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17 ロンドン サミット

経済宣言(仮 訳)

1991年7月17日

「世界的パートナーシップの構築」

  1.  我々主要先進民主主義7ヵ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は、第17回年次サミットのため、ロンドンで会合した。

  2.  我々がヒューストンで祝福した自由と民主主義の広まりは、過去1年間に歩調を早めた。国際社会は、力を合わせて、湾岸における世界平和に対する重大な脅威を克服した。しかし、我々は、新たな挑戦と新たな機会に直面している。

  3.  我々は、共通の価値観に基づく世界的パートナーシップの構築と国際秩序の強化を追求する。我々の目的は、民主主義、人権、法の支配及び健全な経済運営を支えることであり、これらは相俟って繁栄への鍵となる。この目的を達成するため、我々は、確実で適応性があり、責任が広く公平に分担される真の多角的体制を拡充する。我々の目的の中核には、国連システムをより強力かつ効果的なものとし、兵器の拡散及び移転に対し一層の注意を向けることの必要性がある。


経済政策

  1.  過去1年間、我々の経済のいくつかは順調な成長を維持し、他方ほとんどの経済は減速し、景気後退に入ったものもある。しかし、世界的な景気後退は回避された。湾岸危機により生じた不確実性は、過去のものとなった。我々は、今や、経済回復の兆しが強まりつつあるという事実を歓迎する。貿易及び経常収支の最大の不均衡の削減にも進展が見られた。

  2.  我々の共通の目的は、経済の持続的回復と物価の安定である。この目的のため、我々は、経済政策協調過程を通じるものを含む、従来のサミットで支持された中期戦略を維持する決意である。この戦略は、インフレ期待を抑え、持続可能な成長と新たな雇用のための条件を創出してきた。

  3.  従って、我々は、各国の異なる状況を反映しつつ実質金利の低下の基礎を提供するような財政・金融政策を実施することにコミットする。この関連で、財政赤字削減を引き続き進展させることが不可欠である。このことは、民間貯蓄に対する障害を削減するためになされている努力と相俟って、投資需要を満たすために必要な世界的貯蓄の増大に役立つ。我々は、また、為替市場における緊密な協力と国際通貨制度の機能改善のための作業とを歓迎する。

  4.  我々は、また、経済協力開発機構(OECD)その他の機関の助力を得て、経済効率を改善しもって成長の潜在力を向上させるための改革を追求する。このような改革には以下のことが含まれる。

    (a) 規制の改革を含む我々の経済における競争の強化。これは、消費者の選択肢を広げ、物価を下げ、事業への負担を軽減し得る。
    (b) 歪曲的効果のある補助金は、資源の非効率的な配分をもたらすとともに公共支出を増大させるので、そのような補助金の透明性強化、撤廃又は規律強化。
    (c) 雇用制度の一層の柔軟性に貢献する政策、並びに就業中及び失業中の者の技能を高め機会を改善するための教育及び訓練の改善。
    (d) 例えば、より高い管理基準を通じる等の公共部門の一層の効率化。民営化と外部発注の可能性を含む。
    (e) 科学及び技術における進歩の広範かつ急速な普及。
    (f) 社会資本への民間及び公共部門による必要不可欠な投資。

  5.  我々は、環境を保護する上で費用対効果の高い、税、賦課金、取引可能な排出権等の経済手段を国内的及び国際的に開発する作業を奨励する。


国際貿易

  1.  ウルグァイ・ラウンドの成功裡の終結は、他のいかなる問題にも増して世界経済の将来の見通しに広範な意味合いを有する。それは、信任を強化し、保護主義を押し返し、及び貿易の流れを増大させることによって、インフレなき成長を促進する。それは、開発途上国及び中・東欧諸国の多角的貿易体制への統合の促進にとり不可欠である。我々がラウンドを終結させることができなかった場合は、これらの全ての利益が失われる。

