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16 ヒューストン サミット

経済宣言(仮 訳)

1990年7月11日

  1.  我々主要先進民主主義7ヵ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会委員長は、年次経済サミットのためヒューストンで会合し、世界の随所に見られる民主主義の再生を祝福した。我々は、多党制民主主義の広まり、自由選挙の実施、表現及び集会の自由、人権尊重の高まり、法の支配、並びに開放的で競争的な経済の原則についての認識の高まりを全面的に歓迎する。これらの出来事は、人類の奪うことのできない権利、即ち人々が自由に選択する時、人々は自由を選択するということを高らかに宣明している。
  2.  欧州において起きている深遠な変革は、他の地域における民主化への進展と相挨って、個々人が専制や抑圧から逃れ、経済的及び政治上の願望を実現する機会のより多い世界に向け大きな希望を与えるものである。
  3.  我々は、自由と経済繁栄とが密接に結びつき相互に補強し合うものであることを十分承知している。持続可能な経済繁栄は、競争による刺激と企業的精神の奨励、即ち、個々人の創意工夫に対する誘因、基本的人権が保護されている意欲ある熟練労働者、健全な通貨制度、開放的な国際貿易・決済制度並びに将来世代のための環境保全に依拠する。
  4.  我々は、世界各地で、他の国の人々が経済繁栄と政治的自由とを達成し、維持することを援助する決意である。我々は、我々の経験、資源及び善意を通じ彼らの努力を支援する。


国際経済情勢

  1.  近年、健全なマクロ経済政策と経済の一層の効率化を通じて世界経済の強化促進に大幅な進展が見られた。8年目に入った我々の経済の拡大は、国際貿易が急速に成長する過程で、顕著な所得拡大と雇用創出を支えてきた。しかしながら、多くの国で失業が高水準にとどまっている。インフレは、1980年代初期に比べ相当低いとは言え、いくつかの国では深刻な懸念材料であり、引続き警戒を要する。対外不均衡は、米国及び日本では縮減されたが、他の国では拡大した。対外不均衡を引続き調整することは、保護主義圧力を抑え、金融・為替市場における不確実性を軽減し、金利への圧力を回避するための優先課題である。国内の健全なマクロ経済政策は、各国の状況により異なるものの、一層の対外調整に大幅に貢献する。
  2.  開発途上地域においては、1980年代後半の経験は様々であった。いくつかの経済は、特に東アジアにおいて、継続的に目覚ましい国内成長率を達成してきた。他の多くの開発途上経済は、停滞ないし後退した。にもかかわらず、経済調整及び市場指向的政策を実施するための真剣な努力が、いくつかの国では新たな指導者の下で、良好な成果を生じ始めており、このような努力は今後も継続されるべきである。


国際金融面での進展と政策協調

  1.  サミット諸国は、経済の相互依存が進展する時期に、市場指向的政策の必要性及び健全な国内財政・金融政策の重要性についての共通の評価に基づき協調プロセスを進展させた。このプロセスは、為替市場における協力を含む経済政策の多角的監視と緊密な協調に注意を集中することにより、世界経済パフォーマンスの強化と為替レートの一層の安定に重要な貢献を行った。国際通貨制度の機能を改善し、その安定に貢献するため、このような協調的で柔軟なアプローチを継続し、また、適当と認められる場合には、これを強化することが重要である。
  2.  現在の経済成長を、すべての国に恩恵をもたらすよう持続するため、各国は健全な政策を追求しなければならない。生産能力の拡大を伴う均衡のとれた需要の拡大が鍵であり、対外不均衡及び構造的硬直性は改める必要がある。物価上昇圧力には引続き警戒が必要である。
  3.  経常収支の巨額の赤字を抱える国は、財政赤字の削減により調整プロセスに貢献するとともに、民間貯蓄を助長し、競争力を強めるための構造改革を実施すべきである。
  4.  大幅な対外収支の黒字を有する国は、成長と調整の基礎となる諸条件を改善し、貯蓄との対比で投資の増大を図るための構造改革を伴った、国内需要のインフレなき成長を維持することにより調整プロセスに貢献すべきである。
  5.  世界全体としての投資需要は、特に中欧・東欧及び市場改革を実施中の開発途上国、更には一部先進国において先々拡大すると見込まれる。このような需要に応えるため、先進国、開発途上国は等しく、貯蓄を促進し、負の貯蓄を抑制すべきである。
  6.  中欧・東欧経済の市場指向的構造調整は、これら経済の成長を刺激し、世界経済への統合を促進する。我々は、これらの変化を支持し、このような困難な変革が、世界の成長と安定に貢献することを確保するよう努める。
  7.  欧州共同体においては、欧州通貨制度が高度の経済の統合と安定を導いている。我々は、経済・通貨統合に関する政府間会議の発足に関する欧州共同体の決定及び経済・通貨統合の第一段階に留意する。この第一段階の間に経済・通貨政策の一層の監視及び協調を行うことは、インフレなき成長及びより強固な国際経済体制の実現に資する。
  8.  我々は、差別的制約のない、完全な主権を有する民主的な統一ドイツ実現の見通しを歓迎する。ドイツの経済・通貨・社会同盟は、インフレなき世界経済の成長及び対外不均衡の縮小に貢献する。このプロセスは、中欧・東欧における好ましい経済発展を促進する。
  9.  我々は、国際通貨基金(IMF)加盟国に対し、第9次増資の下でクォータを50%増加し、債務履行遅滞国対策を強化するとのIMF合意を実施するよう求める。


