VI 中南米地域

1.中南米地域に対する政府開発援助(ODA)の考え方

(1) 意義
 中南米地域には、33の独立国があり、中南米地域全体には全世界の日系人の6割に当たる約150万人が中南米に存在している。かかる歴史的なつながりもあり、我が国とは伝統的な友好関係を維持している。
 中南米では、1980年代以降民政移管が進み、現在ではほぼすべての中南米諸国が民主的政権を擁している。また、豊富な天然資源の存在や、経済改革の進展、活発な地域経済統合(メルコスール(南米南部共同市場)、アンデス共同体、カリブ共同体、中米統合機構等)の動きもあり、全体としては、今後の経済的成長が期待される地域と言える。さらに、国連・世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)等の国際場裏においても、ブラジルやメキシコと言った大国を中心に、存在感を増している地域でもある。
 しかしながら、中南米域内や、国内での経済的・社会的格差は大きく、農村や山岳部では深刻な貧困が生じており、貧困に起因した麻薬犯罪、テロ、地下経済の発達等が中南米地域全体の政治的安定と健全な経済・社会発展に対する阻害要因となっている。また、民主主義の定着や、未だ脆弱な産業基盤の強化、環境と開発の両立等、取り組むべき課題は多い。中南米諸国が抱えるこれらの問題は、ODA大綱が重点的に取り組むべき課題として掲げる貧困削減、持続的成長、テロ、麻薬等の地球的規模の問題と合致しており、ODAを用いてそうした問題への取組を支援する重要性は高い。
 2004年9月の小泉総理のブラジル・メキシコ訪問の際には、我が国と中南米が将来に向けた新たな関係を構築すべく、「協力」と「交流」の二つの指針からなる「日・中南米 新パートナーシップ構想」を提唱した。中でも経済関係の再活性化は最重要課題であると謳われており、中南米の資源開発や、地域統合を見据えたインフラ整備の重要性も言及されている。我が国と中南米の経済交流を拡大するためにODAも効果的に活用していくことが重要である。
(2) 基本方針
 我が国は中南米における域内・国内経済格差の是正の重要性、活発な地域統合の動きを考慮した効果的支援、また我が国と中南米の架け橋である日本人移住者・日系人が開発に果たす役割等を踏まえ、次の諸点を重視しつつ、支援を行ってきている。
(イ) 民主化及び経済改革努力に対する積極的な支援
(ロ) 豊かな自然環境の保全や経済成長に伴う環境負荷の増大に対応した環境保全のための支援
(ハ) 基礎教育、保健医療、農業・農村開発、地域間格差の是正のための基礎インフラ整備等、貧困問題の緩和のための支援
(ニ) 比較的低所得の国において民間活動の活発化及び海外からの投資促進に資する環境整備のための経済・社会インフラ整備等の支援
(ホ) 複数国を対象とした人材育成・技術移転等のための広域的な協力の推進
 またODAの効率的活用の観点から、中南米諸国のうち、長年の我が国の経済協力の実績が実を結び、第三国に支援することの出来る段階に入った国がある。我が国はそれらの国々と連携し、域内外の支援を実施していく方針である。
 中南米地域に対しては、「日・中南米 新パートナーシップ構想」の実現に向けたODAの活用も検討しつつ、多様な中南米諸国の援助ニーズを踏まえ、きめ細かな経済・社会開発支援を行っていく方針である。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係



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