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15 アルシュ サミット

経済宣言(仮 訳)

1989年7月16日

  1.  我々主要先進7ヵ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会委員長は、第15回年次経済サミットのため、パリで会合した。アルシュ・サミットは、1975年にランブイエで、また1982年にヴェルサイユで始められた一連のサミットに続き、サミットの新たな一巡の始まりとなる。1982年に開始された一連のサミットは、第二次世界大戦以後最も長期にわたる持続的な成長の時期の一つを経験した。これらサミットにおいては、効果的な協議が行われるとともに、新たなイニシアティブを打ち出し国際協力を強化する機会が得られた。
  2.  本年の世界経済情勢には、三つの主要な課題がある。

    • 均衡のとれた持続的成長を維持し、インフレを抑制し、雇用を創出し、また社会正義を増進するために必要とされる措置の選択と実施。これらの措置は、また、対外不均衡を調整し易くするとともに、国際的な貿易及び投資を促進し、開発途上国の経済情勢を改善するものでなければならない。
    • 開発途上国の発展及び世界経済への一層の統合。多くの開発途上国、特に健全な経済政策を実施している国においては、相当の前進が達成されている。他方、債務負担と根強い貧困の問題は、何億もの人々が影響を受ける自然災害によりしばしば困難の度を深めており、我々が引き続き連帯の精神をもって対処すべき深く懸念される問題である。
    • 将来の世代のために環境を保護する緊急の必要性。成層圏オゾン層の破壊、将来気候変動をもたらし得る二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの過剰排出等、我々の環境に対する深刻な脅威の存在が科学的研究により明らかになった。環境保護のためには、断固とした協調的な国際的対応を行なうこと及び持続可能な開発に根ざした政策を世界的規模で早急に採用することが要請される。


国際経済情勢

  1.  我々の経済の効率性と柔軟性を向上するための政策に重点を置くこと、及び協調的な努力と調整過程を強化することによって、成長が維持されてきた。中期的には、この期間に見られた活発な投資が、財とサービスの供給拡大への道を開くとともに、インフレの危険低減に力を貸すこととなろう。しかしながら、今後の見通しにおいて危険性がないということは決してない。
  2.  現在まで、各国政府及び通貨当局の協調的努力により、多くの国においてインフレの脅威は封じられてきた。しかし、引き続き警戒していく必要があり、インフレが最近上昇を示した国においては、これを下降に向かわせるべく確固たる政策的対応がとり続けられる。
  3.  対外不均衡の削減については一定の進展がみられたが、調整の勢いは最近目に見えて弱まってきた。協調して対外不均衡の調整を一層進展させることが必要である。
  4.  米国、カナダ及びイタリア等の財政及び経常収支の赤字を抱える国においては、財政赤字の一層の削減が必要である。財政赤字を削減するための行動がとられる。このことは、貯蓄・投資ギャップと対外不均衡の削減に寄与し、インフレの抑制に貢献し、また金利の低下を通じて為替レートの一層の安定を促進し得よう。
  5.  日本及びドイツ等の対外黒字を有する国は、引き続き、インフレなき内需の成長を促進し対外調整を助長するような、適切なマクロ経済政策と構造改革を追求すべきである。
  6.  我々の国全ては、世界経済の健全な発展について責任を共有する。中期的には、赤字国は、対外調整と輸出の増大を通じ世界的な調整において重要な役割を果たさなければならず、また黒字国は、内需と輸入の増大のために好ましい状況をもたらす政策を通じ経済の世界的な拡大の持続に貢献しなければならない。
  7.  新興工業国・地域の台頭とこれらの国・地域との対話の開始を歓迎する。我々は、これらの国・地域の中で相当規模の黒字を有するものに対し、対外不均衡の調整並びに開放的な貿易及び決済制度に貢献するよう要請する。このため、これらの国・地域は、為替レートがその競争力を反映することができるようにし、ガット上のコミットメントを実施し、また貿易障壁を削減すべきである。


