V アフリカ地域

1.アフリカ地域に対する政府開発援助(ODA)の考え方

(1) 意義
 サブ・サハラ・アフリカは、全世界の独立国の約4分の1を占める47ヶ国と、約8億人の人口を抱え、国際社会における重要なアクターである。また、豊富な天然資源や森林などの豊かな自然環境に恵まれていることに加え、近年、複数政党制への移行や自由な選挙の実施に見られる民主化の進展や、「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD:New Partnership for Africa's Development)」やアフリカ連合(AU:African Union)の成立といった自主性(オーナーシップ)の高まりが見られる。
 他方で、アフリカは依然として深刻な貧困問題に直面しており、人口の約半分が貧困ライン(1日1ドル)以下の生活を送っている。また、アフリカ諸国の過半数は後発開発途上国(LDCs:Least Developed Countries)であり、世界で最も貧しく重い債務を負っている「重債務貧困国(HIPCs:Heavily Indebted Poor Countries)」42ヶ国のうち33ヶ国がサブ・サハラ・アフリカに集中している。さらに同地域では、内戦や紛争、難民、干ばつによる飢餓、HIV/AIDSを始めとする感染症の蔓延など、開発を阻害する深刻な問題を抱える国々も多く、国際社会からの多大な援助を必要としている。このようなアフリカ地域における平和構築、貧困削減、経済成長及び世界経済への統合は、国連やG8サミットを始めとする各種国際会議でも主要なアジェンダとなっており、国際社会が一体となって取り組むべき課題として認識されている。
(2) 基本方針
 我が国は「アフリカ問題の解決なくして、国際社会全体の安定と平和はない」との考えから、1993年に開始したアフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)プロセスを通じて、国際社会において対アフリカ開発協力へのリーダーシップを発揮するとともに、アフリカに対する支援を行ってきた。
 TICADプロセスの10周年にあたる2003年9月には、アフリカ自身のイニシアティブであるNEPAD支援に向けた国際社会の支援の結集と、アジアを含むパートナーシップの拡大を目的としてTICADIIIが開催された。また、我が国の対アフリカ支援の三本柱として「平和の定着」、「経済成長を通じた貧困削減」及び「人間中心の開発」を表明するとともに、分野横断的な目標として「人間の安全保障」の確保及び「南南協力」(特にアジア・アフリカ協力)の推進を掲げている。
 「平和の定着」については、開発の前提条件として地域の平和と安定が不可欠であるという認識の下、和平プロセスにかかる政治対話の促進、対人地雷の除去、難民・避難民の帰還支援、除隊兵士の地域社会への再統合等を支援している。
 「経済成長を通じた貧困削減」については、我が国は農業生産性の向上、インフラ整備、貿易・投資の促進への取組を重視している。貿易・投資の分野では、TICADIIIの際に、貿易・投資の促進のために「TICADアジア・アフリカ貿易投資会議」を開催することを表明し、2004年11月に東京で同会議が開催された。また、アフリカの主要産業であり人口の大多数が従事する農業分野において、食糧生産性向上のための協力、及びネリカ米(NERICA:New Rice for Africa)の研究開発・普及への支援等を実施しており、ネリカ米支援はアジア・アフリカ協力の具体例となっている。
 「人間中心の開発」については、我が国はこれまでにHIV/AIDSを含む保健医療、教育、水分野や食糧支援等の基礎生活分野を中心に支援を実施してきており、TICADIIIでは、今後5年間でこれらの分野で10億ドルを目標に無償資金協力を実施することを発表した。
 また、HIPCsに対して、我が国は拡大HIPCイニシアティブに基づく債務救済措置を実施してきており、アフリカ諸国のHIPCsについては、同イニシアティブの決定時点に到達した27カ国に対して約54億ドルに上る貢献を行うこととしている。
 アフリカに対する協力の実施に当たっては、案件の発掘から実施に至る各段階でのきめ細かい配慮、的確なフォローアップ等を十分に行うための協力実施体制の一層の整備に配慮する必要がある。そのためには、歴史的にもアフリカと関係が深い欧米諸国や、アフリカ各国にネットワークを有する国際機関との連携をできる限り図ることも重要である。かかる観点の下、我が国は、オーナーシップとパートナーシップの考え方に基づき、多くのアフリカ諸国で、貧困削減戦略文書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)に基づくドナー連携に取り組んでおり、整合性のとれた援助の実施に努めている。

表-1 主要経済指標等

表-2 我が国との関係


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