政治問題に関する議長総括(仮訳)
1981年7月20日
(本件総括説明は、今次サミットにおける政治問題に関する討議の概要をトルドー首相が議長としての立場から取りまとめたものであり、その趣旨については各国首脳とも賛同しているものである。7月20日)
- われわれは、国際問題に関する討議を通じ、われわれ全てが直面する主要問題についての見解の一致を確認した。われわれは、連帯と、協力と、責任の精神を以て共にこれらの問題と取り組む決意である。
- われわれ全員は、国際の安全と安定に対する脅威が引続いて存在していることを懸念をもって注視する。永続的平和は、国家及び個人の自由と尊厳の尊重の上にのみ構築されうる。われわれは、すべての国の政府に対し、国際問題につき自制と責任を行使し、危機と緊張に乗ずることを慎しむよう訴える。
- 我々は、中東において、引続きアラブとイスラエル間の紛争に対する解決策が見出されなければならないと確信している。我々全員は、現在同地域において起っている緊張の拡大と引き続く暴力行為を憂慮する。なかでも我々は、特にレバノンにおける破壊の規模及び双方の側において多数の市民の生命が奪われたことに深い苦しみを感じている。我々は、全て国家及び当事者に対し自制すること、特に報復行為はエスカレーションしかもたらすことがないのでかかる行為を回避することを呼びかけるとともに、現在の同地域における緊迫した状況下においては一層の流血と戦乱をもたらしかねない行為を慎しむことを呼びかける。
- 我々は、この関連で、レバノン国民の悲劇的運命を特に憂慮している。我々は、レバノンに真の意味の民族的和解、国内治安及び近隣諸国との和平を達成することを可能とする現在進行中の諸努力を支持する。
- 東西関係において、我々は、ソ連の軍事力が引き続き増強されていることを深刻に懸念する。我々の懸念は、国際問題における自制と責任の行使に背馳するソ連の行動によって強められている。従って、我々自身強力な防衛力を必要とする。我々は、軍事力の均衡と政治的自制を確固として主張する。我々は、ソ連がそれを可能とする限りにおいて、対話と協力を行う用意がある。我々は、より低い軍備と歳出の水準において安全保障を損うことなく追求するため、均衡のとれた検証可能な軍備管理と軍縮の取極に向け作業を行うことの重要性を確信している。
- 我々は、マドリッドにおける欧州安全保障協力会議において、今般西側諸国が、提案されている欧州軍縮会議において交渉されるべき諸措置の対象地域を定義する目的で、さらに新たな主要なイニシアティブを取ったことを歓迎する。また、西側諸国が、自由を奪われた個人に対し新たな希望を与えるいくつかの人権規定を提案したことも同様に重要である。我々は、ソ連がこれらのイニシアティブを受け入れることがマドリッド会議の均衡のとれた結論と欧州における緊張の大幅な軽減を可能にすると確信する。
- アフガニスタンについては我々は昨年のヴェニス・サミットにおいて確固たる全員一致の立場を公けに表明したが、我々はその状況が変っていないことに留意する。従って我々は圧倒的多数の諸国とともに、ソ連によるアフガニスタンの軍事占領を引き続き糾弾する。我々は、ソ連軍の完全撤退を達成し、また解放戦争を闘っているアフガニスタン国民が自らの将来を決定する権利を回復するための国際的努力を支持する。我々は、かかる結果をもたらすための国際会議の召集を求める欧州理事会の建設的な提案を賛同の意をもって留意するとともに、ソ連が同提案を受け入れるよう要請する。我々はキャリントン英国外務大臣の、最近のモスコー訪問及び同地においてEC10ヵ国を代表して行った国際会議提案に関する討議についての報告を感謝する。
- 我々は、カンボディア国民が民族自決の権利を有することを確信し、カンボディア問題国際会議の宣言を歓迎し、これを支持する。
- 我々は、他の諸国及び地域機構とともに、地域的な安全を強め、主権国家の独立と尊厳に基づく平和を確保するため必要なことを行う決意である。すべての国民は、外部からの介入を恐れることなしに自らの進路を決定する自由をもつべきである。この目的のため、我々は引き続き紛争の平和的解決を促進し、またその根底にある社会的・経済的諸問題に取り組む考えである。我々は、独立の尊重と真の意味の非同盟とが国際の平和と安全のために重要であるとの信念を再確認する。
- 我々は、ヴェネチア・サミットにおいて採択された難民に関する声明を想起しつつ、難民の窮状が全世界に増大していることについて深刻に懸念する。我々は、国際的な救済努力に対する我々の支持を再確認し、また全ての国の政府に対し難民の大量流出につながりうる行為を慎しむよう求めた我々の呼びかけを再確認する。