  2.  従って、我々は、先進国と開発途上国の双方が可能な限り広範に参加する、野心的、包括的かつ均衡のとれたラウンドの成果のパッケージにコミットする。全ての参加国は、1991年末より前にラウンドを完了させることを目指すべきである。各首脳は、もし相違点が最高レベルでしか解決できない場合には相互に介入する用意をしつつ、引き続きこの過程に個人的に関与する。

  3.  我々の目的を達成するためには、全ての分野で本年の残りの期間ジュネーヴにおける交渉が持続的に進展する必要がある。主たる必要条件は、以下の分野が全体として早急に前進することである。

    (a) 市場アクセス。関税の相当程度の削減及び非関税障壁に対する並行する措置の一部として、いくつかの産品のタリフ・ピークを低減するとともに他のいくつかについてはゼロ関税に移行することが特に必要である。
    (b) 農業。非貿易的関心事項を考慮しつつ、内国支持、市場アクセス及び輸出競争の各分野で支持と保護の実質的かつ漸進的な削減が合意されるよう、これらの分野において具体的かつ拘束力のあるコミットメントを規定する枠組みが決定されなければならない。
    (c) サービス。サービス貿易に関する一般的合意についての協定が、サービス貿易に対する既存の制限を削減ないし除去するとともに新たな制限を課さないとの実質的かつ拘束力のある初期コミットメントによって、強化されるべきである。
    (d) 知的所有権。全ての所有権を守るための明確で実行可能な規則と義務が、投資と技術の普及とを促進するために必要である。

  4.  これらの問題における進展は、繊維、熱帯産品、セーフガード及び紛争処理等の既に合意間近の分野における最終合意を促進する。紛争処理メカニズムの改善に合意することは、多角的ルールの下でのみ行動するとのコミットメントに繋がる。ガット規則の策定を含む、交渉のこれらの要素及び他の要素は、全体として、我々が追求している実質的かつ広範なパッケ―ジとなる。

  5.  我々は、地域統合が多角的貿易体制と両立することを確保するよう努める。

  6.  我々がヒューストンで留意したように、ウルグァイ・ラウンドの結果が成功を収めることによって、多角的貿易体制の制度面での強化も必要となろう。国際貿易機関の考え方は、この文脈で検討されるべきである。

  7.  開放的な市場は、環境保護のために必要な資源の創出に役立つ。従って、我々は、貿易政策と環境政策が相互に支持し合うことを確保するOECDの先駆的作業を賞賛する。我々は、貿易措置がいかにして環境上の目的に適切に利用され得るかを関税と貿易に関する一般協定(GATT)が明らかにすることを期待する。

  8.  我々は、OECD加盟国が近い将来、いずれにせよ本年末までに、補助された輸出信用とタイド援助信用の利用の結果生じる歪曲の削減に関する合意を妨げている残された障害を克服しなければならないと確信する。我々は、輸出信用プレミアムの体系及び構成を検討するとのOECDのイニシアティブを歓迎し、報告が早期に行われることを待望する。


エネルギー

  1.  湾岸危機で示されたように、石油の供給と価格は政治的衝撃に対し引き続き脆弱であり、このことは世界経済を撹乱する。しかし、これらの衝撃は、市場の効果的働き、いくつかの石油輸出国による歓迎されるべき供給増大、及び国際エネルギー機関(IEA)により調整された行動、特に備蓄の使用によって、封じられた。我々は、IEAの緊急時即応体制及びその支援措置の強化にコミットしている。危機が生産者と消費者の間の関係改善をもたらしたので、意志疎通、透明性及び市場原理の効率的働きを促進するために、全ての市場参加者間の接触を一層進展させ得よう。

  2.  我々は、エネルギーの世界的な安定供給を確保し、エネルギー貿易と投資に対する障壁を除去し、環境上及び安全上の高度の基準を奨励し、並びにこれら全ての分野における研究・開発に関する国際協力を推進するよう努める。我々は、また、エネルギー効率を向上させ、環境上の費用を含めた費用が十分反映されるように全ての源からのエネルギーの価格付けを行うよう努力する。