経済効率化のための施策

  1.  経済効率向上のための改革によるマクロ経済政策の補完が、過去2~3年間に相当進展を見せた。我々は、欧州共同体における域内市場実現に向けた進展、並びに構造的硬直性を減少させるために継続されている北米及び日本の努力を歓迎する。にもかかわらず、我々は、小売業、電気通信、運輸、労働市場及び金融市場のような分野で規制の改革と自由化を進めるとともに、産業及び農業の補助金を削減し、税制を改善し、教育と訓練を通じ労働力の技能を向上させるための一層の措置が幅広く必要であることを強調する。
  2.  我々は、構造政策における課題と選択肢を明らかにした経済協力開発機構(OECD)の多大の貢献を歓迎する。我々は、OECDに対し、監視と審査の手続きを強化し、その作業を運営面で一層効果的なものとする方法を見出すよう奨励する。


国際貿易体制

  1.  開放的な世界貿易体制は、経済繁栄にとって決定的に重要である。強化されたガット(関税と貿易に関する一般協定)は、貿易の拡大並びに中欧・東欧及び開発途上国の世界経済へのより完全な統合に、安定的な枠組みを提供するために不可欠である。我々は、あらゆる形態の保護主義を拒絶する。
  2.  ウルグァイ・ラウンドの結果が成功を収めることは、国際経済の最優先課題である。従って、我々は、本年末までにウルグァイ・ラウンドのすべての分野で大幅かつ実質的な成果を達成するために必要な、困難な政治的決定を行う決意であることを強調する。我々は、交渉担当者に対し、貿易交渉委員会7月会合までに進展を得るよう、特に最終パッケージの輪郭すべてに合意するよう指示する。
  3.  我々は、交渉の重要な基本目標、即ち、農業政策の改革、市場アクセス改善のための実質的かつ均衡のとれたパッケージ、強化された多角的規則及び規律、サービス、貿易関連投資措置及び知的所有権の新分野のガットの枠内への包摂、並びに開発途上国の国際貿易体制への統合に対する我々の強い支持を確認する。
  4.  農業に関しては、農業政策改革の長期目標の達成が、農業物貿易の一層の自由化を可能とするために極めて重要である。供給過剰の原因となりがちな農業政策はコストが高いことを経験は示している。農業に関するガット交渉の成果により、需要と供給のより良い均衡がもたらされ、農業政策が国際市場の効果的な機能を阻害しないよう確保されるべきである。従って、我々は改革の長期目標、即ち、市場のシグナルが農業生産に影響を与えるようにすること、及び公正で市場指向的な農業貿易体制を構築することに対するコミットメントを再確認する。
  5.  こうした目標の達成は、我々それぞれが国内制度、市場アクセス及び輸出補助金にわたる支持と保護の相当程度の漸進的削減を行うとともに、検疫及び衛生措置を規律する規則を策定することを必要とする。農業支持の制度が各国間で様々であるのは、農業の社会的及び経済的条件の違いを反映している。それゆえ、農業交渉は、一つの共通の計測手法を含み、すべての国の間で衡平な形でなされたコミットメントにつき規定し、食糧安全保障についての関心を考慮する枠組みの中で行われるべきである。この枠組みは、参加国が、共通の計測手段の適切な使用又は他の方法により、内国支持を削減するのみならず、関連した形で輸出補助金及び輸入保護をも削減するとの具体的な保証を含まねばならない。
  6.  貿易交渉委員会の7月会合の時までにこのような枠組みにつき合意することは、ウルグァイ・ラウンド全体としての成功裡の終結にとり決定的に重要である。よって、我々は、我々各国の交渉担当者に対し、交渉を強化する手段として農業交渉グループ議長により提出された案文を推す。我々は、高度の個人的な関与を維持するとともに、本交渉の結果が成功を収めることを確保するために必要な政治的リーダーシップを発揮する所存である。
  7.  市場アクセスに関する交渉は、実質的かつ均衡のとれた措置のパッケージを達成すべきである。繊維に関しては、明確な日程に従って、貿易障壁を漸進的に除去すること並びに強化されたガット規則及び規律に基づいてガットに統合することを通じて、繊維・衣料分野を自由化することを目標とする。
  8.  多角的規則と規律に関する交渉は、セーフガード、国際収支理由に基づく輸入制限、原産地規則、ダンピング及びアンチ・ダンピング措置に関する改訂された規律などの分野でガット規制を強化すべきである。補助金に関しては、貿易の歪曲、補助金競争及び貿易摩擦を回避すべく国内補助金を効果的に規律する規則が必要とされる。改善された規律は、相殺措置が貿易に対する障壁とならないよう相殺措置についても適用されなければならない。
  9.  新分野に関しては、いかなる分野もアプリオリに除外されることのない契約関係に基づき、実施可能なサービス貿易自由化の規則の枠組み、貿易関連投資措置の貿易歪曲効果を削減するための合意、並びにすべての知的所有権の基準及び効果的執行を規定する合意を含め、ガットの枠組みの中に新たな規則と手続きを策定することが目的である。
  10.  ウルグァイ・ラウンドの成功は、先進国及び開発途上国の双方にとり不可欠である。我々は、ラウンドヘの開発途上国の可能な限り広範な参加と、これら諸国の多角的貿易体制への一層の統合を目指す。この目的を達成するため、先進国は、すべての分野において一層の多角的規律を受入れ、繊維と衣料、熱帯産品、農業などの途上国の関心分野での市場アクセスの改善を提示する用意がある。
  11.  開発途上国側としては、関税を大幅に引下げ、譲許された関税の比率を高め、国際収支の困難を理由に実施される措置を含むすべての形態の例外に関し、均衡のとれた実効性のある抑制を行うことに同意し、新分野における合意に意味のある参加をすべきである。一部の開発途上国、特に後発開発途上国は、より長い経過期間またはケース・バイ・ケースの他の経過措置を必要とするかもしれないが、最終結果は、すべてのガット締約国に適用可能な単一多国間規則であるべきである。
  12.  我々がこれらすべての分野で目指す広範な実質的成果は、多角的貿易体制の制度的な枠組みを一層強化するとのコミットメントを必要とする。この関連で、国際貿易機関の考え方は、ウルグァイ・ラウンドの終結時に検討されるべきである。我々は、また、交渉成果を効果的に実施するために紛争処理手続きを改善する必要がある。このことは、多角的なルールの下でのみ行動するとのコミットメントに繋がる。


直接投資

  1.  投資の自由な流れは、開放的な国際貿易体制を補完することにより世界の繁栄を増進する。特に、外国からの直接投資は、開発途上国及び中欧・東欧諸国の経済の構造調整を助長し、雇用を創出し、生活水準を向上させ得る。
  2.  従って、すべての国は、投資に対する障壁を低減するよう努めるとともに、投資を抑制したり差別するような保護主義圧力に抵抗すべきである。OECD及びガットは、投資の自由化を引続き推進すべきである。国際開発金融機関及びIMFは、中欧・東欧及び開発途上国に対するプログラムにおいて、投資の自由化措置を求めるべきである。


