![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() | ||||||||||
|
トップページ > 外交政策 > G7 / G8 |
![]() |
橋本総理大臣 内外記者会見記録 |
平成10年5月17日
1.冒頭発言どうも皆さん有り難う。
産業革命がいわばスタートしたといってもいいバーミンガムで開催されたサミット、これはブレア首相の非常にすばらしいイニシアティヴの下に、人類の進路に非常に大きな責任を有する主要国の首脳の間で親密なだけでなく非常に堀り下げた議論が出来たし、「サミット」本来の精神を十分に発揮できた会合だったと思っています。そして、この機会をサポートしていただいたブレア首相以下、関係の皆さん、そしてバーミンガムの市民に対しても心からお礼を申し上げたいと思います。私はこの機会を利用して、クリントン大統領、エリツィン大統領、コール首相、プローディ首相、あるいはブレア首相との間で二国間会談を行うことが出来ました。いずれも大変充実した対話が行われた出来たことを幸せに思っています。昨年のデンヴァー・サミット以降に発生したアジアの通貨金融危機は、アジア諸国自身にとっても、また我が国にとっても、更にはその他の世界にとっても大変大きな関心事であり、今回のサミットにおいて重要な焦点の一つになりました。私は今回のサミットに先立って、様々なチャネルを通じ、アジア諸国の実状を知るように努めると同時に、それぞれの国の考え、希望を聞きながら、それをG8各国に伝える、そうした思いを持って、サミットの場に臨みました。特に、この数日来大きな展開を示したインドネシア情勢については、当然ながらサミットで活発な議論を呼びましたし、また日本としてもウォッチをし続けながら直近の状況を議論に反映させるように努力してきました。その結果我々は人命の損失を深く懸念し、当局と住民の双方に暴力の高まりを回避するよう呼びかける、また、経済改革のプログラムの履行を完全に支持し、更に、インドネシア当局に対し必要な改革の迅速な実施を呼びかける声明を発出しました。
アジアの経済情勢に関する議論の中で、私は、総額420億ドルに上る我が国の支援策について紹介すると同時に、G8各国も引き続き精神的・物質的にも両面で危機克服努力への支援を継続してくれること、アジア経済危機を契機として保護主義が台頭しないように警鐘を発すること、また、良好なファンダメンタルズを持つアジア諸国経済は、一時期、苦渋に満ちた調整期を経るわけですが、やがて必ず力強く復活するであろうと国際社会が信じていることを伝えること、これが最も今日重要であることを強調しました。こうした点は、国際資本移動のモニタリング等、国際金融システムの強化に関する私の主張とともに、各国首脳の賛同を得て、一連の文書に反映出来たことは非常に幸いでした。
また、世界経済の現状に関する討議の中で、あるいは二国間の会談の中で、私は、我が国の現下の経済運営について、第一に景気回復に向けた減税と社会資本整備による内需の拡大、第二に不良債権問題の本格的な処理、言い換えれば金融機関のバランスシートから如何に不良債権を消し去ることが出来るか、そして金融機関の強化、第三に構造改革の実行という三つの柱について説明し、それを早く実施するために必要な補正予算や減税法案を既に国会で審議していただいている、こうしたことを述べました。こうした我が国の総合経済対策は主要国首脳から大変強い歓迎を受けました。このことは、必ずや日本経済に対する内外の信頼を高めることなる、そう確信しております。
グローバルな経済問題としては、アジア経済の他にも、貿易、開発、環境、エネルギー、こうした分野が取り上げられました。貿易については、今年がガット50周年を迎えたことを念頭にして、明年のWTO閣僚会議で2000年以降の広範な自由化交渉を打ち出すよう準備を進めていくことを呼びかけました。開発のテーマの下では、私から、本年10月開催予定の第二回アフリカ開発会議(TICAD II)、これについてもG8各国の積極的な参加と協力を呼びかけると同時に、昨年デンヴァーで提唱した国際寄生虫対策の重要性について、我が国作成の報告書の内容にも言及しながら指摘しました。環境については、京都議定書の実現に向けた取組を継続しながら、途上国の自主的な参加を促すための協力を進めることの重要性を指摘しました。
