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IT革命の経済・金融面への影響
G7蔵相から首脳への報告
(2000年7月8日 福岡)


[仮 訳]

目 次

パラグラフ

1-2
A. マクロ経済への影響と政策にもたらす意義  3-12
 生産性の上昇と需要の拡大 3-6
 マクロ経済政策  7-10
 構造政策 11-12
B. 金融分野へのインプリケーション  13-23
 IT革命の金融サービスへの影響 14-15
 金融監督・規制 16-21
 金融ビジネス特許  22-23
C. 税及び税関手続き  24-28
 電子商取引と税 24-27
 税関手続 28



IT革命の経済・金融面への影響
(G7蔵相から首脳への報告)<仮訳>

  1. 我々7ヶ国の蔵相は、情報技術(IT)革命の進展が、世界経済において、生産性を向上させ、潜在成長力を上昇させ、より高い生活水準を促す主要な力となる可能性が高いことに留意した。ITの果実が我々の社会によって速やかに享受され、不平等の拡大につながらないようにするため、各国は適切なマクロ経済政策及び構造政策を行わなければならない。

  2. 本報告書において、我々は、IT革命のマクロ経済への影響、その政策にもたらす意義、及び金融取引や税制に関連する課題に焦点を当てた。

A.マクロ経済への影響と政策にもたらす意義

 生産性の上昇と需要の拡大

  1. ITの影響は、まだ初期の段階にあり、その正確な時期、性格及び強さを予想することは難しいものの、我々は、ITが各国経済の潜在成長力を上昇させる可能性を有することを認識する。ITによってもたらされる生産力の上昇は、IT関連の産業にとどまらず、経済全体に及ぶであろう。まず、IT革命は、活発なIT関連投資を促すことにより、資本ストックの増加率を高め得る。このような投資は、より高度なIT技術が資本に組み込まれることにつながり、従って資本の質も向上させる。より重要な点として、IT革命は、企業内外での情報の伝達及び共有の迅速化を通じて、資本と労働の組み合わせを抜本的に変え、ビジネスの進め方を効率化し、企業組織の再編成を促進し、これらの相乗効果をもたらし、このようなことから、資本と労働という個別の要素には帰せられない生産性の上昇を導く(全要素生産性)。例えば、仲介業の必要性が減少し、在庫管理が効率化され、そして、グローバルにネットワーク化された企業間(B-to-B)市場を通じた原材料の調達やアウトソーシングが可能になる。

  2. 上記のような供給面に加えて、IT革命は、IT関連投資の拡大、IT関連サービスへの需要の増加、企業対消費者(B-to-C)の電子商取引や電子金融取引などを含む消費者向けの新たなサービスの発達を通じて、経済の需要面にも影響を与えるであろう。特に、インターネットにより可能となった企業と消費者の間の双方向の情報の流れによって、新たな需要や新たなビジネス機会が生まれ得る。また、IT関連の投資やサービスは、利用者数の増加に伴って便益が飛躍的に増大するという「ネットワーク外部性」や、市場の規模拡大に伴ってコストが低下し、利益が増大する「収益逓増(increasing returns to scale)」の性質を有しており、これらが更なる需要の増大をもたらす可能性がある。

  3. このように、供給面における潜在成長力の上昇と需要の拡大がともに進展する結果、ITはより力強い成長に資することができる。また、多くの技術革新と同様、ITは一定の職種における雇用の減少をもたらす一方、IT関連のビジネスで新たな雇用を生む。全体として、より力強い成長により、雇用に対するプラスの効果を期待することができる。

  4. IT革命はまだ始まったばかりであることに鑑みると、過去の重要な基幹技術(general-purpose technologies)と同様、長い時間をかけて経済全体へ広範かつ根源的な影響を及ぼしていく可能性がある。既に、潜在成長力に対する重要な効・が現れている国もあるが、IT革命を享受するペースについては各国の間に差がある。ITのような重要な革新により、自動的に生産性の向上や生活水準の上昇が得られると考えるのはまさに誤りである。ITの便益を享受するためには、その前提として健全な政策や、強固である一方柔軟で開放的な経済が不可欠である。

