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森総理議長内外記者会見

 2000年7月23日(13:00~13:30)、国際メディアセンター議長会見場で森総理(議長)が九州・沖縄サミット首脳会合に関する内外記者会見を行ったところ概要以下の通り。

(総理冒頭発言)

 九州・沖縄サミット首脳会合の終了に際して、議長の自分よりご報告申し上げる。
 今回のサミットは故小渕前総理が万感の思いを込めて沖縄開催を決定したことに基づくものである。故総理の気持ちを受けて今日まで様々な面でご協力ご努力を頂いた稲嶺県知事をはじめ沖縄の皆様のおかげで、21世紀を迎えるに相応しいサミットとすることができた。心からお礼申し上げる次第である。
 またサミット開催の前後を通じ、休むことの無い24時間体制でサミットの報道にあたられた全世界の報道陣の皆様にも敬意を表する次第である。
 私達G8の首脳は、この沖縄の地で、21世紀が平和と希望に満ちたものとなり、人々が一層の繁栄を享受し、心の安寧を得、より安定した世界に生きられるために、どのようなことをして行かねばならないか、活発で実り多い議論を続け、この目的のために最大限の努力をすることで一致した。私は議長として参加首脳の意見のとりまとめに全力をもってあたり、21世紀の世界と我が国の進路を切り開くべく、全力を尽くした。この記者会見を通じて内外の皆様にサミットの成果につき私から報告をさせていただきたい。
 本日は、この記者会見の場に、多くの子供たちも参加してくれている。君たちが生き抜いていく21世紀が良いスタートを切れるように、今の社会に責任を持つ大人達が何をすべきか、今回のサミットでG8はいくつかの約束をした。若い世代の皆さんにも是非このことに耳を傾けていただきたい。
 サミットは、25年の歴史の中で、民主主義、市場経済、人権が世界に広がるように努めてきた。苦悩の世紀でもあった20世紀から、21世紀が人間の尊厳に満ちた世紀となるためには、すべての人が等しくこの普遍的価値を享受できるようにならなければならない。
 さて、今次サミットでの議論の成果は、皆さんのお手元に配布されているコミュニケに反映されている。
 G8議長として、私は、21世紀を形作る最も強力な力の1つとなるITを主要テーマの一つとして位置づけた。
 ITがもたらす利益を最大のものとし、これを万人が享受できるようにするためには何をなすべきか、途上国と先進国との間の情報格差を如何に解消するかといった点を中心に議論を行った。その結果をとりまとめ、全世界的な参加を呼びかけたものが、ITに関する「沖縄憲章」であり、この憲章が今後の世界経済の発展にとって、重要な役割を果たすものと期待している。
 我が国は、ITを経済発展のための起爆剤とするため、関連ルールや情報通信ネットワーク等の環境整備や必要な規制改革を迅速に行う。また、対外的には、先般打ち出した、今後5年間で150億ドル程度を目途とする包括的な協力策を通じた国際協力等を積極的に推進して行きたいと考えている。
 同時に、途上国の開発なしに世界の一層の繁栄は得られない。東アジア・東南アジアの過去40年にわたる飛躍が示すとおり、開発途上国が貧困削減を実現するためには成長とそれによって得られた富の衡平な分配を達成することが必要です。現在、12億人もの人間が1日1ドル以下の生活を送っている現実を、改めなければならない。
 途上国において、開発の努力を大きく阻害するものに、人々の病いがある。そこで、感染症対策のために、国際社会は、明確な目標を掲げ、先進国、途上国の政府、企業、NGO、国際機関などあらゆる関係者を含めた「新たなパートナーシップ」を確立していくことが必要である。我が国は、途上国の開発に係る諸問題の解決に引き続き指導力を発揮し、感染症及び関連分野での協力を強化することとし、今後5年間で30億ドルを目途とする協力を行っていく予定である。
 また、昨年ケルンで合意された拡大重債務貧困国イニシアティブの迅速かつ効果的な実施が必要である。このためには、先進国やIMF・世銀などの国際機関が一層の努力を行うとともに、債務国自身による貧困削減戦略の策定・実行も重要である。
 貿易の分野では、WTOを中心とする多角的貿易体制の利益を途上国が一層享受できるよう支援を強化するとともに、今年中の幅広い新ラウンドの立ち上げについて、我々の努力を倍加していくことにつき合意を得た。
