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11 ボン サミット

ボン経済宣言(仮訳)
―持続的成長及び雇用の拡大を目指して―

1985年5月4日

  1.  世界経済の将来及び天然資源の保存に関し我々が他国政府とともに負っている責任を自覚し、我々、主要先進7ヵ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会委員長は、1985年5月2日より4日までボンに会合し、我々の国及び世界が経済面で如何なる見通しを持ち、問題を抱え、展望を持っているかについて話し合った。

  2.  世界経済は過去のかなりの期間に比べ良好な状態にある。我々が前回会合したとき以来、インフレの鎮静化及び、経済成長の基盤の強化につき一層の進展が得られた。先進国における景気回復は開発途上国にも伝播しはじめた。開発途上国の債務問題は、解決には程遠いものの、柔軟かつ効果的に対応されてきている。

  3.  しかしながら、我々の諸国は未だ重要な挑戦に直面している。とりわけ我々は、次のことを行う必要がある。

    • 我々の経済の新たな展開への対応能力を強化すること。
    • 雇用の機会を増加すること。
    • 社会的不公平を減らすこと。
    • 長期化している経済の不均衡を是正すること。
    • 保護主義を防遏すること。
    • 世界の通貨制度の安定性を向上させること。

  4.  これらの挑戦に関する討議の結果、我々は次の結論に到達した。

    (a)すべての国が享受し得る永続的な新たな繁栄をもたらすために我々が行うことのできる最大の貢献は、我々各国において個々に、及び協力し共同して、持続的成長及び雇用の拡大をもたらす政策を根強く追求して行くことである。
    (b)先進国の繁栄と開発途上国の繁栄は一層相互連関性を強めてきた。我々は真のパートナーシップに基づき開発途上国との協力を継続する。
    (c)開放された多角的貿易は世界の繁栄のために必要不可欠であり、我々は貿易の障壁の早期かつ実質的削減を押し進める。
    (d)また、我々は世界の通貨制度の機能を一層安定的かつ効果的にするよう努める。
    (e)経済発展と自然環境の保全は必要かつ相互に補強し合う目標である。効果的環境保護は国内的及び国際的政策の中心的要素の一つである。


I. 成長及び雇用

  1.  インフレなき成長及び雇用の拡大を維持するため、我々は次のことを行うことに合意した。

    • インフレの鎮静化における進展を定着させ、前進させること。
    • 物価の安定、金利の低下及び生産的な投資の拡大を実現するため、節度ある、また必要な場合には更に毅然たる金融・財政政策を実施すること。我々各国は夫々財政赤字が過大な場合にはこれを削減し、また、必要な場合には国民総生産に占める公共支出の割合を低減させるため、公共支出に対する確固たる管理を行う。
    • 成長への障害を除去し、また必要とする人々への適切な社会政策を維持しつつ、我々の国民の創造的エネルギーを解き放つべく独創性及び進取の気性の喚起を図ること。
    • すべての市場、特に労働市場における適応力及び反応度を更に一層高めること。
    • 特に若年層を中心に職業技能の向上のための訓練を促進すること。
    • 経済の変化及び技術の進歩によりもたらされる繁栄及び永続的雇用の創出の機会を最大限活用すること。