 マクロ経済政策

  1. 我々は、各国経済がITのもたらすメリットの可能性を最大化するための政府の最も重要な役割は、民間セクターの創造性や企業家精神(entrepreneurship)が発揮されるための環境を整えていくことであることに同意する。この観点から、我々は、健全なマクロ経済政策が、引き続き、あるいは一層不可欠なものとなっていることを強調する。成長及び安定を重視したマクロ経済環境は、投資を刺激し、企業や消費者が将来の計画を確信を持って行い、ITの提供する機会を生かすことに資するものである。

  2. IT革命は、マクロ経済政策が行われる環境をより複雑かつ不確実なものにするという面もある。IT革命の初期の段階では、生産性の上昇及びその潜在成長力への影響を評価する作業はより複雑になる。同様に、金融市場のパフォーマンスを測る伝統的な方法はかつてほどうまく適用できないようになり、それが投資判断において適切にリスクと収益を評価することをより困難にしている。このような不確実性の増大は、政策決定者がマクロ経済政策の運営を調整し、インフレなき持続的な成長を促進する上で直面する選択をより複雑なものにする可能性がある。我々は、政策を形成する際に、これらの事実に注意し続ける必要がある。

  3. 更に、資本が容易かつ迅速に国境を越えて移動し得るますますグローバル化した経済においては、各国がIT革命に適応している程度の違いが大規模な資本移動につながり、各国の間の経済パフォーマンスの相違を更に拡大する可能性がある。そのような相違やそれに引き続く資金移動は、安定的かつバランスの取れたマクロ経済状況を促進する上で、更なる課題をもたらし得る。従って、各国がIT革命の便益を享受するペースを均等にしていくことは、我々の経済の間でバランスの取れた成長パターンを促進することに貢献する。

  4. より長期的には、IT革命は、電子金融取引や電子マネーが我々各国の経済の主要な要素になるにしたがって、貨幣総量(monetary aggregates)とその金融政策の実施における役割、及びより一般的に金融システム全体の安定性に対して影響を与えるかもしれない。

    構造政策

  5. 我々は、ITからの果実を最大化する活発な民間活動のための環境を整え、また、人々がITのもたらす機会からの恩恵を公正かつ広範に分け合うことができるようにするためには、構造政策が重要であることに同意する。この観点から、我々は、以下のような構造政策の必要性を強調する。

      a) 競争及び主要なIT関連産業への新たな参入を促進するため、障害となっている規制の撤廃を継続していくこと。
      b) 労働市場の適応性の向上を図ること。再訓練や学習の機会は、労働者が新しい、より高賃金の職業へうまく移動することを助ける。
      c)  新技術の普及を促進し、新しい環境の中での競争を確保するため、適切な競争政策等を整備すること。
      d)  開放的な貿易システムを維持すること。

    我々は、必要な構造改革に資するとの観点から、公的資源の配分にあたっては、効率性と質の確保が重要であることに留意する。.

  6. 金融市場が、強固で、安全かつ柔軟な方法で、資金を最も生産性の高い用途に振り向けるように整備されることも非常に重要である。新しいビジネスや投資機会の資金ニーズに応えるためには、適切に資本の需給をマッチさせ、リスクの分散や再配分を行う金融システムが不可欠である。技術革新をリードし、また、その技術を最大限活用していこうとする創業期の企業には、リスク・テイク及び企業ガバナンスの観点から、透明性が高く深みのある資本市場が特に大きな意義を持つであろう。

B.金融分野へのインプリケーション

  1. 我々は、金融分野においても、インターネット上における金融取引を始めとして、 様々な変革が進展しつつあることを認識する。政府が、この革新による効率化や利 便性の向上を最大化する適切な環境の整備に努めていくことが重要である。