国際金融面での進展と協調

  1.  我々諸国は、プラザ合意及びルーブル合意において、それぞれの経済の基礎的諸条件を改善し、それら基礎的諸条件に見合った為替レートの安定を促進するための監視と協調の政策を相互に補強し合う形で追求することに合意した。

     国内政策の一貫性とそれらの国際的な整合性を確保するため、経済政策の多角的監視と協調が進展してきた。用いられる手続きは、国際通貨基金(IMF)との協力によリ一層明確化され改善されている。

  2.  協調プロセスは、世界経済の発展に積極的に貢献してきており、国際通貨制度の機能の改善にも大いに貢献してきた。為替市場においても引き続き協力が行われてきた。

     国際通貨制度の機能及び安定性を経済の基礎的諸条件に合致した形で改善するためのこのような協調的かつ柔軟なアプローチを引き続き行い、また適当な場合にはそれを発展させることが重要である。従って、我々は、大蔵大臣に対し、協調プロセス、為替市場における協力、及び国際通貨制度の機能を改善するためとり得る措置の検討を継続することを求める。

  3.  我々は、国際通貨基金第9次増資の決議を本年末までに採択するために必要な作業を完了するとの決定を歓迎する。

     我々は、SDR配分の再開の問題が国際通貨基金理事会において依然検討中であることに留意する。

  4.  欧州共同体においては、欧州通貨制度が相当程度の経済政策の一本化と通貨の安定に貢献してきた。


経済効率の改善

  1.  我々は、我々の経済の非効率性を取り除くための措置を引き続き促進する。これらの非効率性は、経済活動の多くの側面に影響を及ぼし、潜在的な成長率と雇用創出の見通しを低下させ、マクロ経済政策の有効性を減少させ、対外調整過程を阻害する。この関連で、税制改革、金融市場の近代化、競争政策の強化、及びエネルギー、工業、農業等全ての部門における硬直性の減少が必要である。同時に、教育、職業訓練、運輸、及び流通制度の改善、並びに労働市場に一層の柔軟性と流動性を与え失業を減少させることを目指した一層の政策も必要である。欧州共同体においては、単一欧州議定書に盛られたプログラムの1992年末までの完了に向けた着実な進展が、経済の効率化に既に強い弾みを与えてきた。
  2.  我々のいくつかの国における80年代の貯蓄の低下は懸念の材料となっている。この低下した貯蓄水準は、実質金利高を招き、もって成長の阻害要因となりうる。不十分な貯蓄と巨額の財政赤字は、大幅な対外赤字と関わっている。我々は、政策協調の枠組みの中で、貯蓄を奨励し、障害がある場合にはこれを除去するような政策を推奨する。
  3.  金融活動は、ますます新たな手法により世界的な規模で行われている。インサイダー取引は金融市場の信頼性を阻害しうるが、我々諸国間でその規制は大きく異なっている。これらの規制は最近強化されてきたか、強化されつつある。国際協力が追求され強化されるべきである。


貿易問題

  1.  世界貿易は昨年急速に拡大した。しかし、保護主義は依然として現実の脅成である。我々は、あらゆる形態の保護主義と闘う決意を強く再確認する。我々は、プンタ・デル・エステ宣言のスタンドスティル及びロールバックのコミットメントを履行する。これらコミットメントはとりわけガット及びその関連規定と相容れないあらゆる貿易制限措置又は貿易歪曲措置の排除を求めている。我々は、改善されたガットの紛争処理手続の効果的な使用とその一層の改善のための交渉を促進させることに合意する。我々は、ガットの原則と多角的貿易体制の一体性を損なう如何なる差別的または独自の行動をも回避する。我々は、また、多角的貿易体制とウルグァイ・ラウンド交渉を害するおそれのあるユニラテラリズム、バイラテラリズム、セクター主義及び管理貿易への傾斜に反対することを誓約する。
  2.  去る4月にジュネーヴにて行われたウルグァイ・ラウンド貿易交渉委員会の交渉が成功し、もって中間レヴューが完了したことは、極めて重要な成果である。これは、短期的のみならず長期的に農業改革を追求することを含め、全ての分野における今後の作業のための明確な枠組みを設定している。サービス、貿易関連投資措置、及び知的所有権等のガットの規律に未だ十分に取り込まれていない重要な分野における実質的な交渉のための必要な枠組みも設定している。

