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6 ヴェネチア サミット

宣  言(仮 訳)

1980年6月23日

I. 序

  1.  1980年代最初のこのサミットにおいて、われわれの思考の中心となった経済問題は、エネルギーの価格と供給であり、また、それがわれわれの国におけるインフレーションと経済活動水準及び世界全体に与える影響である。

     エネルギーの問題に対処し得ずしては、他の問題に取り組むことは不可能である。

  2.  石油価格の相次ぐ大幅上昇は、市場の状況に何ら関連を有さず、アルジェにおける石油輸出国機構(OPEC)のいくつかの加盟国による最近の決定でその極に達したが、それはインフレの一層の昂進という現実及び先進工業国における深刻な景気後退と失業のさし迫った脅威を生み出した。同時に、それは開発途上国における成長の見通しを危くし、またある場合には事実上破壊してしまった。われわれは、これらの結果がいくつかの石油輸出国によって一段と理解されるようになってきていると考える。自由世界の先進工業国、石油産出国及び非産油開発途上国は、自らの経済発展及び繁栄の潜在力を現実化するにあたり、相互に依存しているというのが現実である。これら三者は、全体の利益を念頭におき、一致して努力する場合のみ、それぞれ、かかる発展に対する障害を克服することができる。
  3.  われわれは、かかる精神に基づいて、この80年代に直面する主要問題を討議した。われわれは、個人の自由と社会的連帯に基づいたわれわれ民主主義社会の、これらの挑戦に応ずる能力を信頼している。早急なあるいは安易な解決策はなく、より良い未来を達成するためには持続的な努力が必要である。

II. インフレーション

  1.  インフレ抑制は、われわれの緊急な最優先課題であり、全ての国に利益をもたらすものである。インフレは成長を遅らせ、われわれの社会の全ての分野に害を及ぼす。金融・財政面における断固たる引き締めがインフレ期待を打破するために必要である。労使間の継続的対話もまたこの目的のために必要である。われわれはこの引き締め政策を遂行するため、また同時に増大する失業及び世界的景気後退の脅威に備えるためにも効果的な国際協調を続けていかねばならない。
  2.  われわれはまた、生産性を向上させるために投資及び技術革新を奨励し、新たな雇用機会を創り出すために、衰退部門から成長部門への資源の移動を助長し、さらに各国内及び各国間の資源の最も効率的な利用を促進することをコミットしている。このためには、資源を政府支出から民間部門へまた消費から投資へ振り向けること、及び特定の産業あるいは部門を調整の厳しさから保護するような行動を回避あるいは注意深く制限することが必要である。この種の措置は短期的には経済的かつ政治的に困難であるかもしれないが、インフレなき持続的成長及び、われわれの主要目標である雇用の増大に不可欠である。
  3.  経済政策の策定に際しては、われわれは世界の人口増加、産業の拡大及び経済発展の長期的影響をより良く理解する必要がある。これらの分野における趨勢についての研究が行われており、われわれの代表はこれらの問題を引き続きレビューする。

III. エネルギー

  1.  われわれは経済成長と石油消費との間に存在しているリンクを断ち切らなければならず、われわれは、この80年代にそうする決意である。この戦略のためには石油を節約し代替エネルギー源の生産と使用を大幅に増加する必要がある。この目的のためには、価格メカニズムに最大限の信頼をおくべきであり、石油の国内価格には、代表的世界価格が考慮に入れられるべきである。市場の力は適当な場合には効果的な財政上のインセンティブと行政措置によって補完されるべきである。エネルギー投資は経済成長と雇用に大いに貢献するであろう。
  2.  われわれは、欧州共同体(EC)、国際エネルギー機関(IEA)及び経済協力開発機構(OECD)が、石油消費を削減するための長期的構造変化の必要性、その進捗状況を継続的に監視するための手続き、逼迫した市況に対処するため場合により石油シーリングを発動すること、並びに市場混乱の影響を緩和するため備蓄政策面で協調することに関して行った最近の決定を歓迎する。われわれは、IEA加盟諸国が、自らのエネルギー政策の結果1985年の石油純輸入総量が現行の1985年グループ目標を大幅に下回るようになるであろうこと、及び加盟諸国の継続的監視努力の一環としてその削減幅を数量化することに合意したことに留意する。削減の余地は、IEA事務局によれば、現存する諸般の不確実性はあるものの、約400万B/Dと試算されている。
  3.  われわれの国において石油を節約するために、