  3.  この関連で、原子力発電は、エネルギー源の多様化及び温室効果ガスの排出削減に貢献する。経済的なエネルギー源として原子力を開発する際には、廃棄物処理を含め利用可能な最高の安全基準を達成し維持すること、及びその目的のために全世界で協力を推進することが不可欠である。中・東欧及びソ連における安全性の状況は、特別の関心に値する。これは緊急の問題であり、我々は対応策を調整するための有効な手段を策定するよう国際社会に要請する。

  4.  再生可能なエネルギー源の商業的開発と一般的エネルギー体系への統合も、これらのエネルギー源がもたらす環境保護上及びエネルギー安全保障上の利点に鑑み、奨励されるべきである。

  5.  我々全ては、署名国の平等な権利と義務を基礎とした欧州エネルギー憲章の確立のための欧州共同体の構想に全面的に参画する意図を有する。その目的は、特に商業的エネルギー投資にとり開放的で差別的でない制度を創設することによって、自由で歪みのないエネルギー貿易を促進し、供給の安全保障を高め、環境を保護し、並びに中・東欧諸国及びソ連における経済改革を支援することである。


中・東欧

  1.  我々は、多大の障害にも拘らず民主主義を築き市場経済に移行している中・東欧諸国の勇気と決意に敬意を表する。我々は、同地域一帯への政治的及び経済的改革の広まりを歓迎する。これらの変化は、大きな歴史的重要性を有する。ブルガリア及びルーマニアは、現在、ポーランド、ハンガリー及びチェコ・スロヴァキアの先駆的歩みの後を追っている。アルバニアは、長期にわたる孤立から抜け出しつつある。

  2.  我々は、改革の成功が当事国の継続的努力に主として依存していることを認識しつつ、これら諸国の改革努力を支援し、これら諸国とのより緊密な関係を形作り、また、国際経済体制へのこれら諸国の統合を奨励するとの我々の確固たるコミットメントを新たにする。地域的イニシアティブは、我々の協力する能力を強化する。

  3.  アルバニアを除く全ての中・東欧諸国は、今や、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の加盟国である。我々は、IMFに支援されたマクロ経済安定プログラムを実施中の国々によりとられつつある措置を歓迎する。これらのプログラムが、国営企業の民営化と再編成、一層の競争、所有権の強化等の構造改革により補完されることが極めて重要である。我々は、民主主義にコミットした中・東欧諸国において開放的な市場指向経済への移行を助長し民間のイニシアティブを促進する権能を有する欧州復興開発銀行(EBRD)の設立を歓迎する。

  4.  外国及び国内の双方の民間投資にとり好ましい環境は、持続的成長及び各国政府からの外部支援への依存回避にとり極めて重要である。この観点から、我々の民間部門及び政府、欧州共同体並びに国際機関からの技術支援は、市場に基礎を置く極めて重要な転換を助けることに集中すべきである。この関連で、我々は、中・東欧の経済再編成の過程に環境的配慮を統合することの重要性を強調する。

  5.  輸出市場の拡大は、中・東欧諸国にとり決定的に重要である。我々は、市場経済への輸出が既に大幅に拡大していることを歓迎し、鉄鋼、繊維、農産物等の分野を含むこれら、諸国の産品とサービスに対し我々の市場へのアクセスを一層改善することとする。この関連で、我々は、欧州共同体とポーランド、ハンガリー及びチェコ・スロヴァキアとの連合協定交渉における進捗並びに米国が発表した大統領貿易拡大構想を歓迎する。これら全ては、GATTの原則に合致しよう。我々は、東西貿易の制約要因を明らかにしその除去を促進するOECDの作業を支持する。

  6.  アルシュ・サミットにより開始されEC委員会が議長を務めるG-24のプロセスは、IMFに支援されたプログラムを下支えする国際収支支援を含め、これら諸国のために310億ドルの二国間援助を動員した。このようなプログラムは、ポーランド、ハンガリー及びチェコ・スロヴァキアに適用されている。我々は、ブルガリアとルーマニアのために既に行われた貢献を歓迎する。我々は、G-24の調整過程を強化しており、また、世界的な支援努力において公正な役割を果たすという我々の共通の意向を再確認する。