 さて、経済的に繁栄がもたらされても、一人一人の人生が幸せでなければ意味はない。従って、第二の議題である、「より深い心の安寧」を実現するために、グローバル化の進展に伴い人々に不安を与えている犯罪、高齢化、食品安全等様々な問題に取り組む。
 犯罪に国境がなくなり、新しい脅威が生じている。このため国連国際組織犯罪条約の早期採択が重要である。ハイテク犯罪の分野では、政府と産業界との対話の促進を改めて呼びかけたいと思う。
 また、多くの市民の生活を破滅させているのが薬物であり、中でも覚せい剤である。薬物の乱用を撲滅するために、具体的な国際協力を着実に積み重ねていく。
 犯罪対策を考えるに当たっては、犯罪の被害者に暖かい配慮をしていかねばならない。私達は、市民社会とも協力しつつ、犯罪に巻き込まれかねない社会的弱者への対策についても、真剣に考える必要がある。
 また、沖縄の皆さんから見ればごく当たり前かもしれないが、お年寄りが積極的に社会に参画することの重要性を、日本で一番長寿県であるここ沖縄で打ち出した。
 食品安全については、今回の会合で科学的検討の促進や開発途上国、市民社会を交えた対話の強化について共通の理解を得た。今後この問題について国際的コンセンサスを構築するための道筋を示すことができたと考える。
 しかし、繁栄も心の安寧も、紛争があっては根底から崩れてしまう。なればこそ、「より安定した世界に向けて」を今次サミットの第三の議題とし、紛争を予防すること、軍縮や不拡散・軍備管理に取り組むことの大切さを訴えたのである。私達は「予防の文化」の下で包括的に紛争予防に取り組んで行くことに合意した。そうした中で、南北朝鮮の首脳会談は、アジアの平和と安定のためにきわめて大きな前進であり、まさに歴史的な出来事である。このような動きを全面的に後押ししていくことで私達は一致した。中東和平交渉についても、この歴史的交渉が成功するよう、私達は、これを支援していく。
 開発の問題を含め、山積する世界の問題は、G8だけでは解決できないことは論を待たない。私達は、G8に参加していない国々とも協力したいと思う。他の国際機関や、NGOとも協力したいと思う。
 そして、私達は、人々の声に耳を傾け、全ての国の老若男女が参加するコミュニティーを一緒に築いていきたいと考える。
 サミットの前から、私達は多くの人々に耳を傾けてきた。このために、当時の小渕総理がUNCTAD10に先進国側唯一の首脳として参加されたことはご承知の通りであり、私自身も、四月に宮崎で太平洋・島サミットを主催した。また、世界の労働組合の代表の方々や、NGOの方々とも話をし、有益な意見交換であった。このような様々な意見は、今後のサミットの在り方を考える上で大変貴重なものであったとして、各国首脳から大変高い評価を頂いた。
 今回のサミットの際には、途上国を代表する機関・グループにおいて責任ある立場にあるナイジェリア、南アフリカ、アルジェリアの大統領、タイの首相、さらに世界銀行総裁、世界保健機関事務局長、国連開発計画総裁ほかとも事前にお会いした。こうした意見交換を通じて、21世紀が60億の人々すべてのものであるということを、共に確認しあった。
 さて、私達は、アマート首相からの、来年の会合をイタリアのジェノヴァで開催したいというご招待を喜んでお受けした。
 「志を継承」していくこと、これがサミットに参加する私たちリーダーの義務でもある。「志を継承」することが、より良い世界を築いていくことにつながると信じる。
 また、私から、今次サミットの直前に開催された高校生サミットに参加するためG8各国から集まった高校生から、来年も是非サミットを開催したいという希望が出ていたので、これをアマート首相に紹介した。アマート首相からは、是非検討していきたいということであったので、高校生サミットに参加されたみなさんに報告したい。
 冒頭にも申し上げたが、今回のサミットを成功裏に終了させるにあたり、本当に多くの方々の助力を頂いた。特に、サミットの成功を県を挙げて支えてくださった沖縄県民の皆様、さらにはボランティアとして手弁当で駆けつけてくださった方々の助力を頂いた。今も会場に来る途中に雨の中黄色いシャツを着た方々が交通整理をしてくださっていた。昨日も首里城に向かう途中の道筋にも多くの方々が暑い中で、警察官と一緒に交通整理にあたってくださっていた。本当に頭の下がる思いであった。酷暑の中で、敢然と警備を担当された方々、警察、自衛隊、海上保安庁、消防庁、そして多くの県民、市民の皆様、心から皆様が何らかの形で、サミットの成功に尽くしてくださった全ての方々に、心から感謝申し上げたい。
 御清聴ありがとうございました。