 IT革命の金融サービスへの影響

  1. 金融分野は、情報やデータというデジタル化されやすいものを扱う産業であるた め、ITの影響を最も受けているとともに、その利用が最も進んでいる分野の一つで ある。具体的には、金融分野においては、IT革命により以下のような変化が起きて いる。

      a) 電子金融取引においては、スピーディ、低コスト、広範囲のコミュニケーションを特徴とするインターネットの活用により、飛躍的な取引コスト削減と顧客利便の向上が可能になっている。
      b) 電子金融取引は、時間的・距離的制約をなくして、越境取引を容易にし、地球規模での顧客に対してサービスを提供することを可能にしている。
      c) 伝統的な金融サービス間の垣根を越えるサービスを含む「仮想総合金融モール」、消費者が一ヶ所で自らの金融取引についての総合的な情報を得ることを可能にする「情報統合(aggregation)」など、新たな金融サービスの提供が可能になっている。
      d) この他、IT革命やグローバル化、あるいはこれらに伴う競争的環境の中で、リスクのアンバンドリング、ディリバティブ取引の発達、異業種から金融業への参入など、革新的な動きが見られる。

  2. 我々は、電子金融取引、特に業者対顧客(BtoC)の取引は、インターネットを中心 としたオープン・ネットワークを通じて行われることから、取引の安全確保、消費 者保護、プライバシーなどとの関連で、多くの課題をもたらすことに留意する。

 金融監督・規制

  1. 我々は、金融の規制・監督は、利用される技術に対して中立的であること(technology neutral)を旨としつつ、上記のような電子金融取引の特性に対応していくことが必要であることを認識する。その目的は、民間の主体性を損なうことなく市場の公正性を維持することにあるべきである。

  2. 消費者が電子金融取引の安全性に信頼を持つことが重要である。我々は、コンピューターへの不正侵入(hacking)を防止するためのシステムの開発、データの安全性を確保するための暗号や電子署名の使用を奨励するべきである。さらに、我々はインターネット上の信頼性の高い決済制度の整備を確実にする必要がある。クレジット・カードなど既存の決済制度の安全性は引き続き重要である。

  3. 電子金融取引における消費者保護については、現在金融サービスの利用者が享受している保護の水準が引き続き確保されることが重要である。一般投資家へのディスクロージャー、勧誘・販売時の説明及び情報提供、顧客への書面交付、紛争解決などの分野におけるルールは、ルールの適用の仕方を調整する必要はあろうが、インターネット上で行われるビジネスにも適用されるべきである。また、個人に関する情報の移転が極めて容易になることから、プライバシー保護の政策を強化することが必要である。

  4. 我々は、各国の現状も踏まえつつ、金融規制に係る原則の策定や執行面での国際的協調を進展させなければならない。我々は、この観点から、電子金融取引の監督・規制に関する原則やガイダンスの策定に関して、バーゼル銀行監督委員会、IOSCO(証券監督者国際機構)、IAIS(保険監督者国際機構)が行っている作業を歓迎する。我々は、今後、以下の理念に沿って、上記機関による更なる作業が行われることを慫慂する。

      a) 電子金融取引などの取引の態様を問わない、一貫性のある監督・規制
      b) より複雑なビジネス環境における透明な監督・規制と、新たな展開の実情に不断に適応していく柔軟性
      c) 健全性に関するリスクを生じさせない範囲内で、技術革新を不当に抑制することなく、電子金融取引の潜在的可能性を促進
      d) 電子金融取引の特性に即した取引の安全と利用者保護
      e) 越境取引等の増加に応じた監督当局間の連携の強化

  5. 我々は、FSF(金融安定化フォーラム)において、将来のあり得べき作業の基礎と して、電子金融取引の金融の安全性への影響等を含めた論点整理が行われているこ とを歓迎する。

  6. 金融機関の経営陣及び取締役は、電子金融取引の発展から生じるリスク及び課題を 理解する必要がある。金融規制・監督当局者も、新たな進展に対処するために必要 な知識及び能力を持つようにしなければならない。この観点から、我々は、我々の 関係当局に対し、監督官をIT関連の知識及び能力に関して訓練するための手法及び 方法を向上させ、十分な監督資源(supervisory resources)がこの問題に用いら れるようにすることを求める。我々は、途上国における規制・監督官の育成への技 術支援についても考慮すべきである。