輸出信用

  1.  我々は、貿易及び援助を歪曲する輸出信用補助金に対する多数国間の規律を強化するための、均衡のとれた措置のパッケージについて、現在OECDで行われている重要な交渉を歓迎する。このパッケージは1991年春までに作成されることとなっているが、改善された規律と透明性を通じて、公的に支持された輸出信用及び援助信用の利用に起因する歪みを相当程度削減すべきである。中欧・東欧諸国への資金の流れに貿易の歪曲を持ち込むことを回避することも重要である。


中欧・東欧における改革

  1.  我々は、中欧・東欧で進行中の政治・経済改革を歓迎する。ボンにおける最近の欧州安全保障協力会議(CSCE)において、また、欧州復興開発銀行(EBRD)設立の合意により、これらの地域からの参加国は市場経済を支える基本原理を受け入れた。しかしながら、経済・政治改革実施の度合は国により大きく異なる。いくつかの国は、自国の経済を安定させ、市場経済への移行期間を短縮するための思いきった困難な措置をとった。
  2.  我々及び他の諸国は、経済・政治改革に強力にコミットしている中欧・東欧諸国を支援すべきである。支援国は、そのような改革を実施する諸国を優遇すべきである。
  3.  外国からの民間投資は、中欧・東欧の発展にとり決定的に重要である。資金は、市場が開放され、投資環境の良好な国へ流れる。自国経済を開放しつつある中欧・東欧の国にとっては、自らの輸出品のアクセスが改善されることも重要となる。西側各国政府は、貿易及び投資協定の締結を含む様々な措置によって、こうした過程を支援することができる。輸出規制を緩和するとの最近のココムによる決定は前向きな措置である。
  4.  我々は、アルシュ・サミットで開始されたポーランド及びハンガリー両国に対する支援に関するG-24による調整に関し、EC委員会が行った作業を評価する。この作業は、これら両国が市場原理に基づく自立的成長の基礎を築くことに大きく貢献した。我々は、支援の調整をユーゴースラヴィアを含め、民主主義が生まれつつある他の中欧・東欧諸国に拡大するとのG-24の決定を歓迎する。
  5.  我々は、これらの諸国がその環境を改善する上で大きな問題に直面していることを認識する。中欧・東欧諸国がこれらの環境問題に対処するために必要な政策と、インフラストラクチャーを整備することを支援することが重要となろう。
  6.  我々は、また、同地域の経済の発展と安定に積極的に貢献する運輸、環境などの分野における最近の域内協力構想を歓迎する。
  7.  我々は、新しい欧州復興開発銀行が、これらの諸国への投資を促進する上で鍵となる役割を果たし、市場経済への秩序ある移行及び民主主義の健全な基盤に貢献するものと期待する。我々は、同銀行の早期発効を要請する。
  8.  OECDの「移行する欧州経済に対する協力センター」は、欧州安全保障協力会議ボン経済会合のOECDによるフォロー・アップ作業と同様、改革を促進するとともに、これら諸国とOECDの関係を強化する。
  9.  我々は、政治・経済改革にコミットしている中欧・東欧諸国とのより緊密な関係を検討するようOECDに対し勧奨する。


ソ  連

  1.  我々は、ソ連における状況につき討議し、ゴルバチョフ・ソ連大統領がその経済計画に関し、数日前に我々に送付したメッセージにつき意見を交換した。我々は、自由化し、より開放的、民主的かつ多元的なソ連社会を創出し、市場指向型経済へ移行するために、ソ連で行われている努力を歓迎する。これらの措置は我々の支持に値する。ペレストロイカの成功は、これらの改革努力の断固たる追求と進展にかかっている。特に、我々は、継続的な経済対話に関するゴルバチョフ大統領の提案を歓迎する。
  2.  我々すべては、これらの改革努力への支援を独自に及び共同で開始した。我々すべては、ソ連の市場指向型経済への移行及びその資源の活用を支援するため、技術的支援が現在提供されるべきであると考える。いくつかの国は、既に多額の融資を提供する立場にある。
  3.  我々は、また、ソ連が市場指向型経済に向けた、より大胆な措置を導入し、多くの資源を軍需部門から移転し、地域紛争を助長している国家への支援を削減するとの一層の決定を行うことは、いずれも有意義かつ持続的な経済援助の可能性を高めるであろうことにつき一致した。
  4.  我々は、欧州理事会が6月26日ダブリンで行った決定に留意した。我々は、IMF、世界銀行、OECD及び指名を受けた欧州復興開発銀行総裁に対し、欧州共同体委員会と緊密に協議しつつソ連経済に関する詳細な調査を実施し、その改革に関する勧告を行い、西側の経済援助がこれらの改革を効果的に支援し得る基準を確立するよう要請することに合意した。この作業は年末までに完成され、IMFにより取り纒められる。
  5.  我々は、北方領土に関するソ連との紛争の平和的な解決が日本政府にとり有する重要性に留意した。
  6.  主催国政府は、ヒューストン・サミットの結果をソ連に伝達する。