    • われわれは、例外的状況を除き、新たなベース・ロード用石油火力発電能力が建設されるべきでないこと、及び石油火力から他の燃料への転換が加速されるべきであることに合意した。
    • われわれは産業部門における石油代替を加速するために、必要な場合には財政上のインセンティブを含む努力を増進する。
    • われわれは、必要な場合には金融上のインセンティブと断熱基準設定により、住宅及び商業用建物における石油節約のための投資を奨励する。われわれは、公共部門が模範を示すことを期待する。
    • 運輸部門においては、われわれの目標は燃料効率の一層良い車両を導入することである。消費者の需要と製造業者間の競争は既にこの方向に向かっている。われわれは適当な場合には、自動車の燃費効率を改善するための措置または基準、ガソリン価格及び課税に関する決定、研究開発並びに公共輸送機関を一層魅力的なものにすることにより、かかる進歩を加速する。
  4.  われわれは、将来の経済成長に伴うエネルギー需要を充たすために石油以外の燃料に依存しなければならない。このためには早期の断固たる、かつ広範囲にわたる行動が必要である。今後10年間にわたる石油以外のエネルギー源の供給及び使用は石油換算で1,500~2,000万B/D増大可能と試算されている。われわれはこの潜在力を実現するため協調的かつ活発な努力を行う考えである。この目的のために、われわれは中期における石炭使用の大幅増大及び原子力の一層の使用並びに長期における合成燃料の生産及び太陽熱やその他の再生可能エネルギー源の大幅増加に努める。
  5.  われわれは、長期における生産の最大化を確保するために、自国内に存する炭化水素資源の探査及び開発を奨励する。
  6.  われわれは共同して、1990年初めまでに石炭の生産と使用を倍増する意図を有する。われわれは、石炭生産者及び消費者による長期のコミットメントを奨励する。石炭の必要な供給及び使用を確保するために、輸出国輸入国双方において、経済的に正当化される限り、そのインフラストラクチャーを改善することが必要であろう。われわれは、国際石炭産業諮問委員会の勧告に期待している。この勧告は直ちに検討されるであろう。われわれは、石炭生産と燃焼の増大に伴う環境上の危険を自覚している。われわれは、化石燃料、特に石炭の使用の増大が、環境をそこなわないことを確保するため万全をつくす。
  7.  われわれは、原子力発電エネルギーのより確実な供給のために極めて重要な貢献を行っていることを強調する。世界のエネルギー需要を満たすためには原子力の役割が拡大されるべきである。われわれは、従って、原子力発電能力を増大しなければならない。われわれは、公衆の健康及び安全を確保すること並びに使用済燃料及び放射性廃棄物の処分を取り扱う方法を完全なものとすることに引き続き最高度の優先順位を与えるであろう。われわれは核燃料の安定的供給を確保すること及び核拡散の危険性を極小化することが電要であることを再確認する。
  8.  1977年のロンドン・サミットにおいて始められた国際核燃料サイクル評価グループによる検討は、原子力利用に重要な貢献を成すものである。われわれは、予見可能な供給の増大、新型技術の開発を含むウラン資源の最も効率的な利用、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の支持を含む核拡散の危険性の極小化に関する同グループの検討結果を歓迎する。われわれは、全ての国が原子力平和利用のための政策及び計画を策定する際にこれら諸検討結果を考慮に入れることを強く要請する。
  9.  われわれは昨年の東京サミットにおいて提案された国際エネルギー技術グループの、できるだけ早期に新エネルギー技術を商業化するための勧告を積極的に支持する。国別の計画については、われわれは1981年半ばまでに二段階のアプローチ―すなわち第一に、1980年代半ばまでに各々の国において建設される商業規模プラントの数とタイプをリスト・アップし、第二に将来の行動の基礎として、1990年、1995年及び2000年までの生産拡大の数量的見通しを示す―を採用する。国際計画については、特定プロジェクトに対し関心を有する諸国間の協力を促進するための国際チームを他の諸国とともに創設する。
  10.  われわれ7ヵ国及び欧州共同体委員会の代表からなるハイレベル・グループは、これらの諸分野において達成された結果について定期的にレビューする。
  11.  われわれの総合的なエネルギー戦略は、この80年代における必要に応えることを目的としたものである。われわれは、かかるエネルギー戦略が成長を阻害することなく、エネルギー、特に石油に対する需要を削減しうるものと確信している。われわれは、この戦略を実施することによりサミット参加国全体のエネルギー消費増加率と経済成長率との比率がこの10年間で約0.6に低下し、サミット国の全エネルギー需要に占める石油の割合が現在の53%から1990年までに約40%に低下し、かつ、1990年のサミット参加国の石油総消費量が現在の水準を大幅に下まわり、その結果許容しうる価格で需給の均衡がはかられるようになるものと期待する。
  12.  われわれは、エネルギーにおける国際協力が不可欠であることを引き続き確信している。全ての国は、エネルギーの需給の安定的均衡に極めて大きな利害関係を有している。われわれは、エネルギー生産者と消費者の政策の整合性を改善するための、エネルギー及び関連事項に関する両者間の建設的な対話を歓迎する。

