政治問題に関する議長総括(仮訳)
1987年6月10日
ヴェネチア・サミットは、現下の主要な国際政治問題についての有益な意見交換のための機会となった。われわれの討議は、昨日の東西関係、湾岸紛争及びテロリズムに関する声明発出に至ったことに見られる様に、建設的な協力の精神で行われ、われわれの対応に有意義な一致があることを確認した。
東西関係においては、いくつかの地域問題について特別の注意が払われた。
アフガニスタン問題に関しては、アフガン国民が外部の軍事占領を逃れ、速やかに自らの将来を決定することができるよう、引き続き圧力をかけていく必要性が改めて協調された。
カンボディアにおける外国軍隊の存在は東南アジアの平和と安寧にとり依然障害であることが留意された。
太平洋においては、新興独立島嶼国が困難な経済情勢に直面している。われわれは、外部からの政治的干渉を完全に排するとの前提の下に、これら諸国の発展過程を支援していく必要性を強調した。
アジアにおいては、われわれは、中国が進めている経済改革のための努力に特別の注意を払うべきであるとの点で意見の一致を見た。われわれは、朝鮮半島情勢につきレヴューし、次期オリンピックが南北両朝鮮間のより開かれた対話の進展のために好ましい環境を醸成しうるとの確信を得た。フィリピンにおいては、現在の民主的政府は、われわれの支援に値するような形で経済的、社会的改革を果敢に試みている。
アフリカは、莫大な潜在力を有している一方、極めて深刻な経済的、社会的、政治的諸問題を抱えている大陸である。われわれは、南アフリカの情勢を特別の懸念を持って検討した。われわれは、アパルトヘイト制度が撤廃され民主的で人種差別のない新たな体制におきかえられてのみ、現在の危機に対する平和で永続的な解決が見出されるとの点で合意した。従って、南ア社会の全ての構成員の代表者との真の対話を早急に開始することが必要であり、同時に、アパルトヘイトの犠牲者のための人道援助のイニシアティブと、南部アフリカ開発調整会議(SADCC)加盟諸国による経済の発展と強化のための努力を支持することの重要性に留意した。
中近東において継続する危険な緊張と紛争並びにアラブ・イスラエル紛争の解決への具体的進展がないことに対し重大な懸念が表明された。公正でグローバルな永続的平和のための条件を創り出すため行動することの必要性が再確認された。
被占領地の状況についても懸念が表明された。
レバノン情勢は深刻な内部緊張とパレスチナ人キャンプの慢性的問題を抱えており、引き続き懸念の原因となっている。この点でわれわれは、国民和解に向け純粋な努力が傾けられるべき旨の希望を再確認した。
ラテン・アメリカについては、民主的な政府を支持すること及び南米大陸全土において民主主義への回帰とその強化を奨励することを目的とする適切なイニシアティブを推進する必要性が論議の中心であった。また、地域統合に向けての努力が成果のある、かつ、建設的な西側との対話をもたらす助けとなるものであり、従って、支持するに値するものであることについても意見の一致をみた。
中米における展開に関しては、グァテマラにおいて開かれる来るべきサミットが平和と安定に向けての道筋をつける上で積極的な役割りを果たしうるものであるよう希望が表明された。
最後に、国連諸機関の問題、特に、最近の財政上の諸困難につき議論を行い、これら問題を克服するための可能な方法につき検討した。