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G8森林行動プログラム(仮訳)実施進捗状況報告書

個別報告書
欧州委員会

I. はじめに

 EU(欧州連合)の各種条約等には包括的な共通森林政策に関する規定がない。しかしながら森林の運営、保全、持続可能な開発は、共通農業政策、農村開発、環境、貿易、域内市場、研究、産業、開発協力、エネルギー政策のような既存の共通政策と重要な関係がある。さらにEUは毎年、森林の保全や持続可能な開発に相当の予算を拠出している。また欧州委員会は以下に記すように国際的な森林レジームやG8森林行動プログラムに積極的に参画している。

II. モニタリングと評価

 EUの森林面積全体1億3千万ヘクタール(脚注1)のほとんどは、通常の森林経営計画・実施というサイクルの枠組みの中で管理されている。これらの定期的な森林管理計画は、樹木ごとの森林調査のほか、林業の経済的社会的環境的機能に関する定期的な分析や評価を基礎としている。欧州諸国で広く行われている国家森林資源調査は、正確なデータを得るために資料採取(サンプリング)理論に基づいており、森林の特質を幅広く加味している。このように、運用データの有効性が高められている。最近ではこうした国内の森林資源を調査することにより森林の炭素量を見積もるのに必要な基盤を提供している。

 欧州林業情報通信システム(EFICS)は、汎欧州の持続性の基準・指標をもとに、こうした国内森林資源の質や比較可能性を高めることを目的としている。また貿易、産業をはじめ林業分野の雇用環境問題や、地域の森林政策、国家林業プログラムに関する情報収集も行う。

 EUやEU以外の欧州諸国では、大気汚染と火災が森林に及ぼす影響を評価する2種類の追加的な調査が実施されている。過去12年間、森林の樹冠状況について毎年モニタリングと報告が行われてきた。1997年には2万8000カ所で63万5000本の樹木を対象に調査が行われた。このサンプルでは樹冠の落葉の度合いが、森林の成長や安定に自然や人間が及ぼす悪影響を示す指標となっている。モニタリング区域を860ヵ所にしぼったサブ・サンプルでは、当該場所の変質度と大気中の沈殿がモニタリングされ、土壌や組織、成長についての分析が行われる。このようなサンプル形式により、欧州の森林状態とその1年ごとの展開(脚注2)をモニタリングできるだけでなく、少なくとも森林衰退の主要な原因を評価することも可能になる。

 森林火災に関する地域情報システムを整備することにより、汎欧州レベルで、また地中海諸国全域でモニタリング、評価、優先事項の設定ができるようになる。

 欧州委員会は持続可能な林業をモニターし評価する基準と指標を策定したヘルシンキ・プロセスに参画している。そして持続可能性という目標を達成するための実践用のガイドラインが最近出された。

 域外でも広く認められているEUのリモートセンシング・プログラムと関連データベース(TREES)により、あらゆる熱帯林について100メートルの分解能での定期的かつ本格的な調査ができる。調査の結果は将来、機関ユーザーやパートナーが利用できるようになる。ほかにもEUは多数の海外開発協力プロジェクトを支援している。これらのプロジェクトは特にモニタリングと評価に重点を置くか、あるいはその目的に沿った構成要素を一つは含んでいる。1997年以来、EUは300万ユーロを拠出してアフリカ・カリブ・太平洋諸国連合にある大きな森林のモニタリング・評価プロジェクトを支援してきた。

III. 国家森林プログラム

 IPFによると、国家森林プログラム(NFP)は「森林の計画や実施、森林関連活動を含む森林に関わる問題と取り組むために国家が活用するプロセス」と理解されている。EUには共通森林政策という義務がないので正式な「EU森林プログラム」はない。

 しかしながら、共通農業政策、地域結合政策のほか森林保護政策の枠組みや生息地指令のような他の環境関連手段の中に記された規制をはじめ森林に関係するEUの手段はたくさんある。ある程度NFPにも匹敵するプロセスを活用して成果を得たEUは最近「欧州連合の森林戦略」を採択した。欧州委員会は現在「森林と開発に関するコミュニケーション」と「EUの森林を基盤とする産業とその関連産業のグローバルで持続可能な競争力に関するコミュニケーションについての最終的な協議を行っている。

 欧州内で、欧州委員会は決議H1(欧州の持続可能な森林管理ガイドライン)とH2(欧州の森林の生物多様性保全ガイドライン)の策定・採択に参画してきた。両決議は、欧州における持続可能な森林経営を向上させるために国家がイニシアチブを取る上で必要な枠組みを定めるものである。この結果、欧州諸国の多くは森林に関する政策、戦略、法制化について練り直したか、または現在見直しを行っている。欧州森林研究所は欧州におけるNFPの策定と実施に関する調査結果をつい最近公表した。

