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19 東京 サミット

経済宣言(仮 訳)
―雇用と成長へのより強固な決意―

1993年7月9日

  1.  我々主要先進7ヵ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会の代表は、第19回年次サミットのため、東京で会合した。世界の至るところで見られる民主主義と開放的な市場経済に向けての進展は、わずか数年前の我々の最も楽観的な期待をも上回る。最近の歴史的転換の恩恵を十分享受するためには、我々の社会は、多くの挑戦に応えねばならない。即ち、経済回復と雇用創出を達成すること、ウルグァイ・ラウンドを本年成功裡に妥結すること、移行期にある諸国を世界経済に組み入れること、開発途上国を支援すること、そして世界的な成長と環境面での目的とを調和させることである。我々は、我々が共有する価値に基づき、これらの挑戦に取り組む決意である。我々は、特に国際機関を強化することを通じ、国際協力を拡充するとの我々の決意を新たにする。


世界経済

  1.  我々は、我々の経済の不十分な成長と不十分な雇用創出を懸念する。北米においては景気回復が継続しているが、緩やかなものにとどまっている。欧州は、回復の兆しがある程度見られるものの、依然顕著な景気後退の中にある。日本の経済は、最悪の状況を脱し、今やある程度の景気回復が見え始めている。多くのアジア及びラテン・アメリカの経済は成長しており、そしていくつかの経済は急速に成長しているが、これらの経済は世界経済において一層重要な役割を果たしている。

  2.  我々は、特に失業の水準を懸念する。2300万人以上が我々の国々で失業しているが、これは受け容れ難いものである。最近の失業の増加分の多くは現下の景気減速に起因しているものの、現在の失業水準のかなりの部分は構造的性格のものである。従って失業を削減するためには二面戦略が必要である。即ち、インフレなき持続可能な成長を促進するための節度あるマクロ経済政策及び市場、とりわけ労働市場の効率性を改善するための構造改革が必要である。

  3.  我々は、雇用の大幅な増加の創出を図る持続可能な拡大を促進するために合意された、この世界的な成長戦略を実施すべく適切な措置をとりつつあり、また今後もとる決意である。我々は、我々各国の政策が相互に補強し合うことを可能とし、かつこれらを世界経済の強化と回復という我々の共有する目的と両立させることを可能とすべく緊密に協議を行う。我々は、この目的に向けた蔵相間の改善された協力を歓迎する。

     欧州は、エディンバラにおいて合意され、コペンハーゲンにおいて強化された成長イニシアティブを精力的に実行しつつある。欧州は、最重要課題として金利の迅速な低下の条件が創出されることを確保するため堅実な財政その他の必要な措置を実施することにコミットしている。

     北米においては、米国で中期的な大幅かつ着実な財政赤字の削減、国内貯蓄及び国内投資水準の向上、並びに長期金利の低下を確保するという、既に相当前に行われるべきであった歓迎すべき力強い行動が現在とられつつある。

     日本は、最近の包括的なパッケージを含め、一連の景気刺激策をとってきた。日本は、長期的な財政の健全性の必要性を念頭に置きつつ、力強い内需主導型の持続的なインフレなき成長を確保するため、必要に応じて財政・金融上の措置を実施する。これは、対外不均衡のかなりの削減という重要な目的に貢献することとなろう。

     またウルグァイ・ラウンドの成功裡かつ迅速な妥結は、投資家及び消費者の信認を高めることにより、景気回復と成長への重要な貢献となる。

  4.  雇用及び成長の機会を拡大するためには、力強い経済の回復、及び長期的な成長の潜在力に対する障害となっている構造問題に取り組むことが不可欠である。この関連で、我々は、特に以下のような項目を含む広範な構造改革に焦点を当てた、我々の蔵相の報告を支持する。

    • 労働市場の効率性の向上
    • 教育・訓練の改善
    • 貯蓄・投資の促進
    • 多角的貿易システムの維持・改善
    • 補助金の削減
    • 人口の高齢化の経済的影響への取組み
    • 医療支出全般のコントロール
    • 安定性を確保しつつ進められる金融市場における効率性の向上
    • 環境に関する国際協力の促進

     我々は、技術革新、財政の「質」の改善、及び公的部門の効率性向上といった項目と併せ、上記の項目に取り組むことにコミットし、次回サミットにおいて進捗状況を検討する。

     我々は、経済協力開発機構(OECD)の雇用及び失業に関する中間報告を歓迎する。我々は、OECDに対し、構造変化の影響に関する作業を含め、その作業を強化し、次回サミットの前に政策提言を提示することを要請する。我々は、環境政策により提供される雇用創出の機会を強調する。

  5.  我々の討議の事後点検作業として、我々は、過度に高い失業の原因を探求し、我々の社会の活力を失わせるこの決定的に重要な問題に対する可能な回答を探求するため、我々のハイレベルの代表を今秋の米国の会合に派遣することに合意する。


