- 地球生態系の均衡をより良く保全する必要性につき世界中で認識が高まっている。このことは将来気象変化をもたらし得る大気への深刻な脅威を含んでいる。我々は、大気、湖沼、河川、海洋における汚染の増大、酸性雨、危険物質及び急速な砂漠化と森林減少に対し重大な懸念をもって留意する。このような環境の悪化は、種の存在を危険に晒し、個人及び社会の福祉を損なう。
地球生態系の均衡を理解し保護するための断固たる行動が緊急に必要とされる。我々は、共有する経済的、社会的諸目的を満たし将来の世代に対する義務を履行するために、健康的で均衡のとれた地球環境の保全という共通の目標を達成するための協力を行う。
- 我々は、環境問題に関する科学的研究に一層の弾みを与え、必要な技術を開発し、環境政策の経済的な費用と効果につき明確な評価を行うよう全ての国に対し要請する。
これらの問題のいくつかについて不確実性が残っているからといって、我々の行動が不当に遅延されてはならない。
この関連で、我々は全ての国に対し、地球的規模で観測とモニターを強化するため力を合わせるよう求める。
- 我々は、汚染を減らし代替策を提供するために技術及び技術移転の分野における国際協力も強化する必要があると考える。
- 我々は、汚染を発生源で防止し、廃棄物を出来る限り少なくし、省エネルギーを実施し、また費用対効果の優れたクリーン・テクノロジーを設計し市場化する上で、産業界が枢要な役割を担っていると考える。農業部門も、水質汚染、土壌浸食及び砂漠化等の問題への取組みに貢献しなければならない。
- 環境保護は、貿易、開発、エネルギー、運輸、農業及び経済計画等の問題と不可分である。従って、経済上の決定を行うにあたっては、環境に対する考慮が払われなければならない。実際、優れた経済政策と優れた環境政策は、相互に補強しあうものである。
我々は、持続可能な開発を達成するため、経済成長と開発が環境保護と両立することを確保する。環境保護及び関連投資は経済成長に貢献すべきである。この点に関し、技術によるブレークスルーのための努力を強化することが、経済成長と環境政策を調和させる上で重要である。
環境保護の費用、便益及び資源面への影響につき明確な評価を行うことは、可能な場合には天然資源全体の価値を反映させつつ、各国政府が、価格面での信号(例えば税金や政府支出)と規制措置を如何に組み合わせるかについて必要な決定を行う上で役立つこととなろう。
我々は、世界銀行及び地域開発銀行がその活動の中に環境的考慮を統合するよう奨励する。OECD、国連及びその関連機関等の国際機関は、環境の質を向上させるため、各国政府による適切な経済措置の評価に資する分析技術を更に発展させることが求められる。我々は、OECDに対し、環境と経済上の決定との統合に関する作業を通じて選択的な環境指標を如何にして開発し得るか検討するよう求める。我々は、1992年の環境と開発に関する国連会議が地球環境保護に一層の弾みを与えることを期待する。
- 開発途上国が過去の損傷に対処することを支援し、環境の観点から好ましい行動をとることを奨励するため、援助の仕組みと特定の技術移転を経済的インセンティブに含めることもできよう。特定の場合には、政府開発援助の債務帳消し及び債務・環境スワップが環境保護において有用な役割を果たし得る。
我々は、また、開発途上国がその経済成長を持続させることにつき有する関心と必要性、及び環境面の課題を満たす上で必要な財政的、技術的要請について配慮することが必要である点を強調する。
- 成層圏オゾン層の破壊は緊急課題であり、迅速な行動を必要とする。
我々は、モントリオール議定書にとりあげられているフロンの生産及び消費を可能な限り早期に、遅くとも今世紀末までに全廃することに関するヘルシンキ会議の結論を歓迎する。モントリオール議定書でとりあげられていないオゾン層破壊物質に対しても特段の注意が向けられなければならない。我々は、適当な代替物質や代替技術の開発と利用を推進する。フロン代替物質計画が一層重視されるべきである。
- 我々は、気候変動をもたらす惧れがあり、環境を脅かし、究極的には経済をも脅かす二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出を抑制するための共通の努力を強く支持する。我々は、この問題に関し気候変動政府間パネルにより行なわれている作業を強力に支持する。
我々は、温室効果ガス観測所の世界的ネットワークを強化し、気候変動を探知するための地球規模の気象学的情報ネットワークを設置しようという世界気象機関(WMO)のイニシアティブを支持する必要がある。
- 我々は、エネルギー効率の一層の向上がこれらの目標に大きな貢献をなしうることにつき意見の一致を見ている。我々は、関係国際機関に対し、省エネルギー、より広く言えばあらゆる種類のエネルギーの使用効率を向上させ、関連する手法及び技術を促進させるための経済措置を含む措置を奨励するよう要請する。