開発途上国

  1.  我々は、開発途上地域への我々のコミットメントが、改革を実行している中欧・東欧諸国への支援により弱められないことを改めて表明する。開発途上国のうちで最も貧しい国々に対し、引続き特別の注意を向けねばならない。昨年12月に合意された国際開発協会(IDA)の116億SDRの増資は、これら諸国が必要としている資金を提供するとともに、環境考慮の開発融資への統合を画すものである。
  2.  先進工業国は、開発途上国の長期的発展に多大の貢献をなし得る。我々は、経済成長及び物価の安定を維持することにより、開発途上地域に安定的かつ拡大する市場及び資金源を提供できる。我々は、真の政治・経済改革を実行している開発途上国に資金・技術支援を行うことにより、これらの諸国で進行中の自由化を促進できる。先進国は、援助効率を高めることを含め、開発途上国に対する開発援助及びその他の形態の支援を強化する努力を継続すべきである。
  3.  開発途上地域においては、安定したマクロ経済の枠組み、一層の競争を推進する分野別改革及び市場開放により成長を促進し得るとの認識がますます受け入れられつつある。開放された民主的かつ責任ある政治体制は、市場指向型経済を有効かつ公平に運営する上で重要な要素である。
  4.  知的所有権の保護並びに透明かつ公平な投資規則及び内外の投資家に対する平等な取扱いを含む投資制度の自由化によって、良好な投資環境整備に対する重要な貢献が可能である。
  5.  米国大統領により発表された最近の中南米支援構想は、ラテン・アメリカ及びカリブ地域の市場指向的政策を支援し奨励しよう。我々は、このような米国の努力が同地域にとって大きな可能性を有するとともに、貿易の振興、開放的な投資制度、米国の譲許的な二国間の債務の削減及び債務の株式化・環境スワップの利用を通じて、この地域における持続的成長の見通しの改善に役立つものと信じる。
  6.  多くの国において、人口増加率が資源の増加と一定の合理的な均衡を保つことが持続的開発のために必要である。こうした均衡維持のための開発途上国の努力を支援することは優先課題である。女性の教育機会を改善し、経済への一層の統合を図ることは、人口安定化プログラムに対する重要な貢献をなし得る。
  7.  地中海沿岸地域において現在進行中の経済的統合の計画は、奨励と支持に値する。


