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10 ロンドン サミット

ロンドン経済宣言(仮訳)

1984年6月9日

  1.  我々主要先進7ヵ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会委員長は、第10回年次経済サミットのため、連合王国首相マーガレット・サッチャー閣下の招きにより1984年6月7日より9日までロンドンに参集した。

  2.  これらの会議の主要な目的は、各国元首及び首相が一堂に会し、我々の国及び世界が経済面で如何なる問題を抱え、展望を持ち、機会を与えられているかについて話し合えるようにすることにある。我々は、各々の立場と考え方について一層良く理解し合うのみならず、我々の政策目標につき広汎な合意に達することができた。

  3.  1983年ウイリアムズバーグでの前回会合において、我々は、既に世界不況からの回復の明らかな兆しを読みとることができた。この回復は、今や我々の国において定着しているとみることができる。これは、近年サミット諸国及びその他の地域において、インフレを鎮静化すべく払ってきた堅実な努力の結果であるという意味において、過去の回復に比してより健全な基礎に立ったものである。

  4.  しかし、この回復の持続のためには不断の努力が必要である。我々は、持続的成長及び新たな雇用創出の基盤を強化するため、現在の好機を最大限に活用しなければならない。我々は、景気回復の恩恵を、先進国のみならず開発途上国、就中、世界経済の持続的成長にどの国にも増して受益する立場にあるより貧困な国々に対しても、広く及ぼしていくことが必要である。高金利、並びにインフレの一層の低下及びインフレ期待の鎮静化の失敗は、景気回復を危険にさらすこととなりかねない。我々をここまで導いてきた節度ある金融・財政政策は、今後も維持され、又必要な場合には強化されなければならない。我々は、以上の諸目的と諸政策に対する我々の政府の約束を再確認する。

  5.  我々は、我々のすべての国において、公共支出に対する負担が増大していることを少からず懸念している。公共支出は、我々の国民経済が負担しうる限度内にとどめておかねばならない。我々は、これらの諸問題に対して、各国政府及び経済協力開発機構(OECD)等の国際機関が関心を強めていることを歓迎する。

  6.  我々の国における失業率が依然高いことに鑑み、我々は、持続的成長と新たな雇用の創出の必要性を強調する。我々は、先進諸国の経済が需要及び技術変化に対応して順応、発展していくようにしていかなければならない。我々は、積極的な職業訓練政策をとり、労働市場における硬直性を除去することを促進すると共に、より多くの新たな雇用が、とりわけ若年層に対して、永続的に創出されるような条件づくりを行わねばならない。我々は、国際貿易制度を拡充し、資本市場を自由化する必要がある。

  7.  我々は、開発途上国が表明している懸念と、これらのうち多くの国が直面している政治的経済的諸困難に意を用いている。我々の前に横たわる一つ一つの問題についての討議において、我々は、先進国と開発途上国の間の相互依存関係を認識した。我々は、開発途上国との関係を善意と協力の精神に基づいて取り進めて行く意向であることを再確認する。このため我々は、各国大蔵大臣に対し開発途上国にとっての特段の関心事となっている国際金融上の諸問題について、かかる討議の場としてふさわしく、かつ広汎な諸国を代表しうる世銀開発委員会において集中的に討議することの可能性につき考慮するよう要請した。

  8.  多くの開発途上国における債務負担に対処するための我々の戦略において、国際通貨基金(IMF)は鍵となる役割を果たしてきており、この目的のために同基金の資金は拡充されてきている。債務国は、自国の経済政策の調整には辛く果敢な努力が要請されるにもかかわらず、その必要性を次第に受け入れるに至っている。世界景気の回復と世界貿易の拡大傾向の下で、この戦略は、今後依然として起こりうる諸問題に国際金融制度が対処することを引き続き可能にしていくであろう。しかし、国際的金利水準の高まりや一層の上昇は、債務国の問題を悪化させるのみならず、この戦略の継続を一層困難にしかねない。このことは、我々の政策が、金利低下につながるものであるとともに他国に与える影響をも考慮に入れたものであることの重要性を如実に示すものである。

