとなり、これに背けば有害である。川口大臣と自分との間には15年の年齢差がある。自分は20世紀の出来事を自分の目で見てきた。同時に、自分は文学が大変好きであり、文学の長い歴史を見ると、小学生の頃唐詩を学んだとき、阿倍仲麻呂と王維が友人であることを知った。古代においては日本が中国から多くのことを学び、明治以降は逆に中国が日本から多くのことを学んだ。魯迅、郭沫若は日本に留学した。こういった長い両国間の文化交流の歴史からも明らかなとおり、まさにこうした歴史を鑑として未来に向かえば、日中関係の将来は開けてくる。9月下旬に日本から1万人が北京を訪れる。これは長い日中間の歴史の中で例を見ない重要な活動である。


(2) 小泉総理の北朝鮮訪問

(イ) 川口大臣から以下のとおり述べた。
 9月17日の小泉総理の訪朝についての中国側の支持に感謝する。今回の訪朝の目的は3つある。第一に、日朝関係の改善、日朝国交正常化への努力は日本の歴史的責任であるということ。第二に、国交正常化は、この地域に平和と安定をつくり出さなければならないということ。第三に、諸問題に正面から取り組みつつ訪朝すること。北朝鮮が国際社会と対話していくことが重要であり、この点については中国の働きかけが重要である。

(ロ) これに対し江沢民主席から以下のとおり述べた。
 9月17日の小泉総理訪朝を強く支持している。日本にとって、これは重大な外交活動である。日本の総理による初めての訪朝であり、成果が上がるよう期待している。日朝間では懸案が多く、一度に解決することは困難と思うが、まずは日朝間の交渉をスタートすることが重要。今はっきり言えることは、中国として小泉総理の訪朝を支持することである。報道等によれば、北朝鮮も積極的態度をとっているものと承知している。



(3) 中国のWTO加盟

(イ) 川口大臣から以下のとおり述べた
 21世紀にかけて、中国が行ってきた決断の中で最も重要な決断の一つはWTO加盟である。これにより、日中間の経済、人的交流が増加し、考え方も共通なものになっていくと考える。

(ロ) 江沢民主席から以下のとおり述べた。
 WTOについては、15年の長きにわたる交渉を経て、2001年加盟を果たした。国内の関係者に対して、自分は、これは新しい試練であって、広い海の中で水泳を覚えるようなものであり、その過程で2、3回くらいは口に水が入るのは仕方がないことだと言っている。中国は発展途上国であり、WTOの中においても中国を発展途上国と見るよう主張してきている。
(4) 環境

(イ) 江主席より、いつから環境保全の概念が出てきたのか教えて欲しい旨述べたのを受け、川口大臣から以下のとおり述べた。
 環境保全は、日本では70年代に大きな問題となり、政府としての方針を転換した。こうした経験は、先のWSSD等の場においてグローバル・シェアリングの考え方の下で国際社会に対して紹介してきている。米国は自然保護の観点から19世紀中頃より環境保全に関心を示している。

(ロ) 江沢民主席から以下のとおり述べた。
 以前、クリントン大統領にも言ったが、オゾン層を破壊したのは先進国である。環境保全の考え方自体には賛成だが、問題を引き起こしたことについては先進国に責任があるのであり、発展途上国に資金と技術を提供すべきである。

(ハ) これに対し、川口大臣より以下のとおり述べた。
 中国の京都議定書の署名を高く評価する。まさに、京都議定書やヨハネスブルク・サミットの文書の中に「共通であるけれども、差異のある責任」という表現がある。この書きぶりは、江沢民主席の指摘のとおり、先進国が資金及び技術について協力すべきことを示している。最近、日本の円借款の多くは環境分野について行っている。一方、中国による温暖化ガスの排出は米国に次ぐ世界第2位である。中国が環境保全を政策の一つの大きな柱としていると承知しており、これを評価している。これからも中国が温暖化防止の方面で大きな役割を果たすことをお願いしたい。