我々は、原子力発電所において最も高い安全基準を維持すること、及び発電所の安全な操業と廃棄物の管理に関する国際協力を強化することにコミットしており、原子力発電が温室効果ガス排出を制限する上で重要な役割を果たすことを認識する。
- 森林減少もまた大気に害を及ぼしており、こうした動きは逆転されなければならない。我々は、世界の森林の規模を保全すべく持続可能な森林経営慣行の採用を呼び掛ける。関係国際機関に対し、1990年までに世界の森林の状態に関する報告を完成するよう求める。
- 熱帯林の保全は、世界全体にとり急務となっている。我々は、開発途上国が自らの天然資源を利用する上での主権を認めつつ、熱帯林の持続可能な利用を通じて、そこに存在する全ての種と土地及びその他の資源に対する地域社会の伝統的権利を保護することを促進する。我々は、この分野における前進の基礎としてドイツのイニシアティブを歓迎する。
この目的のため我々は、国連食糧農業機関(FAO)の枠組みの下で1986年に採択された熱帯林行動計画の早急な実施を強く支持する。我々は、国際熱帯木材機関(ITTO)で一致団結している消費国と生産国の双方に対し、森林の一層の保全を確保するため力を合わせるよう呼び掛ける。我々は、熱帯林を有する国の努力を、資金面及び技術協力を通じ、国際機関において支援する用意があることを表明する。
- 温帯林、湖沼及び河川は、二酸化硫黄及び窒素酸化物等の酸性汚染物質による影響から保護されなければならない。このため、二国間及び多数国間の努力を積極的に推進することが必要である。
- 大気保全に関連する問題は複雑さを増しており、革新的解決を必要とする。このための新たな方策が考えられ得る。我々は、気候変動に関する一般原則或いは指針を定める枠組み又は包括的条約の締結が、国際社会による努力を結集しかつ合理化するために早急に求められていると考える。我々は、気候変動政府間パネルの作業及びその他の国際会議の成果を利用しつつ世界気象機関との協力の下に国連環境計画(UNEP)が行なっている作業を歓迎する。科学的根拠により必要とされ、また許容される場合には、具体的責務を盛り込んだ特定の議定書をこの枠組みの中に組み込むこともできよう。
- 我々は、海洋を汚染廃莱物の投棄場所として無秩序に使用することを強く非難する。沿岸海域の悪化は特に問題である。海洋環境の持続的管理を確保するために、我々は海洋環境を保全し、その生物資源を保存するための国際協力の重要性を認識する。我々は、世界の海洋の現状についての報告を準備するよう国連の関係機関に要請する。
我々は、海洋の油濁の影響を抑制、軽減する上で各国、各地域及び全世界の能力が向上すべきであるとの関心を表明する。我々は、全ての国に対し、最新のモニター及び浄化技術をより効果的に利用するよう要請する。我々は、全ての国に対し、海洋の油濁防止に関する国際条約への加盟及びその完全な履行を求める。我々は、また国際海事機関(IMO)が一層の防止活動のための案を提示するよう求める。
- 我々は、環境に関する既存の規則の完全な履行を確保することにコミットしている。この点に関し、我々は、既存規則の要約を作成することの必要性につき検討するとともに国際的なレベルで環境の法的側面に関して詳細な検討を行うため、学者、科学者、政府関係者の参加を得て、環境に係る国際法に関するフォーラムを1990年に主催するとのイタリア政府のイニシアティブに関心をもって留意する。
- 我々は、既存の環境機関が国連体制の下で強化されることを提唱する。特に、国連環境計画は、その強化と財政的支援の拡充を緊急に必要としている。我々のうち何人かは、国連に新たな機関を設立することも考慮に値しうるということにつき合意した。
- 我々は、ブラッセルで開催され、「人間による自然の管理」との概念に基づく環境倫理の普遍的規範の詳細を検討した生命倫理に関する第6回会合の報告に留意した。
- 世界で最も貧しくかつ最も人口稠密な国の一つであるバングラデシュが、破壊的な大洪水により定期的に大きな被害を受けていることは、国際的な関心事である。
我々は、この重要な問題に対する、技術的、財政的、経済的かつ環境的に健全な解決策を見い出すため、バングラデシュ政府を支援し、国際社会による効果的かつ協調的な行動をとる緊急の必要性を強調する。我々は、このような精神のもとで、既に供与された支援を考慮しつつ、フランス、日本、米国、及び国連開発計画(UNDP)により開始され、我々全ての国の専門家により精査された洪水対策に関する各種研究に留意する。我々は、これらの研究を受けて、洪水の影響軽減に真の改善をもたらすための確固たる基礎を確立すべく、国際社会の努力を調整することにつき世界銀行が合意したことを歓迎する。我々は、また、このような計画に積極的に加わる意思のある国々が参加してバングラデシュ政府の主催により今年末までに英国で開催される会合において世界銀行が議長を務めることを承諾したことを歓迎する。
- 我々は、急速に悪化しつつある脆弱な乾燥地帯における状況の変化をモニターする必要性に応えたサハラ地域観測所設置共同計画のような計画に、政治的支援を与える。