ソ  連

  1.  我々は、ソ連における政治上及び経済上の転換に向けた動きを支持し、ソ連の世界経済への統合を支援する用意がある。

  2.  市場経済を発展させる改革は、変化のための誘因を創出するとともにソ連の国民が自己の豊かな天然資源と人的資源を活用できるようにする上で、不可欠である。中央と各共和国とが各々の責務を遂行する明確かつ合意された枠組みは、政治・経済改革の成功の基礎である。

  3.  我々は、改革のための政策、その実施、更にはこのプロセスを我々が助長し得る方法につき討議するため、ゴルバチョフ大統領を我々との会談に招待した。

  4.  我々は、ヒューストンで我々が行った要請を受け、IMF、世界銀行、OECD及びEBRDがEC委員会と緊密に協議して作成したソ連経済に関する報告を賞賛する。この報告は、経済改革の成功のために必要な要素の多くを提示しており、それらには財政・金融上の規律や市場経済の枠組みを創ることが含まれる。

  5.  我々は、世界全体におけるソ連の外交政策の「新思考」を含め、改革が実施されている全体的な政治的文脈に敏感である。我々は、資源を軍需から民需へ振り向けることの重要性についても敏感である。

  6.  我々は、ソ連経済の悪化を懸念している。これは、ソ連内部においてのみならず、中・東欧諸国にとっても極めて困難な状況を惹起する。


中  東

  1.  多くの国が湾岸危機の結果経済的に被害を受けた。我々は、湾岸危機資金調整グループが湾岸危機から最も直接的な経済的影響を被った国のために約160億ドルの援助の動員に成功したことを歓迎し、全ての援助国に対し迅速に支払いを完了するよう求める。地中海及び中東のために、サミット参加国、更にはIMF及び世界銀行により多大の援助が供与されている。

  2.  我々は、無差別及び開放貿易の原則を基礎とした、この地域における経済協力の強化がその被害を回復させ政治的安定性を強める上で役立ち得ると信じる。我々は、この地域の他の国々に資金援助を与えるとの主要石油輸出国の計画、及び湾岸開発基金を創設するとのこれらの国による決定を歓迎する。我々は、国際開発金融機関とアラブその他の援助国との間のより緊密な繋がりを支持する。このことは、必要な経済改革を促進し、資金フローの効率的な利用を助長し、民間部門の投資を育成し、貿易の自由化を促し、また、我々の技術面での技能や専門知識を活用することとなる共同プロジェクト、例えば水管理に関するものを促進すると我々は信じる。


開発途上国及び債務

  1.  開発途上国は、ウルグァイ・ラウンドを含め国際経済体制において益々建設的な役割を果たしつつある。多くの国は、政策の大胆な改革を導入するとともに、以下の原則を採用しつつある。

    (a) 人権及び法の尊重。このことは、各個人が開発に貢献することを促進する。
    (b) 民主的多元主義及び国民に責任を負う開かれた行政制度。
    (c) 開発を持続し人々を貧困から脱却させるための健全かつ市場に基礎を置く経済政策。

     我々は、これらの国を賞賛し、他の国に対しその例に倣うよう求める。良い統治は、国内の開発を促進するのみならず、外部からの融資及び全ての資金源からの投資を引きつけることに役立つ。

  2.  我々が開発途上国を助けるとの確固たる約束を行うことは、我々の経済の息の長い、インフレなき景気回復及び市場の開放と相俟って、開発途上にある世界の繁栄を高めるための我々が有する最も有効な方法である。

  3.  これらの多くの国々、とりわけ最貧国は、その開発努力を支えるために我々の資金的及び技術的援助を必要としている。開発の優先課題に対する我々の援助の量及び質の双方を拡充するために、追加的な援助努力が必要とされる。これらには、貧困の軽減、保健、教育及び訓練の向上、並びに援助の環境面での質の向上が含まれる。我々は、持続的進歩のための戦略を考案するに際し、人口問題に一層の注意が向けられつつあることを支持する。