IV. 開発途上国との関係

  1.  われわれは、石油価格上昇が、石油を輸入しなければならない開発途上国に与える衝撃に深く憂慮している。過去2年間の石油価格上昇により、これら諸国の石油支払代金は倍以上になり、それは今や500億ドル以上にのぼっている。これら諸国を助けるため何かがなされえない限り、このことは、これら諸国の債務を増大させる一方であり、また、その経済成長と社会進歩のための基盤全体を危くするであろう。
  2.  われわれは、国連の枠組の中における来たるべきグローバル・ネゴシエーションズ及び新国際開発戦略の策定に対し、積極的な精神で臨む。特に、われわれの目的は開発途上国の、エネルギー節約とエネルギー開発、輸出拡大、人造り並びに根本的な食糧及び人口問題への取組みにおいてこれら諸国と協力することにある。
  3.  これら諸国のエネルギー生産増大を助けるため、多大の国際的努力が必要である。われわれは、この考えが石油輸出諸国の中で支持を得つつあると信ずる。われわれは、世界銀行に対し石油輸入開発途上国における在来型及び再生可能エネルギー源の探査、開発及び生産のために現存の資金及び機構が十分かどうか検討すること、エネルギー援助のための融資プログラムを改善、増大させるべく新たな傘下機関ないしファシリティの設置の可能性を含め種々の措置を考慮すること及びその調査結果を石油輸出国及び先進工業国の双方と検討することを求める。
  4.  われわれは、極度の貧因と慢性的栄養不良が何億もの開発途上国の人々を苦しめていることを深く認識している。これらの諸国における第一の要請は、自らを養っていく能力を向上し、食糧輸入への依存を減少することである。われわれは、食糧生産を増加し国際的及び各国の研究活動の向上を促進するための、開発途上国及び関連国際機関の総合的長期戦略に参加する用意がある。われわれは、世界銀行と食糧農業機関(FAO)が穀物貯蔵及び食糧流通施設の改善のためにとるイニシアティブを支持し、適当な場合にはこれを補完するであろう。われわれは、毎年少なくとも1,000万トンの食糧援助を確保するため新食糧援助規約に一層広範囲の国が参加することの重要性及び国際農業開発基金の衡平な増資の重要性を強調する。
  5.  人口増加に対処する努力及びこれらの努力を支持するための国連その他による既存の諸計画に高い優先度がおかれるべきである。
  6.  われわれは、世界銀行の一般増資、地域開発銀行の資金量の増加及び国際開発協会の第6次増資を強く支持する。われわれは、上記の諸計画を遂行する上での必要に応じて現在の増資額の限度内でこれらの機関の貸付割合の引き上げを歓迎する。全ての加盟国、特に主要拠出国が、合意されたスケジュールに従い全額拠出を行うことが不可欠である。
  7.  われわれは、ブラント委員会報告を歓迎する。われわれは、その勧告を慎重に考慮している。
  8.  民主主義工業諸国は、単独では開発途上国への援助及びそれ以外の貢献をする責任を遂行することはできない。その責任は石油輸出国と共産主義工業国とによって衡平に担わなければならない。個人代表は、開発途上国に対する援助の政策及び手続並びに援助以外の貢献をレヴューし、その結論を次回サミットに報告するよう指示を受けた。