2.日中外相会談

(1) 日中関係全般

(イ) 川口大臣から以下のとおり述べた。
 日中国交正常化30周年にあたる2002年、招待を受け訪中でき嬉しい。今後の日中関係を深く広くしていくために、前向きな話合いを行いたい。「歴史を鑑として未来に向かう」との共通の認識に立ち、「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」に基づく幅広い日中協力を推進していきたい。自分は、日中間で人と人との関係を強化していくことが重要と考えている。国交正常化30周年にあたる2002年、具体的には、第一に1万人の訪中、第二に10月の「日中フォーラム」、第三に10月の中央党校訪中団、第四に青少年交流を押し進めていくべきである。先週、中国から日本への留学生を支援する無償資金協力に関しE/Nを署名した。こうした交流が深まっていくことが重要。

(ロ) これに対し、唐部長から以下のとおり述べた。
 日中国交正常化以来、各方面にて日中間の交流が深まり、両国国民に重要な発展をもたらした。国交正常化以来の30年間の日中関係の発展を総括すると、以下の4点がある。第一に、日中友好が両国関係発展の大方向であり、かつ唯一の正しい方向である。第二に、日中共同声明、日中平和友好条約、日中共同宣言の3つの文書の諸原則と精神が日中両国間の政治的基礎である。第三に、平等互恵に基づく経済交流が両国に大きな利益をもたらす。第四に、民間の友好往来が日中友好の貴重な財産である。現在の日中関係の重要性は際だっており、共通利益は深まりかつ広がっている。今後とも、「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」を重視していきたい。
 小泉総理は、日中友好に尽力する、中国の脅威論をとらない、日中間はプラスサムの関係にあるとこれまで何度も言及している。このことについて、積極的に評価し、歓迎する。川口大臣も日中関係発展のために努力されてきた。新しい歴史的時期の下で日中関係の勢いを保つためには相互理解と相互信頼を深めることが必要。そのために以下の4点が重要。第一に、日中関係の主流は、相互補完、協力であり、競争・対抗ではない。第二に、協力の範囲と共通利益を更に増大させていくことが重要。第三に、両国間の問題、摩擦については高度に重視し、適切に処理していくことが重要であり、歴史問題と台湾問題が政治的基礎である。第四に、国交正常化30周年にあたる2002年に日本から1万人が訪中することは例を見ない大規模な行事であり、日中友好関係の大衆的基盤を物語るもの。これが円満に成功するよう全力を尽くす。



(2) 各分野における協力

(イ) 川口大臣から以下のとおり述べた。
 政府レベルの交流拡大も、問題の早期解決を図っていく上で重要。政策企画協議を開催し、「日中経済パートナーシップ協議」を年内に開催したい。また、重要なのは、首脳レベルの間断無き対話である。
 具体的な協力案件として4つある。第一に、環境分野である。10月8日から開催される環境協力週間は重要で、第6回日中環境合同委員会や日中環境協力総合フォーラムが開催される。自分は1月に環境大臣として訪中したが、その際、中国が環境保全を重要視していることに感銘を受けた。日中協力の主要な分野である。第二に、海洋における協力である。不審船問題については、現場における日中間の協力が進んでいることを評価している。台風のために引揚げ作業は遅れているが、日本側としてはできる限り早期の引揚げに向けて引き続き努力する。また、海洋調査の事前通報の枠組みについては、透明性の向上、相互信頼の向上が重要。双方がこの枠組みを厳守し、円滑に実施していくことが重要。第三に、領事協力である。瀋陽総領事館事件についての日本の立場は唐部長もよく御存知と思う。今回、日中間の領事協力の枠組みに関する第1回協議が開催された。同協議を通じ、類似事件の再発防止のために建設的な意見交換が行われることを期待。第四に、遺棄科学兵器については、黒竜江省孫呉県において大規模な発掘回収作業が始まった。この事業は日中両国が過去の問題を未来志向の協力関係に転換し得る例として重要。