  9.  我々は、従って、次のことに合意した。

    (1)インフレ率及び金利を低下させるため、並びに通貨供給量の伸びを管理し必要な場合には財政赤字を削減するための諸政策を引き続きとり、必要な場合にはこれを強化すること。
    (2)次の諸施策によって、新たな雇用の創出に対する障害の削減に努めること。
    • 進取の精神に富んだ中小企業を含め、需要及び技術変化に対応した産業とサービスの発展を促進すること。
    • 労働市場の効率的な作用を促進すること。
    • 職業訓練の改善及び普及を促進すること。
    • 就業時間のパターンの柔軟化を促進すること。
    • 老朽化していく生産設備及び技術を温存する措置を手控えさせること。
    (3)経済の変化がどのような原因から生じ、如何なる形態をとるかについての理解の増大並びに経済効率の向上と成長の増進とりわけ、技術革新の促進、技術変化を社会が一層広く受け入れるようにする努力、基準の統一化及び労働力、資本の移動の促進によるものに関し、OECDをはじめとする適当な国際機関における作業を支持し強化すること。
    (4)政府開発援助及び国際開発金融機関を通じる援助を含め、開発途上国、就中最貧国に対する資金の流れを維持し、可能な限りこれを増加すること。民間投資に対する開発途上国の門戸が一層開かれることを促進すべくこれら諸国と協力すること。並びにこれら諸国において資源を節約し食糧及びエネルギーの国内生産を高めるための実際的措置を奨励すること。我々の一部は、一次産品共通基金の発足をも希望している。
    (5)関係諸国との協力の精神に基づいて、債務問題についての戦略を確認し、これを引き続き柔軟性をもってケース・バイ・ケースに実施し発展させること。我々はこれまでの進展を顧みて、以下の点に特別の重要性を置く。
    • 政治的及び社会的諸困難に然るべき配慮をしつつ、債務国が所要の経済及び財政金融政策の変更を行うことを支援すること。
    • IMFは、これまで債務問題の処理に適切に対応してきたが、この過程におけるIMFの中心的役割を促進すること。
    • IMFとIBRD(国際復興開発銀行)の間の一層緊密な協力を促進し、中・長期に亘る開発を促進するに当ってのIBRDの役割を強化すること。
    • 債務国が自国の状況を改善するために成果のある努力を自ら払っている場合には、民間債務のより多年度にわたる繰り延べを奨励し、又、適切な場合には、政府及び政府機関に対する債務に関しても同様に交渉を行う用意をもって臨むこと。
    • 長期直接投資の流れを促進すること。先進諸国が開発途上国の輸出に対してその市場を一層開放することが必要であるのと同様に、開発途上国の側においても先進国からの投資を促進することによって自らの状況を改善することができる。
    • 短期銀行貸付を、より安定かつ長期的な直接及び証券投資により代替させることを促進すること。
    (6)各国大蔵大臣に対し、為替レート、監視(サーベイランス)、国際流動性の創出、管理及び配分並びにIMFの役割を含む国際通貨制度の運用を改善するための方途に関する現行の作業を緊急かつ徹底的に推進するよう求めるとともに、早い時期におけるIMF暫定委員会の会合において討議すべく、1985年の前半に現段階の作業を完了すること。特別引出権(SDR)の新規配分の問題については、1984年9月にIMF暫定委員会により再検討される。
    (7)ヴェルサイユ及びウイリアムズバーグにおいて合意したところの、低いインフレと高い成長へ向けての経済情勢の調和の多角的監視(モニター及びサーベイランス)手続を進めること。
    (8)主要諸国における節度ある政策、国際金融機関に対する十分な資金の流れの供給、及び先進国の資本市場への国際的なアクセスの改善により、国際金融制度の運用と安定性の改善に努めること。
    (9)先進国、開発途上国を問わずすべての貿易国に対し、依然として続いている保護主義圧力を排除し、貿易障壁を削減し、製品、一次産品及びサービスの国際貿易の自由化及び拡大のためあらためて努力することを呼びかけること。
    (10)他の貿易国と協力して、現行の貿易自由化プログラム、就中1982年ガット作業計画の完了を急ぐこと。国際機関におけるサービス貿易に関する作業を前進させること。先進国、開発途上国を問わず、すべての経済にとっての相互の利益のために、多角的貿易交渉の新ラウンドが開放された多角的な貿易体制の強化のために重要な貢献を行うことにつき1984年5月のOECD閣僚理事会で得られた合意を再確認すること。並びに、1982年のガット作業計画に立脚しつつ、新交渉ラウンドのありうべき目的、取り組み方及びタイミングに関して早い時期に決定を行うべき他のガット加盟国と協議すること。