V. 通貨問題

  1.  石油によって惹起された大幅な国際収支不均衡、特に石油輸入開発途上国のそれが創り出した状況は、対外調整を促進するための全ての国による断固たる行動と国際収支ファイナンシングのための効果的なメカニズムとの組み合わせを必要としている。われわれは国際資本市場が健全な貸付基準に基づいて大幅な石油余剰資金のリチャネリングに引続き主要な役割を果たすことを期待する。われわれは、国際銀行制度の監督と健全性を改善することを目的として、われわれの通貨当局と国際決済銀行が進めている作業を支持する。民間銀行はこのような努力を有益に補完することができるであろう。
  2.  民間貸付は、国際機関、特に国際通貨基金(IMF)の役割の拡大によって補完される必要があろう。われわれは、IMF割当額増加の合意を実施すること、及びIMF加盟国のファイナンシングの必要性に応えるために必要ならばIMFによる適切な借り入れを支持することにコミットしている。われわれはIMFがコンデイショナリティーに関するガイドラインの枠内で、ファイナンスに問題を有する諸国にとってIMFの資金を利用することをより魅力的にするための方策を探求することを奨励する。特に、われわれは、IMFが低所得開発途上国に対する信用供与の金利を引下げるための可能な方策を検討することを支持する。IMF及び世界銀行はこれらの問題に対応するにあたって、緊密に協力すべきである。われわれは世界銀行の構造調整のための革新的な融資計画を歓迎する。われわれは、石油輸出国に対し、ファイナンスに問題を有する諸国に対する直接融資を増加させ、もって他のリサイクリング・メカニズムにかかる負担を減少させるよう強く要請する。
  3.  我々は、外国為替市場の安定に対するコミットメントを再確認する。我々は、欧州通貨基金(EMS)がこの目的に貢献してきたことに留意する。我々は、為替相場の無秩序な変動を回避するため為替市場政策について緊密な協力を継続する。我々はまた一層効果的な監視を実現するためにIMFと協力する。我々は、IMFが世界の準備制度の一層均衡のとれた発展をもたらす取り極めについての継続的な検討を支持する。

VI. 貿  易

  1.  われわれは、開放的な世界貿易体制を強化するための決意を一層強めている。我々は、保護主義的行動を求める圧力に立ち向う。そのような行動は敗北的であり、インフレを悪化させるだけである。
  2.  我々は、多角的貿易交渉の積極的成果を支持し、早期かつ効果的な実施をコミットする。我々は、いくつかの開発途上国のパートナーが新しい非関税措置コードに参加したことを歓迎し、また他の諸国に対して参加を呼びかける。またわれわれは、関税貿易一般協定(GATT)の体制の強化のために、できるだけ多くの国が完全参加することを求める。我々はより開発の進んだ開発途上国のパートナーに対し、今後10年間にわたって徐々にその市場を開放するよう強く要請する。
  3.  我々は、有害な輸出信用競争を回避するとの決意を再確認する。この目的のため、我々は、1980年12月1日までに輸出信用に関する国際的アレンジメントの全ての側面を網羅した相互に受け入れ可能な解決に達することを目的として、他の参加国とともに、右アレンジメント強化のための作業を行う。特にわれわれは、右アレンジメントにおける開発途上国に対する異なった取扱いを認識しつつ、アレンジメントの条件を市場の条件に近づけ、輸出競争の歪みを減ずることに努める。
  4.  国際貿易体制をさらに強化する一歩として、われわれはわれわれの政府が国連において、国際商取引の際に、外国政府公務員に対して不正支払を行うことを禁止する協定を作るために作業することをコミットする。右の努力が実らなかった場合、われわれは、われわれの国の間のみで、同様の目的を有する協定を締結するよう努めるが、この協定は全ての国に開放される。

VII. 結  論

  1. このヴェネチア・サミットからの経済に関するメッセージは明白である。世界が直面している大きな経済上の挑戦の克服に成功するための鍵は、エネルギーの需給バランスを、妥当な水準及び許容しうる価格で、達成し維持することである。何れの国の繁栄もが依存している世界経済の安定は、全ての関係国が、相互のニーズを認識し、相互の責任を受け入れることにかかっている。欧州共同体加盟のサミット参加国は、その努力を欧州共同体の枠組の中で行う意図を有する。自由主義世界の七大工業国を代表するわれわれは、われわれ自身の問題に決意をもって取組み、またわれわれ自身のため、そして世界全体のためにこの80年代の挑戦に応えるよう、他の諸国とともに行動する用意がある。
 
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