また、ブレア首相が特に重点を置かれたテーマのうち、雇用については、我が国の状況をもちろんお話をしながら、特に最近急増しつつあるアジアからの失業者の問題に言及しつつ、昨年の神戸雇用会議が提起した活力ある雇用社会の実現、新規産業の育成等の重要性を指摘しました。同じく国際組織犯罪に関しては、特に薬物、就中覚せい剤対策の重要性等を指摘しながら、国内・国際両面にわたる取組を強化していく決意を致しました。
最後に、インドの核実験についてふれたいと思います。私たちは今回の核実験を、世界的な不拡散体制強化の努力と地域及び国際社会の平和と安全に逆行する、そうしたものとして非難するとともに、インドに対してNPT、CTBT等への参加を要請し、また、パキスタンに対し最大限の自制と不拡散体制の支持を呼びかけました。私は、インドに対し新規円借款の停止をという強い措置を取ったこと、及びパキスタンに対し私の個人的代理として登内閣外政審議室長を派遣したことを説明するとともに、G8としてのメッセージが強く明確なものになるよう主張してきました。
今朝、G8会合が開かれている最中にパキスタンが核実験を行ったという、未確認の情報が入りましたが、まだ、これは事実であるかどうかの確認はどこの国もとれていません。しかし、これが仮に事実であれば、このパキスタンの行動を我々は容認することは出来ませんし、きわめて遺憾だと思っています。そして、これが間違っている情報であることを本当に今祈るような思いで願っています。
最後に、議長を務められ、大変見事な手腕を発揮されたトニー・ブレア首相及び英政府、英国民、そしてバーミンガム市民の皆様には、大変暖かいおもてなしをいただいたことを、もう一度心からお礼を申し上げたいと思います。有り難うございました。
2.質疑応答
【問】今回のサミットではインドの核実験及びインドネシアの危機、さらに日本経済の問題という、日本に関わる3つの大きなテーマが取り上げられたわけだが、総理としては、このサミットにおいて日本の役割を十分果たせたと評価されておられるのか。
【答】結論から言えば、私は日本としてできるだけの努力をし、また、貢献をしたと思っています。我々はアジアからの唯一の参加国です。それだけに、これらの問題はいずれも、私自身が積極的に発言もしましたし、意見も求められ、議論の方向付けに貢献できたと考えています。なんと言っても具体的に申し上げれば、アジア経済危機に対して、引き続きG8として支援していくとともに、その将来に向けて国際的な信認を与えることの重要性というものを指摘して、各国の賛同を得られたということ、また、日本経済の国際的信認も大事ですが、我が国の総合経済対策について、私自身が予測していなかったくらい強い歓迎を受けたことは意味が大きかったと考えます。インドネシア経済危機についても、私自身、3月にインドネシアを訪問し、スハルト大統領とずいぶん長い時間話し合いをしました。インドネシアへの支援の継続の重要性を確認する一方で、政治・経済面での改革を呼びかけるという、バランスのとれた対応の重要性を指摘し、声明にもこの考えが反映されました。また、唯一の被爆国として、インドの核実験が全く容認できないものであること、日本として厳しい措置をとったことを説明すると同時に、G8の一致したインドの核実験に対する厳しい批判というものの重要性を指摘してきました。G8が一致して、これを非難するという声明が発出されたことは非常に大きかったと思います。各国、色々な考え方があるが、少なくとも、これが褒美になってしまってはいけない、やはり、核実験を行ったという事はペナルティにあたるものなのだ、ということを共通の意見として確認してきた、という点は大きいと思います。
【問】日本は現在二つの大きな問題に直面している。すなわち、不法入国者と麻薬問題である。双方とも、中国からきている。大半の不法入国者は中国から来ており、大半の麻薬は南中国にて生産され密輸されている。これらの問題に中国に対しどのように対応するつもりか。
【答】まず第一に、すでに日本のそうした分野の最高責任者である国家公安委員長が、先般中国を訪問し、中国側の治安関係の最高責任者との間で、こうした問題の取り締まりの強化についての対話をスタートさせていることを申し上げたいと思います。そして、実は日本における不法滞在者の問題については、中国だけ言及されましたが、実際は中国だけではなく、不法滞在の問題、密入国の問題につきはしては、イランの人々にも問題はありますし、他の地域にも問題がないわけではありません。日本は従来、麻薬・覚醒剤に対しては比較的取り締まりのしやすい国でありましたが、今、3回目の大きな危機を迎えております。