第三世界の債務

  1.  この1年間に新債務戦略の下で顕著な進展が見られたが、このことは多くの債務国において将来の成長にとり不可欠な経済改革を継続する決意を新たにさせた。特に、チリ、コスタリカ、メキシコ、モロッコ、フィリピン及びヴェネズエラと商業銀行との間の最近の合意は、大幅な債務削減及び利払い軽減を含む。IMF及び世界銀行とともに日本は、債務削減及び利払い軽減に対する重要な金融的支援を与えている。パリ・クラブは、IMFに支援された改革と融資の中期的な計画を支援するため、とりわけ債務の多年度繰延べと債務返済期間の長期化を通じ、適当な構造調整合意を提供することに同意した。債務国の改革努力と商業銀行の債務削減は、相俟って、特にメキシコに対する新規投資と逃避資本還流の双方に明白に示されるように、債務国経済の信用に顕著な影響を与えた。
  2.  これらの措置は、ケース・バイ・ケースによる債務戦略の主要な新機軸であり、深刻な債務支払いの問題を抱えつつ経済調整政策を実施しているすべての債務国にとって利用可能である。
  3.  債務国によるIMF及び世界銀行との強力な経済改革計画の採用は、引続き債務戦略の核心であり、債務削減及び利払い軽減のための商業銀行の金融パッケージの前提である。債務国が経済回復の維持を図るために貯蓄を活用し、新規投資と逃避資本還流を奨励する措置を採用することが決定的に重要である。この関連で、ラテン・アメリカの投資改革と環境とを支援する最近の米国の中南米支援構想に対し、大蔵大臣により注意深い考慮が払われる必要がある。
  4.  商業銀行は、思い切った改革を実施している国に対し、債務削減、利払い軽減及び新規融資を含む金融パッケージについての合意を迅速に結ぶための交渉において、現実的で建設的なアプローチをとるべきである。
  5.  債権国は、この過程で、現在行われている国際開発金融機関に対する拠出、パリ・クラブにおける公的債務の繰延べ及び新規融資を通じて、引続き重要な役割を果たす。我々は、パリ・クラブに対し債務負担に対処する追加的なオプションを引続き検討するよう奨励する。我々は、強力な改革計画を実施している低中所得国については、これら諸国の特別な状況を考慮して、パリ・クラブに対し債務返済期間の長期化を奨励する。我々は、低中所得国の債務負担を軽減するためのサハラ以南アフリカに関するフランスの決定及びカリブ地域に関するカナダの決定を歓迎する。
  6.  債権国政府は、また、パリ・クラブの債務繰延べにおいて、トロント方式の実施を通じ最貧国に対し特別の支援を与えてきた。我々すべては、最貧国に対し政府開発援助(ODA)の債務を帳消しにした。我々は、パリ・クラブに対し、最貧国に適用される既存のオプションの実施について再検討を行うよう奨励する。
  7.  我々は、国連事務総長により委託された債務に関するクラクシ報告に留意し、関心をもって検討する。