     開発途上国は、これらの交渉に積極的に参加しその成功に貢献した。全ての国は、可能な最大限の建設的な貢献を行うべきである。

     我々は、1990年末までにウルグァイ・ラウンドを完了するため、一層の実質的な進展を図ることにつき完全なるコミットメントを表明する。

  3.  我々は、カナダと米国の間の自由貿易協定の発効、及び欧州共同体と欧州自由貿易連合(EFTA)諸国との間の緊密な経済関係の強化のためのより最近のイニシアティブを、満足の意をもって留意する。我々は、これらの動きのみならず他の地域協力の進展が貿易創出的であり、かつ多角的な自由化プロセスに対し補完的であるべきであるとの政策を維持する。
  4.  欧州共同体は、単一市場プログラムが貿易の諸側面において貿易創出的であり、かつ多角的な自由化プロセスに対し補完的であるべきであるとの強い決意を有する。
  5.  我々は、貿易と援助を歪曲する輸出信用補助金に関する多数国間の規律強化に向けて進展があったことに、満足の意をもって留意する。この努力は、現行のガイドラインを、可能な限り早期に改善すべくOECDの関係部局において積極的に追求され、完了されなければならない。

開発の一般的問題

  1.  開発は世界共通の課題である。我々は、世界貿易体制を開放的にし、開発途上国の構造調整を支持することによりそれらの国を支援する。我々は、また、一次産品への依存度の高い国における経済の多様化と技術移転や資本の流れにとって好ましい環境の醸成を勧奨する。

     我々は、政府開発援助が引き続き重要であることを強調し、サミット参加国によるこの面での努力の増大を歓迎する。我々は、政府開発援助の将来の水準に関して国際機関により既に設定された諸目標に留意するとともに、開発のための全般的資金フローの重要性を強調する。

     我々は、同時に、援助の質並びに被援助プロジェクト及びプログラムの評価の重要性を強調する。

  2.  我々は、開発途上国に対し健全な経済政策を実施するよう求める。決定的に重要なことは、対内投資を誘引し成長と逃避資本の還流を促進するような財政・金融政策を採用することである。
  3.  我々は、トロント経済宣言において特別の注意が払われたフィリピンに対する多国間援助構想が大幅に進展したことに、満足の意をもって留意する。
  4.  ユーゴースラヴィアの懸念される経済情勢に直面し、我々は、同国政府が二国間及び多数国間の支援を得られるような強力な経済改革計画を実施するよう勧奨する。


最貧国の状況

  1.  国際通貨基金の構造調整ファシリティの拡充、最貧国及び重債務国のための世界銀行の特別援助プログラム、及びアフリカ開発基金の第5次増資は、いずれも調整プロセスに着手した国々に利益をもたらす重要な措置である。我々は、国際開発協会(IDA)の大幅な増資の重要性を強調する。
  2.  我々が昨年トロントで要請したとおり、パリ・クラブは、1988年9月、最貧国の債務返済支払いの大幅な削減の実施条件につき合意した。13ヵ国が既にこの決定の恩恵に浴している。
  3.  我々は、借款の贈与への転換のためにとられた措置とともに開発援助におけるグラント・エレメントの増大を歓迎し、このための一層の措置を要請する。債務繰り延べと同様に開発援助の弾力化が必要とされる。
  4.  我々は、1990年にパリで開催される予定の後発開発途上国に関する次回の国連会議の準備が効率的かつ成功裡に進められることを大いに重視する。