  4.  アフリカは、我々の特別の注意に値する。健全な経済政策、民主主義、及び責任の確立に向けてのアフリカの各政府の前進は、成長の見通しを明るくしつつある。このことは、民間部門の発展を促進し、地域統合を奨励し、譲許的資金フローを供給し、及び債務負担を軽減することに焦点を当てた我々の継続的支援により助長されている。世界銀行により調整されアフリカの20を超える国々の経済改革に対する支援を提供しているアフリカ特別プログラムは、その価値が証明されつつある。我々は、深刻な飢餓に直面しているアフリカの地域に対し人道的援助を供与し、この援助をより効果的なものにするために国連機構の改革を勧奨する。我々は、また、自然のものか内戦により引き起こされたかを問わず、飢餓その他の緊急事態の根底にある原因を関係国が除去する手助けを行う。

  5.  アジア・太平洋地域においては、東南アジア諸国連合(ASEAN)及びアジア・太平洋経済協力(APEC)の加盟国を含む多くの経済が引き続き力強い成長を達成している。我々は、新たな国際的責任を担いつつあるこの地域のこれら経済による努力を歓迎する。他のアジア諸国は、改革努力を強化しつつあるが、引き続き外部からの援助を必要としている。

  6.  中南米については、我々は、真正な経済改革の実施における進捗及び地域統合の進展に意を強くしている。我々は、他の努力と相俟って直接投資、より自由な貿易及び逃避資本還流に適した環境醸成の手助けとなっている中南米支援構想の下で、多国間投資基金に関する検討が継続していることを歓迎する。

  7.  我々は、新債務戦略の下で達成されている進捗に満足の意をもって留意する。いくつかの国は、民間銀行の債務削減又はそれと同じ効果を有する措置と組み合わされた強力な構造調整から既に利益を得ている。我々は、銀行に対し重い債務を負っている他の国々に対して、類似のパッケージにつき交渉するよう勧奨する。

  8.  我々は、以下のことに留意する。

    (a) ポーランド及びエジプトに対する債務削減又はそれと同じ効果を有する措置に関しパリ・クラブで達成された合意。これは、例外的な事例として取り扱われるべきである。
    (b) いくつかの低中所得国の特別な状況に関するパリ・クラブによるケース・バイ・ケースでの継続的な検討。

  9.  最貧重債務国は、極めて特別の条件を必要とする。我々は、トロント方式で既に与えられている債務軽減をかなり上回る、これらの国に対するケース・バイ・ケースでの追加的な債務軽減措置の必要性につき同意する。従って、我々は、これらの措置を適切かつ迅速に実施し得る方法につき引き続き検討するようパリ・クラブに対し要請する。

  10.  我々は、開発途上国に対する適切な新規資金フローの必要性を認識する。我々は、維持不可能な水準の債務を回避するための適切な方法は、直接投資と逃避資本の還流を引きつけるための強化された政策を開発途上国が採用することであると信じる。

  11.  我々は、IMFの役割が鍵であることに留意する。IMFの資金は、第9次増資及びそれに関連付けられた第3次協定改正の早期実施により拡充されるべきである。


環  境

  1.  国際社会は、今後10年間に環境面での重大な挑戦に直面する。環境の管理は、引き続き我々の優先課題である。我々の経済政策は、この惑星の資源の利用が維持可能なものであり、現在及び将来の両世代の利益を保護するものであることを確保すべきである。拡大する市場経済は環境保護の手段を最も良く引き出し得る一方、民主的な制度は適切な責任体制を確保する。

  2.  環境に対する考慮は、その経済的費用を反映するような方法で政府の政策全般の中に統合されるべきである。我々は、OECDが行っているこの分野における貴重な作業を支持する。この作業は、環境面での加盟国の実績についての系統的審査及び政策決定において用いられる環境指標の開発を含む。