そして、その中心は覚醒剤で、その覚醒剤使用が若い人々の間で広がり始めていることを私たちは大変おそれています。そして、それは必ずしも中国で製造されたものだけではありません。黄金の三角地帯といわれた、かつて阿片によって、いいかえれば、ケシ化の植物を栽培することによって、その系統の麻薬を生産していた地域、この地域が覚醒剤の製造に相当なウェイトを持ち始めています。あるいは、その他の地域から郵便を利用した新型の薬剤も今日本に入ろうとしています。我々は、これを何としてもくい止めねばなりません。そして、そのためには、捜査当局及び治安当局の国際的な協力ももちろん必要ですし、国内における取り締まり体制も必要ですが、同時に国民の一人一人が薬剤に手を出さないという強い気持ちをもってもらうような努力もしなければなりません。我々はあらゆる地域から送られる麻薬、覚醒剤、(今の質問では言及されなかったが)銃器犯罪のもとになる銃に対しても真剣に取り組んでいかなければなりませんし、既に関係当局は国際的にも連携をとりつつあります。
【問】ロシアでの2000年のサミット開催問題について、今朝の首脳会合で如何なる結論が出たのか。また、その評価を聞かせていただきたい。
【答】先日、日露首脳会談を行った際、エリツィン大統領から2000年のサミットの開催地が日本になってるけれど、それをロシアで開催できるよう開催場所を譲ってくれないかというご要請がありました。2000年という年は、申し上げるまでもなく、現在私たちが日露間で政治・経済両面にわたり精力的な話し合いを続きている中で、お互いにとり大変大切な年でありますし、信頼と友情を深めなければならないという年でもあります。そこで私は会談の際に、「これは日本だけで決められる問題ではない、貴方(エリツィン大統領)のお話を真剣に伺ったけれども、日本の後にイタリア、カナダと順番に開催地が決められていますし、ルールで決められていますので、G8で議論する必要があるであろう」と述べました。本日、エリツィン大統領から閉会の直前に本件問題が提起されましたが、既にコール独首相が帰国を急いでおられて、退席されていたこともあって、結論はその場では出ませんでした。私は、(議長国の順番が)ひとつずつずれていくのか、それとも、ロシアが議長国として入ることにより、日本の順番はずっと後ろに持っていかれるのかという問題があり、もしも、ずっと後ろに持っていかれるのであれば、私は絶対にだめだと(考えています)。その上で、(ロシアの番が日本とイタリアの)途中に入るということであれば、G8全体で決めることだと申し上げました。(本日の会議では)最終的にはブレア首相が、「たとえば記者会見の際に、そのような提案があったということを質問されれば、公表する」と発言されて終わっています。結論が出ていないと申し上げておくことが一番正確だろうと思います。ただ、その上で順番が変わるのは困るという、イタリア、カナダの意見も届いています。
【問】サミットのプロセスに関連して、日本は唯一のアジア国と言っているが、中国が拡大されたサミットに参加すれば、特に最近のアジアの金融・経済危機があるということもあり、有益な役割を果たせるのではないか。中国が参加することを支持するか。それとも、まずは、より緊密に中国との連絡を取り合っていく段階を踏むべきであると考えているか。
【答】この問題は、まず第一に、中国側が希望するのかどうかを考えなければならなりません。そして今まで私は中国側の首脳と色々なときにお目にかかわってきましたが、例えばWTOの加盟については非常に我々は協力していますし、既に物の分野においては合意に達している(まあ、サービスは残っていますが)など、他の分野についてははっきりと中国が参加を希望しています。しかし、サミットについて希望しているかどうかという話自体、今まで出たことはありませんでした。その上で一般論で申し上げるなら、パートナーシップを拡大するかどうかは、お互いサミット構成国全員の中で十分に議論をして結論を出す種類の話であると思います。
それとは別に、「中国に対して余りにも言及が少なかったじゃないか」、「アジア経済危機の中でも中国が人民元の相場を動かさずにいてくれている、こうした協力に対して、もっと国際社会として評価の声を出すべきであった」という意見が複数の首脳から出され、自分(橋本総理)も当然のことながら「大事なことである」と申し上げたので、おそらく議長の総括の時にはそうした発言が入るものと思います。【問】今後の景気回復のために、更にどのような手だてを講じることが必要であるのか。特に、税制面ではどのような取り組みを考えているのか。景気回復はいつ頃達成されるとみているのか。