重債務国に対する債務戦略強化

  1.  我々の債務問題に対するアプローチは既に顕著な成功を収めているが、深刻な課題が今なお存在している。即ち、多くの国において、債務返済額の対輸出額比率は依然として高い水準に留まり、成長を促進するための投資に必要な資金が欠乏し、また資本逃避が重要な問題となっている。投資環境の改善は、過度の債務を伴うことなく持続可能な水準の成長を達成するための努力の枢要な部分でなければならない。これらの面で現在の状況を改善し得るか否かは、とりわけ債務国における持続的かつ効果的な調整政策に依存している。
  2.  我々は、これらの課題に取り組むに当たって強化された債務戦略に強くコミットしている。この戦略は、ケース・バイ・ケースを基本とし、以下の行動に依拠している。

    • 債務国は、国際通貨基金と世界銀行の支援を得て、貯蓄を活用し、投資を刺激し、また逃避資本を還流させることを特に目的とした健全な経済政策を実施すべきである。
    • 民間銀行は、新規貸付を補完するものとして、自発的で市場原理に基づいた債務削減及び利払い軽減策にますます重点を置くべきである。
    • 国際通貨基金と世界銀行は、政策調整融資の一部を区分して扱うことにより、大幅な債務削減を支援しよう。
    • 限定的な利払い支援は、大幅な債務削減及び利払い軽減を伴う取引に対し、国際通貨基金と世界銀行の追加的融資を通じ行なわれる。このため、特別勘定の利用が合意されている。
    • パリ・クラブにおける債務繰り延べの継続及び輸出信用機関の柔軟な対応。
    • 中期的なマクロ経済及び構造調整計画を支援し、輸出の不足と対外的な衝撃の悪影響を埋め合わせるための国際開発金融機関の機能の拡充。
  3.  この戦略の枠組みの中で、

    • 我々は、債務削減及び利払い軽減を促進するため適切な資金を供与するとの上記の二つの機関が行った最近の決定を歓迎する。
    • 我々は、債務国に対し、これら二つのブレトンウッズ機関によって定められた指針に沿った債務削減及び利払い軽減につながりうる強力な経済改革計画の策定を早急に進めるよう要請する。
    • 我々は、民間銀行に対し、債務国との交渉において現実的かつ建設的アプローチをとるとともに、債務削減、利払い軽減、及び新規資金を含む金融パッケージにつき合意を結ぶよう早急に行動することを要請する。我々は、公的債権者が民間債権者の代替となるべきでないことを強調する。我々の政府は、債務削減及び利払い軽減に対する不必要な障害を除去するため、適切な場合には、税制、銀行規制及び会計慣行につき考慮する用意がある。


環  境

  1.  地球生態系の均衡をより良く保全する必要性につき世界中で認識が高まっている。このことは将来気象変化をもたらし得る大気への深刻な脅威を含んでいる。我々は、大気、湖沼、河川、海洋における汚染の増大、酸性雨、危険物質及び急速な砂漠化と森林減少に対し重大な懸念をもって留意する。このような環境の悪化は、種の存在を危険に晒し、個人及び社会の福祉を損なう。

     地球生態系の均衡を理解し保護するための断固たる行動が緊急に必要とされる。我々は、共有する経済的、社会的諸目的を満たし将来の世代に対する義務を履行するために、健康的で均衡のとれた地球環境の保全という共通の目標を達成するための協力を行う。