  3.  国際的には、我々は、環境問題に対処するための協力的取組みを国際的に開発しなければならない。先進国は、自ら範を示し、もって開発途上国及び中・東欧諸国がその役割を果たすよう勧奨すべきである。地域的な問題についても協力が必要である。この関連で、我々は、南極大陸の環境保全の強化を目的とした南極条約環境議定書につき意見の一致を見たことを歓迎する。我々は、サハラ・サヘル観測所及びブダぺスト環境センターの順調な進捗に留意する。

  4.  1992年6月の国連環境開発会議(UNCED)は、画期的な出来事である。環境に関する数多くの国際的な交渉は、ここで最高潮を迎える。我々は、会議の成功のため努力し、必要な政治的弾みをその準備に与えることを約束する。

  5.  我々は、UNCEDの開催までに以下のことを実現するよう目指す。

    (a) 適切なコミットメントを含み、温室効果ガスの全ての排出源と吸収源を対象とする気候変動に関する効果的な枠組み条約。我々は、条約を補強する実施議定書に関する作業を促進するよう努める。全ての参加国は、温暖化への適応を容易にする措置を含め温室効果ガスの純排出量を制限する具体的な戦略を策定し実施することを約束すべきである。先進国による顕著な活動は、交渉に不可欠な開発途上国及び東欧諸国の参加を促進する。
    (b) あらゆる種類の森林の管理、保全及び持続可能な開発のための原則についての、枠組み条約に繋がる合意。これは、熱帯林が生育する開発途上国にとり受入れ可能であるとともに、我々がヒューストン・サミットで定めた森林に関する国際的取決め又は合意の目的に合致する形のものであるべきである。

  6.  我々は、UNCEDとの関連で以下のことを促進するよう努める。

    (a) 開発途上国による環境問題への取組みを助けるための資金の動員。我々は、既存のメカニズム、特に地球環境ファシリティー(GEF)をこの目的で利用することを支持する。GEFは、開発途上国が新たな環境条約の下でその義務を来たすことを手助けする包括的な資金供給メカニズムになり得よう。
    (b) 商業的メカニズムを活用した、環境面で有益な技術の開発途上国への一層の普及の促進。
    (c) 地域的な海域を含む海洋に対する包括的取組み。海洋の環境的及び経済的重要性は、海洋が保護され持続的に管理されなければならないこを意味する。
    (d) 特にシエナ・フォーラムの成果を活用した、環境に関する国際法策定の進展。
    (e) 今後10年間における国連環境計画(UNEP)を含む環境に関係する国際機関の強化。

  7.  我々は、可能であれば来年締結される、受入れ可能な生物学的多様性に関する枠組み条約つき、UNEPの支援の下で交渉することを支持する。この交渉は、生物工学の前向きな発達を妨げることなく、特に、種の豊富な地域における生態系の保護に焦点を当てるべきである。

  8.  我々は、引き続き熱帯林の破壊に懸念を有している。我々は、ヒューストン・サミットを受けて示された協力の申し出に応えてブラジル政府が世界銀行及びEC委員会との協議のうえ準備した、ブラジルの熱帯林保全のための試験プログラムの策定に進捗がみられたことを歓迎する。我々は、EC委員会と協力して、経済的、技術的、社会的問題に十分な注意を払いつつ、かつ、適切な政策の枠組みの中で、世界銀行の支援の下での緊急な作業を一層進めることを要請する。我々は、民間部門、非政府機関、国際開発金融機関及び地球環境ファシリティーを含むあらゆる可能な資金源を活用して、試験的プログラムの予備的段階の実施を資金的に支援する。我々は、プログラムの詳細が固まった段階で、実地において進展が図られるよう、これらの資金を二国間援助で補完することを検討する。我々は、このプロジェクトにおける順調な進捗がUNCEDにおける森林の取扱いに有益な影響をもたらすことになると信じる。我々は、また、森林に重点を置いた債務・環境交換の普及を歓迎する。