環  境

  1.  我々の最も重要な責任の一つは、その健全さ、美しさ及び経済的潜在力が脅かされない環境を将来の世代に引き渡すことである。気候変動、オゾン層破懐、森林破壊、海洋汚染及び生物学的多様性の喪失などの環境上の挑戦は、一層緊密で効果的な国際協力と具体的行動を要求する。我々は、先進国として率先してこれら挑戦に応える責務を有する。我々は、不可逆的な環境破壊の脅威に直面する中で、完全な科学的確実性の欠如が、それ自体正当化される行動を、先送りする口実とならないことに同意する。我々は、強力かつ拡大する市場指向型経済が環境保護の成功のための最もよい方途を提供するものと認識する。
  2.  気候変動は決定的な重要性を有する。我々は、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を制限する共通の努力を行うことを約束する。我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の作業を強く支持し、8月の全体報告の発表を期待している。第2回世界気侯会議は、温室効果ガスの排出を制限ないし安定化させる戦略と措置の採用について検討するとともに、効果的な国際的対応を討議する機会をすべての国に提供する。我々は、国連環境計画(UNEP)及び世界気象機構(WMO)の支援下で行われている気候変動に関する枠組み条約交渉に対する支持を改めて表明する。同条約は1992年までに策定されるべきである。適切な実施議定書に関する作業は可能な限り迅速に行われるべきであり、すべての排出源と吸収源を考慮すべきである。
  3.  我々は、2000年までにフロンの使用を段階的に廃止し、その適用範囲をその他のオゾン層破壊物質に拡大するとのモントリオール議定書の改訂を歓迎する。開発途上国がオゾン層破壊と取組むことを支援する金融メカニズムの確立は、先進国と開発途上国との間の協力の新局面を画する。我々は、インド及び中国を含むいくつかの主要な開発途上国が、ロンドンにおいてモントリオール議定書、及びその改訂への加入に関する立場を見直す意向がある旨表明したことを賞賛する。我々は、これら諸国による加入が同議定書の実効性を大幅に強化するものとして歓迎する。この議定書は、最終的にオゾン層破壊物質の世界的な段階的廃止をもたらそう。我々は、すべての参加国が可能な限り早急に改訂議定書を批准するよう求める。
  4.  我々は、気候変動の科学及び影響並びにあり得る対処戦略の経済的意味合いに関する協力の一層の強化が必要であることを認識する。我々は、二酸化炭素、及びその他の温室効果ガスの排出を削減するための省エネルギー、及びその他の措置を補完する新しい技術と方法を、今後数十年の間に開発する協同作業を行うことの重要性を認識する。我々は、気候変動の力学と潜在的影響及び先進国と開発途上国の可能な対応に関し、科学的・経済的な調査と分析を促進することを支持する。
  5.  我々は、現存する森林を守るとともに、自らの天然資源の利用に関するすべての国の主権を認識する一方、森林を拡大する行動を起こす決意である。熱帯林の破壊は憂慮すべき規模に達している。我々は、この破壊を停止させることに貢献し、持続可能な森林経営を提供することにつき、ブラジルの新政府が行ったコミットメントを歓迎する。我々は、この過程を積極的に支持し、途上国のこのような努力を支援するための資金につき、これらの諸国と新たな対話を開始する用意がある。我々は、ブラジルにおける熱帯雨林に対する脅威に対抗するための総合的な試験プログラムにつき、同国政府と協力する用意がある。我々は、欧州共同体委員会と緊密に協議しつつ、遅くとも次回サミットまでに発表できるように、このような提案を準備するよう世界銀行に要請する。我々は、関心を有する他の諸国に対し、我々と共にこの努力を行うよう訴える。この試験プログラムを通じ得られた経験は、熱帯林破壊に直面している他の諸国と直ちに共有されねばならない。熱帯林行動計画(TFAP)は、森林保全と生物学的多様性の保護を一層重視する形で改革され強化されねばならない。国際熱帯木材機関(ITTO)の行動計画は、持続的森林経営を重視し、市場の働きを改善する上で強化されねばならない。