  2.  我々は、環境問題に関する科学的研究に一層の弾みを与え、必要な技術を開発し、環境政策の経済的な費用と効果につき明確な評価を行うよう全ての国に対し要請する。

     これらの問題のいくつかについて不確実性が残っているからといって、我々の行動が不当に遅延されてはならない。

     この関連で、我々は全ての国に対し、地球的規模で観測とモニターを強化するため力を合わせるよう求める。

  3.  我々は、汚染を減らし代替策を提供するために技術及び技術移転の分野における国際協力も強化する必要があると考える。
  4.  我々は、汚染を発生源で防止し、廃棄物を出来る限り少なくし、省エネルギーを実施し、また費用対効果の優れたクリーン・テクノロジーを設計し市場化する上で、産業界が枢要な役割を担っていると考える。農業部門も、水質汚染、土壌浸食及び砂漠化等の問題への取組みに貢献しなければならない。
  5.  環境保護は、貿易、開発、エネルギー、運輸、農業及び経済計画等の問題と不可分である。従って、経済上の決定を行うにあたっては、環境に対する考慮が払われなければならない。実際、優れた経済政策と優れた環境政策は、相互に補強しあうものである。

     我々は、持続可能な開発を達成するため、経済成長と開発が環境保護と両立することを確保する。環境保護及び関連投資は経済成長に貢献すべきである。この点に関し、技術によるブレークスルーのための努力を強化することが、経済成長と環境政策を調和させる上で重要である。

     環境保護の費用、便益及び資源面への影響につき明確な評価を行うことは、可能な場合には天然資源全体の価値を反映させつつ、各国政府が、価格面での信号(例えば税金や政府支出)と規制措置を如何に組み合わせるかについて必要な決定を行う上で役立つこととなろう。

     我々は、世界銀行及び地域開発銀行がその活動の中に環境的考慮を統合するよう奨励する。OECD、国連及びその関連機関等の国際機関は、環境の質を向上させるため、各国政府による適切な経済措置の評価に資する分析技術を更に発展させることが求められる。我々は、OECDに対し、環境と経済上の決定との統合に関する作業を通じて選択的な環境指標を如何にして開発し得るか検討するよう求める。我々は、1992年の環境と開発に関する国連会議が地球環境保護に一層の弾みを与えることを期待する。

  6.  開発途上国が過去の損傷に対処することを支援し、環境の観点から好ましい行動をとることを奨励するため、援助の仕組みと特定の技術移転を経済的インセンティブに含めることもできよう。特定の場合には、政府開発援助の債務帳消し及び債務・環境スワップが環境保護において有用な役割を果たし得る。

     我々は、また、開発途上国がその経済成長を持続させることにつき有する関心と必要性、及び環境面の課題を満たす上で必要な財政的、技術的要請について配慮することが必要である点を強調する。

  7.  成層圏オゾン層の破壊は緊急課題であり、迅速な行動を必要とする。

     我々は、モントリオール議定書にとりあげられているフロンの生産及び消費を可能な限り早期に、遅くとも今世紀末までに全廃することに関するヘルシンキ会議の結論を歓迎する。モントリオール議定書でとりあげられていないオゾン層破壊物質に対しても特段の注意が向けられなければならない。我々は、適当な代替物質や代替技術の開発と利用を推進する。フロン代替物質計画が一層重視されるべきである。

  8.  我々は、気候変動をもたらす惧れがあり、環境を脅かし、究極的には経済をも脅かす二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出を抑制するための共通の努力を強く支持する。我々は、この問題に関し気候変動政府間パネルにより行なわれている作業を強力に支持する。

     我々は、温室効果ガス観測所の世界的ネットワークを強化し、気候変動を探知するための地球規模の気象学的情報ネットワークを設置しようという世界気象機関(WMO)のイニシアティブを支持する必要がある。

  9.  我々は、エネルギー効率の一層の向上がこれらの目標に大きな貢献をなしうることにつき意見の一致を見ている。我々は、関係国際機関に対し、省エネルギー、より広く言えばあらゆる種類のエネルギーの使用効率を向上させ、関連する手法及び技術を促進させるための経済措置を含む措置を奨励するよう要請する。

     我々は、原子力発電所において最も高い安全基準を維持すること、及び発電所の安全な操業と廃棄物の管理に関する国際協力を強化することにコミットしており、原子力発電が温室効果ガス排出を制限する上で重要な役割を果たすことを認識する。