  2.  かかる共通の原則を基礎として、我々は夫々の優先的な政策分野を示した。

    • 米国大統領は、迅速かつ相当額の公共支出の削減を達成し、もって財政赤字の大幅な削減を達成することが重要であると考える。大統領は、また、一層の規制緩和及び資源の効率的利用を促進し、新たな貯蓄及び投資を刺激することを目的とした米国税制の改革の必要性を強調する。
    • フランス共和国大統領は、引き続きインフレを鎮静化すること、生産手段を近代化すること、雇用情勢を改善すること、公共支出を管理すること、及び社会的不公平と戦うことの必要性を強調する。この文脈において大統領は、持続的成長のため、高度技術に関する教育、研究及び投資に高い優先度を置く。
    • 連合王国政府は、引き続きインフレの低下及び持続的成長のための条件の創出を図る。同政府は引き続き公共支出を厳しい管理下に置き、また、金融面の規律を維持する。同政府は中小企業及び先端技術産業の発展を促進し、独創性、進取の気性及び新たな雇用機会の創出を奨励する。
    • ドイツ連邦共和国政府は、成長の永続的向上と新規雇用の創出を達成するため、経済の柔軟性及び活力の強化に高い優先度を置く。先端技術産業と並び中小企業が特に奨励されるべきである。同政府は引き続き公共部門の経済に占める割合、財政赤字及び課税負担を低減する。
    • 日本政府は、財政面での規律及び、特に投資を促進して行くための市場機能強化の政策を堅持することが必須と考える。日本政府は、金融市場の規制緩和、円の国際的役割の増進、市場アクセスの改善及び輸入増加の奨励において一層の進展を図る考えである。
    • イタリア政府は、成長と投資を維持しつつ、インフレの一層の低下及び公共財政赤字の一層の削減に優先度を置く。殊にハイテク分野における、中小企業を創設し、若年層を中心とする雇用を促進する誘因が特に強調される。
    • カナダ政府は、民間部門における投資の促進及び雇用の創出、インフレなき持続的経済成長のための障害の除去、財政赤字の低減並びに政府支出の抑制に焦点をあてる。中小企業部門に特に力点を置きつつ、技術革新と企業活動を奨励する。
    • 欧州共同体委員会は障壁のない真正なる域内市場を完成することに高い優先度を置き、これにより硬直性を除去し、共同体全域に及ぶ新たな経済成長をおこす。欧州通貨制度(EMS)の強化及び加盟各国経済の一層の収斂はこの目的に更に資する。

     以上の政策を追求することにより、我々は、夫々の国内問題に取り組むのみならず、同時に世界経済の持続的成長及び国際貿易のより均衡のとれた拡大に貢献する。


II. 開発途上国との関係

  1.  世界貿易の持続的成長、より低い金利、開放的市場及び個々のケースにふさわしい量及び条件での継続的な資金供与が、開発途上国による健全な成長の達成及びその経済的・財政的困難の克服を可能ならしめるために必要である。政府開発援助を含め、特に貧困国に対する資金の流れが維持され、可能な限り増加されるべきである。特に、先進国からの直接投資のようなより安定的な長期にわたる金融が促進されるべきである。我々は、債務国と民間銀行との間の、より長期の債務繰り延べに関する合意を歓迎する。我々は、適切な場合には、引き続き、政府及び政府機関に対する債務のより多年度にわたる繰り延べに関し交渉を行う用意がある。

  2.  我々は、開発途上国の経済発展、ひいては社会的・政治的安定を促進するために、既存の国際機関における開発途上国との間の建設的な対話を引き続き奨励する。我々は、内外の債権者及び投資家の信頼を強化し、国内貯蓄を動員し、また資金の効率的利用及び健全な長期的開発を確保するのに必要な、債務国の政策を支援する上で、国際通貨基金(IMF)及び世界銀行グループの重要な役割及び両機関間の協力改善を強調する。我々は、これらの機関が必要な資金及び手段を備えることを確保するため努力することに合意するとともに、将来必要となりうる世界銀行の増資につき話し合う用意がある。我々は、最貧国でもなく、また主要債務国グループの中で最も大口の債務国でもない、いくつかの開発途上国が直面している特別な問題に引き続き懸念を有している。我々は、ケース・バイ・ケースで、これら諸国の財政的制約を軽減するよう配慮するべきであることに合意する。

  3.  我々は、飢餓及び旱魃に苦しんでいるアフリカ諸国民の窮状を深く憂慮している。我々は、我々の国民及び民間組織からの積極的な対応並びに多くの国々の政府により供与されている実質的援助、及び世界銀行によるサハラ以南アフリカのための特別な融資手段の設立を歓迎する。我々は、引き続き緊急食糧援助を供与する。更に、我々は、アフリカ諸国が、彼ら自身の農業計画に基づいて、その潜在的経済力及び長期の食糧戦略を開発することを支援するため、これら諸国との協力を強化する。我々は、農業開発プロジェクトの枠組の下で、種子、殺虫剤及び肥料等の農業用資材の供与により、食糧生産の増加を促進する用意がある。我々は、既存の早期警報システムを改善し、また、輸送体制を改善する必要性につき合意する。関係国における政治的障害は、飢えた人々への食糧の配給を妨げるものであってはならない。我々は、乾燥地穀物に関する研究ネットワークの設立を検討する必要性を強調する。我々は、砂漠化防止において、アフリカ諸国との協力を強化する。かかる作業のいくつか、あるいは全てに貢献しうる立場にあるすべての国による努力が、引き続き必要とされている。この点において、我々は、ソ連及び その他の共産圏諸国に対し、責任を担うように呼びかける。我々は、1985年9月までに外務大臣に報告されるべきフォローアップ措置の提案を準備するために、専門家グループを設置した。