  6.  我々は、森林減少を抑制し、生物学的多様性を保護し、積極的な林業活動を促進し、世界の森林に対する脅威に対処するために必要な森林に関する国際的取決め、又は合意に関する交渉を適当な場において可能な限り迅速に開始する用意がある。そのような取決め、又は合意は可能な限り早急に、1992年以前に策定される。IPCC及びその他の作業に考慮が払われる。
  7.  世界中で生態学的に脆弱な地域の破壊が驚くべき速さで進行している。温帯林及び熱帯林の減少、入り江、湿地及び珊瑚礁における開発圧力、並びに生物学的多様性の破壊は、その兆候である。我々は、この傾向を逆転させるため、砂漠化と戦い、生物学的多様性を保持するための事業を拡充し、南極を保護し、開発途上国の環境面の努力を支援するための協力を拡大する。我々は、これらの目標を達成するため、UNEP及びその他のフォーラムにおいて協力し、また、生物学的多様性保護のためのUNEPの作業に積極的に参加する。
  8.  環境保護努力は水際で終わらない。大洋、沿岸地域の双方において海洋汚染により深刻な問題が引き起こされている。陸上起因汚染源に対処するために包括的戦略が策定されるべきであり、我々は、これを支援することを約束する。我々は、油濁防止の努力を続け、国際海事機関(IMO)の既存の条約の早期発効を要請し、油濁に関する国際条約作成のための同機関の作業を歓迎する。我々は、環境の悪化及び海洋生物資源の規制のない漁業慣行の影響を懸念する。我々は、海洋生物資源の保存のための協力を支持し、この分野における地域的漁業機関の重要性を認識する。我々は、すべての関係国に対し保存の制度を尊重することを要請する。
  9.  エネルギー関連の環境破壊に対処するには、エネルギー効率の改善と代替エネルギー源の開発に優先度が与えられねばならない。そのような選択を行う諸国にとって原子力は、我々のエネルギー供給の上で引き続き重要な貢献を行うものであり、温室効果ガス排出の伸びを減少させる上で重要な役割を果たすことができる。各国は、健康と環境を守るために、原子力及びその他のエネルギーについて最高の世界的運用基準を確保する努力を続けるとともに、最大限の安全性を確保すべきである。
  10.  地球的環境問題の解決には、先進国と開発途上国の間の協力が不可欠である。この観点から、1992年の環境と開発に関する国連会議は、共通の行動と協調のとれた計画につき、幅広い合意を形成する上で重要な機会を提供する。我々は、環境に係る国際法に関するシエナ・フォーラムの結論に関心を持って留意するとともに、これらの結論が1992年の環境と開発に関する国連会議において検討されるよう提案する。
  11.  我々は、開発途上国が貧困と低開発により悪化している環境問題を解決することを助けるための、資金面及び技術面での支援を拡充することにより、これらの国が恩恵を得ることを認識する。国際開発金融機関のプログラムは、環境的影響の評価及び行動計画を含め、環境保護を一層進めるとともに、エネルギー効率を促進するために強化されるべきである。我々は、債務・環境スワップが環境を守る上で有用な役割を果たし得ると認識する。我々は、世界銀行が環境保護促進の措置に関し、如何なる調整的役割を果たし得るかにつき検討する。
  12.  環境及び経済の目標を上手く統合するため、政府及び産業界の政策決定者は、必要な手段を求めている。環境に関する協同の科学的・経済的な調査と分析の拡充が重要である。我々は、地球及び大気に関する宇宙衛星情報の集積を調整し、共有することの重要性を認識する。我々は、国際ネットワークの設立について行われている討議を歓迎し奨励する。環境問題の解決策を形成する上で鍵となる役割を持つ民間部門を関与させることも重要である。我々は、環境と経済に関する極めて有益な作業を促進するようOECDに対し奨励する。特に重要な点は、環境指標の早期開発と環境目標の達成に使用可能な市場指向的アプローチの形成である。我々は、また、1991年に21世紀の環境情報に関する国際会議を主催するとのカナダの提案を歓迎する。我々は、消費者の要求と生産者の必要を満たすとともに、市場の革新を促進する有用な市場メカニズムとして、自発的な環境ラベリングを支持する。
  13.  我々は、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの成功裡の開始に満足の意をもって留意し、同プログラムが生命科学の基礎研究の進歩に対し、人類すべての利益のために積極的に貢献するであろうとの期待を表明する。