  10.  森林減少もまた大気に害を及ぼしており、こうした動きは逆転されなければならない。我々は、世界の森林の規模を保全すべく持続可能な森林経営慣行の採用を呼び掛ける。関係国際機関に対し、1990年までに世界の森林の状態に関する報告を完成するよう求める。
  11.  熱帯林の保全は、世界全体にとり急務となっている。我々は、開発途上国が自らの天然資源を利用する上での主権を認めつつ、熱帯林の持続可能な利用を通じて、そこに存在する全ての種と土地及びその他の資源に対する地域社会の伝統的権利を保護することを促進する。我々は、この分野における前進の基礎としてドイツのイニシアティブを歓迎する。

     この目的のため我々は、国連食糧農業機関(FAO)の枠組みの下で1986年に採択された熱帯林行動計画の早急な実施を強く支持する。我々は、国際熱帯木材機関(ITTO)で一致団結している消費国と生産国の双方に対し、森林の一層の保全を確保するため力を合わせるよう呼び掛ける。我々は、熱帯林を有する国の努力を、資金面及び技術協力を通じ、国際機関において支援する用意があることを表明する。

  12.  温帯林、湖沼及び河川は、二酸化硫黄及び窒素酸化物等の酸性汚染物質による影響から保護されなければならない。このため、二国間及び多数国間の努力を積極的に推進することが必要である。
  13.  大気保全に関連する問題は複雑さを増しており、革新的解決を必要とする。このための新たな方策が考えられ得る。我々は、気候変動に関する一般原則或いは指針を定める枠組み又は包括的条約の締結が、国際社会による努力を結集しかつ合理化するために早急に求められていると考える。我々は、気候変動政府間パネルの作業及びその他の国際会議の成果を利用しつつ世界気象機関との協力の下に国連環境計画(UNEP)が行なっている作業を歓迎する。科学的根拠により必要とされ、また許容される場合には、具体的責務を盛り込んだ特定の議定書をこの枠組みの中に組み込むこともできよう。
  14.  我々は、海洋を汚染廃莱物の投棄場所として無秩序に使用することを強く非難する。沿岸海域の悪化は特に問題である。海洋環境の持続的管理を確保するために、我々は海洋環境を保全し、その生物資源を保存するための国際協力の重要性を認識する。我々は、世界の海洋の現状についての報告を準備するよう国連の関係機関に要請する。

     我々は、海洋の油濁の影響を抑制、軽減する上で各国、各地域及び全世界の能力が向上すべきであるとの関心を表明する。我々は、全ての国に対し、最新のモニター及び浄化技術をより効果的に利用するよう要請する。我々は、全ての国に対し、海洋の油濁防止に関する国際条約への加盟及びその完全な履行を求める。我々は、また国際海事機関(IMO)が一層の防止活動のための案を提示するよう求める。

  15.  我々は、環境に関する既存の規則の完全な履行を確保することにコミットしている。この点に関し、我々は、既存規則の要約を作成することの必要性につき検討するとともに国際的なレベルで環境の法的側面に関して詳細な検討を行うため、学者、科学者、政府関係者の参加を得て、環境に係る国際法に関するフォーラムを1990年に主催するとのイタリア政府のイニシアティブに関心をもって留意する。
  16.  我々は、既存の環境機関が国連体制の下で強化されることを提唱する。特に、国連環境計画は、その強化と財政的支援の拡充を緊急に必要としている。我々のうち何人かは、国連に新たな機関を設立することも考慮に値しうるということにつき合意した。
  17.  我々は、ブラッセルで開催され、「人間による自然の管理」との概念に基づく環境倫理の普遍的規範の詳細を検討した生命倫理に関する第6回会合の報告に留意した。
  18.  世界で最も貧しくかつ最も人口稠密な国の一つであるバングラデシュが、破壊的な大洪水により定期的に大きな被害を受けていることは、国際的な関心事である。