III. 多角的貿易体制及び国際通貨制度

  1.  保護主義は問題を解決しない。保護主義は問題を創り出す。現存の貿易制限を緩和し撤廃する上で、さらに目に見える進展がなされることが重要である。我々は、開放された多角的貿易体制を強化するため新たなイニシアティブを必要とする。我々は、GATTの新ラウンドが出来る限り早期に開始されるべきであるとのOECD閣僚理事会で達成された合意を強く支持する。我々のほとんどは、右は1986年中であるべきと考える。我々は、かかる交渉における交渉事項及び態様につき広いコンセンサスを得るため、高級事務レベルによる準備会合を本年夏の終りまでに、GATTにおいて開催することが有益であると考える旨合意する。我々は、また、相当数の先進国及び開発途上国がかかる交渉に活発に参加することが肝要である旨合意する。我々は、交渉のためのバランスのとれたパッケージを目指している。

  2.  国際通貨制度の機能改善を行うことも肝要である。我々は、十ヵ国蔵相会議(G-10)の大蔵大臣が、六月の東京における会合において、通貨制度の機能改善のための方途に関する現在の作業を完了し、また、国際通貨制度をより安定的かつより効果的にするために、十月のソウルにおけるIMFの次回暫定委員会会合で討議される予定である提案を提出する意向であることに留意する。


IV. 環境政策

  1.  国境を越えた環境破壊を予測し予防するためには、新たなアプローチと国際協力の強化が必要不可欠である。我々は、酸性降下物、自動車による大気汚染をはじめとしその他全ての重要汚染源等の緊急な環境問題を解決するために協力する。我々は、また、気象の変化、オゾン層の保護並びに有毒化学物質及び有害排気物等他の関心事項にも対処する。土壌、淡水及び海洋、特に地域的海水域の保護も強化されなければならない。

  2.  我々は、環境問題を解決するため政府による監視及び市場の規律の双方の機能を活用する。我々は「汚染者負担」原則をより広く発展させ適用する。科学技術は、環境保護と経済成長を融和させることに貢献しなければならない。

  3.  改善され国際的に調和のとれた環境測定方法が必要不可欠である。我々は、技術、成長及び雇用に関する作業部会の環境専門家に対し、この分野で進展を達成するための最も効果的な方法に関して適切な国際機関と協議するよう求める。

  4.  我々は、環境上の懸念に関して、より緊密な国際協力のための環境大臣の貢献を歓迎する。我々は、既存の国際機関、特にOECDに、我々の協力を集中する。我々は、環境破壊及び世界的な災害の回避のため開発途上国と協力する。


V. 科学・技術における協力

  1.  我々は、我々の科学的潜在力の利用を極大化するために主要プロジェクトにおける研究・技術協力が増大されるべきであると確信している。我々は、これらのプロジェクトが、参加と責任の適切な分担、並びに成果へのアクセス、技術移転及び関連技術の利用に関する適切な規則を必要とするものであると認識する。

  2.  我々は、米国大統領の有人宇宙基地計画への協力に関する提案に対し、欧州宇宙機関(ESA)加盟国政府、カナダ及び日本が、真のパートナーシップ及び情報、経験及び技術の公正かつ適切な交換を基礎として、積極的な対応を示したことを歓迎する。恒久的な有人宇宙基地の開発、利用についての政府間協力に関する話し合いが早急に開始される。我々は、また、宇宙活動に関する欧州独自の能力を維持、発展させる必要性及び長期的な欧州宇宙計画とその目的に関するESA理事会の結論を歓迎する。

  3.  我々は、18協力分野の作業に関する技術、成長及び雇用に関する作業部会の報告を歓迎し、右作業部会に本年末までに見直しを完了するよう要請する。我々は、ヴェネチアにおいて開催された「技術革新及び雇用」に関する大臣会議が、成長及び雇用を促進する上で技術変化の果す役割に対する受容性をより広げるために果した、前向きの貢献を歓迎する。我々は、また、生命科学と人間に関するランブイエ会議の結果を歓迎し、ドイツ連邦共和国政府が1986年に神経生物学に関し第3回会合を主催するとの積極的意向に感謝する。

  4.  我々は、明年再び会合することに合意し、日本におけるこの会合の開催についての日本国首相の招待を受諾した。
 
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