貿  易

  1.  多角的貿易システムの維持及び拡大は、世界の成長にとり不可欠である。我々は、あらゆる形態の保護主義を抑制する決意であり、いかなることがあっても多角的で開放的な貿易システムを損なう虞れのあるイニシアティブ及び取決めに頼るべきではないことに合意する。我々はまた、いかなる地域統合もこのシステムを補完し支えるものであるべきことを確認する。

     我々の最優先事項は、ウルグァイ・ラウンドの成功裡の妥結である。我々は、モノ及びサービスの市場アクセスの大きなパッケージに向けた最近の重要な進展をジュネーヴにおける多国間交渉の即時再開への大きな一歩として歓迎する。これらの進展に対しては、他の交渉参加国は、同等の市場開放措置をもって対応しなければならない。我々は、万事につき合意が得られるまでは何も合意されたとは言えないことを認識しつつ、我々の全ての貿易パートナーに対し、あらゆる事項につき建設的に交渉するよう求める。いくつかの重要な問題が未解決のまま残っている。我々は、それらを解決し、我々の全てのパートナーとともに本年末までに包括的かつ均衡のとれた合意を達成するとの決意を新たにする。


環  境

  1.  経済的に困難な時期であるにも拘らず、環境問題は、我々の政策課題の中で引続き高い優先度を有する。我々は、持続可能な開発委員会の第1回会合の成功、並びに、気候変動枠組条約及び生物多様性条約の1993年末までの実施と批准に向けての進展を歓迎するとともに、砂漠化条約に関する交渉の進展を歓迎する。我々は、本年末までに国別行動計画を公表するとのコミットメントを含め、国連環境開発会議(UNCED)の成果の効果的な事後点検を通じ、環境上持続可能な開発を確保するとの決意を新たにする。また我々は、必要な改善を図り、地球環境ファシリティーが、リオにおいて署名された地球環境に関する諸条約を実施する際の増分的費用への資金を提供するための資金メカニズムとして機能することを確保すべく取り組む。我々は、国際開発金融機関が、より集中的に持続可能な開発に対し焦点を当てるとともに、環境評価をプロジェクトの準備の際に十分考慮に入れ、かつそれを公に利用可能とすることを奨励する。

     我々は、200海里内と公海とにまたがる漁業資源、及び高度回遊性魚種に関する国連会議が成功を収めることを待望する。我々は、森林の管理、保全及び持続可能な開発に関する適切な国際的に合意された取極を引続き求めていく。我々は、OECD及び国際エネルギー機関(IEA)が行っている、地球環境に関する懸案に取り組む上での環境及びエネルギー技術の貢献についての分析を歓迎する。


ロシア及び移行期にある他の諸国

  1.  我々は、中・東欧諸国、バルト諸国、旧ソ連の新独立国家、及びモンゴルを含む移行期にある諸国における改革努力に対する、自助努力に対する支援の原則とパートナーシップの原則とに基づく我々の支援を再確認する。彼らの改革が成功し彼らが世界経済に完全に組み入れられることは、世界の平和と安定のために不可欠である。我々は、国際問題に関し、これらの諸国との建設的かつ責任ある協力の継続を求める。経済の回復に関し勇気づけられる最初の兆候が、改革が最も進んでいる中・東欧諸国における国々で見られる。我々は、我々との間の経済協力と貿易との進展を歓迎し、移行期にある諸国間における一層堅固な協力を求める。

  2.  我々は、ミュンヘン・サミット以来ロシアにおいてエリツィン大統領の指導の下で行われ、最近の国民投票でロシア国民に支持された勇気ある改革努力が一層進展していることを歓迎する。我々は、ロシアに対し、インフレを抑制し財政赤字を削減する努力を強化するとともに、民営化への強力な着手を進展させ、一層の構造調整を促進するために必要な全ての法的及び行政的措置をとることを求める。4月に東京で開催されたG-7開僚合同会合は、ロシア国民の自助努力への支援の枠組みを設定した。我々は各々の分野において見られた進展を歓迎する。公的債権者は、寛大な債務繰延べを通じ、改革過程に対し目に見える支援を与えた。我々は、ロシア政府、民間銀行及び付保されていない輸出者が交渉により同等な解決を見出すことを期待する。我々は、国際通貨基金(IMF)の体制移行ファシリティーの創設、及びそのロシアヘの15億ドルの第1トランシュの融資実行を歓迎する。我々は、ロシアとIMFとに対し、スタンド・バイ取極に向けての交渉を直ちに開始することを求める。我々はまた、欧州復興開発銀行(EBRD)の2.5億ドルの協調融資を伴う最近の世界銀行の6.1億ドルに及ぶ石油セクター復興融資の承認を歓迎する。我々は、EBRDとの緊密な協力の下で3億ドルの中小企業基金を設立するための資金を提供するとのコミットメントを行った。我々は、ロシアの経済発展にとって、改善された市場アクセスが重要であることを認識する。我々は、ロシアがガット加入に向けて前進するに際し、ロシアとともに作業を進める。この関連で我々は、輸出管理を冷戦後の時代に適応させる努力を強化する。我々は、民営化及び企業改革がロシアの市場経済への転換の核心部分をなすことを認識し、国際開発金融機関と協力の下、1994年末までの始動期間に焦点を当てた、企業再編支援、技術支媛、及び地域支援からなる特別民営化・再編プログラムを創設することに合意する。このプログラムには総額30億ドルが投入される見込みである。さらに、我々は、ロシア側のカウンターパートとともに生産性向上のための方法及び技術を分かち合うことによりこの過程を支援することを、民間セクターに奨励する用意がある。我々は、我々のロシア支援の実施を促進するため支援実施グループをモスクワに設立することに合意する。一方で、我々は、ロシアの実施努力の強化を求める。