  10.  我々は、アフリカのいくつかの地域における貧困と旱魃という危急の問題に大きな懸念を有する。我々は、世界銀行により準備されているアフリカのための特別行動計画を非常に重視している。この計画は、対アフリカ支援のための国際社会の共同の努力に新たな推進力を与えることとなろう。

  11.  我々は、湾岸情勢の一層の悪化が石油供給に対して与えうる影響につき検討した。我々は、現在使用可能な世界の石油備蓄、他のエネルギー源の利用可能性、エネルギー消費節約の可能性に鑑み、国際協力と相互に支援しあう行動を通じて、相当の期間にわたり十分な石油供給を維持しうることに満足している。我々は、その目的に向けて引き続き共同して行動する。

  12.  我々は、東側諸国との経済関係が有する安全保障上及びその他の意味合いについて、並びに、適当な機関において本件につき作業を続けることの必要性について、引き続き意見の一致が見られることに賛意をもって留意する。

  13.  我々は、ヴェルサイユ経済サミットで設立された「技術、成長及び雇用に関する作業部会」により行われた報告及び18の協力分野における進展を歓迎し、同作業部会に対し、一層の作業を行い、次回経済サミット迄に個人代表に報告することを求める。我々は、また、技術革新と新たな雇用の創出とのテーマの下で1985年にイタリアで開催される国際会議へのイタリア政府の招請を歓迎する。

  14.  我々は、環境問題の国際的広がりと、経済発展における環境要因の役割を認識する。我々は、環境政策に責任を有する各国大臣に対し、継続的な協力の分野を明らかにするよう求めた。加えて、我々は、「技術、成長及び雇用に関する作業部会」に対し、現在迄に何が行われてきたかを検討し、大気、水及び土壌の環境汚染の原因、影響及び抑制手段に関し既存の知識では不十分な分野について具体的な研究対象分野を明らかにすること、及び、環境の損壊を軽減するための費用効率的手法を開発するために、如何なる産業協力プロジェクトが可能かを明らかにするよう求めることを決定した。同作業部会は、これらの事項に関し、1984年12月31日までに報告することを求められている。その間、我々は、1984年6月24日から27日までミュンヘンで開催される環境に関する国際会議へのドイツ連邦共和国政府からのいくつかのサミット参加国に対する招請を歓迎する。

  15.  我々は、1984年3月に国際交流基金によって開催された「生命科学と人間に関する箱根会議」についての中曽根総理大臣の報告に感謝し、1985年に第二回会議を開催するとのフランス政府の意向を歓迎する。

  16.  我々は、有人宇宙基地が、経済の強化と生活の質の向上を導く技術開発に刺激を与える種類の計画であると信ずる。このような宇宙基地は、各国の計画又は国際計画の枠組の中で打ち上げを行うべく、我々のいくつかの国において研究されている。これに関連して、我々のいずれの国も、米国大統領から他のサミット参加国が米国の有人宇宙基地の開発について受けた慈篤かつ思慮深い参加招請を注意深く検討するであろう。我々は、米国が、上記計画への各国の参加状況につき次回サミットで報告する意図を有していることを歓迎する。

  17.  我々は、明年再び会合することに合意し、ドイツ連邦共和国におけるこの会合の開催についての連邦首相の招待を受諾した。


    ランカスター・ハウスにおいて
    1984年6月9日

 
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