 最近出された農村開発支援に関する理事会規定は、既存の国家的・準国家的森林プログラムまたはこれに相当するプログラムの規定に林業対策財政支援をリンクさせている。

 EUはその開発協力の範囲内において、NFPのための能力向上を目的として数多くのプロジェクトを支援している。1997年以後、約300万ユーロが充てられてきた。「森林と開発に関するコミュニケーション」にはNFPを策定するための財政支援に関する規定がある。

IV. 保護森林地域

 EUは汎欧州プロセスのヘルシンキ決議とリスボン決議に同意した。決議H1.6とH2.6は署名国に対し生態学的に脆弱な森林地域、極相、一次林を保護し、そうした特殊な森林の生態網を確立することをコミットさせている。決議L2には、そうした森林の持続可能な経営の基準などが規定されている。

 「バード」「ハビタット」指令とよばれる2つの理事会指令は、動植物と生息地を守り、欧州で「ナチュラ2000」という保護地域のネットワークを構築するのがねらいである。ナチュラ2000は欧州理事会が作成した域外との「エメラルド・ネットワーク」ともリンクしている。ナチュラ2000には最終的に、欧州で関心をもたれている全生息地から代表となるサンプルを含めることになるが、その中には多数の森林地域がある。現在、EU加盟国からどの地域を含めるかについての提案が出されているが、森林生息地が多い。ナチュラ2000は2004年までに確立される見込みで、その重要性はEU森林戦略の中で具体的に言及されている。さらに欧州委員会の「欧州社会の生物多様性戦略に関するコミュニケーション」では森林に特別な1章を割いている。

 EUはまた、「ライフ・ネイチャー」というプログラムを通じて保護森林地域に財政支援をしている。さらに欧州の森林生物多様性をモニタリング・評価するための指標について研究するプログラム「ベア」もある。またコストアクションE4のねらいは、自然林と森林保護地域に関する研究の促進である。

 最近の「コミュニケーション」にも述べられているように、保護森林地域は「森林と開発」に対するEUのアプローチの一つである。そのような構成要素をもつものも含めて、保護地域に関する林業プロジェクトは数多い。1992年以来、年間約2000万 ユーロがこの目的のために拠出されている。

V. 民間セクター

 EUの森林地域の66%は、そのほとんどが、1100万を越える民間所有者が管理している小規模な私有林である。森林は社会経済的・環境的に重要な機能をもち、田園風景や人々の暮らしにとっても不可欠な要素となっている。それだけにEUの農村開発政策においても重要な位置を占める。さらにEUは、加盟国の補助制度の枠内で森林経営・保全に財政支援を行っている。財政支援の対象としては、植林、既存の森林の改良、種苗場の設置・整備、植林による土壌と水質保全、火災など災害後の再植林、森林道路などのインフラ、林産物のマーケティングと加工、森林所有者協同組合への出資などがあげられる。

 1993年から98年までの間に私有地・公有地あわせて85万ヘクタールに植林が実施された。植林のペースは早まっている。1993年以来、年間約3億ユーロが拠出されている。域外支援プロジェクトでは年間約30万ユーロが拠出され、民間の林業を支援している。

 森林経営の認証や林産物の分類は森林政策の手段であり、主に林業の民間・工業セクターに関係がある。これまでEUは、認証に係わる組織に補助金を出したり、認証に関するいくつかの主要な研究を委託することなどにより、域内で支援を行ってきた。開発協力に関しては、持続可能な森林経営の原則にしたがって熱帯林から生産された木材の、認証制度整備・充実が支援の主なテーマの一つである。

VI. 違法伐採

 EU域内の森林に関しては、違法伐採はそれほど大きな問題ではない。しかしながら多国籍企業は、違法な伐採や取り引きをしているとしばしば非難されている。この問題に関するNGO(非政府組織)からの訴えに対して、欧州委員会は最近、この件に関するNGOの役割に強い支持を示した。さらに、新しい「森林と開発に関するコミュニケーション」は、特に、規制の範囲外で操業する多国籍伐採企業の問題に対処するために、世界的に適用するルールを用いることに支持が得られると予想している。ECがその資金の多くを拠出している、ブラジルの熱帯雨林に関するパイロット・プロジェクトでは、州レベルでの具体的な伐採規制の構成要素が含まれている。コンゴ盆地など他の多くのプロジェクトも、少なくともある程度は、この解決に時間を要しいつまでも続く問題と取り組んでいる。

脚注1. EUの森林における平均立木体積は1950年代の85立方メートルから90年代には132立方メートルに増加した。年間伐採量は、年間平均増加分1ヘクタールあたり4.5立方メートルの約70%しかない。

脚注2. 1998年、欧州にある樹木の64%に葉の脱落がみられ、4分の1はふつうまたは著しい程度の葉の脱落だった。


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