 金融ビジネス特許

  1. コンピューターやインターネットを通じた金融技術の革新に伴って、金融サービス の分野においても、いわゆるビジネスモデル特許の取得が増えている。我々は、金 融におけるITの発達によって、金融ビジネス特許についての政策が金融市場におけ る革新や競争にとって意味を持ちうることを認識する。ビジネスモデル特許の取扱 いについての共通の理解を促進するとの観点から、国際的な取組みが必要である。

  2. この点に関して、我々は、現在行われている我々の特許専門家によるビジネスモデ ル特許についての共同作業を歓迎し、更なる発展を期待する。我々は、我々の金融 専門家に対し、我々の特許当局と会合し、お互いに関心を有する問題が国際的なレ ベルで扱われているかどうか、またどのように扱われているか、及び本分野におい て国際協力がどのように進展しているかについて議論するよう要請した。

C.税及び税関手続

 電子商取引と税

  1. 我々は、IT革命、中でも電子商取引の発達は、以下に述べるような変化を通じて税 制や税務行政に重要な影響を及ぼすことを認識する。

      a) 取引のデジタル化‐‐‐映像や音楽のオンライン配信などのいわゆる「デジタル財」や情報サービスなどの分野で革新的な提供手段を可能としている。
    また、電子的に情報を記録する手段が幅広く利用されるようになることにより、企業活動の効率性が高まる一方、改ざんが容易になる可能性がある。
      b) 取引仲介者の減少‐‐‐電子商取引により、しばしば取引仲介者が不要となるので、課税上のモニタリングや納税のための機会が減少する。
      c) 国際化の更なる進展‐‐‐グローバルでオープンなインターネットを通じて、各国の課税管轄をまたぐクロスボーダー取引が大幅に拡大する。

  2. 我々は、OECD租税委員会報告書「電子商取引:課税の基本的枠組み」において明ら かにされている、以下のような電子商取引への課税問題の主要な要素の重要性に留 意する。

      a) 公共サービスの提供に関する市民の正当な期待に応えるために必要な歳入をもたらす公正で予測可能な税制を執行する責務と比較考量しつつ、電子商取引が繁栄する税務環境を提供しなければならない。また、情報技術を最大限活用することにより納税者サービスの向上に努めるべきである。
      b) 電子商取引にも、中立・公平・簡素等の伝統的な租税原則があてはまる。 現段階においては、既存の課税ルールによって、電子商取引についてもこのような租税原則を適用することができる。既存のルールについて何らかの調整が必要とされる場合があるかもしれないが、それは電子商取引と従来型の取引とを取引形態により差別するものであってはならない。

  3. 我々は、OECDにおいて、以下の3点を中心に検討が行われていることに留意する。

      a) 効率的で実効ある税務行政をいかに確保するか‐‐‐電子商取引は目に見えない、匿名性の高い方法で取引が行われ得る。税務行政による取引情報へのアクセスを従来型の取引の場合に比して劣らないレベルに確保する必要がある。
      b) 所得課税に係る既存の国際ルールを電子商取引にいかに適用すべきか‐‐‐電子商取引は経済活動の国際化をますます進めることから、「恒久的施設」や課税上の所得分類などのOECDモデル条約上の概念を電子商取引にどう適用するかについての明確化が必要である。
      c) クロスボーダーのオンライン取引への消費課税をいかに考えるべきか‐‐‐消費税は消費が行われた場所で課税されるべきである。この消費地課税原則を実際に適用するにあたり、消費地の定義、徴収のための仕組みについて検討が行われている。

  4. 我々は、電子商取引の課税問題について、OECD租税委員会において民間実務家や非 OECD加盟国の貢献を得つつ検討が進められていることを認識している。我々はこの 作業を支持し、OECD租税委員会が検討作業をさらに進めることを奨励する。

 税関手続

  1. 税関手続に関し、我々は、電子的な税関申告の標準化及び簡素化への取り組みに関 する税関業務の専門家の報告を了承する。我々は彼らに対し、他の国々及び機関の 参加を奨励するとともに実施に向けた作業計画を策定すること、及び、貨物の引き 取りの際、税関及び他省庁から要求されるデータを貿易業者が一括して提出できる 「シングル・ウィンドウ」システムを構築するための手段を講じることを求め、そし て、これらによって改正京都税関規約に規定されている情報技術の活用の原則を実 現することを求める。


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