     我々は、この重要な問題に対する、技術的、財政的、経済的かつ環境的に健全な解決策を見い出すため、バングラデシュ政府を支援し、国際社会による効果的かつ協調的な行動をとる緊急の必要性を強調する。我々は、このような精神のもとで、既に供与された支援を考慮しつつ、フランス、日本、米国、及び国連開発計画(UNDP)により開始され、我々全ての国の専門家により精査された洪水対策に関する各種研究に留意する。我々は、これらの研究を受けて、洪水の影響軽減に真の改善をもたらすための確固たる基礎を確立すべく、国際社会の努力を調整することにつき世界銀行が合意したことを歓迎する。我々は、また、このような計画に積極的に加わる意思のある国々が参加してバングラデシュ政府の主催により今年末までに英国で開催される会合において世界銀行が議長を務めることを承諾したことを歓迎する。

  19.  我々は、急速に悪化しつつある脆弱な乾燥地帯における状況の変化をモニターする必要性に応えたサハラ地域観測所設置共同計画のような計画に、政治的支援を与える。


麻薬問題

  1.  麻薬問題は、危機的なまでの状況に達した。我々は、国内的及び国際的に断固たる行動をとる緊急の必要性を強調する。我々は、全ての国、特に麻薬の生産、取引き及び消費の多い国に対して、麻薬生産に反対し、需要を削減し、更に麻薬取引自体及びその利益の洗浄に対する闘いを進めている我々の努力に加わるよう要請する。
  2.  従って、我々は、関係フォーラムにおいて次の措置をとることを決意する。

    • 麻薬生産国における不法栽培の転換のための二国間及び国連の計画に一層の重点を置くこと。国連麻薬乱用統制基金(UNFDAC)並びにその他の国連及び多数国間機関を支持し、強化し、また一層実効的なものとしなければならない。このような努力には、麻薬栽培及び取引を阻止するための効果的計画の実施のための特別な支援と開発・技術援助が含まれうる。
    • 不法な生産または取引の取締りを求めている生産国の努力を支持する。
    • 麻薬との闘いにおける国連の役割を、資金の拡充及びその活動の実効性向上を通じ強化すること。
    • 麻薬中毒の防止及び麻薬中毒者の更生に関する情報交換を強化すること。
    • 1990年に予定されているコカイン及び麻薬の需要削減に関する国際会議を支持すること。
    • これらの問題に関する協力的かつ相互的援助の効率を向上させること。その第一歩は、麻薬及び向精神薬の不法取引に関するウィーン条約に速やかに加盟し、これを批准し、また履行すること。
    • 更に二国間または多数国間取極を締結し、適当な場合には、麻薬犯罪による利益を特定し、追跡し、凍結し、差押え、及び没収することを容易にするための措置等のイニシアティブとそのための協力を支援すること。
    • サミット参加国及びこれらの問題に関心を有するその他の諸国からなる金融活動作業グループを招集すること。その権能は、銀行制度と金融機関を資金の洗浄のために利用することを防止するために既にとられた協力の成果を評価すること、及び多数国間の司法面での協力を強化するための法令制度の適合等のこの分野における追加的予防努力を検討することである。この作業グループの第1回会合はフランスにより招集され、その報告は1990年4月までに完成される。


エイズに対する国際協力

  1.  我々は、ヴェネチア・サミット(1987年6月)で決定され1989年5月にパリで開催されたエイズに関する国際倫理委員会の創設に留意する。同委員会には、サミット諸国と他の欧州共同体の加盟国が会合し、世界保健機構(WHO)が積極的に参加した。
  2.  我々は、多くの元首、首相及び諸機関の長から寄せられた意見に留意し、これらを関心をもって検討する。


次回サミット

  1.  我々は、来年米国で会合することについての米国大統領の招待を受諾した。
 
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