(ロ) 唐家センから、以下のとおり述べた。
 以下の7項目の協力につき共通認識を達成したい。第一に、青少年交流については、江沢民が訪日したときに5年間で500人の日本青年招聘事業を実施することを発表したが、これを更に発展継続するために、2004年からこの計画の第2ラウンドを開始したい。第二に、「日中経済パートナーシップ協議」については、年内に出来る限り早く開催したい。第三に、政策企画協議を再開したい。第四に、日中環境協力週間の成功に全力を尽くしたい。環境協力は、環境大臣であった川口大臣のおかげで日中間で大いに進んでいる分野。第五に、2002年末までに人権対話を再開できると考えている。第六に、遺棄化学兵器について、日本側の作業のペースアップをお願いしたい。第七に、不審船問題については、中国としては日本側の要求に配慮し、必要な協力を提供してきており、日本側において慎重な対応をお願いしたい。この他に3点述べたい。まず、首脳間の間断なき対話については、昨日帰ってきたばかりの朱鎔基総理に相談する。第二に、海洋調査活動の事前通報の枠組みについては、この枠組みを遵守することが重要と考えている。第三に、領事協力の枠組みに関する第1回協議はよいスタートであった。この協議が実質的な効果をもたらすことを期待。

(ハ) これに対し、川口大臣から以下のとおり述べた。
 青少年交流については、中国側の表明について日本側としても関連事業の継続に向け努力していきたい。人権対話について、中国側の積極的対応を歓迎する。


(3) 歴史

(イ) 唐部長から以下のとおり述べた。
 歴史について「歴史を鑑として、未来に向かう」という精神に賛意をあらわす。この言葉の意味は、自分の理解では、歴史の事実を尊重し、教訓をくみ取り、積極的な態度で前向きに処理していくことである。この問題のかぎは有言実行である。靖国問題を含む歴史の問題については、日本側がこれまでの態度表明、日中間の共通認識に従って履行し、日中関係がこの障害を乗り超えるようお願いしたい。

(ロ) これに対し、川口大臣から以下のとおり述べた。
 歴史については、日本政府の認識は95年の村山談話、98年の共同宣言のとおりであり、何も変わらない。総理の靖国参拝については、総理はさまざまことがらを総合的に考慮し、8月15日の参拝を避けるという苦心の決断された。中国政府の中でのこのことについて理解が深まることを期待する。8月15日の戦没者追悼式においては、総理自身、先の大戦においてアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことにつき深い反省と哀悼の意を示されたほか、不戦の誓いを堅持して近隣諸国との友好関係を一層発展させる旨明確に述べた。


(4) 台湾

(イ) 唐部長から、一般的な状況の説明として、「一辺一国」発言以来の状況の説明があり、同発言は世界の国々に政治的なトラブルを巻き起こした旨述べた。また、日台FTAについて、中国の考え方について従来の考え方について述べた。

(ロ) これに対し、川口大臣から、台湾についての日本政府の立場は共同声明にあるとおりである旨述べた。また、日台FTAについては、経団連を中心とする民間レベルで検討されているが、民間による経済連携の研究そのものは有意義と承知している、他方、台湾との関係は非政府間の実務関係であり、国際約束を締結することは考えていない旨述べた。


(5) 北朝鮮

(イ) 日朝関係について、唐部長から、自分から述べたいとして、国交正常化交渉再開に向けた小泉総理の訪朝を歓迎する、中国は日朝間の国交正常化を歓迎し、その実現を支持する、したがって、17日の小泉総理による北朝鮮訪問を歓迎する、北朝鮮も総理の訪朝を大変重要視していると承知している旨述べた。

(ロ) これに対し、川口大臣から総理の訪朝については、唐部長から改めて支持の発言をいただき、感謝する旨述べた上で、日朝関係に関する日本の考え方を説明した。


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