リヨン・サミット 議長声明 「協力を深める世界における一層の安全と安定を目指して」 (要約) |
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平成8年6月29日
前文
○21世紀に向けた機会と挑戦を踏まえ、全世界の安全と安定を達成するためのよりよい国際システムの構築につき討議。相互依存と相互作用が深まる中、我々の間又は他国との間で協力する決意を新たにした。
I.地球的規模の問題
1.国連
○「人間の安全」にとって国際システムはますます重要であるが、国連は、その国際システムの基礎である。国連改革につき早期かつ実行可能な結論に達することにコミットする。ワーキング・グループ等の作業においてより大きな役割を果たす。
○現在の財政危機に対し、より衡平な分担率、拠出義務の尊重等の長期的解決を早期に促進。
○国連は、国際の平和と安全に主たる責任を持ち続け、平和と安全に対する脅威に効果的な対応をすべくその能力を発展させるべし。
○紛争予防のため、平和に資する条件整備が重要。経験ある政治家等の仲介など平和のためのより柔軟な手段の発展を支持。国連の緊急展開能力の強化、国連事務局の平和維持活動に係る能力強化を支持。地域的機関及び取極の貢献と国連との協力を歓迎。
2.人権、民主的プロセス及び人道上の緊急事態
○全ての人権及び基本的自由は普遍的。あらゆる形態の差別と不寛容を非難。
○国連人権高等弁務官を支持。女性も男性も人権及び基本的自由から裨益し、児童の権利が尊重されるよう意を用いる。
○旧ユーゴ等での重大な人権侵害に対する国際刑事裁判所の努力を全面支持。すべての当事者の協力を求める。
○民主化プロセス、自由で公平な選挙の実施、民主的制度の強化を支持・支援。
○人道上の緊急事態は、特別の関心事項。ICRC、UNHCR、WFP等を賞賛。必要とされる支援を行う確固たる決意。効果的支援のための作業の調整・合理化が必要。
3.不拡散及び軍備管理・軍縮
○包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名を9月に行えるように交渉を妥結させるとの誓約を確認。CTBT発効まで核兵器国の最大限の自制を要請。
○「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」に対するコミットメントを再確認。核兵器不拡散条約(NPT)の再検討会議(2000年)に向けて貢献の決意。
○東南アジア、アフリカ等での非核地帯の設定に係る進展を歓迎。
○軍事用の核分裂性物質の生産禁止のための条約交渉の早期開始が重要。
START IIの早期発効を待望。化学兵器禁止条約の発効が重要。生物・毒素兵器禁止条約の実施に努力。
○通常兵器の拡散及びそれによる犠牲を懸念。通常兵器禁止条約の再検討会議での地雷等に関する議定書の強化等を歓迎。各国に対し、対人地雷の拡散・無差別使用に伴う惨害の世界的禁止への努力を要請するとともに、いくつかの国がこの生産・使用・輸出のモラトリアム及び禁止を採用していること等を歓迎。また、地雷探知・除去及び犠牲者援助への国際的支援が重要。
○国連軍備登録制度の継続的実施への支持を要請。
○ワッセナー・アレンジメントの設立合意(95年12月)を歓迎。
4.原子力安全
○4月のモスクワ・サミットでの相当な進展を歓迎。
○原子力の安全は最優先課題。原子力安全条約の早期批准を要請。原子力損害賠償責任制度の強化、放射性廃棄物管理の安全に関する条約の準備等につき更なる進展が必要。移行諸国のエネルギー政策策定への支援に引き続きコミットする。
○核物質密輸防止プログラムの採択を歓迎し、その実施のための会合を早期に開催。防衛用に不要となった核分裂性物質の管理のための適切な戦略を明らかにすべし。
○各国に対し、IAEAの保障措置を強化する「93+2計画」(モデル議定書を検討中)の実施を要請。
5.環境
○環境保護を全ての政策に反映させることは、最優先課題。環境の観点から国民所得勘定の補完の可能性を探求。
○97年の国連環境特別会合の成功に向けて力強く行動。97年には、気候変動枠組条約締約国会議の成功、森林管理促進に関する合意、残留性の高い有機汚染物質(POP)に関する法的文書の交渉実施等を期待。
○持続可能な開発委員会(CSD)の政策フォーラムとしての役割を確認。国連環境計画(UNEP)は触媒的役割を果たすべきである。
6.情報社会
○南アフリカで開催された「情報社会と開発会合」を歓迎。
○情報通信は、経済、民主主義、文化等の面で有意義。
○情報通信に関し、多国間フォーラムで行われている交渉の早期妥結を期待。
○技術への普遍的アクセスを促進する協力的アプローチを求める。知的所有権保護は重要。世界規模の通信ネットワークによって生じた倫理面・犯罪面の問題を検討する用意あり。
7.ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム
○本年秋の政府間会合の結果に関心を有する。
8.伝染病