  9.  湾岸における油井の炎上と海洋汚染は、環境上の大規模災害を防止しこれに対処する国際的な能力を高めることが必要であることを示した。国際海事機関(IMO)における合意を含むこの目的のための企ての国際的、地域的合意が十分に実施に移されるべきである。我々は、環境緊急援助のための試験的センターを設立するとのUNEPの決定を歓迎する。我々は、バングラデシュにおける最近の暴風雨の被害に鑑み、アルシュ・サミットで我々が要請した世界銀行の支援の下での洪水被害軽減のための作業を奨励する。

  10.  乱獲その他の有害な慣行により脅威にさらされている海洋生物資源は、国際法に従った措置の実施により保護されるべきである。我々は、効果的な監視と実施措置を通じた、海洋汚染の規制及び地域漁業機関により樹立された制度の遵守を求める。

  11.  我々は、環境科学・技術面の協力において、特に以下のことにつき一層の努力を要請する。

    (a) 宇宙衛星による監視及び海洋観測を含む、地球の気候に関する科学的調査。開発途上国を含む全ての国がこの調査努力に参画すべきである。我々は、地球観測データの利用者向け情報サービスにおけるヒューストン・サミット以降の進展を歓迎する。
    (b) 革新的技術計画の提案を含む、エネルギー・環境技術の開発と普及。


麻  薬

  1.  我々は、ヒューストン会合以降のこの分野における進捗、とりわけ1988年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約の発効に満足の意をもって留意する。我々は、国連麻薬統制計画(UNDCP)の発足を歓迎する

  2.  我々は、総合的な麻薬撲滅行動計画の一環として麻薬に対する需要削減のための努力を強化する。我々は、コカインの惨禍と闘う努力を継続し、欧州及びアジアにおいて依然として主要な中毒性麻薬であるヘロインに対して一層の注意を向けることによってこれに見合う努力を行う。アジアにおけるへロイン生産を削減しその欧州への流入を阻止するために、協力を強化する必要がある。中・東欧における政治的変化と国境の開放は、麻薬濫用の危険を増大させ不正取引を助長する一方、麻薬と闘うための欧州全体の協調的行動の余地を拡大した。

  3.  我々は、麻薬の生産と不正取引の問題に注意と資源を集中するための、欧州、北米及びアジアの政府からなる「ダブリン・グループ」の努力を賞賛する。

  4.  我々は、従来のサミットで創設され、益々多くの国に支持された作業部会の業績を賞賛する。

    (a) 我々は、全ての国に対し、資金洗浄に対する国際的な闘いに参加し、金融活動作業部会(FATF)の活動に協力するよう求める。我々は、資金洗浄に関するFATF勧告の各参加国による実施の進捗振りを相互に評価する過程についての合意を強く支持する。我々は、OECDによる事務局の提供を得てFATFが継続的に活動すべきであるとのFATF勧告を支持する。
    (b) 我々は、化学物質作業部会(CATF)の報告を歓迎するとともに、1988年の麻薬の不正取引に対する国連条約を踏まえ化学物質の流用に対抗するためにCATFが勧告した措置を支持する。我々は、ヘロインに焦点を当てたアジアでの特別会合、及びCATFの活動の制度的将来を検討する1992年3月に予定されるCATF会合の開催を待望する。

  5.  我々は、人と物の合法的な移動を妨害することなく麻薬の不法な移送を取り締まる法執行機関の能力の向上に関心を有している。我々は、関税協力理事会(CCC)に対し、この目的のために国際貿易・輸送業者の団体との協力を強化し、次回サミットまでに報告書を作成するよう懇請する。


移  民

  1.  様々な政治的、社会的及び経済的要因による世界的な移民圧力に対し懸念が増大しつつあるものの、移民は、適切な条件の下では、経済的・社会的発展に貴重な貢献をしてきており、また、そうした貢献をし得る。我々は、OECDがこれらの問題に一層の注意を向けつつあることを歓迎するとともに、将来のサミットでこれらの問題を再び取り上げることを希望するかもしれない。


次回会合

  1.  我々は、1992年7月にドイツのミュンヘンで次回サミットを開催することについてのコール首相の招待を受諾した。
 
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