【答】今回のサミット及び各国首脳との会談の中でも、先般決定した総合経済対策に盛り込まれた措置に対する評価は、非常に高いものがありました。同時に、これを早く実行に移せるような努力も、当然のことながら求められている。そして、減税法案や補正予算が既に国会で審議に入っているということで、「それは大変だな。だけど一日も早く成立するように」という声援を送っていただきながら、今ここに来たわけです。
ポイントは、まず第一に、景気回復に向けた減税、社会資本整備によって、内需をどこまで拡大できるか。第二が不良債権処理の問題です。今回初めて、この3月期決算から、アメリカのSEC並みの決算を求めたので、情報開示等今までよりなお格段にはっきりしたものになります。そうした中で、金融機関のバランス・シートから不良債権を消すための施策を進めていく。これは、金融システム強化と併せて、大きな柱になるでしょう。
もう一つは、構造改革の実行を早急に進めていくということです。我々は、これによって力強い経済を回復する、それを期待している。税制については、既に法人課税について、総合的な税率を、今後3年間の間にできるだけ早く、国際的水準並みになるように検討を行うと申し上げてきました。この中には、実は地方税であり、しかも地方財源として非常に大きなウェイトを持つ法人事業税の問題があります。会計標準課税の問題をかかえていますので、こうした問題を考えると、「3年以内にできるだけ早く」という以上に時期は今言えませんし、個人所得課税についても、幅広い観点から我々は検討したいと思っています。
そこで外国の記者の方々もおられるので、知っておいていただきたいが、実は、標準世帯で課税最低限361万円というルールは、主要国の中でも非常に課税最低限は高いところに設定されたます。さらに、特別減税が加わったので、その課税最低限は一層高くなりました。反面、高額所得者に対しては、確かに日本の税率は高いです。ですから、これから先、例えば資産性の所得の課税、あるいは年金課税のようなものを併せて、所得課税については、検討をしなければなりませんが、少なくとも、課税最低限が高い、言い換えれば、英国・アメリカでも所得税を負担しているような人のうち、日本ではずいぶんたくさんの方々が所得税を納めずに済んでいるのだということを、知っておいて下さい。なお、税制改革については、帰国して、できるだけ早く党にもきちんと指示をし、緊密に連絡をとって、税制改正の実をあげていきたいと思っていることを申し添えます。【問】 今までのブリーフィングの中で、確か最初のブリーフィングで、日本政府は、金融機関改革のための抜本策をとる用意があると言われたと思うが、その中には、例えば弱い金融機関が倒産するのを許す(allowing weak [financial] institutions to fail)という対応も含まれるのか。
【答】「弱い金融機関を許す」というのは、弱い金融機関を何とか我々が守って、存在を持続させるということですか。そうであるとすれば、自分(橋本総理)は、そこはちょっと違うように思う。我々は今17兆円という、国民の預金を保護するための資金の用意をしています。これは、弱い金融機関の経営が破綻しても、国民から預けられている資産に影響を与えないための準備です。その金額が、17兆円です。ということは、もし全部の金融機関がこれから先も生きていくことを想定すれば、そのような預金保護の仕組みをつくる必要はありません。同時に、我々は、しっかりした銀行は、より強いものになってもらいたいと思っていますし、その意味で、金融機関の自己資本を強化するための施策もとっています。れを両方並行して行ったことで、あるいは今あなた(質問者)が聞かれたような誤解を産んだのかもしれません。しかし、我々は、今、先ほど申し上げたように、既に我々は、金融機関の情報開示としては従来よりも遥かに厳しいものになる米国のSEC基準による決算を、この3月期から行わせる、すでにそういう方針を出して、その通りに動いている。そうすると、この結果が今月の末から来月の初め位には、きちんと表に出て来るでしょう。その中で、国民の資産である預金を保護するということと同時に、日本の金融機関が国の内外から信頼を取り戻すために、いろんな努力をしていくでしょうが、今あなた(質問者)が言われたような発想で物事を進めていこうとは思っていません。
目次 |
| ||||||||||
![]() |