(質疑応答)

(問)
 今回のサミットは朝鮮半島に関する特別声明が採択され、各国の首脳からも北朝鮮の最近の姿勢を評価する意見が出された。そうした中で韓国の金大中大統領は、先に総理に対して北朝鮮との首脳レベルでの意思疎通が重要だというアドバイスがあったと聞いている。今月26日には初めて日朝外相会談が予定されているが、首脳レベルでの対話についてはどう考えているか。日朝国交正常化交渉をどう進めていくかを含めてお答え願いたい。

(総理)
 先般、金大中(キム・デジュン)韓国大統領から訪朝された後のご報告が電話であり、その中でいろいろと示唆に富むお話を頂いた。今後の対北朝鮮政策を展開していくにあたっては、金正日(キム・ジョンイル)総書記との意思疎通を効果的に行っていくことが極めて、極めて重要であると認識している。
 現時点において、日朝首脳会談といったことを具体的に検討しているわけではないが、自分と金正日(キム・ジョンイル)総書記との意思疎通を図っていく上で、最も効果的な方法につき、引き続きよく検討していきたい。国連ミレニアム・サミット時の対応については、しばらく先のことでもあり、それに先だってまもなく日朝外相会談も行われるので、その時点で日朝国交正常化交渉を含む日朝間の諸問題の進展具合がどうなっているかを十分に見極めつつ検討していきたい。
 一昨日の夜、サミットの席で、プーチン大統領からも北朝鮮訪問についての報告があった。そのときのプーチン大統領のご印象も、私が金大中韓国大統領から伺った話と極めて共通した点があり、その意味でたいへん参考になるご意見をたくさん頂き、感謝している。今後そういったご意見等も十分に踏まえながら、日朝国交正常化が少しずつでも前進させる努力を傾けて参りたい。

(問)
 今回のサミットでは、デジタル・ディバイドを埋める必要性については多くが語られたが、インフラの格差という問題もあると思う。多くの途上国、アジアも含めてITを活用することができるようになるまでには、例えば、発電、送電、電気通信網のために多くの資金を投じなければならない。日本は今後の6ヶ月間の「ドット・フォース」の議長として、150億円の資金供与に加えてインフラ格差を埋めるためにさらなる資金供与を行い、リーダーシップを発揮するべきではないか。

