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G8サミット 「持続可能な開発」へ行動を
川口順子(私の視点)


2002年06月25日 朝刊 015ページ オピニオン1 写 1434字


 26、27の両日、カナダのカナナスキスで主要国首脳会議(G8サミット)が開かれるが、その主要議題の一つに開発を巡る問題がある。今年は、92年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)から10周年に当たる。8月に南アフリカのヨハネスブルクで開かれる「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(環境開発サミット)では、これからの10年に向けて更に前進するために建設的な議論をする必要がある。
 地球サミットが「持続可能な開発のための人類の行動計画」いわゆるアジェンダ21を策定して以来、国際社会は「持続可能な開発」の実現に向けて取り組んできた。環境面では、気候変動に関する京都議定書や遺伝子組み換え産品等の安全に関するカルタヘナ議定書が成立するなど一定の成果があった。しかし、グローバル化の負の側面として所得の格差はむしろ拡大しており、課題は依然多い。
 今月上旬のバリ最終準備会合は、政府間合意として目標実現に向けた行動を定める「サミット実施計画」の仕上げを目指していた。日本の主張する循環型社会の構築、科学技術を活用した環境保全の促進といった環境分野の合意形成は進んだが、援助の増大や途上国にとっての市場の確保、援助を受ける側の「良い統治」を巡る議論が紛糾し、実施計画を完成できなかった。とりまとめには強い政治意思が必要である。あと2カ月に迫った環境開発サミットを成功させるため、私は三つの提案をしたい。 第一に、環境開発サミットでは文書づくりにこだわるあまり、全体のプロセスが滞っては残念だ。いま求められているのは、今世紀の初めに世界の首脳が定めた「ミレニアム開発目標」を始め、これまでに合意された事柄を着実に実行していくことだ。そのために焦点を絞った議論をすべきだ。
 第二に、世界が共有すべき哲学として、私は、すべての国・主体が「戦略」「責任」そして「経験と情報」を分かち合う「グローバル・シェアリング(地球規模の共有)」という新たなパートナーシップを提唱したい。「ミレニアム開発目標」の戦略を共有し、責任を分かち合い、互いの知見を共有して行動しようという考え方である。その際、途上国自身の主体的な取り組み(「オーナーシップ」)が協力の前提になる。日本は途上国の自助努力を支援するために人材育成を重視してきている。特に「教育」は社会の構成員一人一人が自助努力を始めるための基盤である。この認識に立って20日、小泉首相は「成長のための基礎教育イニシアチブ」とともに、低所得国に対する今後5年間、2500億円以上の支援実施を発表した。
 第三に、非政府組織(NGO)との連携を促進したい。地球サミットの際に増して政策形成の面でのNGOの役割は重要だと思う。日本は、環境開発サミットの準備段階でNGOの役割を重視し、準備会合に向けてはNGOの提言を参考に対処方針を作成してきた。バリ会合では、NGOとの対話を緊密にするためNGO担当大使を任命した。サミットではNGO代表も政府代表団メンバーになってもらう。国や企業、NGOといった主体が自由にパートナーシップを組んでプロジェクトを実施するという、新しい協力の試みに市民社会各層の積極的参加を期待したい。
 カナナスキスのG8サミットでは、具体的行動を志向する論議を期待したい。日本としても、その議論を踏まえ、ヨハネスブルクでの環境開発サミットの成功に向けて更に努力したい。

(かわぐち・よりこ 外相)

(2002年6月25日付朝日新聞)川口外務大臣及び朝日新聞社に無断で転載することを禁じます。


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