○HIV/エイズ、マラリア、コレラ、エボラ熱等の伝染病は脅威。新興・再興感染症の予防、調査等を支援するメカニズムの構築を支持し、また、その治療等に関する協力の拡充を呼びかける。
○各国による治療法研究の奨励措置に注目。研究者間の国際協力を促進。
○HIV/エイズ等の感染症によって大きな打撃を受けた国を引き続き支援。各地域への専門知識の移転において、我々の間の協力を奨励。
○世界保健機関(WHO)及び国連エイズ共同プログラム(UNAIDS)の努力を支持。
9.麻薬
○各国が麻薬濫用及び向精神薬物の不正取引に関する条約の下での義務を完全履行するよう要請。麻薬との闘いで各国との協力を強化する用意がある。
○国連による努力を全面支持。
10.国際組織犯罪
○国際組織犯罪と闘うための十分な資源等の動員、国際機関への支持、関連条約の完全履行の奨励、麻薬取引及び資金洗浄の取締り強化等にコミット。
○上級専門家グループ(ハリファックスで設置)による40の勧告を支持し、全ての国に推奨。これら勧告に係る進捗につき、同グループによるフォローアップを要請。
II.地域情勢
1.総論
○地域・地域間協力の平和、安定及び繁栄への貢献を評価し、異なる地域間の協力の発展のための努力を支持(欧州安全保障・協力機構(OSCE)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、アジア欧州会合(ASEM)等)。
2.欧州
○中・東欧の経済・政治的移行プロセスを支持。
○EUの中欧及びバルトへの拡大の展望を歓迎。
3.中東
○中東和平プロセスでこれまでに達成された成果を歓迎。地域における経済協力の拡大を歓迎。アラブ・ボイコットの撤廃を期待。
○パレスチナ評議会選挙を歓迎し、パレスチナ側の民主制度の発展、人権の尊重の促進を要請。パレスチナ人に対する支援に関し、既に意図表明した支援の実施を要請。イスラエルの安全確保の必要性を認識しつつ、西岸・ガザにおける封鎖の全面解除を要請。
○国際社会に対し、「平和創設者」サミットの考え方を堅持し続けるよう要請。
○全ての当事者に対し、二国間交渉の再開とともに、既存の合意の履行及び「平和と領土の交換」の原則と関連国連安保理決議等に基づいた和平努力を継続するよう要請。
○イランに対し、過激派グループに対する物質的・政治的支持を控え、テロリズムを拒否するよう要請。イランとの間で、核兵器能力の取得に寄与しうる協力を行わないよう要請。
○イラク・リビアに関する全ての国連決議の完全実施を進める。
4.朝鮮半島
○北朝鮮に対し、韓国との対話と協力を進めるよう要請。
○四者会合を含め、現在の休戦協定に代わる朝鮮半島の永続的平和協定を目的としたプロセスの開始に向けてとられるイニシアティブを支持。
○米朝枠組み合意に沿って行われている努力を歓迎。
○国際社会に対しKEDOに対する支援を呼びかける。
付属:
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナに関する決定
・経済社会分野における国連改革のレビュー
ハリファックス・サミットのフォローアップ
経済社会分野における国連改革のレビュー
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1. 総論
●国連の経済社会分野の機関の改革の原則が、幅広く世界で支持されるに至っ ていることを認識。
●効率性向上によって達成される節約経費は再投資されるべきである。
●以下はハリファックス・サミット以降の成果の非包括的な要約。
●我々は、「開発のための課題」を含む改革プロセスを完成させるために一層協力していく。
2. 成果
(1)システム全体
●経済社会分野における国連の再活性化及び強化についての交渉は全般的な改 革のための課題を反映。多くの進展の要素がある。
(経済社会理事会による政策調整の強化。その下の諸委員会の見直し。)
●効率化委員会。内部監査局。機関にまたがる3つのタスク・フォース。
(2)予算
●国連諸機関は予算を抑制しつつ、同時に開発計画の継続を確保。
(国連、FAO、WHO、ILO、IFAD、WFP、UNDPにおける成果)
(3)人道支援
●WFP(世界食糧計画)、UNHCR(国連難民高等弁務官)、UNICE F(国連児童基金)の間で相互調整を強化。
(4)UNCTAD(国連貿易開発会議)
●第9回UNCTAD総会の結果は、改革のための堅固な基礎。(優先分野の 絞り込み、政府間機構の整理、事務局の合理化)
●UNCTADとWTO、UNIDOとの相互調整、協力の強化。
(5)専門機関
●FAO、UNESCO、WHO、UNIDOの予算抑制、活動の再検討。
(6)基金及び計画
●UNICEF、WFP、UNEP、UNDPの権能、組織の見直し。
(7)地域経済委員会
●アジア太平洋、アフリカ、ラテン・アメリカ・カリブ、欧州の各経済委員会 において、組織の点検及び作業計画の優先順位付が行われる。
(8)開発のための課題
●第2部(方法と手段)及び第3部(機構の適応)を中心に交渉が進行中。