  3.  我々は、マルチ基金の設立を含む、ミュンヘン・サミットにおいて合意されたより広範な参加が奨励される原子力安全プログラムにおいて見られた進展を歓迎する。G-24を通じ調整された緊急安全措置は、依然として大きな懸念をもたらしている原子力発電所の真の改善を確保するために迅速に実施される必要がある。関係諸国は、原子力安全に関する基本的諸原則を遵守する第一義的な責任を有する。独立の規制当局が強化されるべきであり、チェルノブイリ等の高リスク原子炉の早期閉鎖を含め、原子力安全には全ての関係諸国においてより高い優先度が与えられねばならない。我々は、世界銀行に対し、IEAとともに関係国それぞれとの対話を継続し、EBRD及び欧州投資銀行(EIB)を含む他の融資機関とともにこれら各国による、より長期的なエネルギー戦略の策定を支援することを促す。我々の目的は、国別アプローチに基づき、可及的速やかに関係諸国による協調行動のための枠組みに合意することである。我々は、1994年に進捗状況を検討する。

     我々は、既存の国際的義務に照らし、ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄に対する懸念を強調する。


開発途上国

  1.  多くの開発途上国では政策面での改革及びその実行において勇気づけられる変化が起きているが、これらの国々の多く、特にアフリカでは依然として大きな経済的及び社会的困難に直面している。我々は、これらの国々における持続可能な発展及び世界経済への組入れ、並びに、人類に対する地球的規模の挑戦への取組みに向けての彼らの協力は、世界の平和と繁栄のために不可欠であることを認識する。我々は、良い統治の諸原則に基づき、彼らの自助努力への支援を引続き強化する。我々はまた、彼らに対し、持続可能な経済成長のための堅固な基礎を築くため健全かつ開放的な経済政策をとることを奨励する。

  2.  この目的のため、我々は、援助のみならず貿易、投資、及び債務戦略をも含む包括的取組み、並びに、それぞれの国の特定の発展段階における要請及び実績に合わせ、また環境をも考慮に入れたそれぞれに異なる取組みを追求する。このような取組みの下では、我々は、新たな需要に対応するとともに、現在の要請を満たすよう開発援助を拡充するあらゆる努力を払う。最貧国は特別の注意を払うに値する。それゆえに、我々は、IMFの拡大構造調整ファシリティー(ESAF)の継承または更新を支援する。我々はまた、本年10月のアフリカ開発会議が成功を収めることを待望する。我々は、国際的債務戦略の有効性を確認し、パリ・クラブに対し、特にケース・バイ・ケースでのより早期の債務ストックの削減に関し、最貧重債務国のための債務救済の問題を引続き検討することを促す。我々は、これらの国々の債務削減のため我々と行動をともにするとの米国政府の決定を歓迎する。

  3.  我々は、開発途上国との共通の関心事項に関し、より建設的なパートナーシップと対話を確立するための開発途上国のイニシアティブを歓迎する。我々は、急速な人口増加と持続可能な開発の目的との関連を検討する上で重要な、来年カイロにおいて開催される国際人口開発会議の成功に向けて取り組む。


国際協力及び将来のサミット

  1.  我々の直面する挑戦に取り組むため、我々は、既存のフォーラムにおいて国際協力を強化し、よりよい協調と効率を追求する決意である。我々は、国連事務総長による国連の運営の改革及び改善のための努力を認め、賞賛する。我々は、国連事務総長がこれらの目的を追求することを支持する。

  2.  我々は、いかにしてサミットを通じ、その時代の最も重要な問題に最もよく我々の関心の焦点を当てることができるかにつき熱考した。我々は、サミットは意見交換を行い、コンセンサスを形成し、我々の間の理解を深めるための機会を与えるという点でサミットを評価する。しかし我々は、我々の共通の主要関心事項に共同でよりよく対処できるよう、サミットは儀礼、人、文書及び宣言を減らし、我々の間の形式ばらない討議に充てられる時間を増やすべきであると確信する。我々は、将来のサミットをこの精神で運営する意向である。

     我々は、1994年7月にイタリアのナポリで会合することについてのイタリア首相の招待を受諾した。

 
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