VII 大洋州地域

1.大洋州地域に対する政府開発援助(ODA)の考え方

(1) 意義
 大洋州地域の島嶼国・地域(以下、島嶼国という)は、我が国と太平洋を共有する隣接地域であり、同地域の安定と発展と、我が国の平和と繁栄とは不可分のものである。また、国土は小さいものの、広大な排他的経済水域を有していることから、水産・食糧・鉱物資源の供給地であるとともに、エネルギー資源の輸送ルートにもなっている。とりわけ、戦前我が国の国際連盟委任統治下にあり、人口の約2割を日系人が占めているとされるミクロネシア三国(ミクロネシア、マーシャル、パラオ)は、歴史的にも我が国と深いつながりがある。これらミクロネシア三国は、現在米国との自由連合盟約下にあり、米国から多額の財政支援を受けている一方、経済的自立に向けた基盤作りのため我が国からの援助への期待も大きい。
 援助を実施するにあたっては、各国毎にその国家・経済規模、天然資源の有無、伝統的社会基盤、政府の開発計画立案・実務能力、経常費用負担能力等がかなり異なっているため、その発展段階に応じて開発ニーズを把握し、地域の特殊性を勘案した方法で、そのニーズに即したきめ細かい援助を行っていく必要がある。
 島嶼国は、国土が広大な地域に散らばり(拡散性)、国内市場が狭く(狭隘性)、国際市場から地理的に遠い(遠隔性)等、開発上の困難を抱えている。さらに一次産業依存型経済であることから、天災や国際市況といった外的要因に対して脆弱であり、農業・漁業分野の開発・振興が急務となっている。また、経済改革及び民間部門の育成による経済的自立達成の必要性が域内各国の共通認識となっており、若い独立国として、何よりもまず「人材育成」を必要としている。さらに、基礎生活分野の整備が求められていること等も島嶼国の共通点である。我が国は小泉総理と太平洋諸島フォーラム(PIF:Pacific Islands Forum)議長であるガラセ・フィジー首相が共同議長となって、2003年5月に沖縄において第3回太平洋・島サミットを開催した。同サミットでは我が国とこれら太平洋島嶼国地域との間で地域開発戦略について議論し、その成果は「沖縄イニシアティブ:より豊かで安全な太平洋のための地域開発戦略及び共同行動計画」として採択された。
(2) 基本方針
 我が国がODAを供与している島嶼国は、人種及び言語文化上メラネシア(パプアニューギニア(以下PNG)、ソロモン、バヌアツ、フィジー(一部ポリネシアに区分される))、ポリネシア(ツバル、サモア、トンガ、クック諸島、ニウエ)、ミクロネシア(キリバス、ナウル、ミクロネシア、マーシャル、パラオ)の三つに大別される。人種・民族問題の存在、外国人行政官の存在等、それぞれが異なる伝統的社会基盤と旧宗主国、施政国等の影響とを混在させており、独特の社会環境を形成している。
 メラネシア諸国は、面積も比較的大きく、PNGの金、銅、ニューカレドニアのニッケルに見られるように地下資源に富む国もあり、比較的土地生産性も高い。これに対して、中部太平洋のミクロネシアからポリネシアにかけては火山島や珊瑚礁島が多く、火山島が比較的肥沃な土壌を形成し熱帯性農作物の栽培に適しているのに対し、珊瑚礁島は農作物等の生産性が著しく低いとの違いがある。
 これら島嶼国の地場産業はその殆どが一次産品依存型で国家経済は脆弱であり、総じて旧宗主国等による無償援助を中心とする各種援助、あるいは出稼ぎ労働者からの本国送金に大きく依存している。また、雇用確保の見地から、行政部門の肥大化と硬直化が見られ、その財源を外国からの財政支援に依存する側面もある。
 これら島嶼国にとって、経済・社会基盤整備、行政サービスの向上と、公共部門の縮小、外貨獲得手段の多元化を図るための貿易・投資・観光促進を通じた民間セクターの育成が、最近の大きな課題となっている。
 このような状況を踏まえ、我が国としては、次の諸点を重視して支援を行うこととしている。
(イ) 経済・社会活動の基盤となり、島嶼国の抱える拡散性・遠隔性を克服するための経済・社会インフラの整備(保健医療を含む)
(ロ) 経済構造改革への支援
(ハ) 民間部門の振興に資する人材育成
(ニ) 環境保全対策への支援
(ホ) 遠隔教育を通じた人材育成・技術移転等複数の域内国を対象とする広域的な協力の推進

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係



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