麻  薬

  1.  我々は、すべての国に対し、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(ウィーン条約)へ加入し、その批准を完了し、同条約の条項を暫定的に適用するよう求める。
  2.  我々は、国連麻薬特別総会の結論を歓迎し、同総会で採択された行動計画に盛られた措置の実施を求める。
  3.  我々は、英国が主催した麻薬に関する閣僚会議で採択された宣言――麻薬需要削減には不正な供給の低減と同一の重要性を、政策及び行動において与えられるべきである――を支持する。先進国は、より強力な防止努力を採用し、他の国における需要削減対策を支持すべきである。
  4.  我々は、金融活動作業部会(FATF)の報告を支持し、すべての勧告を遅延なく充分に実施することを約束する。作業部会参加国の大蔵大臣による5月会合において合意されたとおり、作業部会はこれら勧告の実施を評価し促進するとともに、必要な場合、勧告を拡充するためフランスを議長とし、更に1年間招集される。作業部会の勧告に同調するすべてのOECD加盟国及び金融センターを有する国は、この作業への参加を招請される。新作業部会の報告は、次回サミット会合前に完成される。我々は、また、すべての他の国に対し、資金洗浄との闘いに加わり作業部会の勧告を実施するよう勧奨する。
  5.  前駆剤及び必須化学物質が麻薬の不正な製造に流用されないよう、効果的な手続きを採用すべきである。サミット国及びこれら化学物質の貿易を行う他の国々から構成され、化学産業の代表が参加した、金融活動作業部会と同様の作業部会をこの目的で創設すべきである。この作業部会は、コカイン、ヘロイン及び合成麻薬に関する諸問題を取扱い、1年以内に報告をまとめる。
  6.  我々は、カルタヘナ宣言に特に示されたコカイン取引と闘うための戦略を支持する。我々は、麻薬の不正取引防止のため生産国が実施する活動の枠組みの中で貢献を行う必要性を認識しつつ、コロンビア、ペルー及びボリビアを始めとする麻薬の不正取引との闘いに強力に取り組んでいるすべての国々を、経済面、法・執行面及びその他の援助や助言を通じて支援することの重要性を認識する。
  7.  ヘロイン問題は、先進国・開発途上国双方の多くの国において引続き最も深刻な脅威である。すべての国は、ヘロインの惨禍と闘うための強力な措置をとる。
  8.  我々は、麻薬の国際的な規制に積極的な先進国との非公式な麻薬協議の枠組みを支持する。そのようなグループは、需給を低減させ国際協力を改善する努力を強化し得る。
  9.  我々は、現在行われている国連麻薬統制諸機関の見直しを歓迎し、より効率の良い機構がもたらされるよう求める。


次回経済サミット

  1.  我々は、来年7月ロンドンで会合することについてのサッチャー首相の招待を受諾した。
 
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