1979年、英国より独立したキリバスは、英連邦の一員であるが、共和制を採用している。ただし、この共和制は、大統領制と議院内閣制が結合したもので、大統領は国家元首と政府代表を兼ねている。キリバスの独立以来、我が国とキリバスの関係は、極めて良好である。
2003年1月、大統領選で再選されたシト大統領は、議会での過半数割れを打開すべく閣僚ポストと引き替えに野党側から引き抜き工作を行ったが奏功せず、同年3月シト政権に対する不信任動議が可決された。これに伴い、7月に総選挙及び大統領選挙が実施されアノテ・トンが大統領に就任した。
外交面では、従来よりオーストラリア、ニュージーランド、太平洋島嶼国及び旧宗主国である英国との関係が深いが、近年は我が国をはじめとするアジア諸国及び国連等国際機関との関係強化に努めている。キリバスは、各種国際問題に関し、我が国と立場を同じくする友好国であり、また、漁業関係等を通じ、我が国と緊密な関係を築いている。トン政権は2003年11月に台湾と国交を樹立し、中国との国交は断絶された。
キリバスは広大な海洋(排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)は355km2で域内最大)に珊瑚礁が点在する海洋国家であり、ギルバート諸島、フェニックス諸島、ライン諸島の三つの諸島群からなるが、耕地に恵まれず、経済面では他の島嶼国同様、コプラ(乾燥ココナツ)生産、水産業以外に主要な産業もなく、地理的隔絶性、国家の狭小性、天然資源の不足等もあり恒常的な貿易収支の赤字に苦しんでいる。現在の主な外貨獲得手段はコプラ、魚介類・海草類の輸出と入漁料、外国船で働く船員等海外からの送金に依存している。
(1) キリバスに対するODAの意義
我が国は、キリバスに対する主要援助国の一つであり、後発開発途上国(LDC:Least Developed Countries)である同国の経済・社会基盤の整備に大きな役割を果たしているが、このことは両国の友好親善関係の強化・促進に大きく貢献している。
(2) キリバスに対するODAの基本方針
2003年5月の第3回太平洋・島サミットで採択された「沖縄イニシアティブ:より豊かで安全な太平洋のための地域開発戦略及び共同行動計画」において、我が国は、安全保障、環境、教育、保健、経済成長の5つを太平洋島嶼国地域における重点政策目標として表明した。
また、キリバスについては、国家規模の小さなLDCであること、国土の拡散性が極めて高く、また地理的にも海外市場から隔絶されていること、土壌的制約から農林業の開発可能性が極めて低く、経済発展のためには広大な経済水域を活かした水産資源開発を中心とせざるを得ないこと等を念頭に置いて、経済協力案件について検討している。
(3) 重点分野
上述の基本方針を踏まえ、以下4点を重点分野として支援を実施している。
(イ) 水産
(a) 港湾等のインフラ整備支援、維持管理能力向上
(b) 漁船員の育成、造船指導
(ロ) 環境保全
(a) 環境保全体制の強化と環境保全啓発教育の普及
(b) 水質汚染対策
(ハ) 教育
教育関連施設の拡充
(ニ) 通信
情報通信技術の整備・拡充
(1) 総論
2003年度のキリバスに対する無償資金協力は0.07億円(交換公文ベース)、技術協力は1.06億円(JICA経費実績ベース)。2003年度までの援助実績は、無償資金協力125.75億円(交換公文ベース)、技術協力34.73億円(JICA経費実績ベース)である。
(2) 無償資金協力
2003年度は、草の根・人間の安全保障無償資金協力で、同国の障害者学校へ通学バスを供与した。
(3) 技術協力
研修員受入を中心に協力を実施している。キリバスの主要産業が水産業であることから、同分野の専門家派遣も行っている。
我が国は、現地ODAタスクフォースにより、キリバスにおける政府・ドナー間会合等の場を利用して、国際機関や他の主要援助国との間で積極的に意見交換を行い、必要な調整や効率的な援助の実施に努めている。