(総理)
 ITは民間主導で発展する分野であり、今回の日本のイニシアティブを含め、いわゆる公的部門としての政府の役割は、もっぱら民間の積極的な取組に対して、政策面あるいは人材育成等を中心に、補完的な協力を行うことがまず第一義であると考える。こうした協力を進めるにあたっては、各途上国におけるIT関連の政策分野全般を視野に入れつつ、世銀をはじめとする国際機関との連携をはじめ、グローバルな取組が基本となる。
 我が国が打ち出した協力策は、こうした点に的確に対応すべく、ODA及び非ODAの公的資金協力、知的支援や人材育成等の多様な政策的手段を、柔軟かつ有機的に組み合わせた、包括的なものとなっており、途上国におけるIT普及の促進に大きく資する内容となっている。
 また、今回のサミットにおいて創設されたタスクフォースを通じて、民間部門、国際機関等との連携のもと、G8各国による国際的な情報格差の解消に向けた取組は、一層強化されていくものと考えている。

(問)
 昨日の日米首脳会談について、普天間基地の代替施設の15年使用期限問題については、クリントン大統領からは言及がなかったが、米政府と今後どのように協議していくのか。

(総理)
 普天間飛行場の代替施設にかかる使用期限の問題については、昨日の日米首脳会談において、私より日本政府としての立場を説明したのに対し、クリントン大統領より、「在沖縄米軍を含む在日米軍の兵力構成等の軍事態勢についてはSACOの最終報告及び1996年の日米安保共同宣言を踏まえ日本側と緊密に協議をしていきたい」旨のお答えがあったところである。これを踏まえ、今後とも、昨年末の閣議決定に従い、国際情勢の変化に対応して、本代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢につき、米国政府と協議していく考えであり、あわせて国際情勢が肯定的に変化していくよう外交努力を積み重ねていく考えである。

(問)
 在日米軍兵による最近の不祥事に関し、日米首脳会談において、クリントン大統領が謝罪した旨の報道が日本プレスでなされ、これに対しホワイトハウス筋は否定しているが、大統領ははっきりと謝罪を行ったのか。

(総理)
 日米安保条約に基づく米軍が、世界の平和、時にアジア、日本等の安全にプレゼンスを持っていることは日本国民も評価しているところ。しかし今指摘があったようなことが行われていることは、せっかくの隣人としての立場にもとるものであり、綱紀粛正も含め大統領としての指導をお願いしたい旨自分から申し上げた。これに対し大統領よりは、極めて遺憾であり、大変申し訳ないことでもあるし、恥ずかしいことだとの話があり、良き友人、良き隣人としては皆さんと協力していけるような関係を保持していくことが大切であるとの考えを述べておられた。

(問)
 米軍普天間飛行場の移設問題について、米国政府は普天間代替施設の15年使用期限について拒否している。しかし沖縄県知事は海上ヘリ基地案につき否定している。いわゆるSACO合意を見直さない限り、整理縮小は進まないのではないかと考えるが、総理はどのような見通しを持たれているか。沖縄の痛みというものをどう受け止めているか、総理の率直な考えをお伺いしたい。

(総理)
 (昨日の日米首脳会談は)時間は限られていたので、細かな話し合いを行う余裕はなかった。やりとりはさきほど申し上げた通りだった。平和の礎で大統領がスピーチを行ったことを自分は大変感動的に受け止めた。アメリカ大統領が、沖縄の県民の前で、平和の礎の前で講演をされたことが本当に重要であると、小渕前総理の思いをいたし、感動的に受け止めた。自分より大統領には、よき隣人として沖縄の問題について沖縄の県民の多年の希望につき、自分も努力したいし、あなたにも努力してほしいと申し上げた。大統領は、よく日本側の意見も第一に沖縄の大地に足を踏み入れることができて本当によかったと、昨晩の首里城での晩餐会でも、今日の別れ際の挨拶でも「沖縄に来られてよかった」と言っておられた。自分からは沖縄の人々に対するそういった気持ちを大事にお持ちいただきたいと思う、自分もこの問題については努力するが大統領もぜひ一緒に努力してほしい、と大統領に申し上げた。



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