しかし、新たな挑戦が生じた。多くの国において鎮静化しつつあったインフレーションは、現在再び勢いを得つつある。より高い石油価格及び石油不足は、われわれ全ての国において経済政策の運用の余地を狭めた。それらは、工業国及び開発途上国双方において、インフレーションを悪化させ、成長を低下させるであろう。非産油開発途上国は、最大の被害を受ける諸国に含まれる。
われわれは、これらの問題に取組むための共通の戦略につき合意した。最も緊急な課題は、石油消費を減少させ、他のエネルギー源の開発を促進することである。
われわれ7ヵ国は、すでに石油消費の減少のために重要な措置をとってきた。われわれはかかる努力を強化する。
欧州共同体は、1979年の石油消費を5億トン1日当り1,000万バーレルに制限すること及び1980年より1985年までの共同体の年間石油輸入量を1978年より高くない水準に維持することを決定している。共同体は、この約束を監視している。また、フランス、ドイツ、イタリア及び英国は、これらの年間の水準に対する各加盟国の寄与分を特定するよう共同体の他の加盟国に対し勧告する旨合意した。カナダ、日本及び米国は、それぞれが国際エネルギー機関(IEA)において1979年について誓約した調整済み輸入水準を実現し、また1980年の輸入をこの1979年の水準に維持し、これを監視するであろう。
7ヵ国は、1985年の石油輸入の上限についての目標として、下記の数値をとる意図を表明する。
- フランス、ドイツ、イタリア(注)及び英国については、1975年の数値。
- カナダについては、現在と1985年までの期間にわたリカナダの石油生産は極端に減少していくところ、石油消費の年間平均成長率を1%に低下せしめ、その結果として、1985年までに1日当り5万バーレル分石油輸入を減少せしめる。従って、カナダの輸入目標値は、1日当り60万バーレルとなろう。
- 日本は1985年の目標として、1日あたり630万バーレルから690万バーレルの間の範囲を超えない水準を採用する。日本は、この目標を定期的に検討し、かつ、時々の進展及び成長見通しに照らしてこれを一層明確なものとし、また、より低い数値に近づくために、節約、利用の合理化及び代替エネルギー源の熱心な開発を通じて、石油輸入を削減するよう最善を尽すものである。
- 米国は、1985年の輸入についての目標として、1977年の水準または1979年についての調整済みの目標を超えない輸入水準、即ち、1日当り850万バーレルを採用する。
これらの1985年の目標は、エネルギー節約及び代替エネルギー源の開発の双方を監視するうえでの参考として用いられる。
われわれ7ヵ国及び欧州共同体委員会の代表からなるOECD内のハイレベルグループは、達成された結果について定期的に検討する。成長によって生ずる特別な必要を考慮に入れるため、多少の調整を許すこととする。
これらの約束を履行するにあたって、われわれの指針となる原則は、異った供給の態様、石油輸入を制限するために払った努力、各国の経済状況、入手可能な石油の量及び各国のエネルギー節約についての可能性を考慮しつつ、全ての国々のために石油製品の公平な供給を確保することである。
われわれは、他の工業国に対し、自国について同様な目標を設定するよう勧奨する。
われわれは、石油の国際取引の登録制を導入することにより、石油市場の動きを公開する措置をとることに合意する。われわれは、石油企業及び石油輸出国に対しスポット市場取引を節制するよう勧奨する。われわれは、原油の積み降しの時に、生産国により証明された買入れ価格を示す文書の提出を要求することの実現可能性を考慮する。同じく、われわれは、石油企業の利潤状況及び石油企業にとって利用可能な資金の使用に関し、一層良い情報を入手するよう努める。
われわれは、世界市場価格の水準に国内石油価格を維持すること、あるいは出来る限り速やかにこの水準に国内石油価格を引上げることの重要性につき合意する。われわれは、国内の石油価格が低く抑えられることに起因し、石油価格に対し又上昇圧力を加えることになり得る行政措置を最少限にし最終的には取りやめるよう、また、同様の効果をもつような新規の補助金を回避するよう努める。
われわれ7ヵ国は、政府による備蓄のために石油を購入すれば価格に対して不当な圧力を加えることになる際にはこれを行わないこととし、この目的のためにわれわれが行う決定について協議することとする。
われわれは、われわれ7ヵ国が環境を損うことなく石炭の利用、生産及び可能な限り拡大することを誓約する。われわれは、産業及び電力部門において、石炭をもって石油に代替させることに努力し、石炭輸送の改善を奨励し、石炭プロジェクトヘの投資に対して積極的な姿勢を維持し、長期契約による石炭貿易を国家的緊急事態によって必要となる場合を除き、中断しないことを誓約し、また、石炭輸入を阻害しない措置によって、エネルギー政策、地域政策及び社会政策上望ましい国内石炭生産の水準を維持する。
われわれは、代替エネルギー源、とりわけ、一層の汚染、特に大気中の炭酸ガス及び硫酸ガスの増大を防止することに役立つ代替エネルギー源を拡大する必要がある。
今後数十年において原子力発電能力が拡大しなければ、経済成長及び高水準の雇用の達成は困難となろう。これは国民の安全を保障する条件の下に行われなければならない。われわれはこの目的のための協力する。この点に関して、国際原子力機関(IAEA)は中心的役割を果しうる。
われわれは、核燃料の安定供給と核拡散の危険性の極小化に関するボン・サミットにおいて達せられた了解を再確認する。
エネルギー分野における新しい技術は、世界がより長期にわたって燃料の危機から解放されるための鍵である。これらの技術の開発及び商業化のためには、多額の公共及び民間の資金が必要とされよう。われわれは、かかる資金が利用可能となることを確保する。各国国内において現にとられ、又は、計画されている行動を検討し、また、資金供与を含む国際協力の必要性と可能性について報告するために、経済協力開発機構(OECD)、国際エネルギー機関(IEA)及びその他の適当な国際機関と連繋した国際エネルギー技術グループが創設されよう。
われわれは、最近のOPEC会議においてとられた決定を遺憾とするものである。われわれは、幾つかの参加国が比較的穏健な態度を示したことを認める。しかし、それにも拘らず合意された石油価格の不当な上昇は、極めて深刻な経済的かつ社会的結果をもたらさざるを得ない。かかる石油価格の上昇は、一層の世界的なインフレとより低い成長を意味する。それは失業の増大及び一層の国際収支困難につながり、世界の開発途上国及び先進国の安定を等しくおびやかすこととなろう。われわれは、石油輸出国とともに、世界石油市場における需給見通しを如何に明確にするかにつき、検討する用意がある。